第7話赤毛の追跡者
薄暗い部屋。
ベットに眠る太陽の光で赤毛が美しく光り女性は、微かに息を吐き目を覚ました。
俺はその様子を見ながら世について調べていた。
「傷は思ったより深くはない、安心しろ」
女性は重たい瞼を開け、指を震わせながら、壁に立て掛けられた自分の剣を掴もうとした。
「敵じゃない」
そう聞くと女性はゆっくりと目で辺りを見渡し、俺の方へ向いた。
「ここは……?」
「宿だ。死にたくなけりゃ、寝てろ」
女性は上体を起こし、鋭い目で再度辺りを確認している。
息遣いも、目の震えもなく、彼女は怯えていない。
「私を助けたのは……あなた?」
「利用価値があると思った。それだけだ」
女性は鼻で笑うと丁寧に巻かれた包帯を見て、口元が少し上がった。
「丁寧に治療してる、行動と見合ってない」
俺は手を開き、スキルを使おうと構える。
なぜなら彼女には、殺気と自信で満ち溢れているからだ。
ツンと香る血の匂い、使い古された剣、これを見て警戒しない方がおかしい。
「お前は何者だ?」
「見ず知らずのあなたに言うのはって思ったけど……」
俺が構えているのを見て負けると思ったのか、あっさりと彼女は口を開いた。
「私は元冒険者、"五帝"の1人の手下に追われてる」
"五帝"、聞いたこともない言葉に俺は聞き返す。
「五帝?」
「そんなことも知らないの?どんな環境で育ってきたんだか」
「田舎にいたもんでな、詳しく聞きたい」
すると彼女は嘲るように言い話してくれた。
「6年前、各王国の名だたる騎士団長5人と"伝説の英雄"が、手を組んで王を越えた。その5人を"五帝"って呼んでるのよ。世界を支配してみんなそいつらに従ってる」
「とっくの前に反逆なんか完全に諦めてる」
「私はその五帝の1人、毒帝に、敵討ちとして拠点に攻めたけど……」
「こうやって返り討ちにあった」
「敵討ち……親のか」
「そう。町のみんな、仲間、子供、畑、全部よ」
言葉が胸に刺さる。似た境遇が俺の中でもざわめいた。
そして俺は彼女にある提案をする。
「俺はお前に、利用価値があると言ったな」
「そうね」
「ザイトライヒについて知りたい、俺はあいつを必ず殺す。奴について何か知らないか?」
彼女は一瞬黙り、細かく笑ったように見えた。
「無謀ね、言えるのは五帝に関係してるってことだけ、私は手伝えないわ」
ザイトライヒは五帝に関係している。
そうなれば俺は五帝を追うことになるな……
「でも、道は同じかもしれない。毒帝を倒すことが、あなたの道なら、協力しましょ」
その提案に俺は頷き返し、友好の証として握手の手を差し伸べた。
「私はアルダ。きっと良い関係になると思う」
「カイだ」
アルダは俺の手を受け取り、強く握手をする。
コンッ
その時、宿の窓に石が当たった。
俺は彼女の方を見ると、彼女は腹の傷を抑え、剣を強く握る。
「手下か?」
「いえ、賞金稼ぎ達よ」
窓の外を見ると小汚ない浪人の格好をした賞金稼ぎが、剣や大槌、打刀を腰や背中に携えていた。
装備も使い古されていて長年戦っていたのがわかる。
アルダは剣を握り締め鋭い眼光で奴らを睨み付けていた。
「怪我してる奴が動くな」
「あなた1人で戦える人数じゃない」
俺はアルダを剣を奪い取りスキルを使い、鉄でアルダを拘束した。
「こ、このッ………!」
「黙って見てろ」
そして俺が宿屋から出ようと扉に手を掛けた時。
「奴らには騎士道精神がない。不意打ちや、背中から堂々と斬りかかってくるぞ」
「わかってる」
扉を開け宿の廊下を歩き外へと出た。
「おい、ここに女はいなかったか?」
地面を見ると俺が背負って運んでいたせいで、彼女の血の跡が地面を伝って居場所を明かしていた。
血で判別したとなるとコイツらはスキルを使ってきたのか。
「もう一度言う。ここに女は来てないか?」
「来てない」
そう言った瞬間、俺はスキルを使い、手から投げナイフを生成した。
2本同時に、正確に、慎重に、投げナイフは命を一瞬で奪い賞金稼ぎは倒れた。
一気に2人殺られた浪人達は、武器を構え俺を鋭い目で見つめる。
ここは人らしく、スキルに囚われないように戦う。
こんな醜い忌まわしいスキルを酷使したくない。
ザイトライヒの顔と母の亡骸が脳裏に過り、後悔と怒りで埋め尽くされる。
そして手から鉄の剣を生成すると、浪人達はタイミングを知っていたかのようにスキルを発動し、俺の手から武器を落とした。
「やりました!」
後ろにいる若い青年が手から何かを出して俺の剣を落とした。
「俺に合わせろ!!」
それを隙に浪人達は1人の男に合わせて斬りかかる。
剣を振るうがそれはフェイント、男がスキルを発動し姿を消すと大槌を持った大男が、すかさず槌を振るった。
「叩き潰してやらぁ!!」
俺は腕を固め守りをとり大槌の攻撃に耐える。
鉄の衝突音が町中に響き、浪人達はあまりの異様さに心を震わせた。
「気をつけろ!!」
姿を消した浪人が皆に呼び掛けた瞬間。
大槌の大男の首が、若い青年の足元へ転がっていった。
「カイ、姿を消すスキルには数十秒の時間がいる」
「わかった」
アルダは窓から呼び掛け俺は剣を構えた。
「おい!武器吹き飛ばしたんじゃねぇのかよ!」
「奴は武器を作るスキルだ、意味がねぇ!」
「じゃあどうすれば……」
「俺が右、新入りは俺に着いてこい!残った奴は援護しろ!」
そうして男は俺に迫り剣で斬りかかった。
剣がぶつかり合い、激しく火花が散る。
俺は剣を受け流し剣を振るうと男は再び姿を消し、遅れて青年が俺に追撃を加えた。
「お金の為!死んでくださいィィ!!」
青年は歯を剥き出しに、怯えながら戦っている。
その様子を見ると、俺は過去の自分を思い出した。
スキルを使わなくみなを見殺しにした。
俺は剣を握っている拳の力を弱め、青年はそのまま押し切り俺の背後へと進む。
俺はその青年の背中を拳で貫き、放たれる矢を青年で防いだ。
もう、行儀の良い真似はいい。
貫いた青年を振り払い、矢は俺の身体中に突き刺さる。
鋭い痛み、血の流れる感触。
俺は、快楽を感じていた。
地面に暴風を発生させ俺は一気に男に接近する。
「このバケモンがッ!」
男の剣は空を切り裂く。
俺は拳に短剣を生やし地面を滑りながら、男の脚を切り裂くとそのまま喉を掻き切り、弓兵に向かって獣のように襲いかかる。
「クソがァァア!!!」
弓兵は短剣を引き抜き俺の背中を突き刺す。
俺は弓兵に体当たりして倒すと首を噛み千切り、手から投げナイフを生成し弓を引いている男に向かって投げ、ナイフは男の眉間に突き刺さった。
「ハアッハアッ!!!」
歯茎を剥き出しにし、よだれが垂れ、犬歯が狼のように鋭くなる。
「カイ!」
アルダの大声に我に返り、俺は地面に手を着け倒れた。
アルダは腹を抑えながら宿を出て、俺に肩を貸す。
「離せ」
俺はアルダから離れると姿を消す男の死体を貪り喰らう。
「貪食……スキルね、あなた」
伝承によると餓えに日々苦しみ、スキルを喰らわなければ獣と化す。
全てを喰らい、力を得る。
王国全土を恐怖に陥れ、騎士団さえも歯が立たない。
それが貪食スキル。
死体を喰い漁ると、俺は突然血管に針を入れられたような感覚に陥り激痛に襲われた。
「があぁ!!!!」
骨がミシミシと音を立て、爪や歯が鋭くなる。
次第に意識が薄れ目の前は暗闇に包まれた。




