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白騎士と古代迷宮の冒険者  作者: ハニワ
第1章 2人の冒険者
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第05話 鋼鉄のカイトシールド

#鋼鉄のカイトシールド


 ステラを連れて武器屋に向かう。


 これからは訓練じゃない。本当に戦わないといけない。


 魔獣は森や洞窟に住処を作って群を成し、武器を持って集団で襲ってくる。そのような魔獣と戦いながら、怪我をしないように身を守るのも重要になる。


 弱い弱いといわれるゴブリンの棍棒だって、もろに当たれば骨折させられる。【ヒール】やヒールポーションは疲れを癒し、多少の打撲や傷は治せても、骨折や切り落とされた腕は治せない。そうなって動けなくなれば、生きて帰れないだろう。


 だから、大半の衛兵や冒険者が盾を使っている。


 武器屋は近くにあり、すぐにたどり着く。入るのは今日が初めて。武器を買うお金なんて持っていなかったけど、今日はふたりとも両親から支度金をもらっている。


 緊張しながら扉をあけて、店内に足を踏み入れる。店内には剣や槍、鎧など、いろんな武具が置いてある。所狭しと並んだ真新しい武器を眺めていると気分が高揚してくる。


 その一画に盾も並べられている。


「どんなのがいい?」


「やっぱり本の絵のようなのがいいのです…… わぁ、いろいろあるのです」


 小さな円形盾のスモールシールド。

 大きな円形盾のラウンドシールド。

 超大型の長方盾のタワーシールド。


 ステラが見つめているのは、上は幅広で、下にいくにつれて緩やかなカーブを描く、貴族の紋章にも使われるような騎士紋章の盾。


 大きな五角盾のカイトシールド。


 幅はラウンドシールドと同じくらいで、こちらのほうがかなり大きく感じる。微妙に色やデザインの違う盾が並べてあり、材質も木や鉄、鋼鉄とまちまち。


『木のカイトシールド 』銀貨 50枚

『鉄のカイトシールド 』銀貨100枚

『鋼鉄のカイトシールド』銀貨200枚


 でも、この価格。


「たっか」


 特に鋼鉄のカイトシールド。銀貨200枚ということは金貨で2枚分になる。一家で1か月以上は暮らせそうな額。


      ◇      ◇


 通貨は銅貨、大銅貨、銀貨、金貨などの種類があって、一番安い銅貨は1枚ではほとんど何も買えない程度。


 銅貨10枚で大銅貨1枚になる。安い屋台で売っている小麦粉焼が買える。


 大銅貨10枚で銀貨1枚になる。これで1日の食費くらいは賄える。


 銀貨100枚で金貨1枚になる。これが一般的な平民の1か月の収入。


 さらに、金貨100枚で白金貨1枚になるみたいで、それは見たことすらない。お父さんは商店に務めているし、お母さんは堅実だから、そのくらいは貯めているかもしれない。


      ◇      ◇


 ただ、この一番高い鋼鉄のカイトシールドに『店主おすすめ!』と札がつけられているのが気になる。


(……とりあえず一番安い、木でできたカイトシールドから見ていこう)


 訓練で使った木の盾はスモールシールドといって、もっと小さな円形の盾だった。それもいくつか並んでいる。


 木のカイトシールドを持ってみる。盾の裏側に頑丈な持ち手がついていて、それを握る。ベルトがあって、本当はそれを腕に巻きつけなければならないみたい。


 上半身を覆えるほどの大きな盾だけど、さすがに販売用だけあって持ちやすい。ちょっと叩いてみてもカンカンと音がして木製とは思えないほど硬い。一見これで何も問題がないように思える。


「木のカイトシールドは安くて大きさの割に扱いやすいよ」


 ふたりで木の盾を触っていると、初心者の冒険者だとわかったのだろう。店のおじさんが声をかけてくる。


「材質は木だけど、外枠に鉄のフレームが入っていて意外と丈夫なんだ。騎士団の衛兵に人気があるよ」


「そうなんだ。でも、おすすめはこれなんでしょ?」


 『店主おすすめ!』の札を指さす。


「もちろん、その鋼鉄の盾は自信をもっておすすめするよ。鉄の盾は触ったかい?」


 ステラが興味津々で横からのぞいている。


「ミーナちゃん、ステラちょっと持ってみたいのです」


 金貨1枚もする鉄のカイトシールドを慎重に持って、小椅子の上に置く。さすがこの板のすべてが鉄の塊だけあって重い。


「ここはね、こうやってとめるんだよ」


 店主のおじさんは、椅子の上に裏返しで置かれた盾の持ち手をステラに握らせると、盾に肘を突かせて革のベルトをしっかりと腕に巻き、固定してくれる。


 盾を触っていて思ったのは、私もそれなりに力持ちだけど、こんなに大きくて重いのは持ち続けるのが辛そうってこと。


 ところが、ステラはワクワクした様子で装着が終わるや否や、盾をつけた左手を振り回しはじめる。


「ちょっと、ステラってそんなに力持ちだったの?」


「ステラ、訓練してるうちに気づいたのですが、騎士になったら、なんでも持てるようになったのです」


 『騎士』すごい。これなら問題がなさそう。そう、盾の価格以外は。


「どうだい? 冒険者のようだし、外の森に持っていくなら鉄製のほうがいいよ。もちろん、ゴブリンなら木製でも十分だけどね。森にはもっと強い魔獣が出るんだ。木の盾は、たいていその時に壊れてしまう」


「なるほど、どうせ壊れるのを買うくらいなら、高くても鉄製のを買うほうがいいよね。じゃあ、なんでこの鋼鉄製がおすすめなの?」


「そうだね。鋼鉄は鉄と同じ重さでより耐久性があり、錆びにくくて手入れも簡単。なにより職人が一番手間をかけて作る高級品だから、仕上げも丁寧なんだ」


「へぇ、いいこと尽くめじゃない。ちょっと持ってみようよ」


「はいなのです!」


 ステラはベルトを素早く外して、嬉々として鋼鉄の盾に持ちかえる。


 この盾は塗装されている。表面が赤で外枠が黒。裏面は木の板になっている。持ち手もパイプが太く、盾の傾きも微調整できる。鉄の盾よりあきらかに高級な感じがする。


「これすごくいいのですぅ。腕も痛くないし、持ちやすいのです♪」


「鋼鉄の盾は木が裏打ちされていてね。夏の暑い日に装備していても火傷しにくくなってるよ。鉄だと錆びてしまうから、できないんだ」


 あっそういう利点があるのか。それポイントが高いかも。ステラはどう思ってるんだろう。


「ねえ、これがいいんじゃない?」


「ステラもそう思うのですが、お金が足りないのです」


 しょんぼりとして答えたステラに、ヒソヒソと相談を始める。


「いくら足りない?」


「えっと、パパからもらったのが金貨2枚だったのです。買い物をしたので、残りが金貨1枚と銀貨40枚……」


「じゃあ私が半分、金貨1枚分出してあげる!」


「そんな…… 鉄のほうだったら買えるので、そっちでいいのです」


「鉄板熱いよね? ステラの腕が真っ赤になっちゃうよ」


 別に今は鉄の盾にして、お金を稼いでから改めて鋼鉄の盾を買いなおしてもいい。


 ただ私にとって、ステラは初めての冒険者仲間になる。これを記念品にしたい。


 私も支度金として銀貨200枚をもらっている。冒険者ギルドの道具屋でヒールポーションや毒消し薬を買ったけど、まだ銀貨180枚が残っている。買えないことはない。


「決めた! おじさん、鋼鉄のカイトシールドを買うわ!」


「ミーナちゃん!」


「いいの、冒険者に誘ったのは私で、仲間になった記念品だから。この盾で私を守ってね!」


 私を守ってね! というのは偶然にも本に出てきた姫が勇者に告白する場面の決め台詞だった。でも、この時はそんなつもりではなかった。


「わかったのです。これでミーナちゃんを守るのです。『騎士の誓い』なのです!」


 頬を赤らめて、笑顔でステラが答える。


「この盾でいいかい? 色は他にもあるから選べるよ」


「白、白色はありますか! 白がいいのです!」


「白ならあるよ。えっと、これだな」


 盾の展示台の下が引き出しになっていて、中身がわかるようにラベルがつけられている。


「白は人気があるからね。きのう入荷したばかりだよ」


 引き出しを引いて真新しい白色の盾を持ち上げると、ステラに手渡す。


「有料だけど、修理もできるからね。何かあったら持ってきてね」


 ふたりは盾の他に、装備を腰に提げる帯剣ベルト、武器が壊れた時の予備に鉄のナイフ、武器の手入れをするオイルも購入し、店主に代金を支払うと店の外に出る。


 ステータスカードを使って、今の状態を表示してみる。体の状態だけじゃなくて、使っている武器名や損傷の状態もわかるので便利。


 また、パーティを組んでいれば、メンバーのステータスも一緒に空中に投影して表示させることもできる。


      ◇      ◇


┌────────────────┐

│名 前:ミーナ         │

│種 族:ヒューマン       │

│年 齢:12          │

│職 業:冒険者         │

│クラス:神官          │

│レベル:1           │

│状 態:良好          │

├────────────────┤

│筋 力: 76 物理攻:125 │

│耐久力: 91 物理防:124 │

│敏捷性: 74 回 避:142 │

│器用度: 57 命 中:120 │

│知 力: 59 魔法攻:135 │

│精神力: 84 魔法防:113 │

├────────────────┤

│所 属:冒険者ギルド      │

│称 号:Fランク冒険者     │

├────────────────┤

│状態:良好           │

│右:錆鉄のメイス        │

│左:              │

│鎧:布の鎧           │

│飾:              │

│護:              │

├────────────────┤

│パーティ:ミーナ        │

└────────────────┘

┌────────────────┐

│名 前:ステラ         │

│種 族:ヒューマン       │

│年 齢:12          │

│職 業:冒険者         │

│クラス:騎士          │

│レベル:1           │

│状 態:良好          │

├────────────────┤

│筋 力: 96 物理攻:159 │

│耐久力:107 対物防:234 │

│敏捷性: 74 回 避:135 │

│器用度: 54 命 中:122 │

│知 力: 48 魔法攻:108 │

│精神力: 72 対魔防: 96 │

├────────────────┤

│所 属:冒険者ギルド      │

│称 号:Fランク冒険者     │

├────────────────┤

│状態:良好           │

│右:錆鉄のロングソード     │

│左:鋼鉄のカイトシールド    │

│鎧:布の鎧           │

│飾:              │

│護:              │

├────────────────┤

│パーティ:ミーナ        │

└────────────────┘


      ◇      ◇


 装備を確認し終わると、メイスを帯剣ベルトに提げる。


 昨日までの装備は『木の棒』とか『木綿の服』だったけど、ようやくそれらしくなった。


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