②~長女視点~
気づいてー…。
貴方を想う。
大切な人の気持ちをー…。
気付きたくなかったの。
うんん。
気付かないといけないと思った。
彼に向ける彼女の悲しい視線をー…。
リビングにいるのは私と直樹と麗の三人だけ。
翔は町内会の集まりに出かけていて末っ子は遊びに行った。
「杏奈ちゃーん!」
「なに?直樹」
「俺、杏奈ちゃんが一番好き!」
嘘つき。
うんん…違うよ。
貴方は、自分の本当の気持ちに気づいていないだけ。
「杏奈ちゃんは、俺のこと好き?」
「……もちろん」
少し間をあけて私は答えた。
だって、こんな所で麗の前で言ってもらいたくなかったから。
「ねぇ、2人とも。イチャイチャしないで。少しは家の片付け手伝ってよー…」
「えー…。だって、今日の当番は麗でしょ?一人でやれば、いいじゃんか」
麗の表情が、少し暗くなる。
けど、私の隣りにいる直樹は気づいていない。
「そんなこと言わないの。…ほら。直樹も、麗のお手伝いをしてあげて」
「えー…」
「えー…じゃないの。分かった?」
こんな時だけ、お姉さんぶるなんて最低だよね。
「ー…わかったよ。そういう、杏奈ちゃんは手伝わないの?」
直樹の素朴な質問に。
「私?私は、今から町内会の集まりなの」
と、見え見えの嘘を言い。
直樹と麗から距離をとって私は外へと逃げだした。
「え?町内会の集まりってさ、翔くんが行ってたよね?麗」
「うん、そうだけど。どうしたんだろう?お姉ちゃん」