日常
「明日までにゲームを作って、発表するとか……まじ無理だわ〜」
徹夜を覚悟しても終わる見込みがない。
全く、時間とは何て残酷なんだ。あと5日あれば終わらせれると思うのに。
まあ、今日まで遊んできたツケなのだが。
そんなわけで、行きたくないがゲームが出来なかった報告だけでもしとかないと、さらにやばいことになるので学校へと到着した。
「何暗い顔してんのよ」
後ろから、声と衝撃が来た。
振り返ると、金髪のギャルが手を振り下ろした格好でいた。
「いや、まじ痛いんですけど。背中ヒリヒリしてるし」
「大丈夫よ、ひきオタなら」
決して、俺は引きこもりの、オタクなわけではない。
名前が、日木澤陽尾太なのだ。
名前の由来は、オタクになって欲しくないということからだそうだ。
まあ、だからと言って「ひおた」という名前にするのはどうなのかと思うが。
まあ、話は変わったが、いじめを受けているわけではない。
こいつの場合、バカにしている可能性は大だが。
「んで、なんで暗い顔してんの?」
「いやー、ゲームが完成しなくてね。あはは、ぐぇ」
「笑い事じゃないでしょ。まあ、小夜ちゃんがそう思ったからもう少し伸ばさないか聞いて来てくれてるけど」
「え?俺首絞められ損じゃね?」
俺は目の前の女、小鳥遊雀に悪態をつく。
ちなみに、こいつに雀ちゃんなどと言ったら、殴られる。
バカな俺でも、流石に二桁も殴られればわかるってものだ。
その時、雀の目線が俺の後ろへと移った。
「少しは反省しろ。あ、戻って来た!さよちゃーん!」
駆けてこちらに来ている美少女はこの学校のミスコン一位、彼女にしたい女子一位の森小夜だ。
肌は透き通るような白さで、それに対して、髪は漆黒のコントラストでますます強調され、スタイル、性格共に完璧だ。
「一応、もう一週間だけ待ってくれるって」
「よかった〜。ほら、ひきオタもお礼言いなって」
「すまん、それとサンキュー」
「もう、ヒオちゃんは昔からそうなんだから」
そして、俺の幼馴染だ。ついでに、彼女だ。
「あー、はいはい。その話長くなるから二人っきりの時にでもどうぞ」
「それにしても、遅刻とはダメなやつだな」
「ひきオタが言うな、あと今日は本当は休みだから遅刻も何もないでしょ」
「昼頃に集まろうとしか言ってないからね」
「それに、あの子は普通の学生じゃなくて、有名な声優なんだから」
「ふむ、偉そうなやつだからな、重役出勤はデフォってところか」
「誰が偉そうだって?」
どうやら、やっと着いたみたいだ。
有名声優、立木蜜柑という名前で活動しているやつで、本名は竜崎林檎という。
なんで、蜜柑にしたのだろか、別に林檎のままでも十分芸名ぽいと何回も思ったものだ。
「こんにちは、林檎ちゃん。ヒオちゃんが終わってないから期限延ばしてもらったよ」
「おい、小夜よ。何も聞いていないお前がなぜ終わってないと断言できる」
「間違ってないんだから気にしなくてもいいでしょうが」
「はぁ、本当にクズだね日木澤は」
「いや、お前ほどでないよ」
「なんだって!」
「まあまあ、林檎ちゃんも落ち着いて。ヒオちゃんも、煽らない」
俺が気づいたのはふと視線を下げたからだ。
「みんなー」
言い終わる前に、俺たちはこの世界から消えた。