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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
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第14話師弟の刃

日が差し込んだ霧に包まれた森の中。

2人は激闘の末、ヴェイルは戦いながら治癒スキルを使い、全ての致命傷を治した。

ハンは骨にヒビが入った左腕を右手で抑え、雷を帯びながら飛び去って行くヴェイルを見上げる。


「あの男…カイを追うつもりか」


糸スキルを上手く使い、左腕をしっかりと巻き付け肩に掛けて固定すると、カイ達がいるであろうこの先の町へと向かって行った。



----



一方その頃、俺はアルダとその師匠の決闘を見守っていた。

2人は鞘にしまっている剣の柄を掴み、先手をどちらが打つのか睨み合い、呼吸を整える。


聴覚を変化させると師匠は落ち着いていて、震えもない。

だがアルダは師匠を前にして心拍が上がり、目に見えないが筋肉の震えを感じる。

アルダが本能で恐怖する男、興味がある。


そして最初に動き出したのは師匠であった。

師匠のスキルは嗅覚を強化するにも関わらず、風が裂け、音が追いつくよりも先に師匠の影が追った。

あっという間にアルダとの距離を縮める。

その速度は"ヤツ"を思い出させた。


嗅覚を鋭くするスキル……今のは―もっと別の感覚だ。


姿が重なり、鞘から抜かれた剣は光りアルダは1歩遅れて防御をした。

アルダは決して弱くはない。そこらの冒険者に比べればかなりの実力差があるだろう。

そんなアルダは師匠に剣で押され続け、遂にはかなり離れていたはずの背後の大木に背をつけた。


「この一太刀を受け止めたか!上達したようだな!」


アルダはただ抑えられ、師匠はアルダの防御を一瞬にして崩すと、手を開いてアルダの腹を強く叩いた。


「ぐふっ!!」


腹を抑えるアルダに師匠は数歩下がって剣を再び構えた。


「基礎は思い出せ。魔力を使い肉体を強化しろ。魔力を巡らせ、筋肉や骨が鋼のように、脚のバネは本当のバネのように」


アルダは目を瞑り、少しして準備が整った。

強く踏み込んだ衝撃で土は吹き飛び、師匠に飛びかかったみたいに一撃をお見舞いした。

師匠は一撃を受け止めるとニヤリと笑い、剣の型を変え、剣を下げた。


「アルダ、傷は大丈夫か?」


そう聞くとアルダは頷き、師匠に向かって走った。

しかしそのスピードはあの時のように速くなく、師匠は剣を軽々と避け、アルダに足を掛けて転がした。


「ちょっ、ちょっと!」


アルダが言いかけた瞬間、師匠はアルダの鼻に剣先を当てる。

アルダは息を飲み、一滴の冷や汗を垂らした。


「この時点で2回は死んでいるぞ。さあ、次が最後の1回だ」


そうしてまた距離を取り剣を構えた。

2人ともまだ動かない。

そこには鳥の鳴き声、風で葉が鳴る音。

アルダの汗が顎から落ちた瞬間、師匠は動き始めた。

一歩一歩、確実に距離を縮めその姿には隙一つもない。


終始アルダは動けず、刃は喉に当てられた。

稽古は終わり師匠が剣を納めると、アルダは力が抜けてへたり込んだ。


「いつになっても勝てない、やっぱり強いね」


「若いから経験がない。それにしてはかなりやる方だがな」


すると師匠は俺の方を見て納めた剣に指を当てた。


「お前もどうだ」


「遠慮しておく」


そうして2人の稽古は終わり、師匠の奢りで昼飯を食べることとなった。

店の端でアルダは食べ終わり師匠は酒を飲む。俺は肉を口に頬張り、強く噛み締め飲み込んだ。


「アルダの匂いを辿って来たと言ってたな…一体、何処からつけてた」


「風が匂いを運び教えてくれた。深い意味はない」


師匠はそうやって笑って答える。

だがその指先から、赤い筋が一瞬だけ通った。

まるで"血"が動いたかのように。

――嗅覚ではない。何か別の、生々しい感覚だ。


まあスキルを明かさないのは常識、だが信頼していると言っている俺や、弟子のアルダでさえ嘘をついた。


何か裏があるな。


師匠は酒瓶を空にしてまた注文をする。


「カイも頼む?」


「いや、もういい」


「それで聞きたいんだが、アルダと師匠は何処で知り合った」


2人に聞くと師匠が易々と俺に話してくれた。


「アルダが毒帝を襲った後。深傷を負い、倒れていた所を俺が助けた」


「そこから数年間、俺はアルダを鍛え上げた。立派な戦士にする為、仇討ちをさせる為にな」


「まあ苦労したもんだ。暴れるは物は投げつけるわで……」


「うるさい!もっと喋ることあるでしょ」


アルダが少し怒りながら言うと師匠は鼻で笑い話を続けた。


「それでアルダは突然、置き手紙を残して出て行った」


「んで、ここで再開ってわけか。アルダも一言言ってくれればよかったんじゃないのか?」


そう聞くとアルダは師匠を嫌そうな目で見て言う。


「稽古を見たでしょ?私が旅に出るって言ったら、師匠はああやって『稽古だ!』とか言って止めてくるんだもん」


そして俺はもう一つ師匠に聞いた。


「あともう一つ、何故師匠はアルダと瓜二つの剣を持ってるんだ?」


「同じ町の出身だからな」


「そう、凄い偶然じゃない?」


「へぇ……」


アルダの剣には鉄と汚れ落としの酒の臭いがする。

だが、師匠には血と油の臭いがびっしりと残っている。

これまでの男が手入れを怠るだなんて考えられない。

スキルの嘘といい、武器の出会いといいこの男、"秘密"があるな。


しばらくしてまた酒瓶1本を飲み干し、俺達の分まで会計を済ませると、アルダに後日連絡するように何かの道具を渡した。


そして日は沈み2人は宿へと戻り、アルダはベッドに座る。


「アルダ」


「ん?」


「師匠に何を渡された」


「あーこれね」


アルダは机に置いていたそれを取り、俺に見せる。


「これは魔道具で、板書したら共通してる人の元に板書した紙が送られるの」


「便利だな」


「でしょ?」


笑顔を見せ、ベッドの横にある棚にある本を取り、メガネを掛けて読み始めた。

そして俺も寝ようかと魔力で付いている電気を消し、ベッドに入って目を瞑った。


少しして、眠気が来たと思った瞬間豪雨が降り始めた。


「ゲリラ豪雨だ。明日、山道通るから嫌だなー」


アルダがそう小声で呟いた時。

ビリビリと窓を通して部屋全体に電流が響いた。

その瞬間目を開け、ベッドから起き上がり装備に着替える。


「アルダ」


呼び掛けるとアルダも気付いたのか、ベッドの横に立て掛けてあった剣を掴んでいた。

俺とアルダは部屋から出て階段を降り、宿の外へ姿を出した。

目の前の道の真ん中にいるのは黒い布を羽織った大男―ヴェイルであった


「カイ」


豪雨でよく見えないが、低くまるで獣のような声で誰かがわかる。

暴風でフードが外れ、素顔を現した。

治癒スキルで治したのかすっかり傷は塞がっている。

しかし、顔には俺が付けたであろう傷痕がしっかりと残っており、ヴェイルは指で傷痕をなぞると、手にハンマーを引き付け握り締めた。


ヴェイルは俺とハンとの戦闘でかなり魔力と体力を消費したはずだ。

それに、傷を治したせいで魔力は底切れているはず……


「アルダ、まだ手を出すな」


ヴェイルは脚を震わせながらも俺に近づき言う。


「まずは酒でも交わそうではないか」


意外な言葉に拍子抜けする。

だがこの場を使ってヴェイルに何か取り引きできるかもしれない。


「わかった」


アルダは何かを言いかけ、ヴェイルは宿へと入っていった。

俺はアルダの心配というより、少し怒っていて、俺は小さく呟いた。


「もし、ヴェイルが怪しい行動をしたら迷わず斬れ。いいな」


「わかってる」


宿の中へと入ると皆、ヴェイルを知っているのか立ち上がり、何かやらかすのではないかとソワソワして、ヴェイルが座る席から間を空ける。

俺はヴェイルの前に座ると、店主が気を効かせて特上品であろう酒を出した。


「ジョッキで持ってこい」


「か、かしこまりましたァ!」


店主は慌ててジョッキを置くと、酒をドクドクと注ぎ、俺には小さなグラスに注いでその場を逃げるように去っていった。


「話があるんだろ」


ジョッキに入った酒をグビグビ飲み干すヴェイルに言うと、ヴェイルは大きなゲップをして言った。


「取り引きだ。毒帝の本拠地への抜け道を教える」


「その代わり、俺と一騎討ちをしろ」


「カイ!こんなの信じられない……!」


「いい、だが目を離すな」


そう言うとヴェイルは右手の人差し指を机に出し、左手に持っているハンマーで人差し指を叩き潰した。

指があった場所には潰れた肉と骨、血だけが残る。


「これで信じてもらえるか」


「………」


スキルで治せるとはいえ、ここまでやるか…なら……


「わかった。じゃあなぜ、お前は一騎討ちを望む」


「俺は強いヤツと戦いたいから。それだけだ」


狂ったような回答に思わず吐き気が出てくる。


「俺はその抜け道を教えるだけ。偵察は任せる」


「罠じゃない証拠は?」


ズドンッ!!!!


次は中指を叩き潰した。

その顔には迷いも、苦痛の表情すらない。


「3本じゃ、武器は握れねぇぞ」


「3本で十分だ」


酒を飲み干し、またジョッキに満タンになるまで注ぐ。

卓上に残ったのは血と酒の臭い……そして、狂気だった。


「これで信じろ。だから教える条件に、本拠地にて俺と一騎討ちをしろ」


「……いいだろう」


すると事前に用意していたのか、地図を机に出し、赤い丸で囲われた場所に指差し、ジョッキを持って立ち上がった。


「ここが抜け道だ」


それを最後に、ヴェイルは宿に出てハンマーを突き上げ夜空に消えるヴェイル。

俺は確信していた。

戦いはもう始まっている。

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