家 作者: 赤菜一華 掲載日:2025/10/11 歩いていた ただひたすらに。何かから逃げるように。暗い夜の道は肌が痛いほど寒く、自分だけが取り残されたように閑散としている。息を吐くと目の前が白くなり、生きている証を残すように地面を踏みつける。 今日はあの人はいるだろうか。 毎日気にかけてくれるあの人は。 後ろで髪をひとつ結びにし、屈託のない笑顔を見せてくれるあの人は。 いたらいいな。 あの人だけは自分をみてくれる。 いたらいいな。 今日も一人でいることは免れる。 そんなことを考えながら。