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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第三章逃亡者の名
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第36話全世界の敵

ベンジャミンは階段を上がり、俺との距離を縮めながら、短剣を生成して攻撃を繰り出す。

それを間一髪で防ぎ、武器を奪って投げ放ち、ベンジャミンはそれを掴んでまた投げ返す。


グサッ!!!


「ッ!!」


鎖骨下に突き刺さり、薄暗い階段で金属音と共に火花が走る。

階段を上がりきると、曲がった先には屋上の扉がある。

ベンジャミンは俺が目線を外した隙に、短剣を突き、俺が攻撃を受け流すと、すぐさま反撃を繰り出そうとした。


「ッ!!!」


ベンジャミンの顔を殴り、顔を掴んで壁に叩きつけた。

反撃しようとするが、両方とも体力はなく、精度の低い打撃を叩き込み合い、屋上の扉を壊し、外へと出た。


風は強く、まるで嵐が吹いているかのようだった。

屋上の高さはそれ程高くはないが、落ちれば逃げることは不可能になるだろう。


2人は床に手を着き、激しく乱れた呼吸を整える。

互いにもう限界で、ベンジャミンは屋上のフェンスを掴み、笑いながら立ち上がった。

俺は短剣を生成し、攻撃に出ようとした瞬間、ベンジャミンは耳を押さえ、誰かと通信した。


「力帝様、了解致しました」


ベンジャミンは惜しい表情を浮かべ、屋上から飛び降り、急いで下を見下ろすと、そこには遅れて逃げていた富豪達だけだった。


「クソッ!」


フェンスを殴ると鉄は曲がり、俺はしゃがんでフェンスにもたれた。

ヤツを殺せなかった後悔と焦りだけが残る。


ひとまず合流だな…


その頃、ザビエクとカール、合流したリリス、そして護衛である傭兵達を連れて、力帝がいるであろう、パレードの中央にある建物に行くが作戦失敗。


リリスとははぐれ、ザビエクとカールはその建物の地下に身を潜めていた。

木の匂いや葉巻の匂いなどが立ち込め、ここが倉庫だと言うことがわかる。


「ザビエク、明かりはないのか?」


カールは剣で裂かれ、負傷した右腕を抑え、暗い倉庫の中を手で伝って進み続ける。

ザビエクは視覚を変化させ、明かりをつけるボタンを見つけた。


「この暗さだから見えない」


「そうか……にしても、あれほどまでやられてしまうとは思わなかったな」


「策は尽きたのか?」


「……すまない。策はもうない、一度皆を連れて退散しなければ」


カールは物や壁を手で探っているうちに、イライラが腹から込み上げてきた。


「クソッ、このままじゃ1日かかるぞ」


「……まだ希望はあるはずだ」


その言葉を最後に倉庫に、呼吸音だけが響いた。


「その心配はない」


カールの腹に圧迫感が生まれた。

視界が確保されず、なにが起きているかわからない。

体温と呼吸だけが上がり、震える手で違和感のある箇所に触れた。


ドサッ


カールは腹から大量に血を流しながら倒れ、瞳の光は徐々に失われ、虚ろとなった。


――策を失った人間は、ただの足手まといだ。


ザビエクはカールの死体を跨ぎ、変化した目で暗黒の空間を軽々と進み続ける。


ドンッ!


出口に差し向かった時、五人の警備隊が倉庫の扉を蹴破り中に入った。


「明かりをつけろ」


「了解」


照明ボタンに手を伸ばす男の首に、ナイフを突き刺し、他の四人が異変に気付く前に喉や急所を掻き切り、ザビエクは倉庫の外へと出た。

外は廊下で天井の照明が果てしなく続いている。


ザビエクは戻って警備隊の服に着替えて足音を消しながら廊下を進み、掲示板の地図にて地上への脱出口を探した。


流石にここは一度引くか……


地上への出口を見つけ、門番をしている男を見つけると、ザビエクは負傷した兵士に見せかけた。


「助けてくれぇ!や、ヤツが近くにいる!」


門番が武器をしまった瞬間、ザビエクは右腕を隠すように体の角度を変え、クロスボウを生成した。

門番が駆けつけた隙を矢で打ち、左手からナイフを生成し、投げ飛ばした。

2人の脳天を貫き、ザビエクは次々に現れる警備隊を始末しながら地上へ出た。


そうして俺は、地上で通信石で唯一連絡が取れた、リリスと合流ができた。


「うわっ、すっごい怪我」


「治癒スキルで少し治したから平気だ」


戦闘になれば、また傷は裂けると思うけどな。


「それでリリス。他のみんなは?」


警備隊の監視を潜り抜け、建物が崩れた瓦礫の山の中に彼女はいた。


「それが…そのー」


リリスの耳が垂れ、しょぼくれた様子で話し始めた。


「合流した後、あそこの建物に力帝がいるってカールが言って、雇った傭兵で攻めたんだけど……」


リリスの服は所々汚い土埃が付いていて、乾いた血が少し付着していた。


「多勢に無勢。そんな感じで、量も質も一つ抜けてた」


「どうする?カールとザビエクと合流するか?」


「そうしたいんだけどね。運悪い事に心臓がもうもたなくて」


「スキルを使わずとも行ける」


俺は瓦礫の山から顔を出すと、警備隊は別の場所へ詮索していき、ここは手薄になっていた。


「上手いこと行けそうだ」


「本当?」


俺は瓦礫から震える脚で立ち上がろうとするリリスの手を引き、警備隊の背後からこの場を去った。

そして、カールとザビエクと合流するため、リリスがその建物へ案内した。


見つからないよう、パレードから少し離れた草木の中で観察し、建物の外装は爆発で剥がれているが、ほんの一部に過ぎない。


建物の入り口や付近には完全武装した警備隊がおり、1人でならまだしも、手負いのリリスを置いていくことはできない。


「困ったな」


「ごめんね、あたしのスキルが不便で……」


「2人はそう簡単にやられたりしない。少し待ってれば……」


そう言い掛けた瞬間、建物の裏口から兵隊を1人で片付けていく男を見つけた。

目を細め、視覚を変化させ、よく見る。


「ザビエクだ」


「生きてたんだ。カールは?」


「見当たらない、負傷してるんだろうな。早く助けに行こう」


そうして俺とリリスはその場から離れ、ザビエクの救出へ向かった。

その様子を、建物の最上階のガラス張りから力帝は見つめる。


「力帝様、外に出てもよろしかったのでしょうか」


ベンジャミンは力帝の横でそう言い、力帝はワインを飲む。


「魔法馬車を手配しろ。奴らは港の船で逃げるつもりだ」


「承知……」


ベンジャミンが言い掛けた時、力帝は遮り言った。


「ベンジャミン、貴様相当やられたらしいな」


「はい」


「カイだったか。私も少し、手合わせするとするか」


「外に逃げたとしても、決して私から逃げれないと言うことを思い知らしめてやる。では行け」


「承知致しました」


ベンジャミンは魔法馬車を手配しに行き、力帝は手元にある紙を、魔道具の袋に包み、手を離すと袋は鳥のように形を変え空を飛んでいった。


紙の内容は、カイについて。

貪食者として、全世界に指名手配を出した。

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