異世界転生ではじめるダンジョン経営
――おめでとう、そなたはフロアマスターに選ばれた。
「は? なにそれ?」
突然俺は、ダンジョン第十五階層のフロアマスターに転生した。いわゆる小ボス的な存在だ。だのにだ、特殊スキルも武器も魔法も何ひとつ持っていない。
あるのは……というか、いるのは……
「どーすんの? とりあえず爆破する?」
「わ、私は、だ、大丈夫です。息が3分止められますから。ガ、ガンバロー、オー」
「ねえ死ぬの? いつ死ぬの? 今?」
自称女神の三人だった。彼女たちはとてつもない力を持っていた。
一人はこのフロアを一瞬で爆破する爆裂魔法を持つディアナ。もう一人はフロアを水で埋め尽くす水竜のワザを持つレイナ。最後の一人はジーナ、飛翔スキルだ。空を自由に飛ぶことができる。まあ、この閉鎖空間においてはどいつもこいつもズバリ役立たずだった。
このダンジョン、まず、五がつくフロアーごとに小ボスがいて、十の単位のフロアーには中ボスがいる。ボスが10回倒されると一定時間経過後にどこかの異世界から階層に見合った者が転生されて来る。間違って能力が合わないと判断されると、その差分を埋めるべくコイツら、女神があてがわれるのだ。
だから多分、俺は相当レベルが足りなかったのだろう、強すぎる女神が三人もやってきたのだ。まあポンコツだが。
「死んだらどうなる?」
「痛いんじゃない?」
「て、天に帰れます」
「死んでみれば?」
うん。よくわからない。けど、どうやら10回死ぬと魂が完全消滅するらしい。が、逆に10回以上防衛すると元の世界に戻れるらしい、特典付きで!
「よ、よし! お、俺は帰るぞ! 元の世界でハーレムだ!」
が、当然そんなに甘くない。冒険者の奴らときたら容赦がない。弱いと見るや総がかりでやってきて俺は9回死んだ。まあ、そのうち8回は女神どもの暴走が主因だが。
「うむ、今更だが正攻法では勝てんな。ポンコツ女神だし。と、いうことで作戦変更!」
俺は近隣階層からモンスター、とくにドワーフをかき集めた。そしてダンジョンの拡張工事を始めた。リフォームってやつだ。
結果――巨大な迷路を築いた俺は十五階層の悪魔と呼ばれるようになる。ダンジョンが複雑すぎて誰もたどり着けないのだ。
だから、結局1勝もしていない。
「お、俺のハーレム計画がぁあああーっ」