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セーラー服と雪女Ⅶ 新章③ 「雪子と雪村」そして本編へ  作者: サナダムシオ


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第捌話 雪子の暗躍

「このメモに書いてあるのは、❝予言❞ではなくて❝予定❞だから安心して。」

 そういう雪子に対して、半信半疑の顔の雪村である。

 無理もない話だ。そう雪子も思う。


 でもこの昭和に自分の基地を設けるためには、この手しかない。

「もしも、馬券が外れるようなことがあっても、必ず全額保証するわ。」

 何だか言ってることが、新手の詐欺師っぽいぞ。と、自分でも思った。


 しかし雪村は決断した。

「分かった。どうせ乗りかかった船だ、信じるよ。」

「ありがとう、助かるわ。一つ借りができたわね。」

「缶は7月末には指定の場所に埋めておくよ。」

「よろしくね。50cm以上は深く掘ってね。」

「了解。」


「さて、別件だけど。」

「まだ何か?」

「あなたが生まれてからこれまで、出会ったアブナイ事件について、教えて欲しいの。」

「ああ、それかあ。」

「特に大けがや深刻な病気、命の危険があったことを全部教えて。」


 そこで雪村は、自分の記憶が有ることは思い出し、無いことでも母親に聞いた話などを総合して、雪子に伝えた。

 雪子はそれを、詳しい日付と事象に分けて、熱心にメモしていた。

「ありがとう。よく分かったわ。色々と興味深いわね。」

 そんな感想を述べた後、彼女はテーブルにそのメモを置いた。


「コレはどの道、持って帰れないけれど、しっかりと記憶したわ。」

 そう言いながら、雪子は壁の時計を見る。

「さて、そろそろ時間みたいね。」

「そうか、今回の滞在は3時間だったね。」


「何度もお邪魔してごめんね。でも有意義だったわ。」

「僕も、新鮮な体験ができて、何だか楽しかったよ。」

「じゃあね。競馬の結果を楽しんで。」

「うん。またね、かな?」

「そうかもね。」


 そう言いながら、ソファーに座っていた雪子の姿が、空間に吸い込まれるように消えて行った。

 それを目の当たりにした雪村は、いよいよ彼女のことを信じざるを得なくなったのだった。


 連続時空ジャンプゆえに、次の瞬間、雪子は同じ昭和の10月14日の日曜日に来ていた。場所は例の守山区の空き地。時刻は朝の6時過ぎ。

 近くに休工日の工事現場があるのは調査済みだったので、そこからシャベルを拝借して、雪子は早速指定の地面を掘り始めた。


 果たして雪村はちゃんと約束を守っていた。

 穴は思ったより浅く、すぐに4つのクッキー缶が見つかった。

 中には、どれも当然のように、ぎっしりと札束が入っていた。


 そしてこんなメモ書きも一枚入っていた。


 親愛なる雪子様。

 おかげ様で、大量の臨時収入を得ることができました。

 足がつかないように、自分の分も現金でタンス貯金にしました。

 他にも何かご用命があれば、こちらまでご連絡を。

 なお、この番号には、僕しか出ませんのでご安心を。

                真田雪村


 そしてそこに052から始まる自宅の電話番号が記載してあった。


 よしよし上出来だ。思わずほくそ笑む雪子。スマホが無いのは不便だけど、贅沢は言えないわよねえ。

 彼女は近くの公衆電話を探して、7時過ぎに雪村に電話をかけた。


 雪村は3コールで出た。

「はい。もしもし?」

「もしもし、ア・タ・シ!」

「雪子さんですね?」

「なあんだ、つまんない。すぐわかるのね?」

「何しろ、初対面が強烈な出会いだったので。」

「そう。まあ、いいわ。この後も手はず通りお願いします。」

「了解。」


挿絵(By みてみん)

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