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白騎士と古代迷宮の冒険者  作者: ハニワ
第9章 内戦
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第15話 マーフの最後

#マーフの最後


「確かに大きくなりたいとは言ってたけど、いくらなんでもそれは大きくなりすぎでしょ……」


 私が城壁にそびえる塔のような巨人を足元から見上げていると、散り散りになっていたエリスとメーベルが私の周りに集まってきた。


「ステラちゃん、かっこいい!」


 ステラの巨人はとにかくデカい。彼女の面影が残る上半身だけならフローネガルデのそれとあまり違わない。だが、頭から尻尾までだとヘカトンケイルどころかブルードラゴンにも匹敵する大きさになる。

 馬鎧に覆われた軍馬のような体と、大木のような4本の脚が圧倒的な存在感を放っている。


「ステラが小さかったから気づかなかったけど、こうして見ると巨体に映える厳ついデザインの鎧だわ」


「ステラちゃんのは正統派の騎士鎧だもんね」


 最初に買った鋼鉄のプレートアーマーは完全な板金鎧ではなく、ステラにとっては妥協の産物だった。

 黒鳳騎士団がゲラールを発ったあの日、彼女の理想とする鎧を誰かがプレゼントしてくれた。それが今の鎧だ。

 そしてまた今度も、彼女の大きくなりたいという夢を誰かが叶えてくれたことになる。


      ◇      ◇


 ――ズズズズ……


 転倒して転がっていたヘカトンケイルが立ち上がる。


「キヒヒヒ……」


 弾き飛ばされて怒っているかと思いきや、なにやら嬉しそうにしている。


「……ワシはツイとるゾ。コノようなトコロで魂魄の担い手にマミえるナド」


「魂魄の担い手?」


 私が尋ねると、ヘカトンケイルが高笑いする。


「ワカラぬか? ソヤツは『具現』と『頑強』を司るフローネガルデのゴーレムと同じモノじゃゾ。ソウカ、オヌシらジャッたノカ。パメラが滅しタのはマチガイなさソウじゃナ」


 そしてまた気味の悪い笑いを漏らす。


「だから、それがどうしたってのよ!」


 この巨人がフローネガルデと同じ(たぐい)のものであるのは私にもわかる。

 わからないのはマーフが喜ぶ理由だ。

 強烈な力を持つであろう巨人に加え、私たちもパメラを倒すほどの実力を持っていると知れば、普通なら嫌がるはず。


「ツマリ、オヌシらを殺せバ魂魄が手にハイるノじゃ、そのドチラか、ウマくスれば両方トモ」


「能力を奪えるってこと?」


 だが、フローネガルデは健在。死んでなどいない。


(フラウが『頑強』の神水晶柱を持っているのは間違いない。残りは『頑強』の枝分けか、『具現』の神水晶柱という可能性だけど……)


 フラウは『武具』と『聖杯』を手放したと言っていた。

 『聖杯』の正体が『具現』の神水晶柱らしいことはわかっている。

 つまり、私たちが手に入れた神器は『頑強』の枝分けであった可能性が高く、少なくとも『具現』ではない。


(でも、神器は灰になってしまったし、あれ以外に所縁(ゆかり)の品は持っていないはず。かといって、ステラがなんらかの超常的な力を得ているのも間違いない)


 まず、彼女の新しい武具。あれは誰が作って彼女の部屋に持ち込んだのか、未だにわかっていない。


(もし、ステラが無意識のうちに武具や巨人を召喚しているのだとしたらしっくりくるわ)


 あの力をどこから手に入れたのかが問題だ。

 知らないうちに倒した魔獣から得てしまっていたのだろうか。


(……あ、でも待って? そういえば、神器を壊したのはステラだったわ。じゃあ、あの時に?)


 そう考えれば辻褄は合う。

 だが、私にはどうにも腑に落ちない点があった。


(神器は『頑強』のはず。イメージ的にもステラが得たのは『具現』だと思うんだけど)


 それとも、何か見落としがあるのだろうか。


(ガイもマーフとパメラを倒してるし、何か力を得たのかしら。何も教えてくれなかったけど……)


 『蓄積(ちくせき)』のブリュンヒルデは『流転(るてん)』と『影写(えいしゃ)』が滅したと言っていた。


(滅したということは消えたってことかしら。違いがよくわからないわ。どっちもその場にいたわけじゃないし)


 つい考え込んでしまって時間を浪費してしまったが、一瞬の間だったようだ。


「……パメラも倒したノじゃロウ? ヤッタのはダァレじゃア?」


 ヘカトンケイルのおぞましい声色にゾゾゾッと背中に寒気(さむけ)が走る。


「そんなの知らないわ!」


 パメラを殺したのがバレてしまったのは想定外だが、マーフの口を塞げばいいだけだ。どのみち奴を倒さないことにはここから脱出できそうにないのだから。


      ◇      ◇


 ――シャンシャンッ!


 ヘカトンケイルが左右の武器を擦り合わせては攻撃してくる。

 奴の攻撃から私たちを庇うために、ステラが身を乗り出して私たちの頭上を跨いだ。


「ステラが相手なのです!」


 ――ダダァン!


 近くにステラの前足がおりてきて、跳び上がりそうなほど地面が揺れる。

 ヘカトンケイルがステラの突き出したランスを躱し、懐に飛び込んでくる。


 ――ジャギン、ジャギン!


 ステラが盾と鎧に攻撃を受け、花火のように飛び散った火花が地上に落ちるまえに消えてゆく。

 攻撃を受け止めたステラの四肢が折れ曲がり、頭上を覆う人馬のお腹が私たちに向けて沈み込んでくる。


「ひゃあ!」


 あまりの迫力に、思わず声をあげてしまった。


「みんな、迂闊に動かないで! ステラに踏みつぶされるわ」


「ミーナ、大丈夫なのです! ステラが守るのです!」


 ステラには足元にいる私たちが見えているのだろうか。


 ――ギャン! ギャン!


 頭上で巨人同士の激しい攻防が繰り広げられている。

 ヘカトンケイルは押したり引いたり、周囲をグルグルと回りながら10本の腕で攻撃してくる。

 近接戦闘にランスは不向きだ。

 ステラはいつの間にかバスタードソードに持ち替えていた。そして、私たちに覆いかぶさったまま転回し応戦している。


「ステラ! ここは場所が悪いわ! 移動しましょ!」


 私たちが狭い路地に逃げ込めばヘカトンケイルは追ってこれない。そうすれば、ステラは私たちを守りながら戦わずに済む。


「みんな、こっちよ!」


 ステラが応戦している間に、全員で近くの路地に駆け込んだ。

 左右にそびえる建物は高さ何十メートルもある。その壁は迷宮のようにまっ平らだ。

 ステラが路地の入口に立ちはだかり、ヘカトンケイルに対峙する。


「上から瓦礫が落ちてくるかもしれないから気をつけて」


 みんなもその危険性は認識しているようで、しきりに頭上を気にしている。

 案の定、ヘカトンケイルの剣が逸れて建物の壁を破壊し、破片が周囲に落ちてきた。高所からの落下物だ。小さなものでも直撃すれば危ない。

 念のため≪フォースフィールド≫を展開して細かい破片の跳ね返りを防ぐ。


「もう少し奥へ!」


 戦うステラと落ちてくる瓦礫に注視しながら、ヴァルキリーシールドを構えて後退する。

 ステラの向こう側にいるヘカトンケイルを一瞥(いちべつ)する。


(奴を倒す方法と、そのあとどうやってここから脱出するかよね。倒すだけで出られたらいいんだけど)


      ◇      ◇


 マーフは魔獣を召喚するようだし、ヘカトンケイルだけで済むはずがなかった。


「ミーナちゃん、敵襲!」


 エリスの声に反応して振り向くと、路地にコボルド、上空にガーゴイルが現われていた。


「たぶんコボルド=アサルト×6、ガーゴイル×2!」


「どんどん沸いてくるよ!」


 そこら中に描かれた小さな魔法陣から続々と魔獣が現われる。

 上空からガーゴイルが私たち目掛けて滑空してきた。


「「ギィ、ギィッ!」


 ガーゴイルは人と鳥獣(ちょうじゅう)を掛け合わせたような姿の石像の魔獣だ。

 当面はセイントボウで戦うつもりだったので、矢は召喚してあった。


「食らえっ」


 2体のガーゴイルに向けて矢を連射する。

 射落としたガーゴイルの落下地点へエリスが走る。

 もう1体の体当たりはメーベルがラウンドシールドで受け止めていた。次の矢を放ち、ガーゴイルの石の片翼を貫く。

 レベルや弓の張力が高くなっているおかげで威力が上がってはいるものの、魔法の籠っていない矢に過度の期待をしてはいけない。


(空からの攻撃は分が悪いわ。優先して倒さないと)


 上空には新たなガーゴイルの石の体が建物の明かりに照らされチラチラと光っている。


「増援! ガーゴイル×3!」


「こっちのガーゴイルは倒したよ!」


 エリスは落下したガーゴイルに剣を突きつけ、醜い石の頭を粉砕していた。

 敵はガーゴイルだけではない。地上ではコボルドが集結し隊列を組んでいる。


「エリスはコボルドをお願い! 空の敵は私とメーベルでなんとかするわ!」


「お任せあれ!」


「さっきの『カルテット』みたいに硬いかもしれないからね!」


 あのコボルドはコボルド=アサルトに似ているが、着けている鎖帷子はミスリル製ではないかもしれない。

 私はひたすら矢を放ち続ける。

 射程内に入ったコボルドに矢の雨を降らせて手傷を与え、次いでガーゴイルに向けて3連射。


「だいぶ当てたけど、大したダメージにはなってないわ」


 仕方ない。魔法も込められず、有効射程圏内とはいえ40メートル前後は離れている。


「ミーナさま! 後ろ!」


 メーベルの警告に、後ろを振り向きつつ盾を構える。


「こっちもか!」


 襲ってきたコボルドのダガーを盾で弾き返し、右手に持っていた矢で突き刺す。

 木でできた普通の矢であれば折れていたかもしれないが、この魔法の矢は簡単には折れない。

 右腰の鞘からダガーを抜き、コボルドを1体ずつ突き殺していく。


「次!」


 手首にジーンと痛みが走る。


(やっぱり奴が迷宮で召喚していたコボルドよりずっと強い)


 このアクウ空間では奴の力が増すというのは本当のようだ。


(でもこいつらは『カルテット』ほどじゃないわ)


 ≪鑑定≫して確かめる余裕はない。また、その必要もない。数手でおよその力量は把握できる。

 周囲のコボルドを一掃したあと、メーベルに襲いかかっているガーゴイルに矢を射かける。

 倒しても倒しても魔法陣から増援が現われる。


(奴の手駒と私たちの体力、どちらが先に尽きるか……)


 背後の敵も感知できる【ディテクトエネミー】や、疲労も回復してくれる【リジェネレーション】にどれだけ助けられていたのか思い知らされる。


      ◇      ◇


 どれだけ戦っていたのか。

 狭い路地には敵の死骸が積みあがっていた。

 ステラは巨人の扱いに慣れてきたようで、ヘカトンケイルに攻勢をかけ圧倒しつつある。

 そのおかげなのかもしれないが、魔獣が召喚されてくる間隔が開いてきている。


「これじゃキリがないわ。この魔法陣をなんとか消せないかしら」


 魔法陣を≪鑑定≫してみる。


「え、召喚の魔法陣だと思ってたけど、これ転移陣と原理的には同じものだわ」


 転移陣と同様に、アクティベーターの魔石さえあれば向きを反転できるようだ。

 ポーチからいくつか取り出したその魔石に精神力を込め、魔法陣に放り込むと、魔法陣が輝きだした。

 魔石を投入した魔法陣は魔獣が出現しなくなった。


(よし、この付近にある魔法陣の大半は止められそう)


 地上の魔法陣の結果を踏まえ、ガーゴイルが沸いてくる空中の魔法陣にも魔石を投げつけると、同様の効果があった。


「やった! みんな聞いて! どうやら魔法陣からどこかへ転移できそうなの。私が見てくるから待ってて」


「え~っ、ダメだって! 危ないよ!」


 エリスが≪ステップ≫でコボルドの集団から逃げながら叫んだ。


「このまま脱出方法がわからないままも危ないでしょ?」


「そりゃそうだけど……」


 マーフは私の対策にまだ気づいていないようだが、そのうちバレるだろう。


「躊躇してる場合じゃないわ。必ず戻ってくるから!」


 私は意を決して魔法陣の1つに飛び込んだ。


      ◇      ◇


 向こう側に転移した先は薄暗かった。どうやら魔法陣が光源になっているだけのようだ。

 私が目にしたのは、もの凄く長いベッドに仰向けになって縦一列に並ぶ大量のコボルド。

 それが暗闇の向こうへと続いている。

 気の小さい者は卒倒してしまうかもしれない。


(どうやら寝てるみたい)


 ――ガシャン、ガシャン……


 どこかで鎧の音がする。だが、暗くてよくわからない。


【フロアライト】


 ダメもとで照明魔法を唱えてみると、パアッと一帯が明るく照らし出された。


(やった、魔法が使える!)


 そこにはおびただしい数のコボルドが寝かされていた。

 どれも同じ大きさで、同じ鎧、同じ武器。

 別のベッドには違う種類のコボルドが並んでいるが、やはり双子のように瓜二つだ。

 明るくなってもコボルドたちは目を覚まさない。

 【ディテクトエネミー】も唱え、敵意を探ってみる。


(やっぱり全員寝てるっぽい)


 物音がする方向を見る。

 ベッドのシーツがベルト状になっていて、コボルドをベッドの端から端へと運んでいる。

 音の正体は、コボルドが魔法陣に落とされるときの鎧の音だった。

 コボルドが光となってどこかへ転送されていく。


(コボルドの工場なのね、ここ)


 魔法陣とは反対側の、ベッドの先に何かある。

 慎重に、かつ素早く、できるだけ静かにそこへ向かう。

 静かにと言っても、どうしても板金鎧が耳障りな音を立ててしまう。だがやはりコボルドは起きない。

 そうこうするうちに、コボルドが生み出されている場所に着いた。

 そこには数々の大水晶柱と大水晶が整然と並んでいる。


(これが魔獣を生み出している犯人か……)


 ≪鑑定≫は殆ど効かなかったが、魂魄は判明した。


(……これ、『顕現』の大水晶柱よ!)


 ただし、所有者が創造神ギルドではなくマーフになっている。


(フラウに教えてもらった方法で変えられるかしら……うん、いけた)


 教えてもらったのは迷宮最奥にある『ダンジョンコア』を操作する方法だが、同じやり方で所有者を私に変更することができた。


(とにかく全部書き換えちゃいましょ)


 大水晶柱を私の所有に変えると、動いていたベルトが止まってコボルドが送り出されなくなった。


(よし。じゃあ次。どこかに出口はあるのかしら)


 すべて書き換えてから周囲を探索してみたが、出口らしい扉は見つからなかった。


(ここからは出られないか)


 魔獣はコボルドしかいない。ガーゴイルやオークはまた別の場所にいるのだろう。


(出口がないのなら、これ以上は時間の無駄だわ)


      ◇      ◇


 私が戻ると、エリスとメーベルは手分けしてガーゴイルと戦っているところだった。


「ただいま。向こう側はあったけど、そこから先の出口は無かったわ」


「地上の魔法陣が消えて、コボルドが出てこなくなったよ。ミーナちゃんが何かやったの?」


「うん、止めたわ」


 私が設定したとおり、脱出に使った魔法陣だけが残っている。


「あとはあのガーゴイルね」


 残念ながら、ガーゴイルの出てくる魔法陣は高所にあり、投げた魔石は届かず落ちて戻ってきた。


「ミーナさまの矢にくくりつけてみては如何でしょう」


「それはいいアイデアね」


「私がやりますので、ミーナさまはガーゴイルをお願いできますか?」


「わかったわ」


 ガーゴイルの相手をする傍ら、メーベルが細工した矢を受け取って魔法陣に放つ。

 魔法陣がまるで訓練の(まと)のようだ。

 真上に射るのは結構難しい。外すこともあったが、なんとか全部無力化することができた。


「あとはヘカトンケイルだけ。ステラはどうかしら」


 ステラとヘカトンケイルは路地の入口から離れたようで、ここからは見えない。

 恐る恐る路地から顔を出す。


「……こっちもそろそろ終わりそう」


 10本あったヘカトンケイルの腕は(ことごとく)くへし折られ、ロングソードを握った1本だけが残っている。

 それもたった今、ステラの剣によって叩き切られた。


 ――ダカッ、ダカッ


 ステラが地面を蹴ってヘカトンケイルから離れ、ランスを右胸のランスレストに掛けて構える。


「オノレ、オノレェ!」


「トドメなのです!」


 ――ダカッ、ダカッ


 突撃するステラがヘカトンケイルに迫り、ランスを向ける。


≪パイルバンカー!≫


 ランスの円錐状の裾から炎があがり、槍先がグンッと飛び出した。


 ――ドゴォォォォッ!


「グワァー!」


 ヘカトンケイルは胴体に風穴が空き、建物の壁に叩きつけられて爆散した。


「ステラ! やったわね!」


 私たちがステラの足元に駆け寄ると、周囲の景色が揺らぎだした。


      ◇      ◇


 歪んだ景色が戻ると、そこはあの渓谷の迷宮の最奥の広間だった。

 メーベルが引いていた【ライトマーカー】の明かりが残っている。


「戻ってこれたんだわ」


「あれれ、ステラ、また小さくなっちゃったのです……」


 ステラは元の小さな体に戻っていた。


「もう安全みたいだけど、警戒はしといて」


 アクウ空間に飛ばされる寸前に聞こえた、不気味な老人の声が気になったが、今は誰の気配もしない。


「急いで迷宮を封印しなきゃ」


 広間の中央の石床に右手を添え、ダンジョンコアを呼び出す。あとは先ほどと同じだ。


「再配置は止めたけど、配置済みの魔獣は倒していくしかないわ」


「ミーナさま、これを」


 メーベルが魔石の入った革袋を差し出した。どうやら戦利品のようだ。足元には村雨とアダマンタイト製の武器が落ちている。


「あの最中に拾えたの?」


「僅かではございますが。貴重な素材のように思えましたので」


「凄いわ、メーベル。これ、アダマンタイトって鉱石でできてるらしいの」


 袋の中の魔石も、ざっと見た感じAランクの魔石が幾つもある。

 ただし、傭兵契約の都合上、戦利品は黒鳳騎士団のものだ。本隊に合流したら渡さなければならない。


「あのヘカトンケイルの魔石は凄かったんだろうなあ」


 生きて帰れた今でこそこんな口が利けるが、さすがの私も今回ばかりは戦利品のことを考える余裕はなかった。


「さあ、もうひと頑張り。外で分隊のみんなが待ってるわ」


 【ライトマーカー】を辿って地上へ脱出する。

 道中は下級の魔獣に遭遇しただけで、マーフが召喚していたトロールなどはいなくなっていた。

 途中の扉はしっかりと閉め、【シール】で封印しておく。


「ようやく出られたわ。雨は止んでるようね」


 外はすっかり夜になっている。


「念のため入口を塞いでおくわ。メーベル、【エクスプロージョン】を」


「かしこまりました」


 メーベルの魔法で峡谷の崖を崩し、瓦礫で入口を塞いだ。


「これでよしと。じゃあ出発!」


 こうして、私たちは無事分隊のキャンプに戻り、その後、深夜遅くになってソフィアの本隊と合流を果たしたのである。


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