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ふざけたヤツらと異世界生活

作者: 星猫侍
掲載日:2026/01/24

異世界召喚系です。頭使わないで読みてえ! という人にオススメかもしれません。

「あ、落ちた」


 それが俺の人生の転換点だった。とても受け入れ難いのだが。


 授業中、愛用の『MON〇消しゴム』が手からすってんころりんと滑り落ち、見事床へ着地。身を傾けるように腕を伸ばし、無事拾う──ハズだった。




 ──あれ?




 指先が触れたのは埃っぽい教室の床でもなく、消しゴムを拾おうとして、偶然触れ合っちゃった女子の指、とかでもない。

 こりゃ石だ。ざらついた、あんま強く擦ると普通に血がでてくるレベルでざらついた地面の感触。

 顔をあげると、既にそこは教室ではなかった。薄暗く、そして何より──死ぬほど散らかった部屋。汚部屋だ。

 ふと足元を見ると、チョークで適当に描かれた『魔法陣』っぽいものがある。どうやら俺は今、その円の中心に跪いているらしい。


「…んだ、これ」


 と思わず言葉を発した直後に一つの単語が頭に叩きつけられる。


 ──『異世界召喚』という、馴染みのある単語だ。


 誰もが一度は夢見るシチュエーション。目の前には、白髪の髪をなびかせた! 豪華な杖を持った! とんでもない美少女が! 「ようこそ勇者様」とこちらに微笑みかけ──


「ああ、来たわ。意外と簡単に捕まるもんだね。ズズズッ、ズズッ」


 現実とは非常に非情である。思わず耳を疑った。穴をかっぽじった。

 声のする方向にいたのは、椅子にふんぞり返ってカップ麺(カレー味の匂いがする)を食べている女だった。上下あずき色のジャージに、ボサボサなミントグリーンの髪。そして何より俺の目を釘付けにしたのは、




 ──『大賢者りゅーな』




 と書いている、胸元に貼られた紙切れだ。セロハンテープで無造作にとめられている。

 待ってくれ。これ何? なんなの? 何が起きてんの? 誰だよ大賢者りゅーな。手書きだし。あと字ィ汚ったな。


「……あのー、すんません。それってツッコんでいいやつで?」

「んー? あ、これ? こりゃ威厳を可視化するための古代魔法の触媒だよ。読めるかな。だいけんじゃ、りゅーな」


 何言ってんだコイツ。と危うく発してしまうどこだった。


「文字はバッチリ読めるんすけど……いやっ、それよりもまずここってどこどすかね」


 俺の問いを、目の前の自称・大賢者はスープと共に飲み干した。


「ここ? 異世界。そんで君は、りゅーなちゃんに召喚された『弟子兼、荷物持ち兼、小間使い』の少年。名前は?」


 状況が飲み込めないけど、なんか無性に殴ってやりたい気分だ。なんでだろうな。


「俺はー、天野奏です」

「よし、アマノ。早速で悪いんだけどね、チュートリアルはササッとクリアしてもらうよ。ステータスを確認しよっか」

「ここ、ステータスが見えるタイプの異世界なんですね」

「ステータスが見えるタイプの異世界だよ。ちなみにキミを呼ぶ時にはね、私の大切なポテチを三袋も犠牲にしたんだよ」


 ポテチ対価とか俺絶対弱いじゃん。三袋もってなんだよ。俺が家から五分で手に入れられるレベルのもんじゃねえか。

 と文句を言いつつ、自称・大賢者に教わった通りに、「ステータス」と声に出した。なんか気恥ずかしい。

 目の前に、ソレっぽい画面が出てくる。




【名前】天野奏 アマノ・カナデ

【職業】大賢者りゅーなの小間使い(になる予定)

【スキル】注釈


 このステータスふざけてんだろいい加減にしろ。俺に小間使いになる予定なんてNAI!


「…てか、注釈…スキル?」

「お、いいね。なんか便利そう。こう、補足説明とかできるかんじ?」

「なんでそんな他人事なんす?」


 スキルって結構大事じゃない? 異世界において今後の生き方に大分関わってくるものだろ。注釈? なにそれ。

 既に最弱レベルのスキルだと断定してるが、実際に使ってみないことには何も分からない。試しに、椅子にふんぞり返っている自称・大賢者に使ってみる、と。




【自称・大賢者りゅーな】

※昨日から風呂に入っていない




「…うわぁ」

「な、何その『汚物を見る目』! 今失礼なこと考えてるでしょキミ!」


 視界の隅っこに小さな文字が浮かび上がってきた。どうやらこのスキルは、「見たくない現実」を突きつけてくるタイプらしい。

 しかも自分のステータスをよく見ると、こんなことが書いてあった。




 ※成長はするけど、最強にはなれませんっ




「…これ、帰っていい?」

「無理。チョーク使い切ったし。てかダメ。あとアマノ、そこのゴミ後で出しといてくんない?」


 俺の異世界生活は、感動も伝説の武器もない、一枚の紙切れを胸に貼った、残念な女の「ゴミ捨て」から始まった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「いや認められるかあこんなん」


 俺は異世界に来て初のクエスト、『裏庭へのゴミ出し』に挑みながらそう呟いた。

 冷静に考えて。いや冷静に考えなくても訳の分からんことこの上ない状況だ。俺は数分前まで教室の椅子に鎮座していた身だぞ。なんで素性の知れない人のゴミ捨てをやらされているんだろう。


「てか……重ッ、なにが入ってんだよこれ」


 自称・大賢者ーーりゅーなに渡された指定ゴミ袋の中身は、怪しく発光する液体の瓶や、カビの生えた謎の肉。そして大量のカップ麺の空き容器だ。はっきり言って最悪である。


「アマノ、気をつけてね。それたまに自我を持って逃げ出すことあるから」「ゴミが逃げ出すって何!? そういうのちゃんと分別して!」


 はいごで「んあーポテチ食べたーい」と叫ぶ自称・大賢者の言葉を無視し、俺は裏庭の集積場(という名のただの穴)へ向かった。

 裏庭へ、つまりこれが異世界初の外の景色を見る瞬間なのだ。が、見えるのは雲一つない青空と申し訳程度の、なんか草っぽいやつ。周りが塀で囲われているので見える範囲が限られすぎている。

 異世界転生ものの、初めて景色を見る瞬間ってのはもっと感動的なシーンになるはずなのに。俺感動もクソもないんだけど。シチュエーションも見える光景も終わってる。大空よりも手元にあるゴミのほうが視界を占めている割合が高い。


「はあ......色々謎すぎる。俺が選ばれた理由とか....そもそも俺なんでこんな冷静でいられてんだ。まあ異世界転生系の主人公ってみんな割と軽い性格だし。こんなもんなのかな。もう知らんッ」


 ヤケクソ気味に独りごちり、ゴミ袋を穴へ投げ捨てようとした瞬間、

 ーーゴミ袋が「ビクンッ!」と大きく跳ねた。手首が連動して荒ぶる。


「うわあっ、待て本気で動いたんだけど!?」


 とっさに手を離し高速で後ろへと後ずさる。警戒レベルをマックスまであげてしばらく見ていると、ゴミ袋を何かが突き破って出てきた。

 それはそう、説明したくないくらいキモい見た目をしたものだった。そこにいたのは、ドロッどろに溶けたカップ麺の残骸と、謎の液体が混ざりあった「何か」だ。

 キッモ。ビジュアルがかつてないほどに最悪だ。真剣に誰かモザイク入れてほしい。あっ、また視界になにか文字が出てきた。あれか、注釈ってスキルのやつだ。



 名称:カリー・ヘドロ・スライム

 *りゅーなが三日間放置した食べ残し

 *めちゃくちゃ辛い


 目の前の閲覧注意物体の正体はスライムだった。スライムはカレーの匂いを撒き散らしながら、俺の足元へジリジリと近づいてくる。意外にもそこまでキツイ匂いがしないのが唯一の救いか。

 とは言ってもどうすんのこれ。戦闘能力とか皆無なんだけど。こいつの見た目的に、多分攻撃を食らっても死なない。ただ一生カレーの匂いが取れなくなるという絶望的な予感がする。


「倒す.....やつだよな多分! 武器とか何もないんだけど! りゅーなーーッ、大賢者(笑)りゅーなさーーーんッ」


 と部屋にこもっているりゅーなに呼びかける。そしてのそのそと歩きながら出てきた。早くしろ。


「呼ばれて参上大賢者〜。てことで、何かあったのかなアマノくん」


 髪をかきあげながら、無駄にリズム感のいいセリフとともに近づいてくる。こっちからなにか言う前に、りゅーなの視線は足元のスライム(カレー味)へと向けられた。「うげっ」と心底嫌そうに眉間にシワを寄せているが、これお前が生みの親だからな?


「ほら、りゅーなさんが言ってたみたいにゴミが自我持ち始めたんで。しかも襲ってきたし、なんとかしてくださいよ!」

「ええ、ううん.....」


 と腕を組み何かを考える素振りを見せる。スライムがもうそこまで来てんだよ。何をしてんだよ。お前が始めた物語だろ。


「.....アマノ、モンスター退治も、立派なゴミ捨てだと思わない?」


「は?」


「ゴミってのは、放っておいていいもんじゃないだろう? だから捨てて、空間をきれいに保つんだ。魔物退治も同じ。放置しておけば、私達に害をなす存在だ。だから倒すよね」


「うん」


「つまり、ゴミ捨ても魔物退治も同じ。イコールの関係で結ばれてるんだ。そして私は、キミにゴミ捨てをお願いしたよね」


「まあ」


「だから、そのゴミ袋出身の魔物退治は、キミの仕事だあね」


「難易度に差がありすぎるでしょうがあ!」


 自称・大賢者の長い理屈を耳に通して、思わず叫んでしまったが。いやいや何がイコールなんす? ゴミ捨ては3・2・1ポイッで終わるけど。魔物退治ってのは3・2くらいで反撃してくんだよ。ベリーイージーとハードなのっ!

 りゅーなは渾身のツッコミを気にする素振りを見せず、何故かドヤ顔をしている。完璧なロジックを説いてやったとでも思ってるんだろうか。胸元に貼られた紙切れが風でなびいている。カッコよくはない。


「生身の俺じゃ厳しいもんがありますって!」

「そんなことはないよ。これスライムだろ? 超低級モンスターだ。子供が棒切れ使って倒せるレベルなんだよ。大丈夫、キミにはなにか才能がある気がするんだ」


 適当言ってるな。コイツを武器にしてやってもいいと思い始めてきた。


「それにアマノ、自力でモンスターを倒せば、ステータスが向上するかもなんだよ」

「ステータスがって.....レベルアップ的なもの?」

「そうっ。モンスターを倒せば経験値が入りレベルアップに繋がる。こんなの常識的な話だけど、キミも当然知ってたみたいだね」


 まあゲームなんて腐るほどやってきたし。1+1と同じくらい身についた知識だ。でも、ここの世界って面白いな。

 ステータスって概念があることだ。異世界転生系、ステータスの概念があるやつはよく見る。でもよく考えてみれば、ゲームの世界ってわけでもないのに"レベルアップ"なんて要素が存在しているのは、不思議な感覚になるというか。

 これも全部「異世界だから」で済む話なんだろうけど。てか、スライムのこと長らく放置してね?


「.......」


 待っててくれてるーっ。プルプルしながらお利口さんにしてるわこの子。とっくに靴くらいにはついててもおかしくないのに。超低級モンスターとは思えないくらい賢いんですけど。


「....わかりましたよ、俺がやってみます。ただその、なんか武器の一本くらいは欲しいなーって」

「まあ、素手で倒すってのは嫌だよね。ゴミを鷲掴みするのと同じくらい汚いんだし」


 そう言い、庭の隅っこへと歩いていった。よく見ると、そこには掃除道具入れみたいな棚が。ガサゴソガサゴソと何かを探り、やがて何かをゲット。その手には、無駄に超きれいなホウキがあった。高級品レベルの輝きを持っている。なんで?


「そんなキミにはこれ、どんなホコリも逃さない万能ホウキだよ」

「それで戦えと」

「さっき言ったろ? スライムは棒切れで簡単に倒せるんだ。これでも十分戦力になるの」


 りゅーなが無造作に投げたホウキをなんとかキャッチし装備する。近くで見ると、更に高級感が増すな。


「さっ、一発良いの食らわせちゃいなよ」


 俺は足元のスライムから距離を取り、その姿をしっかりと捉える。大きく深呼吸をし、さながら剣道部主将のような気迫を放つ姿はまるで


「アマノまだー? もしかして、ビビってる?」


 今いいとこだっただろ邪魔するんじゃないよ。頭の中では凄くカッコいい俺が出てきてたんだよ。


「ビビっってんじゃなくてこれは集中ッ」


 大きく腕を上にあげ、スライムの脳天(っぽい場所)目掛けーー



 ザシュッ



 と音がなったかと思えば、見事攻撃を食らったスライムは真っ二つになっていた。本当に超弱かったらしい。

 一刀両断されたスライムはやがて眩い光に包まれ、光の粒となり消えていった。


「無駄に神秘的ー...」

「おっ、初戦闘にして初勝利。やるねえアマノ。やっぱキミには才能が」

「だからそれ適当言ってるよな」


 そのとき、「ピコン」と謎のシステム音がなった。どうやらりゅーなにも聞こえていたらしく、


「今のは....」

「うん、レベルアップの音だね。レベルが2になってるはずだ」

「これ周りにも聞こえる感じなんだ。なんかやだな。ミュートしたい」


「いいから確認してみてよ」とりゅーなに促され、ステータスを開く。と、



【名前】天野奏 アマノ・カナデ Lv2

【職業】大賢者りゅーなの小間使い

【スキル】注釈 "可能追記文字数 5文字"



「可能追記文字数.....? 5文字.....これなに...?」


 てか待て。職業にも変更入ってるって。さっき見たときは (予定) って書いてただろ。認めん、こんなの認めんぞ!

 りゅーながステータス画面を覗き込むと、ほうほうとわかったような独り言をこぼす。


「なるほど.....これはつまり、自分で書き換え可能ってことだね」

「書き換え? それってどういう」

「キミの持つスキル"注釈"は、対象の補足説明を表示してくれるものだろう? そのときに浮かび上がってくる文字を、自分で追加して書き加えられる.....みたいな能力じゃないだろうかッ」


 人差し指を上げ、それらしい説明をするりゅーなだが、そんなことあり得るのか? だって....


「....それ、めっちゃ強くね?」

「強い。なにかしらの制限はありそうだけど、理を書き換えるような力だ。キミは私が思ったより、逸材みたいだね」


 目をキラキラとさせ見つめてくる。俺も予想外の展開に、少しテンションが上っていた。本格的にはしゃぐのは、試しに使ってみてからだな。よし。


「....じゃありゅーなさん、アンタに使ってみる」

「えっ、私に? ま、まあいいだろう。キミのことだ。きっといい感じに書き加えてくれるに違いない...」


 まさか自分に来るとは思わなかったのか、少し動揺している。でも容赦はせん。文字を書き加える感覚....おお、なんか直感でできる! 頭の中で文字を表示させるイメージで.....



【自称・大賢者りゅーな】

 *昨日から風呂に入っていない "体幹雑魚"



「....これで、いけてるのか...?」

「できたかいアマノ! サプライズ性を重視して、私は目をつぶってるんだけど」

「ああ、多分できました。一回試してみていいですか?」

「じゃあ目を開くよ! さ、キミは一体どんなことをー」



 ーートンっ



 それは本当に、本当に優しい力だった。りゅーなの肩あたりを、まるで赤子を扱うかのような力で.....だがしかし、


「ーーえっ」


 りゅーなの体が羽のように軽やかに浮かび上がり、「ドサッ」と音を立ててその場にすっころんだ。これ....これマジか.....これマジか....!


「すごい....すごいぞこの注釈スキルー!」

「いったあ....ちょ、ちょっとアマノ!? なに書いたの、なんて書いてるのーっ! お、おしりがあ....っ」


 大はしゃぎをする俺と、尻餅をついて涙目になっているりゅーな。はたから見れば、俺が泣かせたような構図に....違うな。実際に俺が泣かせてるのか。だってこんな効果あるとは思わなかったし。スキルの正体を突き止めるための尊い犠牲ということにしておこう。


「りゅーなさんの言ったとおりだ。補足説明に自分で書き加えられる。ちなみにりゅーなさんのとこには、体幹雑魚、と書いてみた」

「なあ....っ!? た、ただでさえあまり良いとは言えない体幹に、更にデバフを.....!? アマノ....恐ろしい子....!」


 りゅーなはお尻をさすりながら立ち上がり、ふうっ、と一息吐く。そして不意に顔を近づけてきた。りゅーな、顔は整ってるけど何故かドキドキしない。これが残念な美人か。


「....アマノ、キミは私の小間使いで収まるには惜しい人材だ。想像以上の力と冷徹さを持っている!」

「冷徹なのは多分りゅーなさんにだけ」

「そこで! キミにはもっと広い世界を見てほしい....と今思い始めてきた!」

「今なんだ」

「うん。本来はずっとここに閉じ込めて、一生こき使ってやろうとしてたし....」


 え、監禁?


「....それで、広い世界を見てほしいってのは?」

「うむ、この世界において、各地を歩き回る職業.....つまり、キミには冒険者になる資格がある! 小間使い兼冒険者、ね」


 "冒険者"。やっとぽい職業が出てきた。


「おお....冒険者! 小間使い兼は気に食わないけど、テンションが上がるな〜」

「気に食わないと聞こえたけど、聞こえなかったことにするよ、いいね?」


 りゅーなは背を向け、振り向きざまに指を突きつける。


「冒険者になるなら然るべき場所へ行って登録を済ませる....そしてその然るべき場所は、王都の中に存在する!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺が召喚された場所は、"王都アルヴェルギア"というらしい。かっこいい名前だ。気に入った。

 真っ白な城壁に、幾度にも重なる青い屋根たち。いわゆる、「The・異世界」な大都市。街の中心には威風堂々とした王城がそびえ立ち、石畳のメインストリートには活気ある市場と、たくさんの人々。


 ....という景色を、俺達は見下ろしていた。りゅーなの家、崖の上にあるみたい。


「王都アルヴェルギア。この国で一番栄えてる場所だよ。まあ家賃高いから.....うちは端っこのスラム寄りだけどね」


 りゅーなの言葉通り、輝かしい王都のイメージと、俺が今立っている「名札を胸元に貼った女のゴミ屋敷」

 とのギャップが、この街の格差を物語っていた。


「ああ、まさか崖の上にいるとは思わなかった.....で、冒険者になるにはやっぱギルド?」

「言うまでもないでしょ」

「そうですね」


 ここはお決まりなので割愛。

 にしても、この街かなりデカいな。流石は国最大の王都。一瞬で迷子になる自信が湧いてくる。


「ねえりゅーなさん。俺は当然ギルドの場所を知らないとして、りゅーなさんはちゃんと場所わかってるんすよね」

「もちろんっ。私が何回この街中を逃げ回ったと思ってるの?」

「逃げ回るって何?」


 なにやら良からぬ予感がするので、深く聞くのはやめよう。大体想像はつくけど.....


「私にちゃんとついてくれば大丈夫。はぐれないように、手を繋いであげよう」

「いやそれはいい」

「え」


 何故か不満そうなりゅーなを背に、俺は下へと続く坂を歩き出した。異世界生活、初の王都へ降り立つときだ。



 ────────────



「ほらアマノ、シャキシャキ歩く! 冒険者は足腰が命だよッ」

「一番足腰弱そうな人がなんか言ってるわ」


 俺たちは今、王都アルヴェルギアのメインストリートを歩いていた。石畳の道は美しく、並ぶ露店からは香辛料や焼きたてのパンのような匂いが漂う。行き交う人たちも冒険者やら猫耳やらで、本当に異世界に来たんだと実感させられる。

 そんな感動を全てぶち壊す存在が目の前にいるわけだが。


 あずき色のジャージ。ボサボサの髪(ミントグリーン色)、そして胸元で誇らしげに揺れる『大賢者りゅーな』と書かれた紙切れ。

 すれ違う人達は皆二度見…いや多分五度見くらいはされてんなこれ。そして最後には「関わったらダメなヤツやわ」と目を逸らしていく。


「…ねえりゅーなさん。その紙切れくらいはせめて剥がせないすかね。街の人の視線が魔王軍の攻撃よりも刺さってまして」

「バカ言わないでよアマノ。これが私のアイデンティティなの。これがないとただの『昼間からうろついてる美人』になっちゃうでしょ」

「紙切れがあるとうろついてる変人になるんだよ」


 くそっ、周りからの視線が痛い。こんなの歩く呪いみたいなもんだろ。美人顔じゃまかなえないほどの影響を食らってんだよこっちは。

 高校の制服を着て歩く俺と、ジャージを着て歩くりゅーな。部活の部員とそのマネージャーのようにも見えるこの構造.....てか待てよ。俺は学校から不意に連れてこられたから制服なのは仕方ないとして。


 ーーなんでコイツジャージ着てんの?


 何故かなんの違和感もなくここまで来たが、異世界転生で初めて会うキャラクターがジャージってなんだよ。異世界感あるの髪色だけだよ。その他全部日本の学生だよ。なんだよこれ。コイツも実は転生者説がかなり濃厚なんだが。


「りゅーなさん、一つ質問が」

「なんだアマノ。この大賢者りゅーなちゃんに何でも聞いてみんしゃい」

「この世界の大賢者って服ジャージなの?」

「ピタッ」


 え? 今わざわざ声に出して「ピタッ」って言った?


「.....な、なにか問題が」

「いや、ジャージって言うと俺がいた世界の服装だろ。日本からの転生者が着てるってならわかる。でもりゅーなさんは大賢者を名乗っているにも関わらず、大賢者には似つかわしくないカッコウだ。つまり、」


 一度言葉を切り、「ビシッ」とりゅーなへ指さした。


「りゅーなさん、アンタも俺と同じ転生者何じゃないかって話だ!」


 顔に影を作り、ハッキリと断言するその姿はまるで名探偵。某頭脳は大人タイプの探偵にも劣らない気迫を持っていたことだろう。

 だが、りゅーなの反応は俺が思っていたようなものではなかった。首をコテンと傾け、心底不思議そうな表情を浮かべ見つめてくる。


「何言ってんの。私はずーっとこの世界の住人ですけど」

「え」

「異世界だからって、何でもかんでも違うわけじゃないの。たまたま似たような服装があったってだけ」


 淡々と真実を述べるりゅーなに、俺は拍子抜けしたような顔になってしまっていた。ジャージに似ているのはたまたまで、転生者ではないと.......。死ぬほど納得できん。さっき、たしかに謎の間があったのに。そんな俺を気にすることなく、りゅーなはスタスタと歩いていく。


「変なこと言ってないで、早くギルドに行くよっ。キミには私の小間使いとしての格を上げてもらわないといけないからね」

「随分と不名誉な誘い文句だな」


 軽口を叩きあいつつ、素直についていくことに。この自称・大賢者の正体は、これからゆっくりと解き明かしていくことにしよう。俺の異世界生活で、初めて明確な目標ができた瞬間だった。





 あれから数分歩き、俺達はついにお目当ての目的地。冒険者ギルドっぽい場所の前にたどり着いた。今目の前に広がるのは、重厚な石造りの大階段。そして竜と剣が交差する高価そうな紋章を掲げた建物だ。これだよこれ! こういうの待ってたんだよ! わかってんじゃねえか異世界。後で褒美をやりたい。

 とか浮足立っていたのはつかの間の出来事。入口の前で、何やらただならぬ空気が漂っていた。


「ーーですから、私は一人でも行けると申しているのです! わかりますか!」


 凛とした、鈴を転がすような声。そこにいたのは、透き通るような白髪を切りそろえた、一人の美少女だった。フード付きのローブを羽織り、腰には細身の剣.....レイピアとか呼ばれてるやつだろうか。とにかく高潔な雰囲気をまとっている。

 彼女は、入口を大岩のように塞ぐガタイのいい門番に詰め寄っていた。


「だから、だめなもんはダメなんだよお嬢ちゃん。いくらアンタでも、"バニーベア"の討伐なんて許可できねえ。一人で挑むなんて無謀にもほどがあんぜ」

「ぐっ.....ぱ、パーティーならそのうち見つかります! 今はともかく、実力を証明するのが先決!」


 おお、これぞファンタジー。頑固な美少女騎士に、強固なベテラン門番。俺はワクワクしながら、隣の自称・大賢者に小声で聞いた。


「なありゅーなさん。あの美少女只者じゃなさそうだけど、何者?」

「ああ、あの子はシルフィア。見た目はいいんだけど、ちょっとねえ....まあ、見た目はどちらかというと私のほうが」


 りゅーなの言葉を無視し、俺は彼女ーーシルフィアにスキル注釈を飛ばしてみた。



【白髪の剣士・シルフィア】

  ※極度の方向音痴。ギルドのトイレに行こうとして、三回ほど隣町の森まで行ったことがある。

  ※今、ものすごくお腹が鳴りそう



「方向音痴なんてレベルじゃねえぞおい」


 思わず口から言葉が溢れる。どうやら彼女も、美人の皮を被った変人らしい。これは多分、まっすぐ歩こうとして異次元に片足を突っ込むレベルの迷子マスターだ。

 そこへ畳み掛けるように、


 ぐぅ〜〜〜〜…


 と、静まり返ったギルドの前に、情けない音が響き渡った。

 門番の男が「今の、アンタか?」というような目でシルフィアを見る。彼女の顔は、髪の色と同じくらい真っ白になったあと、茹で上がったタコのように真っ赤に染まった。


「ちっ、違います! 今のはっ、大地の鳴動。すなわち予兆なき地震! わかりますか!」

「分かんねえよ無理があるだろ!」


 あ、と思ったときにはもう遅い。俺が思わずツッコむと、シルフィアがバッとこちらを振り向いた。その視線が俺を通り越し、横にいるジャージ姿の女の胸元ーー『大賢者りゅーな』の紙切れに釘付けになる。


「……え、え? 大賢者、様…? な、なんですかその神々しい(?)名札は……!」


 は? コウゴウシイ? これが? どうしよう、この世界の美少女全員こんな感じ?

 隣にいるりゅーなは満足気な笑みを浮かべている。


「神々しいだって。いい審美眼を持っているよシルフィア。アマノも見習った方がいいよっ」

「わ、私の名前を知っているのですか!」


 シルフィアはさっきまでの口論に興味を失ったように、りゅーなのもとまでスタスタと駆け寄ってきた。取り残された門番の男はポカンとした表情をしている。


「もちろん。だって私は大賢者だからね!」

「お、おお……! 流石です大賢者様! えっと、お名前はりゅーなさんでよろしいのですか…?」

「うんっ。そしてこの男が、私の小間使いアマノ・カナデくんだよ」


 やめろ、小間使いで紹介するな。


「小間使いとかじゃないけど…アマノ・カナデです。こんなナリだけど、冒険者目指してて」

「いえいえ! 小間使い…つまり、大賢者様に最も近しい高貴な位の方ということですよね。すごいです、カナデさん!」


 キラキラとした瞳で二人を交互に見るシルフィアは、まるで憧れの存在を目の前にした子供のようだ。これじゃ否定するのも申し訳なくなってくるレベル…。


「ありがとう…?」

「カナデさん、冒険者を目指すということは、これからギルドに行くんですよね」

「そうだな、うん」

「せっかくですから、私がご案内いたしましょうか! これも何かの縁だと思って!」


 お、案内イベント。俺が返答をする前に、りゅーなが一つ質問をした。


「大丈夫なの? 今なんか忙しそうじゃなかった? バニーベアがなんちゃらみたいな」

「あっ、あぁ…。それはひとまず後にします。 そんなことよりも、大賢者様に会えたことの方を優先したい! わかりますか!」

「わかる、わかるよーその気持ち」


 謎に意気投合し始めてやがる。本人は良さそうなので、お願いすることにしよう。


「じゃあシルフィアさん、案内頼むよ」

「はい! では中に行きましょうか! 着いてきてください!」


 いよいよ異世界初ギルドの時間か…テンション上がるな〜、とか思ってたら。

 シルフィアの姿が見えなくなった。りゅーなはキョロキョロと辺りを見渡し、


「あれ、消えたんだけど。瞬間移動かな」

「いやだとしたら何でだよっ」


 左右を見てもどこにもいない。神隠しにあったのかと思いながら、ふと後ろを見ると。

 シルフィアはギルドと全く反対方向へとスタスタ歩き出していた。


「…は? この距離で方向音痴発動しちゃうの? ま、待って。シルフィアさーーーんッ!」


 なんの迷いもない足取りでどんどん離れていくシルフィアと、それを追いかける俺。その光景を、りゅーなは腹を抱えて笑いながら眺めていた。






あの後、なんとかシルフィアを連れ戻し、再びギルドの前へと戻ってきた。

 本人は申し訳無さそうに顔を赤くしていたが、可愛いので許すことにしよう。りゅーなも目に涙を浮かべながら、適当に慰めていた。


「す、すみません…私、とんだ方向うんちでして…」

「方向音痴な。言葉も迷子になっちゃってるから」


 今のところクセ強めな人しかいないな俺の異世界生活。でも、本格的に始まるのはここからだ。

 ギルドの扉に手をかけ、一つ深呼吸。意を決して、ガチャりと音を立てながら、ギルドの中へと入っていった。


 ギルドの中は、外の喧騒を三倍に濃縮したような熱気に包まれていた。高い天井に、無数に並ぶ木製のテーブル。ゴリゴリな身体をした男たちが、ワイワイガヤガヤとしている。

 奥の方へ目を向けると、カウンターのような場所があった。あそこが受付だろう。


「これがギルド…絵で見るよりずっと迫力あんな」

「『ギルドに訪れる』、実績解除だね」

「実績解除! それはつまり、新たな権能の目覚め…みたいなものですか!」


 違う。

 この茶番に付き合うとキリがないことに気づいたので、半ば二人を引きずるように受付の方へ向かっていった。

 たどり着くと、カウンターの奥には、作業を淡々とこなす一人の受付嬢がいた。彼女の顔には、「仕事したくない」というオーラがこれでもかと漂っている。

 顔をあげりゅーなの姿を捉えたとき、分かりやすく眉をひそめた。


「…出たわね。不法投棄女。また生ゴミでも持ってきたのかしら」

「失礼な。かなり失礼な。今日持ってきたのはゴミじゃなくて、期待の新人だよ。アマノ、ほら挨拶して」


 りゅーなに背中を押され、前に出される。受付嬢の冷ややかな…死にきった視線が突き刺さってきた。

 俺は慌てて反射的にスキルを発動する。



【受付嬢・ミラ】

 ※現在、14連勤中。心の中では、今すぐギルドを爆破して家に帰りたいと思っている。

 ※引き出しの中には、辞表を常備している。



「……アマノ・カナデといいます。あの、お疲れ様です。お体大切にしてくださいね…」

「えっ。な、なによ急に。変な子ね…」


 思わず敬いの言葉を放つと、ありがとうとは言わないが、ほんの少しだけ頬を赤らめた。

 ミラは誤魔化すように咳払いを一つし、本題に入る。


「アマノ・カナデくんね。新人ということは、冒険者の登録に来たんでしょう」

「はい、そうっすね」

「わかったわ。ならこの紙の欄に従って、個人情報を記入して。……って、そっちのお嬢さんは…」


 ミラは隣に立っていたシルフィアに目を向けると、複雑な表情を浮かべた。


「あんた、シルフィアじゃないの。またパーティーを追放されたの?」

「あぅ…っ! そ、それはその…私が少しだけ、目的地とは逆方向へ全力疾走してしまったせいで…」


 分かりやすく落ち込むシルフィア。耳があれば、しっぽがついていれば、全てシュンと垂れ下がっていただろう。

 そんなシルフィアの様子を、ニヤニヤしながら見ているものが一人。おなじみ自称・大賢者である。


「なるほど、パーティーを追放ねぇ…ま、とりあえずアマノ。パパっと登録済ませちゃおうよ。ほら手を動かして、頑張って字を書いて」

「分かってるよ。今頑張って書いてんだよ」


 待て。頑張るもなにも、俺このまま日本語で書いちゃっても大丈夫なの? 異世界には異世界特有の言語とかありそうじゃない? これ、日本語じゃ伝わらないんじゃない?


「…あの、りゅーなさん」

「なんだいアマノくーん」

「俺一応別の世界から来た人なんで、異世界の文字とか分かんないんすよ。だからこれ代わりに書いてもらうことって可能ですかね」


 りゅーなにだけ聞こえるようにコソコソと質問すると、りゅーなは不思議そうに首を傾げた。


「何言ってるのアマノ。キミは既に、異世界の言語をマスターしているよ!」

「へ?」

「よく考えてみなよ。キミ、普通にこの世界の人達と会話出来てるじゃない。召喚されたときにね、脳が自動的に最適化されてんの」


 マジか。つまり俺の脳みそには、万能な翻訳機能的なのがもう備えつけられてるのか。なんて都合のいい世界だ。ありがたいぜ異世界。

 なら、普通に書いても大丈夫なのか。個人情報を記入し、受付嬢のミラさんに見せると、


「はい。アマノ・カナデ、17歳。職業は……無職、と。好きな食べ物はソフトクリームのコーンで、好きな寝方はうつ伏せ窒息フォームで」


 書きながら思ってたけど絶対いらない欄あるんだよこの紙。寝方とか聞いてどうすんだよ。

 でもちゃんと伝わってたみたいで、安心した。


「……よし、登録情報はこれで大丈夫。次に、登録料として銀貨一枚、頂くわ」


 登録料。登録料か。なるほど。登録料?


「…りゅーなさん」

「なんだいアマノくーんその2」

「お金持ってます?」


 そう質問した瞬間、りゅーなの顔は一瞬で真顔に。少し俯き、顎に手を当て何かを考えている風なポーズを取る。

 やがてゆっくりとこちらを向き、


「……知ってるかいアマノ。大賢者ってのは、現金を持ち歩かないのが一般的でね」

「つまりめちゃめちゃ無一文じゃねえか」


 終わった。そうだ、コイツが金を持っている訳がない。無論俺も無一文=登録不可=ギルド追い出し確定。もうダメだおしまいだーッ、と頭を抱える俺の肩を、誰かがポンと叩いた。その手の主は、方向うんちのシルフィアである。


「カナデさん。聞かなくてもわかります。お金、無いんですよね」

「はい、ありません」

「で、でしたら! 私が代わりに、登録料銀貨一枚を払いましょうか!」


 どういうことだってばよ。


「シルフィアさんが代わりに? えーと…な、何で?」

「そ、それはですね…とにかく! 払いたいから払うんです! わかりますか!」

「わかんないよッ」


 この少女は数分前に初対面した男に、代わりに払ってやると言っているのだ。「ありがてェ!」という気持ちよりも、「え、なんでなん?」という気持ちの方がデカい。

 しかし自称・大賢者は違うらしく。


「ありがてェ!」

「うわーマジかこの人」

「シルフィア、やっぱりキミはただの冒険者じゃないって分かってたよ! 大賢者の目に狂いはないってね」


 偉そうに両手を広げるりゅーなを目にし、シルフィアはこくこくと頭が取れる勢いで頷く。


「はい! 大賢者様の小間使い様が困っているのを見て、誰が見て見ぬふりをできますでしょうか! 私が今から使う銀貨は、世界で最も光栄な硬貨となることでしょう!」


 なんだ小間使い様て。「小間使い」という不名誉な称号は「様」だけで挽回できないのよ。

 シルフィアは、俺が何かを言う前に銀貨を一枚、カウンターへ置いた。


「ミラさん。カナデさんの登録料は、私が代わりにお支払いします! 別になんの規約にも引っかかりませんよね!」

「え、ええ。本人たちがそれで良いのなら構わないわ」


「ここは私が!」と得意げな顔で見てくるシルフィアの姿に、俺は小さくため息をつき、表情を和らげた。なんだか段々と頼もしく見えてきたからだ。


「…じゃあ、頼むよシルフィアさん。正直かなり助かる。ありがとう」

「いえ、むしろ私から感謝をさせてください。払わせてくれてありがとう! と」


 感謝の方向性がよく分からないが、本人は満足気なので良しとしよう。

 受付嬢のミラは銀貨を受け取ると、カウンターの奥へと消える。数十秒後、A4サイズくらいの紙を持って戻ってきた。


「アマノさん、冒険者への登録が完了しました。これは登録が終わった証…のようなものです」


 渡された紙には、「今日から冒険者だね。おめでとう頑張って」的な内容が書かれていた。賞状みたいなものか。

 隣からりゅーなが紙を覗き込み、満足したように頷く。


「ふふ、おめでとうアマノ。これでキミも立派な冒険者だ」

「おめでとうございますカナデさん! そしてようこそ冒険者ギルドへ!」

「お、おう。マジでなっちゃったぜ冒険者…」


 俺が冒険者になったことをゆっくりと実感しているところに、シルフィアがパンっと手を鳴らし、俺とりゅーなの注目を集めた。


「と、早速なんですけど…少し、お二人に相談したいことが。い、いいですかね…」


 遠慮しがちに尋ねるシルフィアに、俺たちは顔を見合わせる。どちらからともなく頷き、促されるように空いているテーブルへと歩いていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

無事(?)冒険者登録を終え、俺、りゅーな、そしてシルフィアは隅っこにあるテーブルへと座った。

 隣にりゅーな、正面にシルフィアという構図。


「それでシルフィアさん、話ってのは?」


 そう質問すると、彼女は何故か肩をビクッと揺らし、気まずそうに目を泳がせた。


「え、ええとですね…見ての通り、私も冒険者をやっていまして。これまでに、そこそこの依頼数をこなしてきたんです」


 シルフィアは少し誇らしげに胸を張るが、その態度はすぐにシュンとしたものに変わってしまう。


「ですがその…私、引くほど方向音痴で…自分で自分が怖くなるくらい、本当にひどいんです。なのでパーティーメンバーにもすぐ怒られて、呆れられて…しまいには、追放される……というのを、これまでに何度も繰り返してきました」

「目の前に目的地があるのに、真反対に歩いていくぐらいだからな」


 今日初めてここに来た俺のほうが迷わない自信ある。この人今までどうやって生きてきたんだろ…?


「はい…そして現在も、パーティーを追い出され一人寂しく冒険中…。ですが…そんなとき、お二人が現れたんです!」


 身を乗り出し、さっきまでのテンションが嘘のように熱弁し始める。


「我々は冒険者ですから、依頼をこなさない限り稼ぎもない! 毎日毎日、その日の宿代ご飯代をギリギリ手に入れるのがやっとだ、という人も少なくはありません! わかりますか!」

「わかります」

「現状、私もなんとか自分だけでもクリアできる依頼を血眼で探して、その日その日をしのいでいる状態なんです。これは一人だから起きてしまう現実…しかし、パーティーを組めば話は360度変わってきます」

「先生、それ変わってません。戻ってきてます」


 ここまでのシルフィアの主張はこうだ。シルフィアは何度もパーティーをBANされ、現在も一人。そんな状態では、一日分の宿代やご飯代を手に入れるのがやっと。そんな時に、俺とりゅーなと出会った、と。つまり彼女が言いたいのはー。


「単刀直入にお願いします。私とりゅーな様とカナデさんで、パーティーを組みたい! 組みましょう! 組んだら絶対いいことがある!」

「勢いがすごいな」


 シルフィアの必死な表情を見る限り、マジでギリギリな生活をしてるんだろう。

 どう返答しようかと考えている時、ずっと黙っていたりゅーなが口を開いた。その顔は意地の悪い笑みを浮かべている。


「なるほど。さっきシルフィアがアマノの代わりに登録料を払ってあげたのも、これが狙いかなぁ?」

「ぐっ…それは……うぅ」


 図星。恩を売って、自分の願いを受け入れてもらいやすくする、という策略だったのだろう。方向音痴のくせに、こういうところじゃ頭が働く人物のようだ。

 だが別に彼女を批判しようとかは思わない。こっちとしては、登録料を奢ってもらった+パーティーメンバーというありがたい特典がついてくるようなものだ。俺のスキルは強そうだけど、まだ謎もある。そんで仲間が隣の自称・大賢者だけでは少し頼りがいがない。これは互いにWinWinな関係だ。


「シルフィアさん。その切実な思い、十分に伝わってきた」

「ほ、本当ですか! バリバリに伝わりましたか!」

「バリバリに伝わりました。俺も分かんないことだらけで、正直不安なとこもあるから。仲間が多ければ多いほど安心できる。だから試しに、一回パーティーを組んでみよう!」


 そう答えた瞬間、シルフィアはその場に土下座する勢いで地面に突っ伏した。いや違うこれ土下座じゃないわ土下寝だ。何してんだこの人。


「あっ、ありがとうございまずッ、このご恩を忘れることはないでじょう…ッ」

「とりあえず早く起き上がってっ! 全身ホコリまみれになるから! 周りの視線が痛いから! 」


 なんとかシルフィアを起き上がらせ、再び席に着いた。パーティー追放歴がすごいが…今はとにかく、仲間を集めるという判断は間違ってないはずだ。方向音痴は重症だが、相応の実力が伴っていれば問題ない。


「思わぬ展開で早速仲間を手に入れたねアマノ。結構順調なんじゃないかな」

「うん…順調っちゃ順調なのか?」


 そこでりゅーなが「あっ」と何かを思いついたように手をぽんと鳴らした。


「そうだ、せっかくパーティーを組むんだから、何か名前を決めようよ」

「名前って…チーム名みたいなもん?」

「チーム名! たしかに、呼び名があるパーティーってなんだかカッコイイです!」


 考えてもみなかったけどチーム名か。ないよりは、あった方がいいのかな。うん。うん? 待て。


「おいりゅーなさん」

「なんだいアマノ」

「チーム名とか言ってたけど、パーティーメンバーにりゅーなさんって含まれてんの?」

「当然だろ。私も"立派な冒険者の一人"なんだから」

「大賢者なのに!?」


 大賢者が冒険者ってなに?


「す、すごいですりゅーなさん! あの、りゅーなさんは、冒険者になってから大賢者様になったのですか!? それとも大賢者様になってから冒険者になったんでしょうか!」

「おっと、そこは大賢者秘密だよ」

「くぅ〜…き、気になるぅ」


 気になんねぇよ。なんだよ大賢者秘密。いや、よく考えろ俺。コイツは"自称"大賢者だ。つまりそこら辺の一般ピーポーと何ら変わりない、残念な美人なんだ。冒険者をやってても不思議ではない。


「……そういうことなら、分かったよ。この三人でパーティーを結成! そんで名前を考えるっ」

「はい! とびっきりカッコイイやつを考えちゃいましょう!」


 そんなわけで、クセありパーティーの名前考案会が始まった。りゅーなは指を組んで熟考し、シルフィアは自分の白髪を指でクルクルと回しながら、チーム名案を出している。俺はその光景と、窓から見える景色を交互に眺めていた。


「うぅん…チーム『シカり』。チーム『カりシ』。チーム『りシカ』。」

「な、なんか変じゃね? なに『シカり』とか『りシカ』って」

「え、三人の名前の頭文字を取って、色んな組み合わせをしてたんですがー」

「嘘だろ…」


 よくあるけど。頭文字から取るやつ。この三人だと変な名前になっちゃうわ。

 数分後、指を組んでいたりゅーなが、何かを思いついたようにカッと目を見開いた。


「きた! いい感じの名前!」

「ほ、本当ですか大賢者様! 一体、どんな名前で……?」


 シルフィアはゴクリと喉を鳴らし、俺は首だけりゅーなの方に向けて待機。


「私たちのチーム名は──

 チーム『ピース・オブ・ペーパー』だッ」


 …


 ……


 ………




「チーム『紙切れ』じゃねえかッ!!」


 思わず大音量でツッコんでしまったが、もう後にはひけない。


「なんだいアマノ。カッコイイだろ、ピース・オブ・ペーパー」

「コミカルの間違いだわ! 名前の由来絶対その胸につけてる紙切れだろうが!」


 りゅーなは胸元につけている『大賢者りゅーな』と書かれた紙切れを、指でヒラヒラとさせる。その顔は「よく気づいたねアマノ」と言わんばかりの表情だった。


「その通り。でもそれだけじゃないんだよ。ピース・オブ・ペーパーの頭文字を取ってみなよ」

「頭文字って…P・O・P…だけど」

「そう、つまり『POP』。ポップなチームになって欲しいという願いを込めたんだ」

「やかましいわッ」


 俺たちの謎の攻防(?)を、シルフィアはポカンとした表情で見ていた。が、次第に目をキラキラとさせる。


「ぴ、ピース・オブ・ペーパー…! 凄い、響きがカッコイイです! 流石は大賢者様!」

「嘘だろ」

「そうだろうシルフィア。やっぱりキミは、わかってる側の人間だね」


 すっかり意気投合をしてしまった二人を前に、俺は頭を抱えることしかできない。これはもう、勢いでチーム名が決まってしまう流れだ。


 チーム名とかの前に、パーティーを組むには受付で申請をする必要があったので、俺たちは再び受付嬢の所へ向かった。

 チーム名は任意でつけたりつけなかったり出来るらしい。


「…あなた達、チームを組むのね。良かったじゃないシルフィア。拾ってもらえて」

「ひ、拾うとか言わないでください! それに、私は今度こそパーティーを追放されないように頑張るんです! 気合い入ってます!」


 受付嬢のミラは、「はいはい」と適当にあしらい、登録書に記入したチーム名を見ると、わずかに眉をひそめた。が、ツッコむ気になれなかったのか特に何も言わずに登録を済ませてくれた。


 そして再びテーブルの席へとつく。テーブルの上には、パーティーを組んだ証の紙が置かれていた。


「ふぅ…無事、パーティーを組むことができた…お、お二人とも、本当にありがとうございますッ」

「いいってことよ。登録料の礼だと思って。ここからは、パーティーの方針について話そうか」


 そうりゅーなが言うと、シルフィアは目をキランと光らせた。どうやら既に何かを考えているらしい。


「それなら、まず早速依頼を受けに行きたいのですが…! それぞれの実力を確かめるのにちょうどいいでしょう! わかりますか!」


 今思ったけど、シルフィアって「わかりますか!」が口癖なんだろうか。


「たしかに、俺もどれだけやれんのか知っとかないとだし…」

「そうだね、私も賛成。それで、何か受けたい依頼とかはあるの?」


 シルフィアは身を乗り出し、真剣(に見える)顔で口を開く。


「…ええ、あります。その名も、『バニーベアを討伐せよ』です!」


 "バニーベア"。たしか門番とシルフィアが話してる時も、ソイツの名前が出てた気がするな。

 なら、その依頼を受けよう。そしてソイツにこう言いたい。バニーなのかベアなのかハッキリしてくれ、と。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺達は今、王都の北門を出て一時間の「メルヘン大森林」を歩いていた。名前の通り、キノコが妙にカラフルだったり、花が歌っているように見えたりする、ちょっと浮き世離れした場所だ。討伐対象であるバニーベアは、ここらへんにいるらしい。

 シルフィアの方向音痴を考慮し、俺とりゅーなで挟むように進んでいた。ちなみにシルフィアは、りゅーなのジャージの袖を掴んではぐれないようにしている。


「いいですか。バニーベアはウサ耳が生えたデカいクマの姿をしています。ですが見た目の可愛さに騙されてはいけません。彼らはとても凶暴ですからね」

「デカいクマにメロメロになることとかないから。安心してくれ」

「そうかな。モフモフしてたら、私行っちゃうかも」


 不穏な発言をしないでくださる?


「てかその言い方だと、シルフィアさんは戦ったことあるっぽいな」

「え、ええまあ.....前に組んでたパーティーと一緒に、一回だけ....」


 なんだか気まずい。

 今回のバニーベア討伐依頼、報酬は銀貨五枚だそうだ。一日過ごすのにこれぐらいの報酬で大丈夫なのかと聞いてみたところ、シルフィアが言うには、三人で銀貨五枚ならまあなんとかいける、というレベルらしい。


「今のうちに、それぞれのポジションを決めておこうよ。そうだね.....シルフィアは前衛。アマノは荷物持ち兼囮。そして私は、安全な後方から指示を飛ばす総監督係」

「先生、それはサボりだと思います」

「人聞きの悪い。これは戦略的撤退ポジションの確保だよ」


 りゅーなは胸元の紙切れを誇らしげになびかせた。コイツの辞書に「恥」という文字はないらしい。


「わかりました大賢者様! このシルフィア、必ずや期待に答えてみせます!」

「うむ、期待しているぞシルフィア」

「なんなのこのパーティーもうヤダ」


 うんざりしながらも森の中を進んでいく。

 数分たったくらいだろうか。道のりは順調だったが、シルフィアが急に動きを止めた。キョロキョロとあたりを見渡している。


「二人とも、待ってください。なにか大きな魔力の歪みが.....ま、まさか大賢者様の膨大な魔力によるもの.....?」

「絶対に違う」


 三人で周囲を警戒していると、遠くからなにか重たい足音が響き渡ってきた。確実に、こっちへ近づいてきている。

 これはもしかして、いやもしかしなくても



 ーーぐおおおおおおおおお!!!(高音)



 不意に巨大な咆哮が、しかもめっちゃ声が高い咆哮が鳴り響いた。弾かれたように音が聞こえた方向をみてみると、ソイツがいた。

 体長は三メートルほど。茶色いフワフワの毛並みに、頭には死ぬほど似合っていないウサ耳がある。これがバニーベア....! デケえし怖いけど....なんか、違う! コスプレしたクマだろこれ。

 俺はとっさに注釈スキルを発動した。



【バニーベア(通常個体)】

 ※最近森の動物達に「あの人無理して可愛いキャラ作ってるよね」と陰口を叩かれるのが悩み

 ※耳の付け根が性感帯



「うわあヤダわあ.....色々と....ヤダわあ....」

「つ、ついに出ましたねバニーベア! いいですか、あの可愛さに騙されないように、ですよ!」


 シルフィアは腰にあるレイピアの持ち手を握りしめ、バニーベアを目で捉える。緊張感が高まるこの瞬間、一人だけ場違いな人がいた。ジャージ姿の大賢者りゅーなである。


「ううん.....あれだね、屈強なおっさんがコスプレをしてるぐらい、なんだかキツイものがあるね」


 とんでもねえこと言いやがったコイツ。やめろ、その言葉は多分結構効く。アイツ可愛いキャラ頑張って作ってんだから。陰口で悩んでんだから。

 言葉の意味を理解したのか、バニーベアの様子が激変した。瞳が血走った赤色になり、体が音を立てて膨れ上がる。フワフワの毛下から現れたのは、鋼鉄のような筋肉の塊。腕には血管が浮き出ている。


「うわっ、正体現したねっ」

「お前のせいじゃい! 来るぞ二人とも、構えろ!」


 ゴリゴリマッチョマンになったバニーベアが、地面を蹴って突っ込んできた。その速度は見た目に似合わず弾丸のような速度。

 しかしこんなときの注釈スキル。相手の補足説明に書き足してやらあ! そうだな、次は「転びやすい」とかにするか。これならこっちに来る前にーー


 あれ、なんか発動しないんだけど。なんで!? あ、やばい。死ぬわこれ。ありがとう異世界、さようなら異世界。


 俺が心のなかで遺書を書いているときーー目の前に白い閃光が走った。


「ーー遅いです」


 シルフィアの声が冷たく響く。さっきまでのポンコツぶりが嘘のように、彼女の表情からは感情が消え失せていた。

 金属音がなったかと思えば、シルフィアは抜刀したレイピアで、バニーベアの腕を弾き返す。相手の爪と鋼の剣が火花を散らした。

 この光景を見て、俺はあんぐりと口を開くほかにできなかった。


「す、すげえ.....! あんな細い腕で、筋肉ダルマの攻撃を受け止めた!」

「ふふん、見たでしょアマノ。あの子方向感覚以外はハイスペックなんだよ」


 りゅーなはいつの間にか、安全な木の枝の上に避難していた。今すぐ引きずり下ろしたい。だが、俺の視線はすぐ別のものに釘付けになる。

 シルフィアはそこから、舞うように動いた。バニーベアの剛腕を紙一重でかわし、その隙に鋭い突きを連発。バランスを崩したかと思えば、体をしならせ脅威の体幹で整える。

 あの方向音痴と同一人物とは、とても信じがたい光景だった。彼女の剣技は美しく、正確無比。やがてバニーベアは自慢の筋肉を切り裂かれ、悲鳴を上げて後退する。


「いいぞシルフィアさん! トドメを.....って、あれ」


 決定打を与えようとしたとき、シルフィアの動きがピタッと止まった。


「.....あの、カナデさん。バニーベアはどこに行ったのでしょうか.....」

「は?」


 彼女は真剣な顔つきで、バニーベアが逃げた方向とは90度違う方向の茂みを見つめていた。りゅーなの笑い声が聞こえてくる。


「目の前にいるだろ! なんで急にポンコツ発動してんだよ!」

「えっ、あっ、本当だ! いつの間に移動を.....! 瞬間移動でしょうか!?」

「違うっ、お前が勝手に変な方向見ちゃっただけだから!」


 その隙を見逃すバニーベアではなかった。怒り狂った筋肉の暴力が、シルフィアに襲いかかる。なんとか回避をしようとするが、下から殴りあげるような拳の上に乗る形となり、シルフィアは上まで飛んでいった。

 俺は空へ飛んでいくシルフィアを見上げながらとっさに叫んだ。


「シルフィアさん! コイツの弱点は耳の付け根だ! 強く掴めば力が抜けるはず! 理由は聞くな!」

「耳の付け根.....ですね、承知しましたあ!!」


 シルフィアは空中で体勢を整え、バニーベアの頭目掛け落下。また腕が襲いかかってくるが、レイピアで弾き返し着地した。そして耳を「ムギュッ」と鷲掴みすると、


「フギイイイイイ!?(裏返った声)」


 バニーベアの動きが止まり、全身の筋肉がしぼんでいく。


「せやーっ!」


 シルフィアはそのまま流れるような動作でレイピアを閃かせ、無防備になったバニーベアの首元に一撃を見舞った。

 彼女が飛び降りると、バニーベアの体は光の粒子となって消滅し、討伐の証拠となる「ウサ耳のついた毛皮」が残された。


「や、やりましたよ大賢者様、カナデさん! 私、やりましたよ!」


 息を整えながら、シルフィアは満面の笑みで振り返った。戦闘中のクールな表情はどこへやら、いつものふんわりとした雰囲気に戻っていた。

 俺は疲労感とともにため息をつく。たしかに強い、めちゃくちゃ強いがポンコツ具合が致命的すぎる。あとー、


「スキル、発動されなかったな.....」


 りゅーなに使ったときのように書き足したのだが、効果が反映されなかった。これが制限.....? 格上には使えない、とか。じゃありゅーな格下なの?


「よくやったねシルフィア。私の的確な指示のおかげかな」

「はい! 大賢者様の威光が、私を導いてくれました!」

「導いたのは俺なんですけど」


 まあいいだろう。無事依頼は達成されたし、あとは無事帰るだけか。スキルのことは帰ってから色々調べるとして。


「さあ二人とも、凱旋しましょう! 王都はあちらですね!」


 シルフィアが自信満々に指さしたのは、俺達が通ってきた道ではなく、更に森の奥へと続く獣道だった。


「......りゅーなさん。帰りは魔法とか使って送れない?」

「えー、魔力もったいないなあ。歩こうよ、健康のためにさ」


 俺達の前途は、バニーベアの筋肉よりも多難らしい。それはこれからも、多分変わらない。

 三人は横に並んで、王都へと戻っていった




ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

主人公の服装は高校の制服ですね。顔は平均より少し上くらいの偏差値です。

自称・大賢者の正体は秘密です。

シルフィアは相手を見失わない限り強いです。

感想コメントをもらえると土下寝して感謝します。書いてくれた方には大賢者の称号を贈呈します。

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― 新着の感想 ―
三人の軽快なやりとりが面白かったです。 特にチーム名を決める下りでアマノの「チーム『紙切れ』じゃねえかッ!!」という突っ込みには笑いました。 注釈スキルでシルフィアの方向音痴を治せれば優秀な冒険者にな…
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