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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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1章6話 飛龍の反撃

赤城が燃えている。蒼龍、加賀も、艦全てが燃えている。しかし、飛龍は離れていたため無事だった。そして、南雲の最愛の人、山口も。


「いやー、さっきは危なかったね!アメさんにはお礼しないと!」


山口は飛龍にいた。蒼龍の爆発を部下によって救われ、こうして生存していた。


「飛龍にはどのくらい飛行機残ってるの?」

「艦爆18、艦攻10、艦戦18です。」

「結構キツイんだね……」


山口の声が変わった。訓練の時と同じ、本気の声だった。


「まず艦爆隊を出そう。艦爆隊が行ったあとに艦攻隊を出撃させろ。艦戦は9機ずつでいい。」


部下殺し多聞。その名に育てられた強者達が、3隻の仇をうつために出撃しようとしていた。


    ――――――――――――――――


一方、米艦隊攻撃の為出撃した攻撃隊は最悪な事に艦隊を見つけることは叶わなかった。

しかし、多くのベテランパイロットが生き残った。それは紛れもない事実であり、3隻がやられた現場の者にとっては吉報であった。

彼らは母艦がやられた事を知るとすぐに反転した。敵が見つからない今、とどまっても無駄と判断したのだ。

これらの生存機は飛龍に集中することになる。


第1次攻撃隊は艦爆18、艦戦9が出撃した。そのすぐ後に艦攻隊の出撃準備が行われた。艦爆隊は上空で編隊を組むと、米艦隊の方へ向かった。


米艦隊では歓喜に満ちていた。前までやられっぱなしだったのが3空母を一挙に叩いたのだ。これほど嬉しいニュースはない。彼らは艦爆隊をヒーローとして迎えた。


「やったのね。」


呟いたのはスプルーアンスだ。


「日本軍は4隻いたはずだけど…どうなのかしら?」


スプルーアンスもまた、南雲らと同じ女性だった。スプルーアンスは20と、少し大人びた女性で、母性本能をくすぐるような話し方をする。

髪も黒く腰までスラリと伸びていた。胸はアメリカンらしく大きく、まさにナイスボディである。

その眼は、獲物を狩るような赤をおびていた。


「フレッチャーはアナポリス時代からおどおどしているけど…果たしてあの子に指揮官が務まるのかしら?」


スプルーアンスはやはり、日本軍だけではなく味方までも飲み込もうとする野望を持っていた1人だった。


「ハルゼーちゃんには悪いけど、今回の戦いは私がヒーローよ。」


スプルーアンスは愉快そうに笑っていた。


    ―――――――――――――――


「見つけたぞ!米艦隊だ!」


小林大尉率いる艦爆隊はヨークタウンを発見した。彼らは突撃体制を取ると攻撃を開始した。

下からF4Fが迎撃に上がってきたが全て零戦がうけてたった。その隙を抜け、艦爆は急降下を始めた。


対空砲弾が直撃し、爆散する機もあったが、無傷の機はそのまま急降下を続けた。

爆弾を投下した機は海面ギリギリを飛び回避行動を取る。ヨークタウンは右に急速旋回したが間に合わず、3発が命中。

1発がボイラーに火災を引き起こし、ヨークタウンは航行不能となった。

ボイラーは閉鎖となり、注水が行われた。これ以上火災が拡大すると取り返しのつかないことになる。

残りの2発は飛行甲板に命中。アメリカの空母はタフさが売りで、その名の通りびくともしていない。

艦爆隊は13機の艦爆と2機の零戦を失って帰没した。


入れ替わりでやってきたのは友永大尉の雷撃隊だ。艦攻10機、零戦6機。

たちまち、F4F16機が迎撃にあたり、艦攻2機、零戦2機が撃墜されてしまった。

しかし、友永隊はここで討ち取らんとするプライドにかけ、狭撃攻撃を行った。


4機ずつ左右から雷撃することによって命中率と効果を上げる方法で、はたしてヨークタウンには2本が命中した。

発電機とボイラーを破壊されたヨークタウンは完全に航行不能となったのだ。しかし、友永大尉含む艦攻5、零戦3が失われた。


「そう…じょうちゃん死んじゃったの……。」


山口は声を失った。山口と友永はとても仲が良く、酒をよく飲み交わす仲だという。

彼女もまた、山口と同じような環境で育ったと本人から聞いた。共感できる仲なのだ。


「長官、先ほどの攻撃隊のうち、92機を収容できました。これ以上収容すると飛行甲板中央まで機体を並べることになり、戦闘が不可能になります。」


飛龍は加賀や赤城と違い、一回り小さい。そのため、格納庫収容数を超えてまで航空機を救おうとしたのだ。


「他の機体は海中投棄、パイロットは必ず全員救出しろ。第3次攻撃隊を編成するぞ。」


その言葉を聞いた部下は反論した。


「そんな、もうすぐ日没です!今出撃させたら、帰還が夜間になります!!」

「敵はまたいるのだ。撃沈を確認するまで攻撃するぞ。」


山口の声はもはや怒りに任せているようだった。しかし、本人でも驚くほど冷静だった。


(まだいける…。死んでいった部下のためにも、ここで諦めるわけにはいかない。)


こうして、史実には無い第3次攻撃隊が編成されることとなった。


Fin

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