表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
7/29

第6話森を抜ける影

自由になったというのに、胸の奥は何も感じない。

灰色の空を見上げると、ポツポツと雨が優しく額に当たる。

焼け落ちた監獄の跡から煙が上がり、風が血の臭いを運ぶ。

俺と、かろうじて生き残った囚人数人は、森の奥へ逃げ込んでいた。


「おい!どこまで逃げればいいんだ!」


「そんなこと言われても知らねえよ」


名の知らない囚人はイラつきながらも、捕まらないように草木を睨む。

監獄から逃走し、数時間が経過した。

空は暗くなり始め、少しだけオレンジになっている。


「も、もうダメだ、休憩させて……!」


デスが俺に言うと、徐々に脚はふらつき膝に手を乗せ息を整え始めた。


「置いて行こうぜ、こんなところでのんびりできねえよ」


囚人が息を荒げながら言い、俺は脚を止めてデスへと近づいた。


「いや、もうみんなクタクタだろ?休もうぜ」


ハンがそう俺に向かって言い俺はうなずいた。


「監獄からかなり離れたはず、追いつく事はないだろう」


嗅覚と聴覚を変化させ水の匂いと音を聞き、川付近に移動する為、正確な方向を見つけた。


「着いてこい、川に移動する」


その言葉に信じられないのか、ハンやデスを除いた囚人は、不信ながらも着いていく事にした。

茶色い地面を歩き、緑一面の木の葉が空を覆いつくしていた。

余程の経験か、専用のスキルがないと抜け出せなさそうなこの森の中を歩き続け、川の音が近づいてきた。


「ほ、本当に川だ!」


そこの川は湧き水の近くにあり、新鮮な飲み水が飲める。

数時間に渡り移動してきた囚人にとっては、この川は砂漠の砂のように、無限であった。


「うおー!すげぇな、カイ、助かったよ」


ハンは湧き水に群がる囚人達を見て笑いながらお礼を言った。


「………デスの奴は飲まないのか?」


「ああ、あいつちょっとビビりだからさ、あとから飲むんじゃねえの?」


「そうか、俺は食えるもんとってくる。少し待っとけ」


「みんなに伝えとくよ」


そして俺は川から離れまた森の中へ入ると、聴覚を変化させ、リスの位置を探り嗅覚で完全に捉えた。

1本の細い鉄の針を作り風スキルを応用する。

手から放った鉄の針は、目にも止まらない速さで木の中に隠れているリスに接近し、木に穴を空け、リスの首を貫いた。

リスは一瞬にして命を取られ、痛みすらなかった。


7匹取っとくか


また同じことを繰り返し、俺は腕に一杯のリスを持って、川へと戻った。

なんだ?変な匂いがする

嗅いだこともない匂いがして、俺は思わず周りの囚人を見る。

目に移るのは汗、目の泳ぎ、瞬きの異常な回数、そして筋肉の震え


「………火のスキルを使える奴は?」


俺がそう言うと囚人は黙り一言も返さない。

そしてハンは俺を見るなりなにかを訴えてくる。


「俺を売ったな?」


背後から土を強く踏む音が聞こえると、俺は地面に風スキルを放ち、土は背後から迫る者の視界を遮る。

振り返ると一気に距離を詰め、頭を下げて男の顔に蹴りを喰らわせた。

男は腕を十字にして蹴りを受け止めており、気味の悪い笑顔を見せると急接近し始めた。


「お前!楽しい!」


男が腕を振り下ろすと腕は裂け、肩に纏わり露出した骨は大きな鎌へと変化し、囚人服を少し切り裂いた。


「腹ッ!!」


男が腕を振り払い鎌の先が腕を傷付けた。


「スバシッコイ!お前みたいなの、初めてだ!」


後方へ距離を取ると手からナイフを作り投げる、男はナイフが腹に刺さり激痛で脚を止めた。


「な、は?お前、風スキル?」


歩きながら俺は次々にナイフを投げ、防ぎようのない攻撃に男は太もも、左腕、右肩にナイフが刺さった。


「ちょっ、待って待って!」


脚と腹に深くナイフが突き刺さったせいで立つこともできず、腹を抑えながらただ必死に懇願する。

拳を握り振り下ろすと男の頭は鈍い音を響かせ、地面に強く叩きつけられると気を失った。


「こ、こんなとこで死ぬつもりはねぇ!!」


ハンとデス以外の囚人が俺に向かって走り出しスキルを使った。


「火炎放!!」


囚人が腕を突き立て、俺は囚人の腹に潜り、横脇に拳の一撃を与える。


「ぶふっ!!」


肺が押し潰され囚人に隙が生まれると手から剣を作り腕を切り落とした。

断末魔が空に響き、残りの襲い掛かろうとしていた囚人は足が縺れる。

震える脚で逃げようとするが、川の石に足が滑り転倒する。

逃げていく囚人達の頭に向けてナイフを投げ、背中を見せた男達は頭から血と脳を地面にばらまいた。


そして俺はデスを見た。

腰を抜かしたのか地面にへこたれていて、ただ俺を見つめる。

その目は震えていて、必死に言い訳を言おうと何かモゴモゴしているが、一向に言葉は出ない。

デスに歩み寄り、左拳を振り下ろして殴る。


「お、おお、俺にも理由が………」


剣を振り上げ、デスの首は高く上がり、川へ沈んだ。


「さっさとどっか行っちまえ」


「他の流浪人も来る。気を付けろよ」


ハンがそう言うと川沿いに向かって走り森の中へ姿を消した。


「そんじゃあ答えてもらうか」


突き刺した流浪人の服を剥がし、囚人服と交換する。

そしてパンツだけとなった流浪人を川に浸け、目を覚まさせた。


「や、やめてくれぇ」


その声は抵抗などなく、ただ生きるために戦いを放棄していた。


「流浪人、誰からの命令だ」


「ざ、ザイトライヒ様」


その名に俺は怒りが満ち溢れ、流浪人の髪を強く握った。


「あの野郎……」


「それで?どういう任務だ?」


「賞金稼ぎ、ザイトライヒ様が、伝令、牢獄から脱獄した奴らを捕まえる」


「ここにいた囚人見つけて、重罪人のお前裏切るように言った。見逃す、金大量にハズムって」


「最後に一つ、まだ賞金稼ぎは来るか?」


「俺、一番乗り、だからクル?」


それを聞くと俺は流浪人を離し、腹に向けて剣を突き刺した。


「がっ……!!」


剣は突き刺したまま、俺は流浪人の格好をして狩ったリスを手に取るだけ取り、森を抜けようと夜の中、ただ一人歩き出した。



----



森を抜けると町を見つけた。

霧掛かっているが、監獄とはまるで違い匂い、音、光が鮮明に感じられる。

そして町に入ろうと門を潜ると、検問が待ち構えており、警備は槍を杖代わりのようについて歩いた。


「旅の者、止まれ」


「なんだ?」


「近頃、向こうの監獄から脱獄囚が出たらしい、詳しい事を聞かせてくれないか?」


「なぜ俺が」


「旅の者だろ?なにか知ってるだろ」


「そうだな」


警備は明らかに警戒している、下手をすれば捕まってあそこからやり直しになるかもな

聴覚を変化させ、向こうにいる警備の話に耳を澄ませた。


「ここから東に行ったとか、流浪人に殺されたとか、それくらいしかわからない」


「なるほど、やはり東か……」


警備は手帳に記すと笑顔を見せ握手を求めた。


「ご協力ありがとうございます」


「こちらこそ、嬉しいよ」


握手を返すとすぐ町の中へと入っていった。

石畳が広がりまだ朝だからなのか、市場や広場にはまだ人が少なく、住宅街に新聞配達がいるだけだった。

……かなり臭うな

とりあえず休息を取るため宿へ向かい、流浪人から奪った金で支払いを済ませた。


「ごゆっくりー」


部屋の鍵を開け、中に入ると流浪人の臭う服を壁掛けに掛け、体を洗うことにした。

そして再び服に着替え、防具屋にて装備を見る。


「この鎧はどうだ?魔石で出来てて、下位なら効かねぇ優れもんだ」


「動きやすいのはありませんか」


「んー、ならこれだな」


店主が見せたのは皮や布で作られた流浪人が着る物だった。

腰にはナイフや小道具がつけれるようになっていて、脚は丈夫な皮や鉄で守られている。


「これにする」


流浪人から奪った金で支払い防具を着用した。


「その古いのは捨ててくれ」


「はいよ」


店主は鼻を抑え嫌な顔をして汚物を摘まむように持っている。

防具屋から出ると睡眠を取る為に宿へ戻ろうとすると、血の匂いが鼻をくすぐった。

暗い細道、人気がない場所で血に塗られた女性が座っていた。

なにかに使える。

そう思った俺は女性に手を差し伸べるが返事はなく、顔を覗くと気を失っていた。

腹と腕に切り傷、これも運命だと思い俺は彼女を背負って宿まで運んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ