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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
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第19話闇走

師匠は数十本の槍と共に、少し遅れて走り出した。

槍先が頬を痒く掠め、自分に迫る槍を1本1本見極める。

槍の雨で精一杯なカイに師匠は腕を引き剣先を向け、カイの死角から攻撃を仕掛けた。


カイとの距離がかなり離れていても、構えて心を落ち着かせ、神速の速さで剣を突き出せばあっという間に相手は死ぬ。

10メートル…7メートル…5メートル。

剣先は背後を向けるカイから半歩前まで進んでいた。


貫かれて死ねッ!


聴覚を変化させていた俺は、近づいてきた師匠の剣を屈んで避け、短剣を生成すると師匠の懐に潜り心臓に短剣を突き立てた。


「クヌッ!!」


師匠は避けられた途端、地面を蹴り距離を離した。


ま、マズかった……!あんな、あんなバレバレな罠に気付かなかった!

それに、あの感知能力……さては五感を強化するスキルか。

……ではなぜ、あの時、あの短剣はまるで手の平から突如現れたようにあったんだ?


「わからんな。お前のスキル」


「五感?錬金?」


「さあな、戦いながら考えてみろ」


手の平に空間が歪んで見える程の風を出し、地面に向かってスキルを放った。

地面に大きく亀裂が入り、大爆発が起きて巨大な塊が師匠に降り注いだ。


「こんなもの…」


師匠は土の塊を切り刻み、背後に回った俺に剣を振るった。

俺は両手に風を出し、右左と間を空けてスキルを放つ。

師匠の背後に再び回り込むが、師匠はそれを知っていたかのように血を操り、数本の血の槍を上空から降らせた。


流石は歴戦の猛者だ。

だが、俺のような卑怯なヤツとは戦ったことないだろう?


俺は姿を消し、剣を生成して油断していた師匠の心臓目掛けて剣を突いた。

師匠は躱すが肩に傷を受け、振るった剣を受け止めた。


「お、お前、まさかだとは思うが……"貪食"か!?」


「そうだ」


力任せで剣越しに師匠を押し、体勢が崩れた隙に剣を振り上げた。


ザッ!!!


師匠は腹から胸へ、大きな切り傷を負い追撃をする間もなく、師匠は急いで距離を離れた。


「俺としたことが……!」


俺は強風を手から放ち、砂埃を纏いながら師匠の目の前に現れた。


ま、マズい……


師匠は今の攻撃でアルダのスキルを妨害するのをやめてしまい、急速に全身に毒が回った。

俺は剣を振り下ろし、力がかなり弱まっているのを感じる。


嗅覚でわかる。この本能的に嫌気が差すような皮脂の匂い。

こいつ、さてはアルダに一発盛られたな?


師匠が剣を打ち返す前に、すかさず俺は流れるように剣を手放し、師匠の脚を掴んだ。

ふくらはぎや太股に手の跡がくっきり残る程強く握り、師匠を背中に担ぐと地面に強く叩きつけた。


「うっ……!!!」


呼吸が出来ず、あまりの速さで自分がどうなっているのか分からない。

そして状況を理解した瞬間、次の攻撃が繰り広げられた。


俺は仰向けに倒れた師匠の上に乗り、拳をハンマーの如く振り下ろす。

拳は血にまみれ、飛び散った血が頬に付く。

師匠は腕を伸ばし、残っていた血を使い、俺に向けて滝のように飛ばした。


「無駄だ」


俺は腕から広い盾を生やし、容易く血の奔流を防ぐ。

腕から手甲へ、皮膚と肉を切り裂き、盾は小さく変形しながら移動。

武器となった盾で師匠の顔を殴った。


歯が欠け、意識が朦朧としている師匠の首を強く締める。


「殺しはしない。アルダが嫌がるかもしれないからな」


「それに、俺はアンタを殺す理由がない」


変化した聴覚や感覚で師匠が気を失ったのを確認すると、俺は慌てて毒帝の方へと向かう。

地面から伝わる振動が激しい戦闘を感じさせる。


ズドンッ!!!!


少し先に2人が見えた途端、突如砂埃が舞い上がり、妙な静けさと嫌な予感が心を冷たく突き刺した。


「アルダ!」


何故だ。何故、こんなにも心臓が高鳴る?

理由はわかっている。

聴覚や感覚での、"アルダ"が確実に弱くなっている。


毒帝から丁度10メートル。

全身に違和感が現れ、それに瞬時に気が付いた。

あらゆる"全て"がおかしい。

感覚や視覚、聴覚や嗅覚そして神経も、全て異常をきたしていた。

そしてもう一度呼ぶ。


「アルダ!!」


毒帝は日が差すとの同時に象徴のように砂埃の向こうで剣を掲げている。

砂埃からは毒帝に剣で右胸を貫かれたアルダがいた。


「ごぼっ!ごぼっ!!」


咳と共に血が毒帝にかかる。

その瞬間、昔の事がフラッシュバックとして鮮明に蘇る。

怒り、憎しみ、後悔、悲しみ。

全部ぶつけたくなる衝動にかられた。


「カイ!一旦撤退だ!」


ハンは糸で自分の肉体を無理矢理動かし、瀕死のアルダを糸で引っ張って逃げ出した。


「ここで逃げんのかよ!ハン!!」


「ああ!アルダを助けるためにな!」


それを聞いて嫌々動こうとすると脚が動かない。


神経か…!


毒は全身に蔓延して動かない。

意識が遠退く前に造り出した短剣を脚に突き刺し、痛みで意識を保って逃げ出した。


「逃げろ!その女の血は頂いたからな!」


毒帝は拳サイズの瓶に一杯のアルダの血を見せ、甲高く馬鹿にしたような聞きたくもない笑い声を出した。



----襲撃から数時間が経過した。

あれから外部からの追手に逃げ場を防がれ、ハンと合流した時には昼過ぎ……アルダの無事を確認できたのは夕日が沈む頃だった。


数々の追手に、俺はかなりの体力と魔力を消耗。

回復は出来たが万全ではない。

そして焚き火で体を暖めているアルダの横にいるハンは、相変わらず綾取りをしていた。


「監獄でもそうだったな。ハン」


「ん?ああ、これか。癖で」


「それをする時は大体考え事だ。毒帝のスキルでもわかったんだろ」


「……そうだよ。あいつは毒を周囲に蔓延させるスキルだ」


「"死毒精製(デッドライン)"、上位スキルの有名所だ」


「あらゆる毒を周囲に漂わせる……であってるか?」


「触れた瞬間に浸透させ、一瞬で体内の毒を増幅させる。加えて、こいつは熟練されてるから解毒出来ない。専門家じゃない限り、時間経過で治すしかない」


火で明るく写るハンの顔色はかなり悪い。寝ているアルダとそう変わらないぐらいに。

それと比べて俺は追手と戦えていた……この違いはなんだ?


「カイがそんなに平気なのはスキルの相性だ」


「俺が考えていた事がよくわかったな」


「当てずっぽうだよ」


「それで、スキルの相性?」


「あのスキルは一瞬で触れただけでもかなりヤバイ。でもお前の場合は貪食があいつの毒を喰らったんだ」


「つまり、俺にはヤツの毒の耐性があると?」


「その通り」


それを聞くと俺は立ち上がり焚き火から背を向けた。


「カイ、まさか一人で行くつもりじゃ……」


「そのつもりだ」


「アルダの代わりにぶん殴る。もし、こいつが起きたら砦まで案内してやれ」


「きっと、絶対に行きたいはずだ」


俺はアルダの胸に手を当て、知識の限りで胸の傷を慎重に繊維を一つずつ塞いで治癒を行った。


「やっぱり試したかいがあった」


俺は砦に向かって歩き出す。

ただ無言で咳をしているハンは俺の肩を叩き、一言だけ言った。


「助けにはいけない。わかってるな」


「ああ」


そして俺は砦に向かって歩く。

一歩一歩、怒りを込めて歩き、憎しみを毒帝に向ける。

自分が殺した追手の骸を跨ぎ続け、辿り着いたのは数人で守っている砦の正門だった。


「毒帝!!帰ってきたぞ!」


暗闇から呼び掛け、門から弓や槍、スキルを構えた手下が出てきた。

矢が発射される。

刃は風を切り裂き、俺に向かって容赦なく突き進んで行く。

軽々と体を傾けて避け、矢を掴んで手下の頭に投げると、矢は手下の頭蓋を打ち砕いた。


あの日の景色が蘇る。

守れず、奪われ、取り返せなかったかけがえのない物。

今度は違う。必ず守る。必ず殺してやる。


「ど、毒帝様に知らせるぞ」


「俺らが引いてどうすんだよ!」


「だ、だけどあんなの……!!」


俺は武器を持つ手下の脚を切り裂き、跪いた所に頭を下から突き刺す。

手下は遅れてスキルを放ち、生成した短剣を投げ、風で勢いが増した短剣は頭に大穴を空ける。

手下は後退しながら槍を突き、槍を掴み、へし折って手下の盾を貫通して喉に突き刺し、そのまま持ち上げて地面に叩き落とす。


正門を両手で強く開け、目の前には騒ぎを聞き付けて来た毒帝と手下数人がいた。


「ああああ!!!!!」


俺は怒りの狼煙を上げ、手下の渦に飛び込んだ。

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