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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
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第11話怪物の定義

町の人々は恐れながらも、窓からその様子を見ていて、酒場の店主は急いで椅子やテーブルを使って壁を塞いだ。


そして倒れた俺に迫る槌の使い手―ヴェイル。

彼のスキル、"ハンマー"は夜にしか発動せず、昼間はただの槌となる。

夜ではそのスキルの本領を発揮する。


胸に乗っている槌は重く動かせない。

常に胸を圧迫させられ、呼吸が出来ない。


「貴様は毒帝様になんの恨みがあるんだ?」


ヴェイルは槌を掴み俺に強く押し付ける。


「ガハッ……!」


肺は押し潰され、溜まった空気が一気に排出する。


「鉄の使いと聞いた。その力を見せてみろ」


ヴェイルが力を弱めると俺は風スキルを地面へ放ち、体勢を立て直すと、俺はヴェイルの顔に拳をめり込ませた。


ズドッ!!!!


衝撃でヴェイルの手からハンマーは離れ、血を唾のように吐き出し、微笑む。

明らかに大したダメージを見せていない。


「中々良いパンチだった」


ヴェイルは手を上げ、何かを呼び出す。

混乱と不気味さが、より一層手が出せない。


ガシッ!


ヴェイルが呼び出していたのは、吹き飛んだはずの槌であった。


「では行くぞ」


ヴェイルは槌を振り上げ、金属の衝突音が鳴り、俺は上空へと吹き飛ばされた。


頭から血が吹き出るような感覚に襲われ、そのまま民家へと落下する。

激しく建物が崩れる音が聞こえ、俺の下敷きになった壊れたテーブルから起き上がる。


脳内が熱く酔っぱらいのようにふらつき、吐き気が俺を襲った。

右には縮こまって震える母子がいて、俺は手を伸ばす。


「安心し……」


ドンッ!!!


壁を破壊して現れたのはヴェイル。

ハンマーは月光の力で紋様に沿って輝いており、ヴェイルのタトゥーも同様光っている。


「鉄であり、風をも操るか?さては貴様、"貪食"か」


ヴェイルは口角を上げ、槌を床に叩きつけた。

地面に青白い光を放った亀裂が走り、逃げる暇なく爆発し、辺り一面を吹き飛ばした。


頑丈だった自分は軽傷で済み、咳をしながら煙を掻き分けた。

目の前にはあの母子が縮こまりながら、焼け死んでいる。


あの時も守れなかった―あの日の血と悲鳴が、脳裏で重なる。

手足が震え、呼吸が乱れる。

守れなかった後悔、その苦しみが胸を強く握り締める。


「どうした?亡霊でも見たか?」


ヴェイルは死体を跨ぐ。


「俺は弱き者が嫌いだ」


「弱者を切り捨ててこそ、世界は強くなる―それが毒帝様の教えだ」


ヴェイルは笑いながらそう言い、俺は手から剣を生成し斬りかかった。


「そんな甘い攻撃……」


俺は消えるように姿を消し、ヴェイルの背後へと移動した。

"影スキル"かつて、アルダを襲った賞金稼ぎから奪ったスキル。


「三つ目か!」


グサッ!!!!


ヴェイルは完全に油断しており、心臓を貫かれ、口から血反吐を出す。


「うぅ!うおぉぉ……うおぉぉお!!!」


しかし、ヴェイルは死なない。

月光の力にて、生命が維持され、それに加え治癒スキルで回復しようとしていた。


ヴェイルは槌を振るい、それを回避すると、風スキルで衝撃波を出してヴェイルを怯ませた。


「このッ……!」


ヴェイルの腹を剣で貫き、距離を取ると同時に投げナイフで攻撃を続ける。

ヴェイルは頭や首にナイフが何本も刺さっていてもなお、笑っていた。


「よく生きてるな」


「貴様もだろう?」


ヴェイルは構え、対となる俺もそれに合わせて構える。

炎が辺りを燃やし尽くし、人の叫び声が耳を震わせる。


この一瞬、世界は静まり、息だけが聞こえていた。


今だ!!


風スキルで一気に背後に回り込み、ナイフでヴェイルの背中を刺す。


「はあぁあ!!!」


ヴェイルは槌を振るい、俺はガードを固めて槌を受け止めた。


ゴギッ!!


「折れたなッ!!」


すると俺は姿を消す。

ヴェイルは辺りを見渡し、目と頭を動かして必死に探す。


「上か!」


ヴェイルは槌を上空に投げ、放たれた槌は俺の腹を殴り、そのまま高く空へと飛ぶ。


「クソがッ…!離れろ!!」


槌の重さと空気抵抗で槌から逃げられず、雲の中に入っていった。

すると、槌が震えているのが全身で感じる。


まさかッ!


ヴェイルは槌を使って自分を引き上げ、俺の後頭部を掴んで思いっきり頭突きをした。


ゴンッ!!


槌を掴み、俺の顎を槌で殴る。

何度も殴り、意識が薄れかけ、追い打ちとして月光の力を存分に与えた槌で俺の胸を殴り、地面に衝突した。


俺は震える脚で立ち上がり、口から血を吐き捨てる。


重い雷のような音が聞こえ、振り返った瞬間、上から放たれた槌を両手で受け止めた。


槌は重く、いくら押してもビクともしない。

すると降りてきたヴェイルが、槌を掴んで更に押し込み、俺は跪いて耐えるしかなかった。


「お前は人間ではない。怪物だ」


「自分の中の化け物を見せてみろ!」


バスッ!!!!


ヴェイルの背から血飛沫が吹き出し、その血は固まり、黒く濁った。


「ごめん、追いかけてたら時間かかっちゃった」


アルダのスキルが発動し、ヴェイルは猛毒に襲われる。

ふらついているが油断は出来ない。

ヴェイルは槌を引き付け、そのままアルダへと投げつけた。


「アルダ!」


アルダは槌を剣で防ぎ、衝撃で吹き飛ばされ、地面に転がる。


「毒スキルか……厄介なスキルだ……」


朦朧としているヴェイルの横腹を殴る。


「ごばっ!!!」


ヴェイルは腹を抱えてうずくまり、顔に膝蹴りを喰らわせ、顔を殴り、地面に倒れる。

馬乗りになると、俺は拳を振り下ろし続けた。


ゴッ!!!!

ゴッ!!!!


鼻は潰れ口から血を噴射し、返り血が顔を濡らす。

ヴェイルが槌を呼び出すと、俺は重たい槌を掴み、勢いに乗ったままヴェイルの顔に振り下ろした。


グシャッ!!!!!


顔は陥没し、隙間風のような小さな呼吸が聞こえる。


「はあっ!!はあっ!!!」


こうして抗っていたヴェイルの手は動かなくなった。


辺りは焼け野原になり、もう町とは言えない。

死体が焦げた酷い匂いだけが充満しており、声はまだ微かに聞こえる。


「背中が……」


アルダは腰を抑えながら立ち上がり、騒ぎを聞きつけた兵隊が馬に乗って来ているのを見つけた。


「カイ!早く逃げるよ、兵隊がこっちに来てる!」


「……そうだな」


顔を拭い、血溜まりに反射した自分を見つめる。

そこに写っていたのは、人間じゃない。


「"お前は人間ではない。怪物だ"」


その言葉が何度も繰り返され、アルダのビンタで目が覚めた。


「早く逃げるよ!」


「あ、ああ」


立ち上がるとそのまま地図通り、北の湿地の先へ向かう事となった。

森にて、捜索をしている兵隊から逃れる為、土砂降りの中、暗く冷たい洞穴の中に身を潜める。


「痛い?」


「平気だ」


治癒スキルを使い傷を癒す。

アルダも同様左腕の骨折を治し、両手でしっかり剣を振れるのを確認して、やっと一息ついた。


「それにしても、ほんと魔力量多いね」


「そうなのか?」


「私と比べたらね」


アルダは荷物から布を出し、髪を拭く。

そして追われていないか、洞穴の外をチラチラ確認をする。


不安なんだろう、目が泳いでいる。


「雨で俺達の証拠は残っちゃいない。安心しろ」


「うん……大丈夫だよね」


雨で濡れて多少は血が落ちたが、やはりまだ残っている。

全く落ちずにイライラしていると、アルダが使っていない布を取り出し、俺に差し出した。


「使っていいよ」


「血で汚れるぞ」


「別にいいよ」


布を受け取り、アルダは地図を開いて、現在地にペンで印をつける。


「ここからちょっと歩いたら湿地に辿り着く。そこを抜ければ目的地なんだけど……」


アルダは湿地を指差し、俺の方を見て注意深く言った。


「夜の湿地は特に魔物が多いの、それもかなり強い個体」


「雨ともなれば更に多いでしょうね。だから朝になるまでここで待機、いい?」


「丁度休憩したいしな、流石に身が持たねぇ」


アルダは荷物から魔道具の布を取り出すと、それは寝袋となり、床に敷いた。


「実はこれ、一枚しかないんだ。どうする?コイントスで決める?」


「アルダが使え、俺は地べたで寝れ慣れてる」


「オッケー」


アルダは少し気まずそうに返事を返すと、魔力を消費して疲れたのか、すぐに寝息を立て始めた。


目を瞑ればあの日のトラウマを思い出す。


今夜は寝れそうにないな。


そう、俺は洞穴から外をただただ眺めていた。

その夜は雨の音と、冷たい風の音だけが聞こえていた。

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