雨の日には・・・
ワタシは、雨の日が好きだ
それは好きな人とずっと一緒にして居られるからだ
窓辺で雨脚を眺める彼女の腰に腕を回して抱き付く
「何見てるの?」
すると、ワタシの言葉に彼女が振り向いて応える
「今日の雨はどれくらい続くかな~?って」
彼女は微笑みながら言葉を続けた
「一日中雨が続いたら、それだけしゅーと一緒にいられるから」
臆面もなく、そんな事を言う彼女に、ワタシは彼女の赤く潤った唇にキスをする
「・・・ん、ちゅっ、ん、はぁ、はぁ、はぁ、・・・」
上気する呼吸を整えて、恥ずかしそうに顔を赤らめて頷いた彼女はとても愛らしく可愛いと思えた
ワタシも彼女の体を抱き寄せて耳元で囁く
「景子は可愛いな、もっと独り占めしたくなる・・・それくらいに可愛すぎて、もっと景子を欲しくなる」
彼女はワタシの言葉に顔を更に赤らめる
あぁ、やっぱり可愛すぎる
でも最近はヒドく、それが卑怯に思えた
景子と知り合ったのは、まだワタシ達が学園の幼稚舎にいた頃・・・
景子が共働きの親を待つために、幼稚舎の教室で独りきり残っていた所をたまたまワタシが見つけたから
それまでワタシには、彼女が他の景色と同じ様に見えていたから
彼女は教室で独りきりなのに、寂しそうにせず、楽しそうにご両親が来るのを待ちわびていたのだ
何故か、ワタシはそんな彼女が輝かしく羨ましいと感 じてしまい、気が付けば彼女に話し掛けていた
それからワタシは親を待つ彼女と一緒にその 時間を過ごすようになった
景子は寂しいとは一度も言わなかった
それどころか、彼女はいつも楽しそうに両親 の話をする
そしていつも屈託のない笑みで言うのだ・・・
“パパとママがいちばんすき”
そんな景子にワタシはいつも心を揺さぶられ ていたのだ
ワタシはいつも景子を思い続けている
それは、今もそうだ
彼女はそれを知ってか知らずか、ワタシの傍 に居てくれている
ワタシの“好き”や“愛している”という言葉 は、彼女にとって意味が違っているのかもし れない
それでも、今ワタシを受け入れてくれる彼女 にワタシは恋しているし、愛している
これだけは彼女にさえ否定できない揺るぎな い事実だ
「しゅー、一緒に寝よ?」
部屋の窓から雨が降るのを眺めて物思いに 耽っていると、彼女がワタシの二の腕に抱き つきながらそう言った
「うん、一緒に寝よう」
彼女は卑怯だと思う
彼女の一挙手一投足にワタシは一喜一憂して しまうから
・・・今日は、まだ雨は止まない