武具を手に入れよう2
予想以上に忙しいので年越しまでにストック貯めようと思います。
マンガ作業もやりますので大して貯まらないでしょうけどね(泣
「これ・・・マジか。」
俺は呆れたような、そして嫌そうな表情を顔に貼り付けてそう言った。
そして、今自分の身に着けている装備の姿を再確認するために、俺は一度クルッと回転する。
胸当てや籠手など、最低限の防御装備は付属しているものの、それ以外はフード付きの黒尽くめに若干赤みを纏った布だ。
不気味なローブの布が回転した拍子に揺れた。
「防御制皆無の紙装備」と言われても何も言い返すことなど出来ないだろう。寧ろ俺が言いたい。滅茶苦茶クレーマーを仕掛けたい気分である。
暗殺者が着るような怪しげなオーラを放つ装備は、的の攻撃から全く俺の体を守ってくれるとは思えなかった。
軽いね。すごく軽い。この軽さのどこに俺を守ってくれる要素があるのかまるっきり理解できないね。
紙風船を飛ばすくらい軽いよ。
しかしこれが雨合羽然り、防寒服のように羽織る物だというならまだ納得は出来た。
さっきも言ったが、一応このフードの下にはデットスネークで作られた鱗鎧を着ているが、店長曰くあくまで防弾チョッキのような物でしかなく、ローブの方が本命の装備らしい。
嘘だと言ってよバーニィ・・・。
高い金払ってそりゃねぇよ。
「おぉ!カイハラ似合ってんじゃねぇか!」
ガハハッと制作者本人が豪快に笑うので、俺は速やかに店長さんを睨みつける。
似合ってるってなんだよ、今の俺の姿あれだぞ?フード被って赤黒いマントとローブを羽織った黒髪の謎男だぞ?怪しさ100点満点じゃねぇかおめでとうございますこちとらそんな100点欲しくもないわ。
それとも何か?厨二か?俺に厨二病患者に成れというのか?
厨二の世界のクセに何を言いやがる。俺の黒歴史を思い出させるんじゃねぇよ。更新するぞコラ。
「そう睨むんじゃねぇよ。いやーっ!しかし良い仕事したぜ!」
「店長、不良品だよな?それとも防寒服だよな?明らかに皮鎧の方が防御力ありそうなんだが?」
俺は引きつった苦笑いを浮かべて、満足げに笑う店長を見つめる。
魔法使いじゃないんだから、マントのようなローブでいいわけねぇだろ!!
心の中で激しいツッコミをしていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「カイハラさーん!」
幼い声を発しながら、フレキちゃんが俺の名前を呼んでテトテトと小走りでやってきた。
どうやらフレキちゃんも装備し終えたようである。
ふむ、癒しだな。
店長に向けていた怒りの感情が浄化されていった。
おっとやばい成仏するところだった。
フレキちゃんの装備の作りは、大体俺と同じみたい。
ただフレキちゃんの装備は俺と違って完全に黒。
濡れ烏の濡羽色のような漆黒のローブだ。垂れまくってる袖の裾からフレキちゃんの小さな手がひょこっと見える。
いつもと違うのはフレキちゃんが頭にフードではなく、巷で言うところのトンガリ帽子を乗せていた。
その姿はまるで森の中で怪しい実験でもしてるような、悪そうな魔女を連想させられる。
だが着ているのがフレキちゃんなので、小さい子がお芝居で魔女のフードを着てハシャいでるような印象だった。可愛い。
ちなみに言っておくと、トンガリ帽子にも獣耳用の突起物が二つあった。フレキちゃんの犬耳(本人は狼耳と言うだろうが)を被った時に収納するのだろう。
大人っぽい装備だが、所々可愛らしい特徴のあるものだった。
「えへへ、似合いますか?」
フレキちゃんが俺の所まで辿り着くと、走ったせいか頬を少し赤みを帯びたまま、上目遣いでこちらを見上げてきた。
フレキちゃんは肌が白っぽいので、全体的に真っ黒な装備から僅かに見える手や顔を装備の黒が目立たせ、そしてフレキちゃんの紫色の髪の毛も色合い的に黒によく似合っている。
フレキちゃんは前からぼろ布で作ったローブを着ていたこともあってか、ちびっ子魔法使いのような格好がすごく良く栄えていた。
「うん、よく似合ってるよ。」
俺がほっこりと微笑みながらそう言うと、フレキちゃんはえへへと花が咲いたようにニッコリと笑った。
ローブのすそからはみ出している尻尾がブンブン振られている。
やばいどうしよう本当に可愛いっ。思わずギューッと抱きしめたくなってしまう。
フレキちゃんに会ってから俺は子供好きになってしまったのかもしれない。
あ、変な意味じゃないよ?
俺はロリコンではないのだ。いや本当に。
「僕も着替え終わりました~・・・って、ダブルローブですか?」
すると着替え箱の中から3人目の仲間である相羽君がひょっこり出てきた。
相羽君は俺とフレキちゃんの装備を一目見て驚いたような顔をしている。
「あぁ、相羽君お疲・・・・れ」
なん・・・・だと。
「?どうしました灰原さん。」
相羽君の姿を見た途端石造のように固まった俺を見て、相羽君が怪訝そうに俺を見てきたがそんなのは知らない。
なぜ俺が固まったか、それは相羽君の着飾っている装備一式を見てしまったからだ。
赤黒い、炎というよりマグマと錯覚してしまうような紅色の軽鎧。
肩甲と手甲、そして籠手をデットスネークの角の先端で作ったようで、尖った角をそのまま籠手にしたようだ。肘の部分が角のままで尖っている。
足のグリーヴも似たような感じで、全体的鋭い印象を持たせられる防具だ。
更に手足の指の部分が爪のように鋭利になっており、竜を模したような装備として完成していた。
兜もデットスネークの頭部の甲殻を使用しているらしく、カッコいい。
「・・・」
ただね、一つ文句がある。
フレキちゃんや相羽君に対してじゃなくて今豪快に笑ってるこのオッサンにだ。
「おい店長。」
俺はヒクヒクと口元を痙攣させながら店長に振り向く。
「あ?んだ?」
店長はなぜ俺が怒ってるのか全くわからなさそうに、キョトンとした顔で俺の呼びに応えた。
このオッサンまだしらを切るつもりかっ!
俺は幽鬼のようにゆらりとした足で店長に近付いていく。
その姿は端から見たら気の狂った暗殺者に見えるかもしれない。これも全部装備のせいだ。
なんで俺の装備が魔法使い用のローブになってるわけ?
「お、おい。なんだよ・・・?」
「カイハラさん?」
「急にどうしたんです」
フレキちゃんと相羽君は俺の心情を察していないのか、頭にハテナマークを浮かべたまま小首を傾げている。
しかし店長のオッサンは俺の怒りの気配を本気で察したのか、動揺したように冷や汗をかいてて店長は後ずさり始める。
しかし現実は残酷な事に、店長の後ろは壁側だった為に背中を壁にぶつけてしまう。
退路を失って店長が望的な顔をするがそんな事は気にしない。壁GJ。
そんな店長に向かってゆっくり手を伸ばす。
「お、おいっ!まさかお前っ!」
俺が何をしようとしたのか気付いたのか、自分の顔に向かってくる俺の手を見て店長は涙目になってそれに怯える。
その様子を見て俺は満足げに口元を緩めた。
そして慈悲も無く、俺は店長の髭を掴んだ。店長が目を限界まで見開いてそして。
5本ほど髭を一気に引き抜いた。
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおいってぇ!?」
店長の口元を支配していたゴワゴワの髭が抜かれ、店長は断末魔の悲鳴を上げながら地面に転がる。
ふむ、やはりドワーフは髭がとても大切なもののようだ。
「て、てめぇぇえええええ!何しやがるう!?」
店長は抜かれた部分を片手で押さえて起きあがると、涙目になりながら怒鳴ってくきた。
俺はそれを無視し、抜いた毛をヒラヒラと靡かせてそれを捨てる。
「あぁんっ!」
「おいこらオッサン。俺剣士つったよな?なんでこんな布なんだよ?魔法使いじゃねぇっての!」
「あぁ!?どっからどう見ても剣士だろが!」
「どこがだよ暗殺者と言われてもおかしくないわっ!」
「・・・」
「黙るなよっ!?」
このオッサン「やっちまった」て感じに気まずそうに顔を反らして、俺の視線から逃げ出した。
このジジィ・・・。
「まぁあれだ・・・似合ってるぜ?」
「嬉しくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
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その後キレた俺が店長の髭に突撃し、何本かぶち抜いたりとモミクチャの殴り合いを開始したのだが、それも相羽君とフレキちゃんに押さえられてなんとか鎮火された。
とりあえず落ち着いた俺は、いまだに髭を大切そうに撫でているオッサンに話を投げる。
「つーかデットスネークの装備はどうしたんだよ」
「あん?」
店長がジト目で睨んだ俺に振り向いて返事をした。
「このローブとマントの下に着てる軽い鱗鎧ならまだ理解できる。だけど素材はまだ余ってんじゃねぇの?」
そう。俺とフレキちゃんの装備は大半が布だ。デットスネークにローブやマントに使えるような素材なんてなかった。まともに使われているのは相羽君の軽鱗鎧くらいだ。
だが持ち込んだデットスネークの素材はこんなもんじゃなかった。丁度三人分用意したのだから余るだろう。
そう思った俺は店長にそう問いかけたのだが。
「あ?何言ってんだよ。全部使っちまったぜ?」
「はぁ?」
俺の問いに店長が怪訝そうな顔で答えてきた。
おいおいおい、そりゃねぇだろ。このジジィ。
「嘘言うなよオッサン。相羽君はともかく、俺とフレキちゃんの防具は一部を除いて布だけじゃねぇか。」
寧ろ篭手や胸当てしか俺ら着けてないんですけど?
しかし店長は更に眉をひそめると、想像もできないセリフを言い出してきた。
「あぁん?その布がデットスネークの甲殻だろが」
「・・・は?」
そう言われたので改めて装備を見て確認する。
腕から肘にかけて甲殻とデットスネークの腹部の皮膚をなめした作られてる革を組み合わせて作られている篭手。デットスネークの頭蓋骨の働きをしていた頭殻が元となっている胸当て。
そして全身を被るように覆い尽くされた赤い斑点のある黒ずくめのローヴとマント。ちなみに感触からして完全に布。
「・・・・・・・・。」
「・・・なっ!」
俺が顔を上げると、店長のオッサンがこちらに向けて親指を立ててグットサインをしてきた。ニッと笑顔と輝かしいばかりの白い歯を見せてくるのがなんかムカついた。
俺は無言でオッサンに近づき、今度は顎の髭を10本ほど抜き取った。なにが「なっ!」だ。自信満々に言うんじゃねぇ腹立つ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?お、俺の髭がァァァァァァァァァァァァァァァっ!?」
灰原ラフ。
灰原デットスネーク装備。
pcを使って描いてみました。
要はこんな装備でした。
それとpcで描いたイラストがみてみんの容量問題でアップ出来ませんでした。
データを劣化させて何とか投稿しましたが画質が荒くなってしまいました。ご了承ください。




