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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第二章毒を喰らう者
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第10話黒霧の町

アルダの指先はまだ痺れて、剣を何度も掴み直し、俺はスキルの使いすぎなのか、酷い頭痛が鳴り響く。


「カイ、大丈夫?」


「聞こえねぇよりかマシだ」


2人は笑いながらも、脚はフラフラとしていて疲労が見えていた。


「女が言ってた情報、確かなのか」


「従順そうだし……罠かもね」


「"黒霧の町"、"獣谷"か」


「右腕は槌使い"ヴェイル"。元王国軍の将」


「次は人間の化け物か」


そうして2人は黒霧の町の方向へと歩き、川沿いから離れた森の付近にある集落へと訪れた。


「宿を借りよう。とりあえず、俺は寝たい」


「倒れた時に寝てたくせに、まだ寝るの?」


「そうだよ」


集落へと入るとなにやら不気味で薄暗い。

村人や、商人は怯えており定期的に辺りを見渡している。

すると衝撃的な光景にアルダは言葉を失う。


「見せしめか」


逆らったであろう村人達が首を括られ吊るされており、カラス達が死体を貪って酷い臭いが充満していた。


「夜に出る。あの人に言わないの?」と子供が言いかけると、その母親は急いで口を手で塞ぎ、家の中へと慌てて帰っていった。


「今は宿を借りて休も?私は情報屋に話を聞いてくるからさ」


「ああ」


宿屋へ入り、そこでも不穏な空気が流れていた。

酒を囲んでいる輩は皆、武器を携えていて入ってきた2人を睨み付け、酒を口に運ぶ。

看板娘はその様子に酷く怯えていて、表面上は笑顔でも酒を注ぐ手が微かに震えていた。


「俺は先に部屋を借りる。お前は情報屋へ行ってくれ」


「わかった」


そして俺は階段を上がり部屋へ、アルダはそのまま宿を出て、情報屋へと向かう。

左腕は少しでも動かせば嫌な音が鳴り、時間が経っても痛みは冷えない。


左腕の痛みがズキズキと響くたび、俺は自分の無力さに苛立つ。

こんな状態で敵に立ち向かえるのか、少し不安になる。


「処置は後でいいや」


小さく呟き辿り着いたのは名のある情報屋だった。

各町に配置されていて、理由は過去の英雄が手掛かりにしていたからだそうだ。

こんな集落にあるのは予想外だけど、私もかなりお世話になったことがある。

情報屋に入ると真っ先に声をかけた。


「ルーピンさん、いますか?」


辺りを見渡すが誰もいない。

すると何1つ変哲もない扉が光りを出しながら開かれ、短い髭に体格のいい男がやってきた。


「おっ、アルダちゃんじゃん」


放たれる言葉や、体臭から酒臭いルーピンに思わず顔をしかめる。


「もー、ほんとにもう……」


と呟きながら、鼻をつまむ。


「酒臭かったか?いつものことだろ」


「ルーピンさん、あなた一体何処から出てきたの?」


「この魔法の扉から出てきたんだ」


「待て待て?毒帝の場所には行けないぞ?」


ルーピンは軽い冗談をアルダの耳元で囁き、アルダは酒臭さで思わず後退りをした。


「ほら、何が聞きたい?金は高けぇけど」


アルダはセレスが言った情報を話し、ルーピンはそれを聞くと辺りをチラチラ確認して答えた。


「「処刑人シアンは、この先の獣谷にいる。隣国の砦を乗っ取ってるらしい」


「砦?」


「ああ、王国軍時の手下達を仕えているんだとか」


砦、そう聞くとかなりの大勢だと予測が出来る。


「1人じゃ、ちと無理なんじゃねえのか?あんな大勢、勝てる見込みは?」


「正直、無理かも……でも、やらなきゃ先に進めない」


「なら正確な地図がいるだろ?」


ルーピンは散らかった部屋から探し始め、紙が詰められているタンスを開けると、そこから一枚のシワが入った地図を取り出した。


「ほらよ」


アルダは地図を受け取り確認する。

地図を見ると、北の湿地の先、砦の前に町がある。


「如何にもって場所ね」


「そうだ。砦の近くの町に酒飲みのやべぇ奴がいるんだと」


「気をつけておくよ」


アルダは地図をしまい、情報屋から出ようとした時。


ルーピンが何かを呟いた。


「伝承だと、俺の祖先が英雄の手伝いをしたんだとさ。俺はその名を受け継いでる」


「名に恥じない活躍をしろよ」


「はいはい」


扉を手に掛け、外へと出て、カイが寝ている宿の部屋へと戻った。


「はー疲れたー」


アルダは本を読んでいる俺の側に寄り、何を見ているか覗き見する。


「何見てるの?」


「医学の本だ。治癒スキルを身に付けたい」


「へぇー、熱心だねー」


アルダは汚れた重ね着を脱ぎ始め、ベットへと放り投げる。


「お、おい」


「えー?なにー?普通に水浴びしてくるだけだよ」


「……水浴び?」


「そう、カイも結構臭うから、私が上がったら入って」


アルダは部屋の奥へと向かい脱衣場へと向かった。

俺は自分の腕や脇ら辺に鼻を近づけ匂う。

長旅で汗をかき、人を斬ったせいか、アルダが言った通りかなり臭う。


「入るか…」


そうして日は消え、月が夜空を照らした。

食事がてら、酒場へ向かう。

外は夜風が冷たい。酒場の扉を押すと、中からは人々のざわめきが漏れ聞こえた。


こんな町でも、誰かの日常がある……と少しだけ安心する。

辺りはガヤガヤしており、目につくのは浪人か、盗賊か、法から背く輩しかいない。


「ご、ご注文をお伺いします」


「旨い酒を人数分!」


「かしこまりました」


店員の声は震えており、浪人達は別の席にいる冒険者にヤジを飛ばし、冒険者達は怒りと怯え顔を歪ませ必死に堪えている。


「注文は?」


太めの店員が飲み水を出して言い、手に伝票版を持ちながら無愛想な態度で言う。


「私はこれ、カイは?」


目についたのはポテトフライ。

俺はメニューに指を差し、店員はメモをしてキッチンへと向かった。


「ねぇカイ」


「ん?」


アルダは辺りを見渡し、ある紙を出す。


「情報か」


「毒帝がいる場所を示した地図よ」


地図には現在地と森を切り開いた先にある砦、その前にある町が写されていた。


「この砦に毒帝がいるらしいの」


そして前の町を指差す。


「この町にはなにやら悪い噂がある酒飲みがいるらしい」


「へぇ、酒飲み?」


「そう、情報屋が言うには、気をつけろだって」


「わかった。じゃあ明日は休憩を取って、明後日にはここを出て向かおう」


「そうね」


計画を話していると注文が届くと、店員は皿を放り、そそくさと厨房へ走る。


「無愛想だな」


「適当な酒場だしね、しょうがないよ」


運ばれたポテトを食べ、水を飲む。

酷い味だ。

そう思っていると、アルダはなにか話したげそうな態度を取り、俺は食べるのをやめて顔を向けた。


「あなた逃亡囚だからさ、捜索されるからその時はどうするの?」


「そん時はそん時だ。今は毒帝だけ考えればいい」


2人が食事をしてしばらくすると、酒を飲んでいた浪人らが隣の冒険者となにやら騒ぎ立て始めた。


「さっきからなんなんだよ!!」


「お客様困ります!」


店員が急いで止めに入るが浪人らは言うことを聞かない。


それが火に油を注ぎ、浪人らは店員を蹴り飛ばすと男の冒険者の胸ぐらを掴んだ。


「や、やんのか!」


冒険者は慣れない大声で言い、隣にいた魔術師や僧侶が止めに入り、かなりの大事となっていた。


「熱くならないでくださいよ!早く出ましょ?」


浪人はニヤニヤと嘲笑い、それを見せ物として楽しんでいる。


「女に囲まれてハーレム気取りか?お坊ちゃんよ、見る目がないのに気取りやがって」


「なんだと……!」


冒険者が剣に手を添えた瞬間、浪人の刃が冒険者の胸を切り裂いた。

壁に血飛沫が走り、冒険者の仲間が襲いかかる。


「やるぞテメェら!ぶっ殺しちまえ!!」


浪人はテーブルを蹴り、皿と杯が宙を舞った。

剣を引き抜き、酒場は瞬時に血と怒号で満ちた。

その様子を見ていたアルダは剣を掴み、俺に言う。


「カイ、止めるよ」


「……金でもいただくか」


義理はないが…そこまで嫌な奴じゃない。

手に剣を生成し、背後から斬りつけた。


「お、おい!関係ねぇだろ!」


浪人の剣を受け流し、次々へと斬り伏せる。

あっという間に片付き、アルダが抑え込んでいる浪人にナイフを投げ、この場を収めた。


「お前平気か」


アルダは左腕を抑えていて、無力さのあまり、唇が震えていた。


「へこたれんなよ、お前らしくない」


そう言うとアルダは深呼吸をして落ち着く。


「なあ、アイツが来る前にさっさと帰ろうぜ」


「そ、そうだな!」


すると冒険者達は斬られた男を抱えると、酒場から逃げ出し、看板娘の店員が近づいてきた。


「本当にありがとうございます!ですが、もう夜なので帰られては……」


娘が言った瞬間。

酒場の扉がゆっくりと開いた。

「夜に出る」子供が言っていた言葉を思い出し、俺は身構えた。


「夜明け様!今は散らかっていまして……!」


あの無愛想な店員が頭を下げながら言い、男はゆっくりと酒場へ入る。

髭面で30代。ローブを羽織っており、腰にはハンマーの魔道具が下がっている。


月明かりを背に、まるで闇から現れたようだった。


「俺のバカが世話になったな」


男は斬られた浪人を蹴り、そのまま歩いてカウンター席へと座った。


「……ヴェイル」


アルダは呟く。俺も思い出す。夜にしか現れない槌の使い手―ヴェイル

即座に男の前にここの店主が現れ、慌てて酒を作り出す。


「今夜はこの町、少し荒れるかもしれんな」


「は、はい?」


「そいつは毒帝様を狙う女の仲間でクビに金貨7枚がつけられてんだ」


店主が出した酒を飲み干すと、男は俺を睨み付けた。

ローブを払うと、腰につけたハンマーは月光の輝きを見せ、昼間には決して見せない光りが店を照らす。


そして手に取った瞬間。俺に向かって投げつけ、ハンマーは俺を巻き込んで壁を破壊し、外へと放り出された。


「カイ!」


アルダが大声で言うと男はアルダの腹を殴り、アルダは壊れた壁から外へと放り出され、俺の横で倒れた。


「そのクビ……いただくぜ」

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