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特別
特別になりたいという私に先生は言った。
普通に生きなさい、と。
「特別になるのは簡単です。
プラスでもマイナスでも。
何かを為せば、人はきっと特別扱いしてくれます。
賞賛と罵倒の違いはあれど、向けられるベクトルは同一です。
しかし普通に生きるというのは難しい。
ただあたりまえに生きて。
ただあたりまえに死ぬ。
誰にも迷惑を掛けずに、ね。
だから普通が一番難しい」
「でも……それはつまらないと思います」
「今はそうかもしれません。
けど……いつかその尊さ、大切さを知るでしょう」
よほど不満が顔に出ていたのであろう。
苦笑し、慰めてくれる先生。
この時私は気付いた。
自分の中の確かな気持ちに。
私は、先生の……「特別」になりたい。