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ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
第4章『武器入手』
44/47

方法

少し忙しかったです。主に私的な理由で。


「・・・魔廻教がアルフ王国に潜伏してた?」


俺は飲んでた茶を口から離して聞き返す。俺の反応に正面で同じく茶をすすっていたフェンスさんは「うむ」と頷いて飲んでいた茶をテーブルの上に置いた。ちなみにフレキちゃんはどう頑張っても茶を飲めなかったので果実水・・・要はフルーツジュースを飲んでいる。100%ではない、果汁80%水20%である。

ステータス回覧便利だわ。


「魔廻教って、もう絶滅した魔族を信仰している教団ですよね?確かフレキちゃんを奪還しようとしているって・・・」


相羽君が前の記憶を思いださせる様にうーんと唸りながらそう言う。

相羽君の言う通り、魔廻教とはかつて亜人との殲滅戦争を引き起こした魔族を信仰し、戦争に破れて絶滅した魔族の遺産、《突然変異》のスキル持ちの人を集め、魔族を復活させてこの世界を魔界へと変えようとしている、まぁクレイジーな宗教団体なのだ。

《突然変異》とは敗北した魔族が生き残った亜人の魂・・・この場合DNAって言った方が良いのかな?それに残した爪痕のようなものだ。

主な効果は所有者の魔力を増倍させて体を魔族化させるというまぁなんとも恐ろしいスキルである。


フレキちゃんも《突然変異》者でその証拠にステータス覧にスキルの《突然変異(ニューティション)》と《魔力》のステータスが表示されていた。

強力な力だが、いつ魔族化するかわからないというハイリスクも付いてくるスキルでもある。

中でもフレキちゃんは魔廻教の《突然変異》者でも強力な分類に入るらしく、魔廻教はなんとしてもフレキちゃんを奪い返そうと計画してるっぽい。

その魔廻教の信者がアルフ王国に侵入を成功してたら・・・え?やばくね?


「うむ。相羽殿の言うとおりだ。魔廻教信者数名は既に捕縛済みだが、侵入されたとしたら他のメンバーも入ってくるかも・・・いや、既に入っているかもしれぬ。」


フェンスさんの物々しい言い方に冷や汗が流れる。

そうだ、侵入した連中をとっ捕まえたと言っても奴らは既に侵入したという成功例が出来ている。つまりどこからか騎士団でも察知できない"穴"があったということだ。早くそこを潰さなければまた侵入される可能性が高い。


「フェンスさんはなにが心当たりはあるんですか?魔廻教がアルフ王国に入り込める入口とか。」


俺はフェンスさんにダメ元で聞いてみた。するとフェンスさんは「むぅ」と何か迷うように唸って考え始める。

え、あるのかよ。


「無い・・・と言えば嘘になるな。一般人には言いふらして欲しくはないが・・・先日アルフ王国騎士団の中から魔廻教信者と(おぼ)しき容疑者を捕らえた。おそらくそこから通じて侵入したのだろうな。」


「「はぁ!?」」


「そんな・・・」


俺と相羽君は同時に声を荒らげ、フレキちゃんは信じられないといった様子で呟いていた。

無理もない。まさか味方だと思っていた側から敵のスパイが見つかってしまったのだから。いわいる日本人からしたら警察からテロリストが見つかったようなものだ。

最悪場合フレキちゃんを騎士団に保護してもらう予定だったのに、最早アルフ王国騎士団に保護してもらっても安全とはいえないだろう。

フェンスさんは無関係ではない俺達にためらいもなく次の言葉を口にする。


「やはり奴らの狙いはフレキ殿の身柄だろう。宮殿にある《突然変異》者の保護施設に侵入していたのを騎士団が発見した。」


「ひ、被害とか出ましたか?」


相羽君が心配そうに眉を潜めて言う。被害というのは魔廻教信者が捕縛される時、何か反撃をしてきたかどうかを聞いているのだろう。

以前に聞いた話だが、魔廻教は《突然変異》で復活させた魔族を保持して戦力にしてるらしいし、決して無力なわけではないのである。「捕まるならいっそ・・・」という感じでなにかしてきたかもしれない。

フェンスさんは少し表情を歪める。


「・・・保護していた《突然変異》者2名が死亡した。どんな手段を使ったか知らないが、信者は捕まる直前近くにいた《突然変異》者の《突然変異ニューティション》を強制的に発動させたのだ。しかも《印のシーリング》が無効化された。」


「・・・そ、それって・・・」


「《突然変異》が発動した《突然変異》者は魔族化。先も言ったが、《印のシーリング》を無効化し、暴れて破壊行動を起こした為・・・殺処分した。」


フェンスさんの言葉にフレキちゃんの顔が恐怖で塗られた。

理由はわかる。「殺処分」も怖いだろうが、フレキちゃんの性格だと、自分の死よりも周りに危害を加える事が一番怖いのかもしれない。

彼女も《突然変異》の保持者なのだ。拘束効果のある《印のシーリング》で暴走時も抑えられるからこそ、今までフレキちゃんが《突然変異》であるにもかかわらず誰かに危害を与える心配は無かった。

そのハズなのに、魔廻教は強制的に《突然変異》を発動させる技術だけでなく《印のシーリング》の効果を起動させない事も可能という力もあるということだ。恐ろしい事この上ないのだろう。


「《突然変異》が発動した原因とかわかりますか?」


俺は尋ねる。

この世界には相手のステータスと見ることができるいわゆる鑑定眼のようなものを皆が持っている。それを防げるのはフェンスさんのスキルの《隠蔽》くらいだ。

魔廻教の信者がなんらかのスキルが干渉した可能性が高い。そしてそれがあるなら、ステータスを回覧いして対策やらなんやらを立てられるかもしれない。

しかしフェンスさんは俺の考えを否定するように首を左右に振った。


「騎士団達が捕縛した信者にステータス回覧を(おこな)ったが特にめぼしいスキルは見当たらなかったそうだ。その後拙者と同じように《隠蔽》を保持していると思い、拷問をしたのだが・・・これといったものは分らなかったな。」


フェンスさんがふぅと重い空気を吐き出すように溜め息を吐きながらそう言う。まぁ信者って口堅そうだし、そう簡単にはわかんないよね。

つか拷問って何?フェンスさんが直々に(おこな)ったのかな?だとしたらよく耐えられたな見知らぬ信者。俺はあの威圧を喰らうだけでお漏らししたくなるわ。ある意味尊敬するよ。


「それで、フレキちゃんをどうしたらいいでしょうか?」


「拙者が呼んだのもその事についてだ。騎士団の中に魔廻教との内通者が居るとわかった今、一般の《突然変異》者ならともかく、フレキ殿を普通の保護施設に迎える事は危険すぎる。拙者の《隠蔽》にも限界があるだろうしな。」


まぁそうだわな。なんでかわからんけどフレキちゃんは魔廻教に積極的に狙われてるらしいし・・・今のところフェンスさんの《隠蔽》でただの『魔力の多い獣牙族の子供』という感じで民間人に紛れているワケだけど。


「・・・私のせいでごめんなさい・・・」


フレキちゃんが頭上にあるケモ耳とお尻の尻尾をショボーンとさせて呟いた。

自分の厄介事に俺達を巻き込んで罪悪感でも感じているのかもしれない。

そんなフレキちゃんに向かって俺は「ハッ」と鼻で笑ってやる。そして思いっきり頭を撫でる。


「あぅっ」


「少なくとも俺は気にしねぇ。前にも言ったけどペットを易々と渡す気はないし。」


「か、カイハラさん・・・」


「相も変わらずペット扱いかお主は。」


フェンスさんが俺に呆れたような視線を送ってくるが無視。

あれだよ、自分のものって誰かにあげたくないじゃん?あれ?これ独占欲?怖いわ俺。

それと相羽君。何ニヤニヤしてこっち見てんだおいコラやめろ。


「あー話を戻して、それで具体的な対策とかないですかね?」


俺は場の空気を整えるようにパンッと手を叩いて話題を戻す。するとフェンスさんは手を組んで「うむ」と頷くと俺に答えてきた。


「原因がわからない以上、打てる手と言えば身体の強化をするしかない。フレキ殿のステータスを上昇させれば魔廻教の謎の能力に対抗できるかもしれん。幸い、フレキ殿は魔法型に特化してるし、物理ではない攻撃の耐性を高くすることができるだろう。」


フェンスさんの話を聞くところによると、スキルの中には《毒生産》《幻惑》《麻痺攻撃》などとの、いわゆる《状態異常》に該当するスキルが存在するそうだ。

これらのスキルに対抗するには《耐熱》《抗体》などの《耐性》スキルか、または敵よりも高いステータスが必要になるそうで。

例えば


力・10

耐・10

賢・10

速・10


スキル

「麻痺攻撃」


このような人がスキル《麻痺攻撃》を《麻痺耐性》を持っていない人に使えば相手の動きを麻痺させ止まらせることが出来る。

しかし《麻痺耐性》を持っていなくても自分よりステータスが遥かに上、例えばこんくらいの敵。


力・100

耐・100

賢・100

速・100


相手が《麻痺耐性》を持っていなくてもこのくらい格上の敵には無効かされてしまうそうだ。

なんでもいくらスキルだとしても、自分より能力の高い生物には効果が薄まされ、最終的には体内で分解され、消し去られるようで。

現代日本で言うところの免疫力といったところかもしれない。


閑話休題。


そして、魔廻教の信者が《突然変異》者を覚醒させたのも《状態異常》系の能力が原因である可能性が高いそうだ。それ以外には特定できないようだ。

いつ見つかるかわからない、かと言ってまだ敵が侵入しているかもしれない場所にわざわざ連れ込むのも危険。

ならいっそ対抗出来るように強くなっちまえばいいんじゃね?というのがフェンスさんの考えだ。

なんというか・・・ゴリ押しだな。


そこに相羽君が口を挟んできた。


「でも、強くなる方法はどうしましょう?鍛錬でも強くはなれますがもっとも効率が良いのは魔物の討伐です。」


まぁそうだろうな。鍛錬じゃ技は身についても根本的な『身体強化』には少し効率が悪い。

現代の地球なら十分だろうが、この世界の場合、能力を人外レベルまで上げることが出来る"ステータス"が裏目に出てしまった。

剣の打ち合いよりも、実践で手に入る経験値(じっせんけいけん)は手っ取り早く強くなる方法の一つとなっているのだ。


かといって魔物を狩ればすぐに強くなれる訳ではない。相羽君は言葉を続ける。


「僕らがすぐにでも強くなるには前回の《突然変異》種のデットスネークくらいを狩らなければならないでしょう。でもそんなのがそこら中にいるわけではないですし、そもそも冒険者ランクが足りません。しかしゴブリン程度の雑魚では期待は薄いですね」


相羽君の言うとおりだ。ゲームみたいに経験値が楽に取れるモンスターなどはいないのだ。

手早く強くなりたいならその分強い魔物を狩れば良い。だがそこまで強力な魔物は遭遇するなんてまず少ない。

だからといって雑魚程度では強化まで時間がかかりすぎる。普通の鍛錬より効率は良いだろうが、それも僅かな誤差でしかない。地道にやれば良いだろうが魔廻教の事を考えると決してよい案ては言えない。

つまり、現在俺達には「時間」そして「経験値」が圧倒的に足りないのである。


うぃー

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