感傷にフレンチキス
忘れたいよ。あなたのことなんて。
これっぽっちも憶えていたくないや。
痛いんだよ。昔のことなんて。
重く重く腰にしがみついてる。
左だけ磨り減った踵に、右上がりの肩。
バランスの悪い人影。
Turn back.他には誰もいない。
乾笑。
誰かさんに、見間違えた。
ドットラインで区切ってく思い出が、
酒の肴になってくれれば良かったが、
隙間風で褪せていく街灯が、
影を薄く引き延ばしていた。
「壊れたいよ。もういっそのこと」なんて、
ひとりぼっちで抱えていたくないや。
「嫌いだよ。あなたのこと」なんて、
強く強く髪に粘りついている。
洗面器が黒く染まり、毛先が跳ねた。
アシンメトリーの鏡像。
Flash back.ここにはあなたがいた。
癇症。
過去の姿を思い出した。
ボーダーラインを踏み越えた先が、
哀の答えになっていれば良かったが、
有刺鉄線と錆びていく心臓が、
命を緩く引き延ばしていた。
涙が何の役に立つの。
鼻水が何の役に立つの。
顔がくしゃくしゃに、
愚者愚者になるだけだろう。
生理反応を止めたい。息の根を止めたい。
足が竦み、手が震え、動けない。
どうしようもないさ。
笑みが乾くまで、呼吸を続けて。
ドットラインで区切ってく思い出が、
酒の肴になってくれれば良かったが、
隙間風で褪せていく街灯が、
影を薄く引き延ばして、弾けた。
久し振りに、感情を叩きつけただけの詩ではなく、言葉の一つ一つに意味を込めました。
僕は、文章とは人を映す鏡だと思っています。
だから、自分の感情を叩きつけながら、それでも曖昧な表現を心掛けて、書いていました。
今回は、今回の詩は、鏡ではありません。
僕の、俺の、私の、自分の、忌みを込めた詩。
それを、詠ってみました。
見るに堪えないでしょうが、この詩を読んで、僕のことをもっと好きになってもらえたらな、なんて、そんな欲望も込めつつ。
それでは、ここらで筆を置かせてもらいます。
名も、銘も知らない、我が親愛なる読者達へ、文章というフレンチキスを。
渋音符