表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
16/30

第15話鎖の檻

翌朝、豪雨は遠のき外は泥と焦げた臭いが立ち込めていた。


「準備できたか」


アルダは剣の手入れを済ますと、鞘に入れて椅子から立ち上がる。


「ええ。行きましょ」


その表情は表面上では笑顔だが、隠しきれない緊張と殺意が溢れ出していた。

宿を出てアルダは昨日の晩に渡されたヴェイルの地図と、師匠に送った魔法の手紙の返事を確認していた。


俺はすっかり晴れた青空を見上げ、微かに肌にビリつく魔力を感じ、拳を強く握った。


「ヴェイル……」


小さく呟き、アルダは確認が出来たのか歩き出して俺は横に揃って歩く。


「そういえば、師匠とは何処で待ち合わせをするつもりだ」


「んーっとね、私が地図を送ったから師匠はあの抜け道付近にいるってさ」


アルダは魔道具をコンコンと叩き、師匠宛に届いている地図を見せた。


「そうか、念の為に地図を見せてくれ」


「うん」


アルダはヴェイルの地図を俺に渡し、ルートを確認した。

インクと汗の匂い…魔法で即興で作ったわけではないな。

それに、この感触……

親指でなぞる箇所には乾いた血がついていて、なにやら不安が涌き出て来る。


「アルダ、疲れは取れたか?戦闘前に確認しておきたい」


「ヴェイルのせいで余計に疲れちゃった…あの緊張感どうにかしてほしいもんだよ」


「ほんと。殺されるかと思っちゃった」


「そうだな」


アルダは溜め息を吐いてあくびをすると、やはり気になっているのか剣を引き抜いた。


「その汚れ、いつからあった?」


「さあ?ずっと取れないからムカつくんだよね」


その汚れは血のような色で、異様な雰囲気を出しており、悪魔でも取り憑いたかのように不気味だった。

そして町を出て砦に向かう道中、地図では道を外れた先に抜け道があり、地図で確認した場所に師匠はいた。


「行くか」


道を外れて向かう先は森。

奴らの中では抜け道と有名なことから、所々草が掻き分けられている。

嗅覚と聴覚を変化させ、鼻と耳を澄ますと男女の匂いと何か動く音が聞こえた。


「着いてこい」


俺を先頭に抜け道を進んで行くと、砦の壁に細工がされていて、確かに抜け道があった。

だが、その抜け道は溜まり場になっていて恋愛場やサボり場となっていた。


「これ……一体なに?」


「さあな」


生い茂った草から覗き込み、砦全体を見渡す。


「3人でどうやって潰す?」


3人…か

その言葉を聞いた瞬間、俺は少し師匠の方を睨み、砦を見る。


「とりあえず火薬庫、食糧庫は潰すべきだ」


「アルダは前回、どうやった?」


「そ、その時はまだ頭を使うってことはしなかったから……」


「しょ、正面突破だったかな」


「それで毒帝の一歩手前まで行ったと……そうなると、意外にコイツらは強くないのかもな」


「そうだね」


「早い事決めよう、俺は火薬庫、君とアルダは食糧庫を潰して臨機応変で戦おう」


一度、騙されたふりでもしてみるか。

この場を整理しているような感じを出している師匠に乗っかり、一度確かめてみる事にした。


「わかった。師匠、気を付けろよ」


「わかっとる」


すると師匠はバレないように、草から移動し、壁の抜け道から砦へと入って行った。


「私達は師匠が火薬庫を破壊できるように騒ぎを起こしましょ」


「そうだな。俺はこの溜まってる奴らを倒す。アルダはその間に侵入し、騒ぎを駆けつけた所に食糧庫を潰す」


「わかった」


俺が動こうとした瞬間、アルダは俺の手首を掴んだ。


「死なないで」


その言葉に頷く。

そして俺は一歩ずつ、バレないように草を移動して目の前にいる4人の集団の背後を取った。

両手にナイフを生成すると、刃が骨を砕く鈍い感覚が手に伝わり、温かい血が顔を濡らす。

前にいた手下は戦闘態勢に入り武器を構えようとした瞬間、手下の口を抑えて腹を深く突き刺し、遅れた1人の首をナイフで掻き切った。


血を吹き出す音と倒れる音、それしか聞こえず誰も見向きもしない。

辺りを見渡してアルダを見つけると、アルダはどうやら壁の抜け道を警備している手下にてこずっている。


アルダは俺待ちで、俺もこれといった策はない。

物音で釣るか?投げた方向でバレるな。

なら、地道に倒すか…時間がかかるな。

俺の役割はヘイト稼ぎ……やるしかない。

100人位対したことないだろ。


「おい!!」


突然の大声に手下達はその声の方向を見る。

そこには2つの生々しい首を両手で、まるで見せつけるかのように持っているカイだった。


「く、狂ってるのか!?」


「死にたがりなだけだろ!」


手下はその姿を見た途端、武器を持って襲い掛かって来た。


「玉水弾!」


手下の1人が水スキルの技を放ち、木や土を抉りながら不安定な軌道を描いて進んで行く。

その大きな水玉を叩き落とし、俺の前に土埃が高く舞い上がる。


「はあっ!!」


その土埃に向かって毒が塗られてある剣を振り払った。


ザッ!!!


斬った先には何もなく、背後から影が出現した。

俺は手下の背後を取り首を捻り切る。

その姿を見た手下達は戦いぶりに思わず既視感を抱いた。

"化け物"。

槌を扱う男と同じ化け物だ。

その場にいた誰もがそう感じた。


「ゔぇ、ヴェイル様を呼べぇ!!」


声からは力が無く、増援ではなく逃げる為に呼び出そうとしていた。

そして壁の抜け道から砦へ入ろうとしたが、その壁の抜け道は誰かによって固く閉ざされていた。


「た、助け……!」


壁を必死に叩く手下に投げ槍を放り、槍は手下の頭を貫通して壁に突き刺さった。


「や、野郎!!」


手下達は武器やスキルを構えて戦おうとするが、全く攻めずただ威嚇をしているだけだった。

スキルも熟練させていないのか威力もかなり弱い。

どう見たって前に手下達と戦った奴らの方が強かった。

この手下……元冒険者達か。

金が無くなり、こうして人を殺すしか生業できなくなってしまった人、だが慣れてないんだろうな。


立ち向かおうとする手下達の顔は怯えており、そもそも戦う前提ではないのだろう。

一向その頃、アルダは息を殺して建物の障害物から障害物へ、バレないように侵入し食糧庫まで辿り着いていた。


ひえぇー。カイの戦いでみんな集まって来てる!

どんだけ暴れたらあそこまで増援が行くのやら……


松明を盗んで焚き火で火をつけ食糧庫に向かって放り投げ放火した。


「よし…!」


あとは火薬庫にいる師匠と合流、そしてカイとの共闘でここを潰せる!

空を見渡しても雨雲はやって来ない。

ヴェイルは遅れてるのか!?


そう物陰から様子を見ながら火薬庫へと向かっていると、道中他の連中とは明らかに違う頑丈な鎧を着ていて指示を出している男がいた。

そして野太い鎖を掴んで引っ張っており、その鎖の先、鉄檻の中で灰色の腕が微かに見えた。


周囲を見渡すが火薬庫に向かう道はあの男の先だけ。

大半の手下はカイの所に行ってて、私の仲間だってこと知ってるから1人相手に増援を出してる……


男を殺せばここの士気は下がる……男の部下は3人。上手く立ち回ればいける!


あの夜、カイは私を見捨てず戦ってくれた……手下達と共闘する事だって出来たはず……

だから、それのせめてもの恩返しを!!


「おい!手下共!!」


アルダは剣を引き抜き、正々堂々真正面から構える。

4人の手下はそれに応じるように武器を構え、檻から聞こえる獣声を合図に手下は動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ