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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第一章因縁
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第3話広場に響く悲鳴

1時間の時間を得て市場へと辿り着いた。


「久しぶりねー」


「ああ、それで平気か?カイ」


「全然平気だよ」


「ならよかった」 


道路を馬車で歩き宿屋へ馬車を預ける。

そして母の手を繋ぎはぐれないよう人混みの中を歩きながら進み始めた。

市場は他の道と比べ狭く、屋台や小さな木造の店が並んでいる。


「新鮮な野菜!今夜の一品にはピッタリだよー!」


「都にしかない魔道具がたくさん!肉や野菜を冷やして保存できる魔法の箱もあるよー!!」


「食欲の秋にはどうぞー、今なら半額だよー」


四方八方から売り子の大声が聞こえ、商品はぶつかり合い、荷馬車の車輪の音が聞こえる。


「カイ、足元に気を付けろよ」


父にそう言われ足元を見ると野良犬や鶏が歩いていた。


「うわっ」


他には布類、革製品、武具、香辛料が見え焼きたてのパンや動物の臭い、道の臭い匂いが舞う。

村人や冒険者、兵士や商人、奴隷がいる。


「危ねぇぞガキ!!」


品を盗んで走っている所、馬車に引かれそうになり少年は地面に転倒した。


「ご、ごめんなさい!」


そして逃げていく少年を目で追っていると、路地の端に貧しい者があらゆる通行人に物乞いをし通りすがりの冒険者に唾を吐かれる。

スキルがある世界でも盗っ人や物乞いはいるんだな。

そりゃそうか、スキルで貴族になれる世界だもんな、親がいなくて鑑定を受けられない子供や剥奪された子もいるんだもんな。

横目で見ていると気が付かない間に周りには、たくさんの人が集まっており一気に圧迫感を感じ始めた。


色んな人がいてみんなスキルを持っている。

もし、この人集りの中に兵隊は必ずいて、自分がスキルを扱えなくなってしまったらと思うと後悔や責任に押し潰されそうで怖くて怖くて仕方がない。

そう考えていくうちに視覚、嗅覚、聴覚が異常に発揮され数十メートル以内の会話が聞き取れる程強く、一人一人の体臭を感じ、服の繊維が一つ一つ見えるようになった。

制御を失っていく不安に脅され俺は徐々に口からよだれが溢れ始める。


「カイ、平気か?」


父が横で言い周りには家族がいると安心すると感覚は収まった。


「わ、わからない」


違う、わからないんじゃない。

それは逃げる為のセリフ、俺が言いたいのは………


「ほ、本当は自分のスキルを制御できなくなったらって思うと怖いんだ」


「折角市場に来たのに、俺の心配のせいで楽しめないよね?」


俺のその言葉に両親は顔を見合せ微笑みを返した。


「別にお前のせいなんかじゃない、元々お前がこの人混みの中で慣れる為についでに来ただけだしな」


「お母さん達はカイと一緒にいるだけで楽しいし、市場で買い物を楽しめないことは別に気にしなくてもいいわ」


「う、うん、わかった」


「だったらもう俺のせいとか言うなよ?わかったな?」


「うん!」


市場を抜けると一気に視界が広がり、石畳の先には大広場が広がっていた。

中央にはそれなりに高さがある噴水があり、陽光を浴びて水飛沫が輝いている。


広場には兵隊が巡回していて、子供達が遊び回る声、旅芸人が笛を奏でる音、雑踏のざわめきが波のように押し寄せてきた。


市場の喧騒とは違いここは人々の集会場。

噂話や取引、そして時には裁判や処刑が行われる、ここは町の心臓部だった。

そうして町を回っている間に数時間が経過し広場の一角に処刑台があり血は乾きそして人々が処刑台を前に集まっていた。

その光景を見ている3人は立ち止まる。


「あら、罪人の処刑かしら」


「だろうな、あれは大人になってから見るといい。俺達は先に行くぞ」


「そうね」


母に手を引っ張られ歩き出した。

罪人か……

そう思っていると父と母の言葉を思い出す。

そうだ、折角だしスキルを使って聴覚で誰の処刑か聞いてみるか!

あの時、爪を鉄の爪へと変えたように俺は耳を犬の耳のように聴覚を変え、耳を澄ませた。


「なんの集まりっすか?」


「あー、この新聞の奴」


カシャカシャと男が別の男に新聞を渡し男は驚いた。


「究極スキルの持ち主が?48人の殺人で公開斬首刑かー」


「元騎士団員だったらしいぜ、なんでも、性格になんありだったらしいが」


「へー、まあ死んでくれて安心だな」


その会話を聞き終わると徐々に聴覚を調整していき、人間本来の聴覚にした。


「父さん、あれ食べてみたい」


処刑人がどうなるか、もし自分が禁忌スキルだとバレあの場に立つとどうなるか、好奇心に勝てず適当に屋台を指差し父はそれに従った。


「飴屋か、お前食べたことあったか?」


「い、いや?ただ美味しそうだから」


「そうか、じゃあ買ってやるよ」


「やったー!」


父は屋台に近づき注文をすると店主は水飴スキルで水飴を作り出し、果物に絡めると隣にいる店員が冷気スキルで冷たい風を手から出して凍らせた。


い、意外にこんな女の子らしいスキルとかもあったりするんだな

でも凄いのはハズレスキルだけどそれを活かせる場所を見つけた所だよな

でもそれも見つからないスキルの保持者は……


振り返るとそこには馬車に備わっている檻に入れられ運ばれている奴隷達がいた。


「はいどうぞ、銅貨3枚ねー」


「ああ」


父は包みから銅貨を取り出し取った飴を俺に渡した。

それを口にした瞬間、この時代にも関わらず現代にも負けない程の甘さがあった。


「うまいか?」


「うん!超うまい!」


「そりゃ市場に来た甲斐があったな!」


父は母と嬉しそうに顔を見合せ食べている間、俺は処刑台がある方へ向き視力と聴覚を変化させた。

フクロウの毛を1本食べるだけでもこの貪食スキルは発動する。

1本程度では使うには弱いから苦労した甲斐があった、本当に。

そして遠くにいる罪人が処刑台に運ばれ膝を蹴られ跪かされる。


「言い残すことは?」


罪人は歯を剥き出しにして笑った。


「俺が死ぬにはまだ早ぇよ!」


そう言うと執行人は少し躊躇をした。


「なあ、ちゃんとスキル剥奪されたんだよな?」


「殴っても蹴っても抵抗はしなかったから心配すんな」


「そんじゃあ…」


執行人は剣を上にあげ同時に剣を振り下ろした。

スキル、因果逆断(リバース)

次の瞬間。

罪人は斬られたと思えば右にいた執行人の首は宙を舞っており、生き残っている執行人の剣は罪人の首を透き通って処刑台に刺さっていた。


「なッ……!くそ!!」


執行人が剣を引き抜き罪人の腹に剣を振るうと執行人の腹に深い切り傷がつけられていた。


「ごばっ!!!」


執行人が血反吐を吐き腹から血飛沫を吹き出しなぎら崩れ落ちた。

罪人はその場から立ち去っていき、処刑を見ていた民間人が騒ぎ始め兵隊が駆けつけに行っていた。


「悪魔の業だ!さっさと殺してしまえ!」


「イヤァァア!!!」


観衆の叫びは悲鳴へと変わり兵隊は慌てて到着したが罪人には追いつけず罪人は姿を消した。

それを目撃していた自分はスキルの可能性を感じるのと同時に、こんなにもあっさり人が死ぬのに目を背け拒否反応が出た。 

脚は震え死に打ちのめされる。


「あっちに逃げたぞ!捕まえろ!!」


兵隊が槍を構え一瞬で罪人を囲むが、罪人は槍の攻撃を軽々と躱し続け、腹に刺さった次の瞬間。

傷は兵隊の腹へと移動させられていた。


「騎士長でも用意しておくんだったなァ!!」


罪人は気持ちの悪い程笑みを浮かべ兵隊をあっという間に蹴散らすと増援が来る前に去っていった


そして俺はふと思う。

俺のスキルは人の役に立てるのか?


青年を殺してしまった記憶がフラッシュバックした。

自己嫌悪と好奇心が襲い緊張が走る。


俺のスキルも、あの罪人のように人を殺す未来に繋がるんじゃないのか?

もし、制御を失えば母さんや父さんだって………


ギョロッ


罪人と目が合い、あまりの恐ろしさに俺は脚に力が入らなくなり崩れ落ちた。


「カイ、落ち着け」


父は俺の手を握り俺を落ち着かせた。


「なんの騒ぎ?」


母親は子を抱いて逃げ、兵士が腰を抜かして剣を落とし、人々の押し合い逃げ惑う音が地ならしのように響く。

母が父に聞くと父は処刑台を見て罪人が逃げたと察したのか、町から出ようと馬車を止めている宿屋へと向かった。


「ちょっと、お父さん?」


「どうやら罪人が処刑から逃げたみたいだ、今のうちさっさとここから出よう」


父は大衆をかきわけながら進んで行き町に詳しいのか、道に迷わず宿屋へ到着する。


「兵隊とかに事情聴取で時間を潰されるのはごめんだからな、こういう時はさっさと逃げた方がいい」


そして運転席に乗った父は手綱で馬を叩き、馬をゆっくり歩かせて道路へ出た。


「それにしても凄い騒ぎだったわねー」


「そうだな」


母が時間を確認すると驚いた表情をした。


「もうお昼過ぎちゃってる!何処か食べに行ける所あるかな?」


「あー、それならここの道中に珍しい屋台があるぞ。確か東の方に出る麺類の飯らしい」


「道中寄るならそこにしましょ!」


「そうだな」


移動すること数十分、町へ出た俺達は村へと帰る道へ走り混乱に包まれた町を抜け出した。

罪人の狂笑が頭に焼きつく。


あれは序章にすぎない、そんな予感が胸を強く締め付けた。

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