究極の選択を迫られる~苦行編~
そんな楽しいお昼休みも終わり五限目の授業は…体育でーす!ぱんぱかぱーん!
えっと…、更衣室は男女どちらを使えばいいでしょうか…?
なにこの究極の選択。
--とりあえず、なにかいい方法がないか探してみよう!
右、体育着を持って女子更衣室へ入ってゆく女子生徒達。
左、体育着を持って男子更衣室へ入ってゆく男子生徒達。
上、学校特有の白い天井。男だったときよりも高く見える。
下、学校特有のすこし柔らかいゴムのような廊下。男だったときよりも床が近い。
どうすることもできない…!
これがゲームだったらクソゲーもいいとこだ。
仕方ないし今日の体育は見学かな。先生に事情を話せば分かってくれるはずさ…
「鍵山さん?どうしたの?おーい!」
話しかけてきたのは、かなり明るいミルクティーみたいな色のボブカットが特徴の夏目 陽葵さん。
鍵山【さん】なんて呼ばれ慣れてないから反応が遅くなってしまった。
「ああ、ごめん。どこで着替えようか考えてて…」
「それなら女子更衣室使えば?もう殆どの人は体育館に行ったから」
「それでいいならいいけど…。じゃあ夏目さんから着替えてきなよ」
そう。夏目さんはまだ制服。征服ではなく制服。なんてな。
「時間無いし一緒に着替えちゃお!ウチらは気にしないし!」
ウチ【ら】?
「え?ウチ【ら】って…?」
「私がいちゃいけないの?【ガキ山】」
「あうっ…紀ノ國さん…」
夏目さんの後からひょこっと顔を出したのは紀ノ國 文さん。
可愛くて、ちっちゃくて人形みたいだ。
実は僕、紀ノ國さんと小学校時代からの知り合いなんです。
ちなみに【ガキ山】と呼ばれている理由は前に色々あって…。語ると長くなるから詳しくはまた今度。
「そもそもガキ山は男だったんだから女子更衣室に入るの抵抗あるでしょ。陽葵もそれくらい考えないとダメだよ」
「え〜一緒に着替えたいのに〜!!鍵山さんと仲良くなりたいのに〜!文ちゃんのケチー!」
「なんとでもいいなさい。」
仲良くなりたいのは嬉しいけどなんで一緒に着替える必要があるんですか(正論)
「ねえねえ!鍵山さんはウチらと着替えたいよね!?ね!?」
「えっ…あー…紀ノ國さんがよければ…」
「だってよ、文ちゃん!どうする!?どうする!?」
「わわわ私が決めるの!?べべべ別にいいけど…ゴニョゴニョ…」
「よーし!じゃあ仲良く3人で着替えよー!」
このときを振り返る女子生徒K・Fさん。
「あのときの私はどうかしていました。まさかガキや…Kくんと一緒に着替えることになるなんて…完全にひま…Hさんの策略にしてやられました。」
☆ ☆ ☆
僕たちは女子更衣室で着替え中です。
「でねー、あの俳優が--。」
「そうなの--。でも--」
僕は絶賛目瞑り中でもあります!!
周りを見ないようにしながら器用に制服(男子用ブレザー)を脱ぐ。
--そしてズボン、Tシャツと脱いで体操着を着て…
ぱちこん!!
ん!?頭に衝撃が!?
「「バカー!!」」
「なんなの!?なんで鍵山さんノーブラなの!?信じらんない!ちっちゃくてもブラはつけないとダメでしょーが!」
「ガキ山がそこまでガキだったなんて思わなかったわ!男子用のボクサーパンツとか女の子が履くわけないでしょ!?ドアホ!!」
「ええええ!?だって僕、昨日まで男だったんだよ!?女物の下着なんか持ってるわけないじゃん!」
ここからお説教タイムがあったけど予鈴のチャイムのおかげで短く済んだのでした。
「夕陽!今日の放課後に時間ある?いや、無理やりにでも連れ出すから!ウチらと買い物行くよ!」
「ガキ山の下着選んであげるんだから光栄に思いなさいよ!!」
いつの間にか夏目さんが僕のことを名前で呼んでる!?
「でも夏目さん…僕…女性用下着とか買ったことなくて…」
「買ったことある方が問題だわ!だからウチらがついて行くの!!あと、ウチのことは陽葵って呼んで!ウチも夕陽って呼ぶから!」
「わかった。陽葵だね!ついでに紀ノ國さんも…?」
「私は貴方のことをガキ山って呼び続けるけど」
「ですよね〜…」
「「「--って、時間!」」」
3人仲良く授業に遅刻しましたとさ。