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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第三章逃亡者の名
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第26話偽りのチケット

浜辺の付近を歩き、目の先に自分の家が見え始めた。

リリスは俺の側を離れず、今日は疲れたのか眠そうな表情している。

だが、不安と恐怖を全く隠せていない。


守るか、壊すか。

ザビエクの言葉がずっと頭にこびりつく。

あいつの異常性と今日の前置きもない残酷な事件現場。

ザビエクならやりかねない。人殺しを許さないと言っていたが、結局ヤツも人殺しを殺す殺人鬼……。


ふと、隣にいるリリスの様子を見ると、あの現場が脳裏に焼き付いているのかずっと不安な顔をしている。


「早く忘れろ」


「そうしたいんだけど……やっぱり思い出す」


「人がああやって死ぬのを見るのは初めてか?」


「見たのは初めて」


「そうか。なら、今のうち慣れておく事だな」


俺は玄関の扉を開けてリリスを先に入れた。

家に入る前に外を確認する。

尾行してるヤツはいない…ただの考えすぎか。


玄関を閉め、家に上がってすぐ右のリビングに顔を出した。

リリスはすっかりソファーで寝ていて、その気持ち良さそうな様子に思わず連れて眠気が襲ってきた。


少しの間寝るとするか……。


「サプラーイズ」


「よく遊んだか?カイ」


寝室に向かおうと階段を一段上がった瞬間、見ていたかのように2階からザビエクが降りてきた。


「て、テメェここでなにしてやがる!」


「ただのサプライズさ、特に深い意味はない。計画を話したいからリリスを起こせ」


「明日は仕事か?」


「そうだ。夕方まで帰ってこない。決行時刻は夜だが、まあそこら辺は座って話を聞いてくれ」


ザビエクはリビングに入って行き、その拍子にザビエクの腕付近から鉄のような生臭さが空気を切り裂いた。


やはりそうだ、こいつは俺の注目――いや?警告をしに来たのか?

しかし、自分の仕事を増やすような行動はしないはず…それで身元を特定されたら終わりだからな。


「ただの偶然か……」


小さく呟きリビングに入ってザビエクの前にいるリリスの隣に座り、小さく震え、爪でソファーの布を掴んでいるリリスの肩を叩いた。


「ニャ!?」


「起こして悪いな、今から計画を話したいんだと」


リリスは前に座っている口だけ笑っているザビエクを見て、目を背けるように俺の方を見た。


「……本当にナイトクラブに行くんだね。オーナーは恐ろしいヤツだから気をつけて」


「だそうだ、ザビエク」


「そんなの承知の上さ。では計画について話そう」


俺は立っているザビエクの顔を一度だけ見て、リリスの顔を見つめた。


覚悟は出来ているみたいだ。


「決行時刻は開店の午後6時」


「ナイトクラブ、オーナーの名はカール・ケイン。スキルは不明、過去もわからない謎の金持ちだ」


「ナイトクラブは招待制で一般人である私達は当然入れない。過去には"処理"された客もいるから気を付けろ」


「ならどうするんだ?カールが出てきた瞬間襲うか?」


俺が聞くとザビエクは俺を可愛がるように笑った。


「私がこの1日中ボーッとしてたわけじゃない。招待制のチケットを偽造してきた」


「これを使って中に入ったらリリス、お前が侵入するんだ」


「あたしが?」


「その速さでオーナーの部屋に入り"特別チケット"を手に入れろ。それはオーナーの趣味に関わるVIPルームのチケットだ」


「つまり俺達2人は変態の趣味持ってるヤツのふりしてカールの所に行くわけだな」


ザビエクは頷き、会話で言っていた偽造チケットを渡してきた。


「一番重要なのはリリス、お前が特別チケットを入手する所だ。ほとんどお前にかかってる」


「どんな盗みも成功させた女だよ?安心しなよ」


「カイもいざとなる時が来るかもしれない。気を付けろ」


「ああ」


俺とリリスは承諾の代わりに偽造チケットを受け取った。

そうして時は流れ、翌日の午後6時。

5時間程前に毒帝の全国的な国葬が行われ、ナイトクラブは軍の関係者でいっぱいだった。


「チケットを拝見します」


2メートルを越えた用心棒にチケットを渡し、用心棒はチケットを拝見する。

俺とリリスはスーツとドレス姿に着替え、まるで無名の金持ちのように、姿を見せた。

ザビエクは表に出ず、今回も裏側で活躍するそうだ。


「今回は来てくださり誠にありがとうございます。では中へ」


用心棒はナイトクラブの扉を開けた。

中に入るとクラブは様々な光で辺りがチカチカしていて、この場にいるだけでも頭が割れそうになってくる。

廊下の奥を進んで行くと、暗闇の中に青紫のライトが流れ、霧に反射して揺らめく。

メインフロアは広く、音楽に合わせてダンスをしている金持ちや、座って酒を飲んで女性達と話しているのを見かけた。


「オーナーの部屋を見つけるとするか」


「そうね」


魔力で動く巨大スピーカーが壁を震わせ、露出が高いダンサー達が檻型のステージで踊っている。

裏市場の商人、名高い傭兵、貴族の子息など、普通ではない客だらけ。


「カイ、感じる?」


「なにが」


「"魔力結界"」


「いや、俺にはわからないな」


「スキル防止の魔力結界が張られてる」


「じゃあリリスのスキルが使えねぇな……ザビエクに連絡して立て直すか?」


建物内では感じない風が当たり、俺はリリスを見た。

リリスは先程まで持っていなかった酒が入ったグラスを持って一口飲む。


「どうやら速すぎるあたしには着いて来れないみたい」


「頼もしいな」


横を向きリリスに言った時にメインフロアの端に2人の黒服のガードマンが扉の前に立っているのが見える。


こいつらに聞くとするか。


「お前の右にいる黒服に情報を聞き出すからそれを聞いて動け」


「ん?おっけー」


俺はリリスから離れ、咳をして声を整えて黒服に近づき話した。


「カールに話があるんだけど…オーナーの部屋って何処かわかる?」


黒服は顔を横に少し動かし、一瞬目線を後ろの扉に合わせて言った。


「この先だ。だが今は"用事"でいない、後にした方が身の為だ」


「了解」


VIPルームの事か?カールは部屋に不在――都合がいいな。

気付かないうちに会話が終わってしまった…慣れないことするんじゃないな……


考えていたその瞬間、目の前にいる黒服のズボンが落ち、この場にいた隣の黒服含めた3人は黒服の落ちたズボンに目がいった。


「な、なに見てる!さっさと向こうに行け!」


「あ、ああ」


後退りして後ろを振り向くとリリスはいない。

ふと、扉の方を見ると少しだけ扉が開いていた。


あいつ1人で行けたな。

その間に俺はVIPルームの行き先にでも……


目の先にある螺旋階段を上がった奥に赤いカーペット、豪華なドレスを着た様々な種族が黒服に案内されて階段を上がっていた。


あれか。


しばらくしてリリスの帰りを座って待っていると肩を指で突かれた。


「ただいま」


「リリス、チケットは?」


「この通りー」


リリスは指に挟んだチケットを持っていて、紙には裸の女性と男性が妙なポーズを取っている模様が書かれている。


「一枚しかないけどどうする?」


「リリスばかり悪いから俺が行くよ。様子がおかしかったら助けに来てくれ」


「はーい」


リリスの指に挟んだチケットを取り、席を立つと交代するかのようにリリスもそこに座る。


「頑張ってね」


「ああ」


階段を上がり赤いカーペットの先にいる黒服にVIPルームのチケットを見せる。

俺の事をジロジロ見るや否や、否定もせずに通してくれた。

壁には豪華な金の額縁にアートが飾られている。


あれはカメラか!?


木造だが、先にはレンズが付いている。

そしてVIPルームの扉の前にある絨毯は赤ワイン色。

不気味なことにカールの趣味で、壁に奇妙なマスクや装飾品が飾られていた。


グッと力を入れて木目の重いVIPルームの扉を開け、中に入ると豪華なシルクのカーテンが下がっていて、メインフロアより濃い霧が舞い、広くて囲うように赤いソファーが置いてある。

そしてそこに男を囲うように女達が座っていた。

背後にはメインフロアを見下ろせるガラスがある。きっとあれで指名するのだろう。


やけに変な気持ちになる匂いだ……


すると両脇に女を抱える男は口を開いた。


「魔導監視装置で見ていたよ?君がここに来るのを」


低くて落ち着いた声が耳に伝わる。


「皆、このお客と話があるから、一度出てくれないか?」


女達はソファーや男の後ろから移動し、俺の横を通る際にいやらしく頬や胸、背中を指でなぞる。

中にはリリスのような獣人族や、はたまた耳が尖ったエルフのような女性もいた。


変化させた嗅覚で感じるのは興奮材の匂い。

待て、ここではスキルが使えるのか?


「さあ、予期せぬお客人よ」


「話をしよう」


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