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ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
第4章『武器入手』
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新装備

バトル描写ガガガガガガ

「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


俺は赤黒く染まった虫の甲殻で出来た薙刀を勢いよくつけて振るった。ブンッという空気を切る爽快な音が軌線を(えが)く刃から鳴る。

この薙刀は最近防具と一緒に作ってもらったデットスネークの武器『百足刀(ピートグレイブ)』である。

俺の身長以上に長い持ち手である柄の部分はデットスネークの甲殻を惜しげもなく使われ、今や赤に黒い斑点のある不気味さをもったデザインとなっている。

その強度はデットスネークから作られてあるだけあって、耐久値なら1000超えしている。象が踏みつけても傷一つ付かないだろう。

特徴的なのは先端にある日本刀のような刀身の部分だ。形は日本刀のような反りのある片刃になっているが、この部分が普通の刀身と異なっているのはまず、色だ。

刀身は鉄のような鋼色ではなく、蛍光色の黄色となっているのだ。実はこれ、鉄ではなくデットスネークの角の部位を削って研いで作られた刀身なのである。


その威力は俺が今まで使っていた銅の剣とは桁違いの威力を発揮してくれた。

それもそのハズ、素材となったデットスネークの角は戦闘時、俺の体を革鎧ごと貫いて貫通させてきたのだ。それとイノシシのモンスターも瞬殺しているのを見ている。

とんでもない強度とキレ味を誇る刀身は、おそらく岩に向かって全力で叩きつけても刃こぼれ一つしないだろう。俺が持つのは勿体ないと思うほどの業物であった。

まぁだからって優秀な誰かに譲るつもりは毛頭ないけどね。

そんな素人と正式な騎士の間くらいの微妙な実力で振った薙刀は、目の前にいる相羽君を斬り捨てるように襲いかかる。


「くっ」


苦い呻き声を呟いて耐えながら、キィンッと鋭くも重い音を立てて俺の振りかぶった薙刀を双剣でガードする。

デットスネークの角で作られた刀身をガードするのは並みの武器では耐えられない。前に銅の剣に叩きつけて試してみたところ、刃が欠けるどころか亀裂が出来ていた。流石デットスネークの素材と言ったところだろうか、高い耐久力は打撃にも強力な威力を発揮してくれた。


しかし、その一撃を防御した相羽君の双剣は傷一つ付いていない。鍔迫り合いで互の武器が火花を飛ばす。

相羽君の武器もただの武器ではない。デットスネークの甲殻を使った双剣『朱黒尾剣(ブラックテイル)』である。

この双剣は全体的に朱色がかった黒に包まれた黒い短剣だ。この武器の製法はかなり特殊なもので、デットスネークの甲殻から特殊な鉄分を抽出し、それをインゴットにして鍛えられた二振りである。

なんでも魔物の甲殻には魔力が固まってできる『魔甲鉄』といわれる成分があり、スライムの消化液を加工してできる『分解酸』に数日漬け込むと生成することが出来るらしい。スライム万能過ぎだろと思ったのは俺だけじゃ無いはず。

しかもだ、元々魔族化した《突然変異》種であるデットスネークから抽出された魔甲鉄なのもあって、尋常じゃない攻撃力と耐久力を誇っている。

ゆえに、俺の百足刀(ピートグレイブ)を問題無くガードできたのである。そして当然その武器なら俺にもダメージを与えられるわけで・・・。


「ハッ!!」


相羽君は百足刀の一撃を受け流すと、片手にあるもう一つの朱黒尾剣を俺に向かって斬り付けてくる。両手を剣で埋めてる双剣ならではの戦法だ。

しかし俺だってただでは喰らわない。相羽君に向かっている刀身を急いで引き戻し、長い薙刀の持ち手を平行に持ち上げてカウンターをガードする。

ガキィンと打撃音と一緒にとんでもない衝撃が薙刀から両手に伝わってきた。ガクガクと手が痺れるように震える。相羽君の攻撃はそれだけでは終わらずに更に片手に空いた朱黒尾剣を百足刀の長い柄に叩きつけてくる。

この薙刀の刀身は「断ち切る」に特化した構造をしているが、相羽君の朱黒尾剣は百足刀とは違い西洋の武器のように「叩き切る」を主体としている。切れ味のある刃はあるものの、むしろ打撃武器という印象が強い。

なので《狂戦士(バーサーカー)》で力を底上げする相羽君と相性が良いのである。対戦相手からしたら最悪のコンビだ。


「うぐっ」


一撃だけならランク3の魔物ですら屠れるような一撃を耐え、俺は苦い声を漏らしながらも耐え切ってみせる。しかしこれだけでは終わらない事を俺は知っている。相羽君は交互に打ち付けた朱黒尾剣を続けて操り、その流れのまま双剣の乱舞を俺に振舞ってきた。

ダンスのように、滑るように、緩やかな剣撃を百足刀に打ち付けてくる。百足刀ではなかったら粉々になっていた所だ。しかし振動として伝わってくるダメージを完全に防げるワケではない。

このまま喰らい続ければいずれは手に力が尽き、戦闘不能に陥ってしまうだろう。

それを回避するため、俺は一つ覚悟を決めて行動を開始した。

ガードを中心に使っていた薙刀を突然下げ、一撃貰うつもりで相羽君にタックルを喰らわせる


「なっ!?」


突然武器を仕舞い、身を捨てて特攻してきた俺に相羽君は意表を突かれたのか驚いて戸惑うような声を出した。

しかし乱舞で既に動いていた手は止まらず、振りかざしてきた朱黒尾剣がもろに俺の体へと吸い込まれた。

鉄バットで直に殴りつけられたような重い衝撃が痛みとなって全身の神経を駆け巡る。


「いっつ!!」


既に覚悟していた痛みだが痛いものは痛い。俺が装備している赤黒いローブ━━『巨蟲の帷子【亜】』が無ければ今頃俺の体は真っ二つになっていたことだろう。


俺は痛みを耐えつつ、相羽君にタックルした拍子に地面を回転しながら転がり、離脱する。

本来の鎧ではここまで柔軟な動きをすることは出来ない。布のようなローブとマント、そして薄い薄鱗鎧(ライトスケイル)であってこその動きだ。

ある程度相羽君から離れたのを確認すると、俺は百足刀を杖代わりに使って立ち上がる。

装備の下は痣になっているだろうが仕方ない。最近は痛みにも慣れてきたので戦闘に大した支障はないしね。決して自虐趣味に目覚めたわけではない。


「ふぅ、灰原さんも大分戦闘に慣れてきましたね。それにしても玉砕覚悟で特攻とはビックリしました。」


「訓練」として区切りがついたのだろう。相羽君はニ刀の朱黒尾剣を腰の革袋(レザーポーチ)に仕舞い込んで俺にそう言ってくる。


「ははは、自己犠牲は大の得意だからね。《ヤタガラスの加護》があってこそだけど。」


「僕も持ってますけど、あんまり玉砕はしない方が良いですよ。ほら。」


相羽君の視線の先に、俺も合わせる。

視界の先には、テコテコと急ぎ足のような速度でやってくるちっこい狼娘が目に映った。


「カイハラさ~~~ん!!大丈夫ですかー!?」


本人は一生懸命なんだろうけど、どう見ても急ぎ足速度でしか見れないフレキちゃんに苦笑いをしながら手を振って無事をアピールする。

訓練の回復担当はフレキちゃんだ。だが怪我をするのは俺ばっかりなので訓練が終わる度泣きそうな声でフレキちゃんが突撃してくるのは既に恒例となってしまっていた。


こちらまで小走り(本人は全力疾走)でやってきたフレキちゃんは、ボスンと音の立ちそうな感じでその軽く柔らかい体を俺に抱きついてきた。

そして俺の体が緑色に発光しだす。おぅふ、いつ見ても慣れないなこれ。


「灯れ命を照らす癒しの光よ、『ヒール』。」


フレキちゃんは俺に向かって呪文の詠唱を唱える。するとズキズキと傷んでいた痛みが引いていき、心地よい暖かさが伝わってくる。

ただの回復魔法だと侮ってはいけない。フレキちゃんの『ヒール』は魔法女王(マジッククイン)による強化が施された特別製の回復魔法である。

それとフレキちゃんの片手には杖が握られている。こちらもデットスネークの甲殻を使い作られた杖、「死蛇蟲(アスクレピオス)の杖」。通称「死蛇蟲(アスクレピオス)」だ。

こちらは甲殻といっても、デットスネークの頭部を加工して作られた杖である。デットスネークの蛇とムカデの混ざったような頭部の特徴をそのまま活かし、蛇を模した杖だ。

しかもスキル《突然変異》によって魔族化した頭部は店長曰く魔力の流しがとても良いらしい。

つまりフレキちゃんの《魔法女王(マジッククイン)》と合わさってとんでもない威力を発揮すると予想されていた。

実際、フレキちゃんの『ヒール』は下手すれば契れた腕もくっ付ける事も可能となっているのだ。末恐ろしいね。


「・・・慣れませんねそのイルミネーション。」


「・・・うん。人が緑色に発光する電飾(でんしょく)なんて聞いたことないよ。」


相羽君が何とも言えない苦い表情で言ったセリフに俺も難しい顔をして同意する。

ん?電気じゃないからこの場合魔飾になるのかな?ならマジックイルミネーションだね。人から緑色の光を発光させるパフォーマンスだ。一人で言っといてなんだが、なにそれ怖い。

でも発光するって事はそれだけ高い回復効力を促し(うながし)てるっていう一種のサインだからな。フレキちゃんが俺の小さな怪我にも一生懸命になってくれてるって事だろう。

何とも言えない微妙な気分である。

すると俺の懐にしがみつきながら治療をしているフレキちゃんから涙声の苦情が耳に入ってきた。


「うぅぅ、訓練なんだからあんまり無茶しないでくださいよぅ。心臓が弾け飛ぶかと思いました。」


「いやいやそれは無いから。」


フレキちゃんの無茶苦茶な例えに否定の言葉で返す。

心臓が止まるとかの比喩ならわかるけど弾け飛ぶは流石にない。


「いや、フレキちゃんなら有り得るかもしれませんね。」


「相羽君まで何バカなこと()かしてんの。」


ボケたか?


「だって、訓練初日なんか失神してたじゃないですか・・・・彼女。」


「・・・。」


数日前、デットスネークの「巨蟲装備」を揃えた俺たちは最後に武器をもらっていた。


ビビリな俺はデットスネーク甲殻で柄を、角で刃を作った中距離攻撃が可能な薙刀、百足刀(ピートグレイブ)を。

完全な攻撃役の相羽君は、デットスネークの腹の革で柄を覆い手に負担のかからない持ち手、そして魔甲鉄をふんだんに使われた双剣、朱黒尾剣(ブラックテイル)を。

突然変異(ニューティション)》、《魔法女王(マジッククイン)》の二種で魔法を駆使するフレキちゃんには更に強力となる魔力受流体、死蛇蟲(アスクレピオス)を。


それぞれの持つ武器が実に強力だ。手入れしながら使えば冒険者家業の間ずっと使い続けることも可能かもしれない。

しかしだ、所持する武器は強力で頼もしいが、その文まだまだ俺たちが持つには不釣り合いな武器だ。勢いよく武器を振るっても逆に武器に振り回される。

例えば素人が銃を持ったところですぐに強くなれる訳じゃない、扱い方が分からなければ弾も当たらない。訓練し、銃の扱い方を学ばなければ意味がないのである。


と、いうわけで武器と防具を貰った次の日から早速装備の調整兼訓練ということで始めたのだ。場所はもちろんギルドの訓練所である。

最初は武器の威力が高すぎで上手いこと扱えずに事故も多かった。一度相羽君の武器に当たって腕が反対方向に折れ曲がった時はビビった。その時にフレキちゃんはショックのあまり転倒し、失神してしまったのである。

回復担当がビビってどうする。確かにフレキちゃんなら俺の怪我にビビりすぎ心臓が破裂するかもしれない。と、思ってしまう。

あの時は腕が曲がったまま失神したフレキちゃんを看病したり、パニクりながらも焦って謝ってくる相羽君を宥めたりしてなかなか修羅場だった。同僚の冒険者達の野次馬がギルド職員を呼んだりとなかなか大きな騒ぎになったものである。あれだよな、被害者になって慌てても周りが過剰に騒ぐと逆に冷静になっちゃうよね。

まぁその時に腕曲がっても平然としてる俺を見て周りの人も唖然としてたけど。

仕方ないじゃん、死ぬよりは痛くないんだから。もう痛みには慣れてしまったのである。


「・・・まぁ、大丈夫でしょ。」


「無責任ですね。」


うるさいよ。


「も、もう治りました?」


すると丁度回復が終わったのか、集中を途絶えたフレキちゃんがペタペタと俺の体を触ってくるおいちょっとどこ触ってんのコラ。


「うん、治ったよ。痛みも残ってない。」


「そ、そうですか!よかったですー」


俺の答えにフレキちゃんは安堵の表情で顔を「ふにゃ」と緩ませる。

ふむ、癒しだ。


「わかったならそろそろそのから手を離してくんね?」


「え?・・・ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


俺の男の宝玉に手が触れているのにようやく気づいたのか、フレキちゃんはバッと勢いよく手を離し高速で後ずさる。その速さを意識的に使えないかな?逃げ足だけは速いんだからこの娘。


「す、すいません!や、役得なんて思ってません!」


何がだ。


「ぶっふぉあっ!!」


フレキちゃんの唐突な台詞に相羽君は思いっきりむせかえりながら吹き出し、腹を押さえて大爆笑を始める。

フレキちゃんはフレキちゃんで自分の言った言葉を思い返してみたのか、顔を茹でタコのように真っ赤に染め、「違います違うんです!」と叫びながら手をブンブン振って弁解しようとしている。


「あははははっ!や、やく、とくっ!フレキちゃんは本能に忠実ですね、はははっ!げほっ!クフフフッ!」


「違います!違わないですけど違うんですよぉ!!」


「・・・」


別に大事件が起きなくてもカオスはカオスだな。と思ったのは俺だけでは無いはず。



もはや説明回

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