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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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1章5話 南雲機動部隊壊滅

襲来したのは空母ホーネットの雷撃隊14機だった。しかし部隊ごとに出撃した彼らに連携という文字はなく、戦闘機の護衛も無い。

迎撃にあがった零戦8機に次々と叩き落とされ、1名を除く29名と共に全滅した。

続いて襲来したのは空母エンタープライズの雷撃隊だ。

これも戦闘機の護衛が無く、加賀を目標にするも零戦に10機撃墜され、隊長のリンゼー少佐含む29名が戦死。戦果はもちろん0だ。

この事に激怒した雷撃隊隊員は仲間を大勢失った事に怒り狂い、帰還後戦闘機隊控室に拳銃を持って殴りこんだというほどだ。


一方で零戦の迎撃にも積極性が無くなり、度重なる出撃、補給と疲労がたまっていることが指摘された。

その時、十三試艦上爆撃機(後の彗星艦爆)から報告された米空母の撃退のための出撃命令がかかった。丁度敵が引き上げていったあとで、追跡は容易に行えた。

1航戦から零戦9、艦爆39、艦攻28の76機、2航戦から零戦12、艦爆38、艦攻40の80機、計156機が発艦した。

第2次攻撃隊として残存艦載機は兵装装備にまわされた。


(まだ来ないのか。この時点でもう歴史は変わってしまったが、米軍側は何一つ変わっていないはずだ。)


「彰?」

「おぉおわ!?」


不意に南雲に声をかけられ、彰は驚いた。


「何を難しい顔してるの?」


覗きこむように聞いてきた南雲に彰は胸に何かがつっかえるような感覚を持った。


「べ、別に。ただ、2度目の襲来は零戦を上空に必ず上げてくれ。必ず来る。」

「彰が言うならそうなのかもね。わかった。」


ん?なんか南雲の俺に対する態度が変わってる気が……。


「敵機です!雷撃機!」


3度目に襲来したのはマッセイ少佐率いるヨークタウン雷撃隊12機だ。

今回はF4Fが6機護衛についていた。艦隊の前に突出して進んでいた飛龍に攻撃が集中したが、魚雷は全てかわされ、零戦に10機撃墜された。


しかし、サッチ少佐によって発案された有名なサッチウィーブ戦術により、零戦15機に対して6機で挑んだ戦闘機隊は1機の損害に対し5機を撃墜した。

この戦果は戦闘機隊に大きな自信をつけた。

この時、直掩機は米雷撃隊に集中しておりま、かなり低空で戦っていた。

南雲の指令にすぐに従えたのは10機中3機で、残りの7機は補給の為に着艦した。


「なんで着艦させたんだ!5分あれば迎撃できたのに!」


彰が怒鳴り散らした。


「なんでそこまで言うんだ。補給が必要だから着艦を許可した。それだけだろう。」


草鹿が言う事に屁理屈などは存在しなかった。


「そんな余裕の態度を示しているのは慢心の証拠だと言っただろう!!」

「そんな事はわかっている!現に対空陣地の隊員には上空に警戒せよと伝えてある!」


(俺でも興奮するこの戦いで、全員が職務を全うしているのか……!?)


しかし、既に手遅れだった。


「敵機直上!」


それは、あまりにも無慈悲な報告だった。


    ――――――――――――――――


南雲機動部隊の上空に到達したのはエンタープライズの艦爆隊32機とヨークタウン艦爆隊17機だ。彼らは合流すると加賀へと向かってエンタープライズ隊が先陣を切った。

零戦は必死に迎撃を行ったが3機しかいなかったことと、SBDドーントレスの後部座席に備え付けられた12.7ミリ機銃の弾幕によって撃墜できたのはたった6機だった。


エンタープライズ隊の先頭はぐんぐん高度を下げ、加賀から撃ち上げられる25ミリ機銃弾を横目に見ながら1000ポンド(454キロ)爆弾を投下した。

後の2機も計3発が至近弾となり命中しなかったが、4番目のギャラハー大尉の爆弾が後部甲板に命中した。

後部甲板には第2次攻撃隊が並べられており次々と誘爆を引き起こしたちまち甲板は炎に包まれた

パイロット達は急いで脱出を試みるが、爆発に規模が大きく吹き飛ばされるか焼かれるかの運命をたどった。

更にその後も3発が短時間で命中し、格納庫内も爆発による破片と爆炎に染め上げられた。

人員の被害は甚大で、ほとんどが即死だろう。腕を失っても生存者はいたが。

そして、燃料タンクの誘爆により艦橋もふっ飛ばされた。


「各所報告急げぇ!!」

「第1格納庫応答ありません!!」

「消火いそげ!!」


艦橋を吹き飛ばされても、生存した職員達は指揮系統を維持し続けようと奮戦する。

仲間の屍を足元にしながら。


続いてヨークタウン艦爆隊17機が蒼龍を狙った。蒼龍は必死に弾幕を張ったが、3発目で捕まった。

中央エレベーターに命中した爆弾はエレベーターを貫通し格納庫内で爆発。


「誘爆するぞぉ! 急ぎ退避!!」


爆発した爆弾は艦載機の誘爆を引き起こし、作業員をバラバラに引き千切った。

更に誘爆はエレベーターを発艦中だった零戦と共にふっ飛ばした。

続いて2発が命中。蒼龍も加賀と同じく爆炎に包まれた。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


赤城では最初にやられ艦橋が吹っ飛んだ飛龍を見て南雲が絶叫していた。


「多聞、多聞丸ぅぅぅ!!!いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!いや、死なないで……お願いだから私を1人にしないでぇぇぇ!!!!」


南雲はその場に泣き崩れた。幼馴染みが爆発によって死んだ。

届きそうで届かない距離でだ。彰はその姿を後ろから見ることしかできなかった。未来の世界では突然の事故か病気、最悪のアクシデントがない限り知人が、友人が簡単に死ぬなんてありえないからだ。彰は戦争を甘く見ていた。


「うっ、うっ……いやだ…、いやだよぅ……多聞丸ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

「長官!お気を確かに!!指揮をしなければ、被害は拡大します!」


草鹿が何とかしようと言ったが、


「貴女に何がわかるのよ!!こんな近いところで!大切な人が!死んだのよ!!!どうしてわかってくれないの!!!」


言い終わったと同時に蒼龍も爆発を起こした。艦載機が空中に吹き飛ばされるのが見えた。


「あ、ああぁ……。」


南雲は泣きながら蒼龍を見た。加賀と同じだ。甲板が炎に包まれていた。


「いや…いやよ……そんな、皆が…。」

「あんた!」


南雲に怒鳴りかけたのは彰だった。


「しっかりしろ!何とかしないと、余計に被害が大きくなるぞ!!!」

「あ、あぁ……。」


南雲は既に精神的に崩壊を迎えていた。彰は舌打ちすると南雲を抱きかかえ艦橋から出ようとした。


「貴様!どこに行く気だ!」


草鹿が止めに入った。


「この赤城もやられるぞ!まだ敵はいる!ここでこいつを死なせるわけにはいかない!」

「まだ来ると決まったわけでは……」


草鹿が言いかけた時、確かに報告は入った。


「敵機直上!突っ込んでくる!!」


赤城艦橋はお通夜のように凍りついた。


     ――――――――――――――


赤城を狙ったのはベスト大尉率いる4機だった。


「あのでかいのをやるぞ!!」


ベスト大尉は部下に命じると突撃を開始した。

高度6000メートルからのダイブは7Gにもなる。何秒たっただろうか。ベスト大尉は爆弾を投下する。


ベスト大尉の放った1弾は至近弾となったが、後に2発が命中した。飛行甲板に並べられた第2次攻撃隊は誘爆を引き起こし、格納庫内で爆発した爆弾もまた作業中の航空機を作業員と共に粉々に引き裂いた。

甲板は火災で覆われ、至るところに機体の残骸と死肉が散らばる。

格納庫内はもっと酷く、体の一部がごろごろと転がった。


たった6分の出来事。この6分が、日本を劣勢へと持っていった。彰は、その現場を赤城のラッタル(階段)から目撃したのだった。


Fin



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