表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第4話禁忌の報い

一向、村では兵隊達が駆けつけておりザビエクはザイトライヒに事件を説明する為に現場に一人残っていた。

ザビエクは探偵スキルを使って加害者が逃げた方向を調べており、目がかなり赤くなっている。


事件からは1日が経っている、なら、犯人が逃げた先がわかるはずだ。

まだ、まだだ、あともう少し……


目を使いすぎていると突如両目に槍を突き刺したような鋭い痛みが走る。


「ぐっ!!」


ザビエクは手で両目を抑えて激痛が止まるまで深呼吸を続け手を目から離す。

犯人が逃げた時についた足跡が赤く表記されていて道へと逃げた痕跡を見つけた。


"貪食"がまだ周辺にいるのなら無謀だが警戒しなくては……


そうして護身用の警棒を取り出し足跡に向かって進もうとした時。


「ザビエク、おつかれさん」


背後から話しかけてきたのは伝説の英雄ザイトライヒだった。


赤毛の長髪が風で流れる。

金銀の装飾が陽光を跳ね返し、分厚い鎧の軋みが耳に重い。

腰の大剣は彼にとって軽い装飾のように揺れていた。


「目が充血してるぞ?探偵スキルの使いすぎだ、魔力切れで失神しちまうぞ」


「どうしても失神する前に犯人を特定したくてね」


ザイトライヒに血痕のついた石が目に入る。


「結構腕のいい奴がいるもんだな、狩人スキルみてぇだが……」


「そんなわけないだろう」


ザビエクは足跡に向かって進み始めるとザイトライヒは長年の付き添いから黙ってザビエクの後ろに着いて行く。


「大体話は聞いてたが、犯人は貪食スキルらしいな、まあどうせ俺の手にかかればどうってことないだろ」


「油断しない方がいいぞ」


「そうかー?気楽にいけよ、なあ」


道を歩いていると道中村人がザイトライヒを見て驚きを隠せずにいた。


「ねえ、あの人ザイトライヒ様じゃない?」


「伝説の英雄が出動する程、凄い事件だったんじゃない?」


「多分ねえー」


それを盗み聞きしていたザイトライヒはいやらしい笑みを見せる。


「あいつら、嘘つくの下手すぎ。自分から黙認してましたって言ってるもんじゃねえか」


進んでいくと足跡はある家へ辿り着いた。


「ここが犯人の家か、さっさと忍び込んで殺っちまおうぜ」


「少し黙って話を聞け」


「ここは父のナル、母のエリと子供のカイのアルベルト一家のご自宅だ」


庭に注目すると馬車の車輪の形跡があり、外に向かって逃げている痕跡があった。


「私のスキルを使えば数日で見つかるだろう」


「父親が禁忌スキル持ちか?それとも息子が禁忌スキル持ちか?」


「カイで間違いない、あの場にいたのは子供の足跡だからな」


ザビエクは記録をしている手帳に記すとポケットに入れ、一時状況を確認する為に兵隊が持っている貝殻の魔道具を取り出し連絡をすませた。


「兵隊なんぞに連絡しなくても俺がいるだろ?さっさとぶっ殺しに行こうぜ!」


「焦るな、まだ彼が犯人だと決まったわけではない」


「お前は考えすぎなんだよ」


「それで問題になったらどうする」


「また揉み消しにしちまえばいいだけだろ」


「責任はとれるのか?失敗は許されないぞ」


ザビエクはザイトライヒに詰め寄りザイトライヒは嘲笑う。


「平気さ、この剣でぶっ潰せばいい」


「好きにしろ、だが下手をすれば止めるぞ」


「オメェがか?やってみろよ」


ザイトライヒは腕を振り上げる素振りを見せ鼻で笑った。



----その頃、アルベルト一家は馬車で村に向かって帰宅しており、ザイトライヒが到着して数時間が経過していた。



家族で食事をすませ父は一眠りをした後、村に向かって帰っていっていた。

馬車で母は寝ており起きているのは運転をしている父と俺だけとなった。

夕焼けの空が後方に座っている俺と母を照らし、秋の匂いをさせている風が俺を涼める。

その匂いは枯れた葉や木の匂いがして心落ち着くが、微かに火薬の匂いがしてその異様さの涼しげが心に疑念を抱いた。


「なあ、カイ」


父が気まずそうに呼び掛け俺は返事を返した。


「なに?」


「その、お前のスキルは段々と上達していってる。だから村の奴らもみんな認めてくれるさ」


「お前の力をみんなが危険じゃないって理解してくれる、日々練習しておけばこれは必ず叶う」


「だから……その、忘れるなよ」


「お前のスキルはいいことに使える」


不器用ながらも父はそう言い俺は元気よく返事を返した。


「忘れないよ!」


「そうか、なら帰ったら俺とお前で料理でも作るか」


「そうだね、いつも母さんに苦労させてるし」


そうして村へ向かっているとなにやら村は静かだった。

畑でいつも働いている老人達はおらず妙な静けさがある。

そして道路に一人、村人である男がいた。

その男は俺を見るや否や、目を背け嫌な顔をした。


なんだあいつ、嫌な奴だな


そんな中で俺は疑問に思った。

なぜ見ず知らない俺を見て嫌悪感を抱いたのか、考えたくもないがもしかすると。

村の人々は俺の禁忌スキルだと知っているんじゃないのか?


「父さん、村の人は俺のこと、どう思って………」


ドガンッ!!!!


言いかけた瞬間、地面は爆発し馬車は吹き飛ばされていった。

火薬と煙の臭い、吹き飛ばされ地面に衝突し視界がフラフラしながら父を見ていた。


「ぐはっ!!!」


父は地面に激突し一瞬で立ち直ると周囲を見渡した。


魔物か?いや、この辺じゃあ魔物はあまりいない……いるとすればスライムぐらいだが……


「禁忌スキルを所持している奴を報告しなければこうなるのはわかってただろ」


ザイトライヒか!

父は体に炎を纏わせ構えた。


ナルだっけか?過去を調べたら元冒険者じゃないか、それもかなりの経験者


「そのスキルは体に炎を纏わせ爆発と共に炎と爆発で加速した攻撃を食らわせるんだろ?」


手札を全部知っているのか!?


「禁忌不作為罪でこの村に属している人間を始末する」


そうして父はザイトライヒに突っ込んでいったのを見て俺は気を失った。

ザイトライヒの表情はなにやら怒りに満ちていて、昔の過ちを思い出しているようだった。

そして意識を取り戻すとある建物の中にいて、ボロい建物の隙間から見える外は火の海と化していた。


「ど、どうなってんだよ」


「目が覚めたか!カイ!」


すると横に父が座りながらなにかの魔道具を起動させており、左腕にはスキルであろう炎を纏っていた。


「母さんを連れて逃げろ!ここは父さんが食い止める」


そう言う父の目線の先には母がいた。

だが母は死んでいた。

金色の髪は赤く染まり、右腕と右胸が欠損していて、瞼が半開きになっている。

言葉は発せず呼吸もしていない。

父は現実を見ていない、受け入れられていない。


「と、父さん」


父は俺に振り返りもせずボロい建物から出て、見えない者と格闘するように前へと走り出した。


「おい!」


父がザイトライヒに呼び掛けるとザイトライヒは手をかざした。

すると父に向かって螺旋状に爆発が起き、父は巻き込まれないようスキルで地面を蹴り移動した。


ど、どうしよう……

とりあえず俺は父に言われた通り逃げることを考えろ。


母を建物に置いていき抜け出しザイトライヒから反対方向へ逃げようとした。

だが母のことが捨てられなかった、死んでいて生き返らすこともできないのに、俺は母を背負って逃げようと考えた。


「くそっ!くそっ……!」


重たくて重たくて脚が張り裂けそうで口の中が鉄臭い。

暗い夜道を走り続け冷たい母と背後から聞こえる爆発音、そして火薬の独特な匂いと建物や死体の焼け焦げた匂いが充満する中、俺はただ逃げることを考えていた。

あんなに自分のスキルを使い続け、どんな力なのか理解していても、俺は戦う素振りすら見せない。

俺はこんな自分が大嫌いだ。


「はあっ!はあっ!!」


「ごほっ!ごほっごほっ!!」


次第に脚を止め力尽きた俺は背にした母を降ろして地面にへたり込んでしまった。


音が、消えた?終わったのか?


ドガンッ!!!!


背後から爆発音が近づきすると空からザイトライヒが目の前に現れ、俺はゆっくり顔を見上げた。


「……なんで、俺を殺さずにみんな殺したんだよ」


「お前は貪食スキルかもしれねぇ、それに禁忌不作為罪が認められた際には周りも危険だと判断し、殺害ができる」


「つまり殺しが好きな俺にとって最高なサービスってわけよ!」


それを聞いた俺は怒りが込み上げてきた。


「お前、狂ってるよ」


「人殺して楽しいとか狂ってるよ!!」


「お前に言われたきゃねえよ!!」


ザイトライヒは俺を蹴りその瞬間、爆発が起き俺の頬を擦り傷だらけにして軽く吹き飛んだ俺は背中を木に激突した。


「あれは、俺じゃない……」


近づいてくるザイトライヒに言いザイトライヒは、俺の首を掴み上げると拳を何度も振り俺の顔面を血だらけにした。


「幸いなことにお前はこの場で死なない」


「まあ結局死ぬことには代わりねえし、折角なら俺が殺してやりたかった」


「美しい未来にいなくてありがとう」


そうしてザイトライヒは俺に拳を振るった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ