第35話崩壊のパレード
カールは移動をしながら、仮面を付けて正体を隠し、配置に着いた。
「ザビエク、見えてるか」
カールは耳のイヤリングを押さえてザビエクと通信を取る。
そしてカールが見上げる先には、極少数の招待限定の富豪だけが立てるバルコニーがあった。
姿は見えないが、うっすらと見える白いスーツを着た男は力帝だと分かる。
「カール。準備が整った」
ザビエクがカールの元へ帰り、カールは力帝に笑みを見せる。
「ザビエク、多少の犠牲は避けられない。私が言うには似合わないが言う」
「生きて帰るぞ」
そしてカールはイヤリングを押さえて、傭兵に伝えた。
「一泡吹かせてやるよ……A班、爆破を開始しろ」
暗闇に包まれたパレードの地下。
そこには魔法陣が描かれており、パレード全域にスキル抑制の結界が張られてある。
雇われた傭兵はそこへと向かい、青白く輝く魔法陣に大量の火薬を撒き、1人の傭兵が出口から炎スキルを放った。
ドカンッ!!!!!!
パレードの地面に亀裂が走り、大爆発を引き起こした。
煙や炎が舞い上がり、見ず知らずの人々が巻き込まれ死んでいく。
かなり離れていても、爆風は肌を焼き、遠くからでも痛ましい悲鳴が聞こえた。
近くで起きた大爆発でバルコニーは崩れかけ、衝撃で片膝を着いた力帝は、バルコニーから様子を見渡した。
「一体何が起こっている!」
力帝はパレードから仮面を付けた男を見つけ、その瞬間、思い出した。
カール!死に損ないの虫けらが帰ってきたか。面白い、私を地に墜としてみろ。
力帝は崩れていくバルコニーから立ち去りながら、手首にある魔道具に向けて言う。
「全部隊に伝える。直ちに犯人の捜索を始めろ!」
力帝は建物の中に入ると、不安にかられた富豪達が力帝に駆けつけた。
「どうなってらっしゃるの!?力帝様!」
「どうかお助けを!!」
「皆さん落ち着いて。この建物の中は安全です!周囲の安全が確保された次第、連絡をします!」
騒ぎ立てる富豪達を落ち着かせた後、力帝は表情を変えて別の場所へ移動した。
「力帝様、地下に避難を」
そこは様々な魔法で強化された空間で、力帝は軍人に囲まれながら、エレベーターで地下に向かう寸前、部下に伝える。
「魔法陣が破壊された。傭兵の中に裏切り者がいる。探し出せ」
「了解致しました」
そうして地下へと向かい、力帝は避難していった。
「か、カイ!」
一向、リリスは攻撃体制に入り、俺は周囲を見渡し、爆発で建物が崩れ、その瓦礫に埋もれているベンジャミンを見つけた。
「ザビエクと合流しろ」
「俺はやるべきことがある」
「ま、待って!」
リリスは俺の手を掴み、離さない。
「カールはどうして俺にベンジャミンの存在を知らせたと思う」
リリスは黙って聞くと、覚悟を決めて手を離した。
「それでいいんだ」
俺は人混みの流れに逆らい、肩が何度もぶつかりながらベンジャミンの元へ一歩ずつ、正確に近づいていく。
今度は他人の決断でもない。
俺は自身の決断だ。
ベンジャミンが重なる瓦礫を押し退けた瞬間、俺は隙を与えず蹴りを食らわせた。
ズドッ!!!!
ベンジャミンは空中で体勢を立て直し、綺麗に着地して肋を押さえる。
「お前1人の犯行じゃなさそうだな。あの座席の隣にいた2人が仲間か」
「ああ、バレた所で支障はない」
周りにいた富豪達はもう避難していて、誰もいない。
煙と火の熱い匂い――そして俺とベンジャミンだけが残った。
俺は拳を握り締め、ベンジャミンは足元にあった鉄筋が入った大きな瓦礫を掴む。
「そんじゃあ……やるか?」
俺のその言葉を合図に、ベンジャミンは走り出した。
俺の周りを走り、俺が背後を見せた瞬間、飛び出し、瓦礫を振りかざす。
ドゴンッ!!!
後ろへ拳を振るい、瓦礫を破壊するとベンジャミンがすかさず空中で体勢を変え、脚を振り、踵で俺の顔を殴る。
地面に着地した瞬間、落ちてくる瓦礫を次々と掴み、物凄い速さで機械のように正確に俺の頭に命中させる。
頭に当たると瓦礫は粉砕し、それを目眩ましとして使って、俺との距離を一気に縮めた。
顔、肋、横腹、同時に殴られたかのようなスピードに思わずガードを固めるが、強力なパンチによってガードを破り俺の顔面を殴り吹き飛ばした。
こいつ……強すぎる…!
俺は聴覚と感覚を変化させ、吹き飛んで来たであろう包丁や鎧の一部を掴んで、必死に背後から迫るベンジャミンに投げつける。
それをベンジャミンは軽々と巧みに掴み、逆に投げ返してきた。
ドスッ!!!
ザクッ!!!!
鎧の一部が背中を殴打し、包丁が腰に刺さる。
だが、貪食スキルで皮膚は頑丈に、骨は金属で出来ているおかげであまり深くは刺さってない。
俺は一度距離を取り、爆発でヒビが入っている建物の中に入り、姿を眩ました。
中はオフィスで、机やプリンター機などの仕事道具があり、爆発で魔力は通っておらず、明かりはない。
身を隠すには最適な場所。
そこに俺は、壁に隠れつつ、ゆっくりと手から武器を生成していた。
「早くスキルを使え。お前もその方が戦いやすいだろ」
まさか…?模倣スキルは使ってる所を見ないと、模倣できないのか?
俺は自分の背中に刺さった包丁を見る。
俺の頑丈な皮膚を見ただけで、俺が持ってる全ての貪食の力を使えるはず……
ベンジャミンはゆっくりオフィスの中へ入り、足音を立てず薄暗い空間を見渡し、隣のガラスのケースに入った優秀賞の表彰を見る。
バリンッ!
一体何してる?
その瞬間。
優秀賞の表彰が壁を突き破り、金属が後頭部に強くぶつかった。
「なんで位置がバレてんだよ……!」
俺は障害物に隠れながら走り出すが、体を出す度に鉛筆や定規、ハサミやコンパスが投げ飛ばされ、全身を裂かれる。
「アアアァァ!!!」
あの時、聴覚と感覚を変化させた!
あれを盗まれたのか!
俺はベンジャミンの頭上にある、天井にぶら下がる照明に物を投げて、落ちた照明はベンジャミンにぶつかり少しの隙が出来た。
俺はオフィスの倒された机から体を出し、ベンジャミンを殴る。
ベンジャミンはオフィスのデスクで倒れ、そのまま一回転してデスクから落ち、床にぶつかった。
そして俺がベンジャミンを掴んで天井に投げ飛ばし、ベンジャミンは背中を強打して床にぶつかった。
『――ご来場の皆様にお知らせいたします。
先ほど発生した爆発音は、設備トラブルによるものであり、現在は制御下にあります。
スタッフの指示に従い、落ち着いて行動してください。パレードは一時中断となりますが、皆様の安全は確保されています――』
『――繰り返します。現在、会場内で緊急事態が発生しています。武装した者を見かけた場合、決して近づかず、速やかに最寄りの建物へ避難してください。スキルの使用は禁止されています――』
アナウンスが聞こえ、建物の電灯が復旧し始めた途端に爆発音が響き、俺とベンジャミンは姿勢を崩した。
魔力が途切れ途切れになっているのか、建物の電灯はチカチカと激しく点滅し、俺はその視界を利用してベンジャミンをあらゆる方向から殴り蹴りを繰り出した。
「ごぼっごぼっ!!」
ベンジャミンは口から溜まった血を吐き出し、俺は鋭利な道具が全身に刺さったまま動いたせいで、出血と酸欠を起こして、壁を血だらけにしながら座っていた。
だが、俺はベンジャミンから視線を外さない。
ベンジャミンはコピー機に手を着き、ゆっくりと立ち上がった。
そして社員の机に置かれてある文房具を手にして、あらゆる物を投げ放った。
"ヤツが、物はなんでも武器になる"。
それが例え、消しゴムでも、壁に穴を作る程だった。
そして投擲物を避けながら俺は視界が比較的明るい非常階段へと移動した。
手すりを掴みながら階段を上がり、ふと後ろを見ると、そこにはベンジャミンが立っていた。
俺は手から短剣を生成し、投げ放つ。
それとほぼ同時に、貪食スキルの一部を模倣したベンジャミンが短剣を生成し、俺に向けて投げ放ち、2つの短剣は火花を散らしながらお互いの顔の真横に突き刺さった。




