護衛
昨日投稿しわすれたぁぁぁぁぁ
ガタガタ・・・・
木で出来た車輪が地面を轢いていく。
両サイドに付いたその車輪はその胴体でもある人の乗った木の箱を合理的に進ませる。
その車輪と動力源となっているのは茶色のごく普通な馬1頭だ。
中世の時代で最も早い移動手段だった、馬車である。
初めて乗ったなぁ
ウップやべぇ、酔った吐きそう・・・・
俺と相羽君は今、大量の物資を運んでいる馬車に乗って「アル村」へと向かっていた。
理由は簡単、そこに今回の獲物がいるからだ。
数時間前、俺と相羽君は一時パーティを組み、巨大ムカデ討伐の依頼を引き受けた。
その討伐対象である巨大ムカデ「デットスネーク」はアル村に出現している。
巨大ムカデというから、元の世界とは大幅に大きさが異なるだろうなぁ。
俺は個人的に元の世界の大昔、石炭期に生息していた巨大な節足動物のアースロプレウラみたいなものかと思ってる。最大で3メートルにはなる巨大なムカデ型の生物だ。(何で知ってるかって?趣味だよ)
依頼内容は森に出没したから討伐とのことだ。
確かに3メートル近いムカデが出たらただ事じゃないよね。
小さい村って聞いたし、森である程度資源を採ってるかもしれない。だとすれば急がないと死活問題だろう。
しかし、アル村とアルフ王国とは少し距離があるため、徒歩では野宿が必要とのことだ。
スキル「生活必需シリーズ」に「家事衣類スキル」があるが、これはどうやらサバイバル生活にも有効らしい(ソースは相羽君)。
しかし技能があっても道具が無くちゃ意味がない。
野営の為にその手の道具を買いに行ったのだがナカナカのオネダンデスネ・・・。
そこで思い出したのだが、相羽君は初めての依頼で既に野営経験済み。
ということから道具はあるんじゃない?と聞くとどうやら使い捨ての安物で行った為に壊れてしまってるとのこと・・・・
一回使って壊れるとか耐久性どうなってんだ?といちよう気になったので店まで見に行くと
・・・・これはアカンやつや・・・
今にも折れそうな木製の棒に扇風機の風で遥か彼方まで飛ばされていきそうなボロ布。
コレデテントデスカ?ワーツ?
地面ニサス釘無イノ釘〜?
エ?ハリガネ?ウソォォォォン
確かにお値段は100Gと格安だ。格安っていうかこんなんに100Gも払うの?
・・・とても買う気にはなれない
「もうコリゴリです」と言ってる相羽君は意外とチャレンジャーらしい。
というワケで野宿は却下。
次は馬車を買う、またはレンタルするという方法だがこれも金銭的にボツ。
馬一頭100000G。馬車一台800000Gという破格の値段。
却下ウフフだ。普通に馬一頭で金が尽きる。
革装備だって高かったんだぜ・・・?
討伐以前の問題だ。移動手段が無いという。
依頼書の説明も読まずにいたことに相羽君から責められるかと思ったが相羽君は「読まなかったのは僕もですよ?」と笑って言ってくれたまじイケメン。
しかしいったいどうしたものか・・・
石レンガの階段を椅子替わりに使って項垂れていると何やら馬車が騎士とトラブルを起こしてるのが僅かに見える
神は(カラスの事じゃない)俺たちを見捨てなかったようだ。
丁度そこから見えたのは王国の間所で、沢山の物資馬車に詰んだ商人が騎士の人と揉めているのを見かけた。
そして現在にもどウップ
「あの、スーオさぁん。連れが酔ったようなので止まってくれませんかぁ?」
「はははは!この程度で酔うとわなぁ!アンチャンもうちょっと鍛えな!」
相羽君と移動商人スーオさんの交渉が終わると急ブレーキで馬車が止まった。
朝飯と昼飯の中身がごちゃまぜになった胃袋に刺激がァァァァァァ
リバースしちゃぁうぅぅぅ
「ほろ、灰原さん。早く降りて」
「ん・・・・ありがつ・・・」
俺は相羽君に肩を支えられながら馬車から降りた
青々しい草むらの上に降り立つと夏の生き生きした草葉の匂いを嗅げる。
寝転んだらさぞ気持ちいいだろう。
人間の人工的な手が加えられていない自然らなでわの雰囲気を醸し出していた。
花の匂いを嗅ぐかのように顔をそっと近づけそこに
「おえぇぇぇぇぇぇぇぇ」
汚物も吐き気もプライドも全てそこに吐き出した。
さぁ自然へと還れ、俺は恥をガムのように噛み締めて生きていく。
相羽君が「うわぁ・・・」とか言ってるけどそんなん知らんもんね。
この世界に酔い止めなんかないんだ。バケツはあるけど今はないんだ仕方ないだろ?
馬車なんて初めて乗ったんだよ。新感覚の揺れに馴れないだけだよ、そんな吐き魔を見るみたいな目で見ないで!
相羽君は無言で俺を介抱してくる。そのまま馬車へと向かうがなんだこのキモチ。
馬車を操っているドワーフのスーオさんは、豪快にハッハッハと笑っている。
やべぇ殴りてぇ・・・。
でも乗せてもらってる身なのでそんな事はできない。俺だけ置いていかれるなんてそんな悲しい話にゃさせない。
相羽君は俺を気遣ってゆっくりと馬車に乗せてくれる。いやはやありがたい。
「もうそろそろいくぞー。」
「はい、お願いします」
「オネガイシマブ・・・・」
スーノさんの合図によって馬車は再び動き始める。
ガタンガタンという揺れはもう馴れた。
まぁ吐き出すものも、もう無いんだけどね。
相羽君はまだ心配なのか、俺を見ながら話しかけてくる
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫ダイジョウブ・・・」
「なら、良いんですけどね」
そう言って相羽君は俺から視線を外した。俺自身も酔わない為に流れていく外の風景を眺めることにした。
ところでどこで馬車を調達したかというと・・・
はいもちろん騎士の人と揉めてた商人さんに乗せて貰ったんですよ。
騎士さんが言うには最近モンスターの動きが活発になっているとのこと。
そのため犠牲を最小限に抑える為に、町と町との移動の際には必ず護衛を雇う事を義務づけているらしい。
実際、護衛制度を付けてから移動中モンスターに襲われて死んでしまう犠牲者は大幅に減ったらしく、この制度も多くの商人や市民に認められている。
でもまぁ、逆に言えば護衛をつけなきゃ外へは出さないってことだ。
どんな事情があったとしても命だけは守りなさいというのがアルフ王国の方針らしい。
なんというか、意外にちゃんとしてるな。
ゲームの世界みたいなファンタジーの世界って、自由度が高い分「死んじゃってもしらないよ」ってのが多いと思ってたけど、この国は「最低限身の安全を確保させるルールがある」という事だ。
この真面目な制度は絶対狼男のフェンスさんだな。間違いない。
さぁてと、察しのいい人は気づいてると思うけど、あの騎士さんと商人さんが揉めてる理由は
商人さんが護衛を雇っていないということだ。
「頼む行かせてくれ!たった一人の娘が故郷で待ってるんだ」
「だからっ護衛を雇わないとここを通すワケにはいかない!モンスターや盗賊に襲われたらどうするんだ!」
「っ!雇う金が無いんだっ!村にゃ今でもモンスターが出没して村事態の死活問題なんだ!この荷物だって、村に必要なものなんだよ!」
「しかし・・・・」
どうやらあの商人さん、護衛を雇えずこの街から出れなくて困っているそうだ。
娘さん一人かぁ・・・確かに寂しい思いさせてるかもね。
でも騎士さんも悪いってわけじゃないしなぁ。
あくまで騎士さんは商人さんの身の安全を心配してるわけだし・・・かといって騎士さんが護衛に付けば門番がいなくなる。難しいなぁ。
でも俺らにとってこの状況は・・・
「・・・相羽君?これはなかなか俺らにとってはチャンスかもしれないぞ?」
「奇遇ですね。僕もですよ」
考えは一致したようだ。俺達はお互いの顔をニヤァと歪ませ、犯罪者並みの悪い顔を見合わせた。
単純なことだ。
あの商人さんはそれなりに大きな馬車を持ってる。沢山荷物が詰まってるが売り物ではなさそうだ。
それを売って護衛を雇うという選択肢もあるがそれをしていない限り娘さん、またはその故郷に必要なのだろう。
だが、そんなに沢山の物資を運んでいたらモンスターや盗賊のいい餌になってしまう。
つまり彼には今、金のかからないそこそこ腕の立つ護衛が必要だということだ。
そんな都合のいい戦士なんて・・・
いますよここに俺の真隣に。
たった二日で覚醒スキル開墾した大物が。
そんなワケで俺たちはドワーフ商人のスーオさんの護衛をする代わりにアル村まで送ってもらうという交渉に出たのだ。
お互い利害も一致してるしいいんじゃないの?
だって相羽君、覚醒スキルの狂戦士保有者だよ?そこらの騎士が束になっても勝てないよ多分。
まぁ俺たちの申し出に騎士さんが「狂戦士の相羽さんなら心配ありませんね!」とか言ってた。
相羽君・・・もう二つ名持っちゃったのね。
俺少し怖いよ、立場的な意味で。
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流石馬車の力と言うべきか、徒歩一日かかる道のりを半日で到着したよ
出発が昼近かったからもう夜だけどね。
この夜の暗さじゃ討伐は無理だ。今夜はとりあえず宿を取って明日、依頼主の村長さんに話を聞こう。
そして幸運なことに、スーオさんもアル村に向かっていたらしく、大荷物となった食料も、巨大ムカデのせいで森から食べ物が採れないこの状況下を改善する為に街でかき集めていたそうな。
そして俺達はその死活問題の元凶である巨大ムカデを討伐しに来た。
すごい奇跡やん。
物語かよ。
ちなみに馬車での移動中モンスターに出くわしましたよ。はい。
でもね、相羽君が覚醒スキルの発動直前の溜め?みたいのを使って追い返してた。
つまりあのモンスター達は狂戦士の気迫に押されてたっぽい。で、勝てないと悟って逃げ出した。
流石に同情するぜ・・・隣にいた俺はションベン漏らしそうになったよ。
只ならぬ気配にスーオさんの焦りっぷりは笑っちゃったけどね。
え?俺?戦ったよ?スライムみたいなの。それだけ。
「相羽く~ん、お金ある?」
「5000Gくらいなら・・・」
「少なっ!?なんでそんな金ないのさ!相羽君冒険者レベル3じゃん!」
宿に泊まるために所持金の確認をしてたら驚愕の数字を差し出してきたよ。全財産5千円て・・・「無駄使い?若いもんね」
「は、灰原さんだって若いじゃないですか!!僕は双剣の耐久値を上げてたんです!狂戦士を使うと初期装備じゃポキッと折れますからね!」
持つ者の悩みか。殴りてぇ。
幸い俺は2万Gある。宿が元の世界のホテルのような値段だったら不味いなぁ・・・
そう悩んでいると一人の男が声をかけてきた。
「今夜はもう遅いだろう、宿も空いてないだろうし。よかったら私の家で休息をとっては?」
俺たちがアル村の宿を探している時、商人すさスーオがそう言って来てくれた。
なにこの王国。滅茶苦茶いい人ばっかやん。フェンスさんの人柄だなこりゃ。
しかし甘えてばかりはイカンだろう。
「そんなっ送ってもらっただけでもありがたいのに!」
相羽君が両手を振ってお断りしてる。うん、俺もそう考えてた。
「いやいや、アンチャン二人が護衛を引き受けてくれたからこそ、今私はここに居られるんだ。仮に護衛無しに間所抜け出したとしても、あのモンスターの数は捌ききれなかった!死んでもおかしくねぇ・・・だからこそ、お礼がしたいのさ!」
スーオさんはドワーフらしいその小さな体とは裏腹に心はめっちゃデカイらしい。
俺は相羽君と顔を合わせて罪悪感に押しつぶされそうになってた。
俺たち側からしたら、都合よく困ってる馬車持ちの人がいたから利用させてもらっただけなのだ。
こ、心がいたいっ!!
「なぁいいだろ?きっと娘も喜ぶ。」
スーオさんは折れないらしい
うーん、ここまで言われて断るのはイヤなヤツだな。
俺は相羽君に指示を出す。
「「よ、よろしくおねがいします」」
「おうっ!こっちだ!」
俺たちはスーオさんについていくことしかできなかった。
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「スリフ、帰ったぞ!」
「お邪魔します」
「オジャマシマス」
「あっお父さん!おかえりなさぁい!!」
スーオさんが玄関の扉を開けると140センチくらいの女の子がトテトテと走ってきて父親に抱きついていた。
あれが娘さんだろう。元気だなぁ。
うん、親子の再会、大げさだけど微笑ましいじゃないか
相羽君を見てみると優しい顔で二人を見守っていた。
やっぱりこういう風景っていいよね。家族の暖かさとかあって
後、確信したね。スーオさんの人柄からして親バカに違いない。間違いなく。
「あれ、お兄さん達だあれ?」
スーノさんに抱きついていた少女はようやく俺たちに気づいたようで。
アブナイアブナイ、空気になるところだった。
相羽君のほうも少し緊張しているっぽい。
お偉いさんを相手にしたクセに・・・
スーオさんはそんな俺たちを娘さんに紹介してくれた。
「この二人は私の恩人だよ。真っ黒髪の方が灰原さん。青っぽい黒髪の方が相羽さんだ。失礼のないようにな」
「ど、ドモ・・・」
「よろしくね」
失礼のないようにって、俺らどこぞのお偉いさんじゃないから畏まんなくていいのに
ちなみに俺はガチガチの緊張中です。
「この子は今年で7才になる私と同じドワーフのスリフだ。」
スーオさんの紹介でスリフちゃんはキラっと眩しい笑顔を見せてくる
「スリフですっ!お父さんがお世話になりました!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
。
子供は・・・無邪気だねぇ・・・
ここで言います。
灰原君はハーレムを作りません。
ロリータコンプレックスでもありません多分。