冬童話2019・2020・2021・2022・2023・2024提出作品
もしも“きのう”がずっとつづいたら
幼年向けですが、2,000文字前後ととちょっと長めです。
――もしも もしもだよ
“きのう”が ずっと つづいたら――
ぱちりと めをさました コウくん。
ああ、きのうはたのしかったな。
おひるに おともだちと おたんじょうびかい。
よるに パパママと じいじばあばと たんじょうびかい。
くすくすと おもいだして おきあがります。
プレゼントは、どこかな?
ところが……あれ? ない!
ねるまえに ベッドのまわりにおいた、イエロードクター!
ふみきりと せんろ! にがおえ! おてがみ!
ない、ない、ない!
「ママーパパー! プレゼントないー!」
「あら、どうしたの? おはよう、コウくん。きょうは 6さいのおたんじょうびだね」
あれ? あれれれ?
この ことば “きのう”の あさ ききました。
「えっとね、ママ、プレゼントがね」
ふしぎになって いう コウくん。
「おたんじょうびかい、たのしみなのね」
ママは ふふっと わらいます。
コウくんは くびをかしげました。
へんなの。ゆめ、みたのかな?
おひるに なりました。
ぴんぽん♪
「「コウくん、おたんじょうび おめでとう!!」」
「わあ! みんな! あれ!?」
コウくんは めを ぱちくり。
でも、そっか、ゆめか。
「もういっかい! ありがとう!」
「「?」」
みんな きょとんとして すぐ にっこり。
たのしい おたんじょうかいの はじまりです。
おなじだ、ふしぎ。
コウくんは こっそり おもいました。
そして よる。
パパ ママ じいじ ばあば。
コウくんの だいすきな からあげのやま!
イエロードクターの ケーキ!
「うわぁあああ! もういっかい! うれしい!」
コウくんは ケーキが もういっかい でてきて おおよろこび!
「パパ、ママ、じいじ、ばあば、ありがとう!」
コウくんは にっこにこ。そうして すやすや ねむりました。
あさになりました。
ぱちりと めをさました コウくん。
ああ、きのうはたのしかったな。
おひるに おともだちと おたんじょうびかい。
よるに パパママと じいじばあばと たんじょうびかい。
くすくすと おもいだして おきあがります。
プレゼントは、どこかな?
ところが……あれ? ない!
ねるまえに ベッドのまわりにおいた、イエロードクター!
ふみきりと せんろ! にがおえ! おてがみ!
ない、ない、ない!
「ママーパパー! プレゼントないー!」
「あら、どうしたの? おはよう、コウくん。きょうは 6さいのおたんじょうびだね」
あれ? あれれれ? あれれれれれれ?
コウくんは めを ぱちくり ぱちくり。
「もういっかい、たんじょうび、するの?」
「おたんじょうびかい たのしみなのね」
ママは ふふっと わらいます。
コウくんは おもいました。
へんなの、また、“きのう”が やってきた。
ちょっと まって。はっと します。
おたんじょうびのプレゼントが、もらえない!
プレゼントで あそべないよ!
コウくんは どうしようと おもいました。
うーん うーん かんがえます。
おひるに、みんなが、くるから、そうだ!
コウくんは そとに でることに しました。
みんながくるまえに、なにか、みつけよう!
じいじが まえに いってました。
へんなゆめを みたときは ゆめのなかで ●○◎をみつけるんだ。
「でぐちを みつける!」
コウくんは きづいたのです。
おなじ おたんじょうびかいに でぐちはない と。
「パパ、こうえんいこ!」
こうえんに きた コウくん。
パパと ボールで あそびます。
ぽーん ころころころ。
「ぼく、とってくる!」
ボール ボール ころころ ボール。
ボールは どこまでも ころがります。
おんなのこが ボールを とろうと てをだして……ころん!
「あいたたたっ!」
おんなのこは ころんで ひざを すりむきました。
「だいじょうぶ?」
「うん、だいじょうぶ。くりかえすから。あっ!」
おんなのこは しまった! というかおを します。
「きみも へんなゆめを みたの?」
「へんなゆめ? あたしは、“きのう”をくりかえしてるの」
コウくんは なかまだ とおもいました。
「ぼくもおなじ! でぐちはどこ?」
「でぐち? でぐちなんて、ないわ! ひざをすりむいて、いたくて、あさがきて、なおって、またケガするのよ!」
おんなのこは わーんと なきました。
「ぼくは、おたんじょうびかい、たのしくて……。でも、いやなことが、くりかえすこもいて……」
コウくんは こころが ぐるぐる します。
たのしいことが くりかえす ゆめ。
いやなことが くりかえす ゆめ。
どちらも あしたが こないのです。
「そうだ、ぼく、きょう、おたんじょうびなんだ! きみもおいでよ!」
コウくんは おんなのこを しょうたいしました。
パパも いいよ と いいました。
「ケガに、バンソーコーはろう!」
きれいに ひざを あらって バンソーコー ぺったん!
「いっしょに、ケーキたべよう!」
おんなのこは びっくりして でも たんじょうびのケーキを いっしょに たべました。
「これ、あげる」
かえりに どんぐりを もらいました。
「もし、あしたがきたら……。またあそぼう?」
「うん、やくそく!」
おんなのこを こうえんまで おくりました。
よるに なって パパママと じいじばあばと たんじょうびかい。
「でぐちは みつかったかい?」
おやすみのあと じいじに きかれました。
「たぶん!」
あさに なりました。
コウくんの ベッドの まわりには プレゼントが おいてありました。
おしまい。