第21話探偵と殺人鬼
私はザビエク。
海岸沿いの一軒の家に住んでいて、自分で言うのもあれだが探偵スキルを持つ凄腕の調査員。
そこから徒歩15分、そこには潮騎国家リュサリアがある。
そしてそこに、私の事務所がある。
「おはようございます、ザビエクさん」
「おはよう。セレン」
黒髪の腰まである女性はセレン・ヴァルト、金持ち一家のお嬢様で、優秀であり私の秘書。
「本日は予定通り、北部湾での取り引きを完了。それに今日は大仕事がありますよ」
「大仕事?」
セレンは新聞を渡すと、目に飛び込んできたものは……
「西の獣谷にある黒霧の森にて、偉大なる五帝の1人である毒帝が死去。明々後日の28日の午後13時にて国葬を行う」
そんな記事が1面に掲載されていた。
「殺されたか」
「はい。国王陛下から命令を頂き、今日8時にて魔法馬車が事務所前に到着、西の獣谷にて調査です」
「今から言う件は内密ですが、今回の毒帝殺害には脱獄囚が関わっているかと」
だろうな。きっと、あの時の子供だろう。
昨日は夜中遅くまで"残業"したんだ。
今日の楽しみに間に合わせなくては……
「その前にコーヒーを飲みたい」
「用意しています」
午前8時。
事務所前に魔法馬車が到着、馬車は空に浮かび、目的地に向かって猛スピードで向かっていった。
「本日の業務内容はこの大仕事だけです。久々に一杯やりませんか?」
「週末だしな、奢りはダーツ勝負にしよう」
「えー!?ザビエクさん上手だから嫌だなー」
「ハンデとして私は指2本、的から入り口までにしよう」
「乗った!」
-午前9時。
距離約4000キロ、綺麗に円形に荒れた地に辿り着いた。
魔法馬車から降りて現場に向かうと、そこには倒れている人物がいた。
「ザビエクさん、どうぞ」
立ち入り禁止テープを潜り、遺体の側に駆けつけた。
瞳孔は変化し、探偵スキルを発動させる。
「年齢は30代、死亡時刻は昨日の夜7時。日が沈んで少し経ったぐらいだ」
「治癒スキルで主に顔面の傷を治した形跡、死亡理由は……猛毒ではない。血だ」
ザビエクは遺体から少し離れ、血溜まりが凄い箇所を訪れた。
「容疑者はここで被害者と戦闘し、被害者は追い詰められ、血によって殺された」
ザビエクは指で血痕を取り、目で血を観察した。
「犯人は"ガン・ベルセルト"」
「……登録書にはそう記載されている。血のスキルを操る男だ。ただし、偽名の可能性ある」
カイは私の獲物だ、誰にも邪魔させない。
「帰って報告書を書いたら手紙鳥で送るよ。あとは殺人課の君達に任せる」
そうして私は簡単に仕事をこなし、事務所へ帰るとドーナツを食べながら報告書を片付けた。
「では行きましょうか!ザビエクさん!」
「そうだな」
残るは面倒な秘書セレンの子育ての手伝い。
決して子供は嫌いではないが、知人の子供となるとどう接していいのかわからない。
国内にある立派な家に辿り着き、セレンが扉を開いた。
「ただいまー、いい子にしてたー?」
「お母さん!」
「ママ!」
2人のセレンに似た10歳と8歳の姉弟が駆けつけ、セレンの腹に飛び込んだ。
「ザビエクおじちゃんだ!2人は元気にしてたか?」
「おじさんだ!」
「ザビエク!」
2人は激しく胸に飛び込み、思わず倒されそうになった。
「元気でよかった」
2人はすぐ母の元へ戻る。
そうして一件をまた片付け、2人を寝かすと私とセレンは週末にいつもの酒場へと行く。
「カンパーイ!」
セレンは高くグラスを突き出し、コップ一杯の酒を飲み干した。
そこからと言うもの、酔いが回るうちにダーツで奢り対決をしたり、セレンが酒を奢ったりして私はいつも家までセレンを送り届けた。
「ほんと、ありがとう」
「ボスの役目だ」
「じゃあまた土日か、月曜日に。ザビエクさんも気をつけてね?」
「かなり酔ったからな、わかってるよ」
そうしてセレンが家の中に入り帰ったのを見送る。
酔ってふらついていた脚はいつの間にか整い、溜め息を吐く。
時間は午後10時……か。
向かう場所は荒れている所で有名な区内。
荒くれ者達が集まり、メンバー全員が殺人を犯していても法で裁けず野放しにされている。
探偵スキルで痕跡を追い、辿り着いたのはそのメンバーがいる建物だった。
糸スキルで服全体を変え、聴覚を変化させ、1人ずつ位置を割り当てそして短剣を生成する。
さあ、始めるか。
ドンッ!!!
建物の扉を蹴り飛ばし、メンバーらは振り向く。
その無防備な所に短剣を投げ、頭や喉を確実に貫き殺していく。
「このッ……!」
1人が武器を構えた瞬間、またナイフを生成し軽く武器を受け流して横胸を刺し、そのまま殺した。
あと5人。
2階に上がるとボスとその手下はポーカーをしていて、わざと音を立てて気付かせた。
「一階の連中は何してんだよ!」
「おい!お前は誰だ!」
短剣を投げる前に、彼らの呼吸と視線を確認する。
狙いは一瞬、死角に入った瞬間だ。
1人の手下が近くナイフで腹と喉を一瞬で切り裂き、ボスの頭に向けてナイフを投げ、天井に血飛沫が飛んだ。
「な……」
4人は固まり、その間にナイフが飛び交い一瞬でこの建物は血まみれになった。
私はザビエク。
"貪食者"であり、調査員でもある。
そして殺人鬼でもある。
----一向その頃、俺は獣谷から離れ南東にある潮騎国家リュサリアに訪れていた。
海風が体を涼ませ、道端に捨てられてあった新聞を手に取った。
凄腕調査員ザビエクが容疑者を特定。
名前は違うし、イメージされてある顔も俺とはかけ離れすぎてる。
俺は目の前にある大きな酒場に目が行った
やはりザイトライヒに近づく為には、五帝達に接近しなくちゃいけない。
毎回酒場に寄ってる気がするが……まあ、色んな奴がいるし冒険者の集会場所だからな。
とりあえず、今は情報提供者でも探すか。
酒場に入り片っ端から話しかけてみる。
「五帝について知らないか」
若い冒険者2人は言う。
「いいや?」
次は熟練の男達に。
「奴らとは関わりたくない」
そして次は初心者の冒険者に。
「私達が知ってると思う?」
そしてまた次は異種族冒険者達に。
「確かにぼくはエルフだが、そんなに長生きじゃない」
情報を聞き出すこと1時間。
何も得られず、適当な宿の部屋に泊まった。
寝返りをうったら落ちそうなベッドに寝転がり、カビだらけの天井を見る。
狭苦しい……今度からはゆっくり調べよう。
毒帝殺しで俺は追われていない。
ゆっくり時間をかけながら進もう、どうせ色んなもん食ったおかげで寿命も長いんだ。
長旅で疲れた体を石板のように固いベッドで眠り、ふと気が付けば深夜だった。
酷くきしむベッドから起き上がり、部屋の外に出ると香水臭い匂いが廊下に充満している。
娼婦か?野宿してた時の方が100倍マシだな。
宿を出て冷たい空気を取り込んで、脳をリラックスさせた。
気分転換に何か食べよう、油っこいのが欲しい。
本当に、幸いスキルのおかげでこの世界は食文化は盛んだからな、魔物の串焼きと衛生面以外は。
「カイ・アルベルトだな」
宿を出て一歩、歩いた瞬間。
背後からこの世で自分しか知らない本名を言われた。
警備隊?俺を捕まえに?そんなはずない。
毒帝の犯人は世間じゃあ、俺じゃない。
間違えたとしても、似ても似つかない。
じゃあ……一体誰だ?
ゆっくりと背後を振り返ると、そこには見覚えもないまるで忍者のように全身真っ黒で姿を隠している男がいた。
「誰だ」
「私は毒帝を殺した君を殺しに来た男だ」
「答えになってない」
「知らなくていい。お前は獲物で、俺は狩人だからな」
男は何処から出したかもわからないナイフを投げ、俺は躱してナイフを掴み取る。
この魔力の感じ……なにか既視感を感じる。
まさかだとは思うが…こいつは……
俺と同じ"貪食者"なのか?
深夜の路地に、視線と殺意が残った。




