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白騎士と古代迷宮の冒険者  作者: ハニワ
第9章 内戦
123/133

第06話 特別監察官

#特別監察官


┌───────┬───┬──┐

│  名 前  │クラス│LV│

├───────┼───┼──┤

│マルティナ  │召喚士│20│

│レミー    │軽戦士│18│

└───────┴───┴──┘


      ◇      ◇


 早朝の城塞都市マリス。レンガ造りの商館や宿屋が建ち並び、その周囲を低い石造りの城壁が巡る宿場町風の城塞都市だ。

 離れた大都市間を行き来する街道上にはこのような中継点となる町が幾つか存在する。高品質な王都産の品々と地方からの物資がすれ違う場所でもあり、交易が盛んだ。


「レミー。あたいとしては、例の4人組を追うべきだと思うんだが」


「そうだなあ。う~ん」


 マルティナと私の乗った駅馬車は、昨日の昼すぎにはマリスに到着していた。

 次の停留所のあるカシューへの便を待つために、乗客は駅馬車組合が指定したこの高級宿で夜を明かした。

 今はチェックアウトを済ませ、出口近くのラウンジで朝食にパンを食べているところだ。服装は王都を出た時と変わらず、手荷物や食料はまだクロークに預けている。

 他の乗客はまだ誰も部屋から出てきていない。


「もう夜が明けたし、そろそろどうするか決めねばならんぞ」


 あと一時ほどで駅馬車の乗車時刻になる。

 だが問題が発生し、それに乗るかどうかの決断を迫られている。


「ちょっと待ってよ……ハンナさんが捕まってるんだよ?」


「昨日からそればかりだな。奴隷が逃げたと通報があったのだから、仕方ないだろう」


 昨日、私たちがマリスの停留所で駅馬車から降りると、ハンナは御者とマリスの衛兵に助けを求めていた。

 同乗していた男たちのうち、カストロ男爵邸でデボルを殺し、オレアスをゾンビに変えた2人の名はアルとバルだと判明している。

 おそらく偽名だと思われるが、彼女はオレアスがおかしくなる直前にやってきたその2人を目撃している。それで身の危険を感じ、衛兵に訴えたのだ。

 ところが、その衛兵が捕らえようとしたのは彼女の方だった。


「まったく、余計なことをしてくれちゃって。誰なのかな、通報したのは」


「そこまではわからなかったが、駅馬車の到着前に通報されてたのは本当のようだ」


 ハンナを助けようとした者もいた。彼女は首輪をしておらず、ステータスからも奴隷の文言は消えている。そのため、駅馬車の御者が乗客である彼女を保護しようと申し出てくれたのだ。

 だが、商業ギルドでステータスカードのログを照会した結果、彼女の首輪が外されたのは主人の死の直後で、合意を得てのことではなかったことが明らかとなってしまった。

 カストロ男爵邸での殺人事件とゾンビ騒ぎで住人が逃げ出した話はマリスにも伝わっていたので、彼女は逃亡奴隷とみなされ、御者と駅馬車組合も引き下がるしかなかった。


「まあ、勝手に首輪を外して連れ出したのは事実だしね。カストロ男爵邸の誰かが訴えたのかなあ」


「それなら、王都を出るときに引っかからなかったのはおかしい。ジローナ男爵は手配されてたんだから」


 ジローナ男爵の場合は、手配したのがソフィア王女だから迅速だったのかもしれないが……


「どっちにしても、あのまま屋敷に匿っておけば手を出されなかったのに。ああ、なんで追い出しちゃったんだろう」


 彼女は今、西門の門衛所の牢屋に入れられていて、鼠さんに監視してもらっている。


「傷ものになって嫁げない貴族令嬢など、価値は無いに等しいからな。経緯がどうあれ、奴隷になったのが悪い」


「それはそうだけど。でも、奴らはお咎めなしってのはなあ」


「奴らがデボルを殺す場面を目撃したわけでもない。逆に奴らから『お前が殺して逃げたんだろう』と言われてたじゃないか」


「それはありえないって衛兵も不問にしたでしょ」


 奴隷の首輪を嵌めた者は主人に逆らえず、殺すのは不可能だ。衛兵も犯罪者相手に使っているので、それはよく知っている。

 それでも、善人の彼女は暖房もない牢屋で不安な夜を過ごすしかなかった。悪人の奴らは今も自由の身で、ぬくぬくと宿に泊まっている。

 私はそれが気にくわないのだ。

 だが、マルティナは彼女に関わっていないので、私のような思い入れはない。それよりも奴らの行き先を突き止めたがっている。

 両方を天秤にかければ、それが正しいのだとわかっているのだが……


「悪いことばかりではない。おかげであの4人の素性がわかったからな。行き先もあるていど絞れそうだ」


 奴らが衛兵に提示した4人の身分証から、素性が判明した。

 最初に私が尾行したのが、カシューの騎士ステマノスとその従者シマディ。

 カストロ男爵邸に向かったアルとバルの本名が、同じくカシューの騎士コリフォグラムとその従者キニギート。

 奴らの素性から推察して、カシューやその周辺に奴らの本拠地があると考えられる。


「ステータスカードも確認していたし、今度は本名で間違いないかな。それと、色がホワイトだったよね」


「まだわからんぞ。奴らは見せただけだ。商業ギルドで大水晶に照会させるのを拒んでいたのが気になってな」


「主からの情報にあった『偽りのクラス』ってこと?」


「人を故意でアンデッドにしておいてレッドにならないのはおかしいだろう。冒険者ギルドで調べさせてるから、出発するまでには判明するはずだぞ」


 話し合いをするうちにすっかり冷えてしまったスープを飲み干し、熱い紅茶を注文し直した。


      ◇      ◇


「……それで、奴らはたまたま乗り合わせたと言っていたが、レミーはまだ奴らがハンナを狙っていると思ってるのか?」


「オレアスをゾンビに変える瞬間を見られているわけだし、そのままにはしておかないよね?」


「気にも留めていないかもしれない。奴らはアンデッドではないんだ。生きた人間がオレアスをゾンビにしたと訴えても、誰も信じてくれないだろう」


 ゾンビ病は徐々に症状が悪化していく死病だ。王都のような大都市では珍しいが、外で感染して町に帰ってから暴れだすこともある。


「レブナントっていうらしいから、ちょっと違うんだろうけどさ。私たちもよく知らないもんね。いっそのこと、そのような魔道具があるってバラす?」


「ダメだ。あたいたちの存在はまだ知られるわけにはいかない。それに、魔道具に関してはあくまでも推察だ。実際に見たわけではない」


 神水晶柱の魂魄(こんぱく)の能力は、知ることはできても誰かに伝えるのが非常に難しい。一般的に知られているのは『顕現』『天秤』『探究』の3つしかない。それすら人に都合の良い恩恵だけが広められ、その内に隠された能力や弊害は伝わっていない。

 私たちも知っているのは自分が関わった部分のみだ。

 例えば、神水晶柱はどれも大水晶や魔石を介在して他人を支配する能力を持っている。

 『流転』のマーフは魔獣を支配する。

 『影写』のパメラは人を魔獣に改造する。

 『腐敗』のシグルドは人を不死にする。

 『権現』のゲオルギウスは人を傀儡にする。

 問題は、ステータスカードも人を支配するために大水晶柱によって埋め込まれた魔石の一種であることだ。

 『顕現』が定める人の役割。

 『天秤』が定める物の価値。

 『探求』が定める善行と対価。

 彼らの望んでいる意図から逸脱すれば異端とみなしてレッドカードにすることで、人それぞれ自由であるはずの思想や能力を誘導する。

 それが神水晶柱の本質だ。

 3ギルドが節度をもって力を行使するように努めているおかげで人々は平和と便益を享受しているが、使い方を誤れば四天王のように悪しき力を振るう存在となる。

 私たちがその『節度』であり、逸脱して力を振るう異端者を罰する存在だ。

 今現在、残っている異端者は、災厄の竜を除くと『権現』のみのようだが、ソフィアとステラ、そしておそらくミーナもその危険性を孕んでいる。


      ◇      ◇


「レミー、あたいたちの目的を忘れるな。奴らの動向が気になる。降りてきたら外に出て見張ろう。町を出るようなら追うぞ」


 私たち本来の任務の遂行のため、マルティナはついに彼女を放っておくことにしたようだ。

 ところが、思わぬところから待ったがかかる。


「もし、レミーさんとお見受けいたしますが」


 ふと気づくと、私の傍に誰かが立っている。

 貴族服を着た身なりの良い初老の紳士だ。護衛と数人のメイドを連れている。


「そうだけど、あなたは? あ、いや、会ったことあるね。たしか……」


 ハンナを連れていったミリエス伯爵邸で対応してくれた執事だ。


「バジルと申します。ミリエス伯爵家の王都屋敷で執事をしております」


 バジルさんが慇懃(いんぎん)な所作でお辞儀する。


「うんうん、そうだった。こんな所で会うなんて、奇遇だね」


「先日はお嬢さまを送っていただいたお礼も申し上げられず、大変失礼いたしました。よろしければ、少しお時間を頂戴できますでしょうか」


 ここで会ったのは偶然とは思えない。何か事情がありそうだ。


「今は予定があるわけじゃないからいいよ。マルティナもいい?」


「あたいは別に構わんけど」


 私たちは宿を出て、数軒離れた場所にある品の良さそうなレストランに入店した。


      ◇      ◇


 偉い人が会食するような豪華な個室だ。

 ウェイトレスがこれまた高そうなケーキと紅茶を配膳して退出すると、いよいよバジルさんが話を切り出した。


「実は、先日ハンナお嬢さまを救出していただいた腕を見込んでお願いがございます」


「ハンナさんが捕まったのと関係があることかな?」


 バジルさんがより真剣な表情になる。


「そのとおりでございます。レミーさまがお帰りになられたあと、ハンナお嬢さまを領地にお戻しすることになりまして」


「やっと屋敷に帰ってきたのに、酷い仕打ちをするもんだね」


「それが、これはすべてダニエラお嬢さまの言いつけでして。使用人の私たちでは……」


「たしかに姉妹にしては仲が悪そうだったけど、そこまでするんだ」


 ダニエラは性格がキツそうな金髪ドリルの女性だ。姉のハンナが関わる汚職事件をでっちあげ、それをネタに揺すってきたデボルに彼女を売った張本人。


「それで、彼女が捕まったのに助けてあげないの?」


「ハンナお嬢さまお独りでミリエスに行かせるようにとのことでして。私どもは密かにお見守りしようと、命令に背いてついてきたのですが……」


 マリスまでの経緯を聞いてみると、ダニエラが駅馬車の予約券をハンナに手渡したのを見て、ミリエス伯爵家の貴族馬車でついていこうと考えたそうだ。

 駅馬車には護衛がつくので、それに個人の馬車が便乗するのはよくある。


「……というわけでございまして。今の屋敷の主はダニエラお嬢さまでございます。主の命令に反したと知れればお咎めを受けかねません」


「じゃあハンナさんを見殺しにするの? あ、でも待てよ……」


 共犯者であるジローナ男爵親子や青狼騎士タロスの口から、バジルやダニエラの罪状が明らかにされていけば……


「……まあ王都で解放される可能性もあるか」


 その場合はダニエラが一味に加担していたこともバレてしまうが。


「ここからはミリエス伯爵家にとっても重要な話でございます。レミーさまを信用していないわけではございませんが、素性をお伺いできないでしょうか」


「私たちは冒険者ギルド所属のCランク冒険者だよ」


 ステータスを表示して見せる。


「左様でございますか。しかしそれだけでは、ううむ」


 バジルさんは渋い表情だ。


「よっぽどの内容なのかな。マルティナ、どうする?」


 ここで彼に関わることは、奴らを追ってカシューに向かうのを諦めねばならなくなる可能性がある。

 だが知りたい。彼が何か重要な情報をもたらすのではと、どこか直感していた。


「……ま、いいんじゃないか」


「ありがとうございます。お前たちは外で人払いをしていてください」


 少し沈黙を挟んだマルティナに何かを感じ取ったのか、バジルさんが護衛とメイドを外に出した。


「それじゃあ改めて。私たちは冒険者ギルドの監察部の者だよ」


 素性を隠すために偽装していたステータスを解く。ステータスカードの色がCランク冒険者の赤銅色から黒色に染まる。


      ◇      ◇


┌────────────────┐

│名 前:レミー         │

│種 族:ヒューマン       │

│年 齢:22          │

│職 業:監察官         │

│クラス:軽戦士         │

│レベル:18          │

│状 態:良好          │

├────────────────┤

│筋 力:276 物理攻:775 │

│耐久力:327 物理防:686 │

│敏捷性:303 回 避:614 │

│器用度:262 命 中:528 │

│知 力:180 魔法攻:338 │

│精神力:137 魔法防:402 │

├────────────────┤

│所 属:冒険者ギルド監察部   │

│称 号:特別監察官       │

├────────────────┤

│状態:良好           │

│右:聖銀のエストック    +5│

│左:              │

│鎧:聖銀のブレストプレート +9│

│鎧:絹のツーピースドレス  +9│

│飾:革のロンググローブ   +9│

│飾:革のロングブーツ    +9│

│護:              │

├────────────────┤

│パーティ:レミー        │

└────────────────┘


      ◇      ◇


「なんと⁉ ステータスカードの内容を変更できるのですか」


 バジルさんが驚くのも無理はない。一般的にはステータスカードは個人が変更できるものではなく、だからこそ信用があるのだ。


「私たちは冒険者じゃなくて、本当はギルド職員なんだよね」


「なるほど、どうりで」


 バジルさんは納得してくれたが、ギルド職員なら誰でもできることではない。私たちが特別監察官だからだ。

 監察官の主な仕事は、ギルドへの背信行為の調査と、異端者や敵対者の監察。

 監察部は冒険者ギルド内でも特別な部署で、誰が監察官であるかは秘匿されている。そのため、素性を隠すためにステータスカードを偽装することができる。

 特別監察官は現場判断での処刑が認められ、レッドカードになることはない。


「まったく申し分のない素性にございます。お願いと申しますか、ハンナお嬢さまのお命をお救い頂けないかと存じまして」


「どういうこと?」


「行き先を告げぬまま、ダニエラお嬢さまがどこかへお出かけになられたのですが、そのときに不審な話を耳にした者がおりまして」


「まさか……」


「そのまさかでございます」


 ハンナはなぜ自分が奴隷になったのかは教えてくれなかったが、青狼騎士のタロスから聞き出している。ダニエラのせいで無実の罪を着せられたのだ。

 ハンナがダニエラに話した口ぶりから、彼女は自分が騙されたことを知っていると思われる。ダニエラは彼女が奴隷から解放され自由の身になられると困るのかもしれない。


「じゃあ、あの4人組が?」


「かもしれません。ですが、カシューといえば公爵さまのご子息が治めていらっしゃる大都市でして。そこの騎士さまが関与なさるとは考えにくいのです」


 バジルさんがクーデターの話を知らないなら、そう思うのも仕方がない。


「いや、公爵家は今かなりヤバいよ。それに、騎士に清廉潔白を求めないほうがいいかも。白竜騎士団の事件もあったでしょ?」


「たしかに」


「もしあの4人がカシューの騎士なら、もうここからは敵のテリトリーになるし、ちょっと素人には手に負えない相手だと思う」


「それでは」


「うん、私たちがなんとかするよ」


「本当でございますか!」


 バジルさんが喜ぶのを制して続ける。


「まあまあ落ち着いて。勘違いしないでね。ハンナさんを助けるわけじゃなくて、私たちが追ってきたのが偶然にも奴らだったんだよ」


 差し障りのない範囲で、ハンナが訴えたことは本当で、奴らがカストロ男爵邸の騒ぎを起こしたのは間違いないことを伝えた。


      ◇      ◇


「それにしても、ダニエラねえ……」


 ダニエラはジローナ男爵の息子のリュイスと交際中らしいし、奴らと繋がっている可能性はある。


「バジルさんは、ダニエラの交際相手のリュイスが捕まったのは知ってるのかな?」


「リュイスさまとの縁談は破断になりまして」


「あら、そうだったんだ」


 ダニエラとリュイスの間柄については特に重視していなかったので、突っ込んで調べていなかった。


「今はタイラント伯爵家の三男さまと交際されております。なんでもタイラント伯爵がジローナ男爵に命じて縁談を取り下げさせたそうで」


「タイラントって、もしかして、行政長官のタイラント伯爵?」


「左様でございます。以前はハンナお嬢さまにご執心でいらしたのですが、あのようなことがありましたので」


「代わりにってわけか」


 タイラント伯爵は、カトロニア公爵領内の城塞都市を預かる大貴族だ。カトロニア公爵の信任も厚く、王都で行政府の行政長官も務めている。

 行政長官は行政副長官のベルガモ子爵や行政官のジローナ男爵のいる行政府のトップだ。

 ハンナを奴隷にしようと画策したのが伯爵に伝われば、ダニエラは困ったことになるだろう。


「もし本当にダニエラがハンナさんを暗殺しようとして捕まったら、破談になるどころかミリエス伯爵家が責任を問われるよ。大丈夫?」


「これ以上ダニエラお嬢さまの勝手な行ないを許せば、ミリエス伯爵家にとって致命的な痛手となります。その前になんとか止めていただけないでしょうか」


「じゃあ、ここは私たちに任せて、バジルさんたちは王都に戻っててよ。ダニエラさんに会っても内緒にしといてね」


「わかりました。お2人もお気をつけて。ハンナお嬢さまをどうかよろしくお願いいたします」


 バジルさんが深々とお辞儀をする。そして店を出ると貴族馬車に乗って王都に帰っていった。


      ◇      ◇


 私たちはふたたび泊まっていた宿の前に戻り、入口を見張る。


「マルティナ。ハンナさんの様子はどう?」


「まだ何も動きはない。いったいどこでやるつもりなんだ」


「奴らはできれば王都から離れたいはずだけど……」


「おっ、主から連絡が入ったぞ」


 続いて私にも亜空間通信が入る。


「……王軍が王都を出立したんだって。戦争で駅馬車が運休するとまずいね」


 駅馬車を利用できなければ馬車を借りるしかないが、馬主や御者の顔見知りでなければなかなか難しい。


「今日は大丈夫だろう。明日はわからんが」


 そのとき、高級宿の扉が開いて、中から宿泊客と思われる男たちが現われた。


「奴らが出てきたぞ」


「人数が多いね」


 出てきたのは9人だ。全員が平服姿で帯剣している。


「他の客か…… いや違う、仲間だな。見ろ、服はバラバラだが外套がほぼ同じだ」


 彼らが羽織っているのはフードのついた黒っぽい外套だ。よく見るとデザインが同じものまである。

 黒は人気色で、外套も冬の防寒具としてありふれたものだが、9人全員が揃うほどではない。こげ茶の革コートや灰色のマントの者もそこら中にいるのだ。


「やっぱり」


 私たちが突き止めることのできたアジトはあの宿だったが、もともと複数あると推測していた。


「でも駅馬車に乗った客の中にあんな連中はいなかったと思うけど」


「列の後ろにいる者までチェックできていたわけではないしな。もしくはマリスの住人で宿にやってきた、以前から泊っている、とかな」


「とにかく追おう」


 今は朝1番目の鐘が鳴った後で、市場に買い出しに出る市民などで人通りはある。

 奴らを見失わないよう、慎重に尾行を始めた。


いつも読んでいただきありがとうございます。

内戦編は早く終わらせる予定で、詰め込み過ぎる部分が出てきそうです。

補足できる部分は感想返信などで補えればと思います。


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