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ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
第4章『武器入手』
35/47

子供への期待

き、期末テストが・・・・っ!!

ゴブリン討伐を終えた(俺、三匹。フレキちゃん7匹)俺達はギルドに報告しに向かった。

しかしその前に問題が発生した。ゴブリンを討伐したその証明をするために、討伐した本体の体のどこかから部位を持っていかなければならないのだ。そうじゃないと討伐したという証拠がないからな。


だがしかし、フレキちゃんの大爆発で残念ながらゴブリンが燃えカスしか残っていない。

と、いうことなので俺達は商人から荷車を借りて黒炭化したゴブリンを運搬する事になってしまった。

そのままかりんとうのような死骸をギルドに運ぶ羽目になったのだ。

当たり前のように街中を7体の黒い塊を荷車で運んでいるのは住民から変な目で見られたので省略する。あの怪訝そうな表情を向けられるのは勘弁してほしかった。


勿論、運び終えてからギルドに持ち込んでも、ギルド職員の人に「どうしたらこうなるの?」と聞かれた。

答えようがないので俺はフレキちゃんの頭を撫でながら「この子の努力の賜物です。」と答えておいた。

ギルド職員の人がフレキちゃんの髪の毛を見て顔を引きつらせていたのは言うまでもない。


そんなこんなで俺達は無事(?)に依頼を遂行し、家に帰るために帰路に着いていた。が、時刻は夕方。この時間の帰路はよく賑わっている。

帰路の途中に見るのは、商店街のように建ち並ぶ様々な屋台だ。木で組み立てられた簡易的な者、馬車を改造したようなもの、ここの商人達は、色々な形で店を成り立たせていた。

数々の屋台から美味そうな食べ物の匂いが漂ってくる。


流石ファンタジーというべきか、見たことのないような野菜や肉・・・あるところではトカゲや虫の串焼きとかも売っているのが見えた。

毎日がお祭りのように賑わっているのだろう。酒を飲み、屋台の食べ物をつまみにしている客の陽気な声が屋台の通りをBGMのように響きわたらせている。


「賑やかだよねぇ」


「・・・。」


俺が陽気なオッサンが腕相撲してそれを周りでかけている人たちを見てそう言うが、フレキちゃんは黙って反応を示さずにり込んでいる。


「フレキちゃん?」


疑問に思った俺はチラッと目下にいるチビ狼に視線を移した。

フレキちゃんは顔を俯かせたままドヨヨ~ンとした空気を放っており、見るからに『落ち込んでます』というオーラを醸し出していた。

これは大抵失敗したときに自分に自己嫌悪しているフレキちゃんの症状だ間違いない。慰めてくださいとかそういうワザとならほっとくけど、フレキちゃんのこれ素だからねぇ・・・なんというか重い。

すごく・・・重いです。


「・・・えっと、フレキちゃーん。」


「・・・え?あっ、はいです!」


俺の呼びかけでようやく現実に戻ってきたらしいフレキちゃんは若干焦りながらも、俯かせていた顔を上げて応えてくれた。顔色はクソ酷い。


俺はため息を吐いて紫色の頭を撫でた。するとフレキちゃんの目が困惑色に染まり、しかし口で小さく「ひゃぅっ」と可愛らしい声を上げたりしている。

そんな彼女に向かって、俺はまた頭を撫でこう言った。


「・・・狩りの事は気にしなくてもいいよ。」


「っ!!」


図星だったらしい。

フレキちゃんの性格の事だ、きっと俺を怪我させてしまって落ち込んで自己嫌悪に陥っていたのだろう。

あんなに俺の役に立とうと意気込んでたのにね、炎の攻撃で俺にまで怪我をさせるわゴブリンを炭にしちゃったりとやらかしてしまったのだ。


怪我は回復魔法で治して貰ったとはいえ、だからってミスが消えるわけではない。

役に立つどころか、逆に怪我させてしまった。フレキちゃんの正確なら相当落ち込んでいるだろうと簡単に予想できる。

四方八方に動く人混みの流れに身を任せながら、俺達は話しながら石で出来た道を歩む。


「で、でも、わたしっ、カイハラさんに怪我をさせました!威力の調節もできずに魔物の回収だって苦労させてしまいました!・・・わたし、何の役にも立ってないです・・・。」


フレキちゃんは涙目になり、嗚咽で途切れ途切れになってしまいながら俺に言う。

そこに居たのは、何の変哲もない・・・不安気なただの10才児だった。


俺はビクビクと震える少女の頭にポンポンと手で軽く叩いた。その瞬間、フレキちゃんは顔を強張らせた。

俺は歩く足を止めておもむろに口を開く。


「まぁ、こんな時どう言ったらわかん無いからさ、カッコいい事は言ってやれないけど・・・俺はありがたいよ?うん。」


「・・・え?」


俺がそう言うと、フレキちゃんは不思議味を含んだ涙目で此方を見上げながら俺を見てくる。

俺は実際、自分が感じていた事をそのまま吐き出した。


「フレキちゃんはさ、俺に仕事させようと色々頑張ってくれたりしてさ、魔法だって頑張ってくれてることは知ってるよ?」


「でも、わたし・・・結果出せなくて・・・それに怪我させたなんてっ!」


「あーいいんじゃね?別に。ぶっちゃけて言うとフレキちゃん予想以上の魔法の火力だったよ。完全にオーバーキルだった。あれは拙い。」


「うぅ。」


「でもさ、フレキちゃんはまだ10才の子供で、俺は正直そこまで期待してなかったんだよ。単に援護してもらえればいいかなってさ。」


だけど、と言って俺は言葉を続ける。


「フレキちゃんは予想以上に強かった。シッカリしてた。女の子に頼るのはアレだけど、俺はフレキちゃんを頼りにしてるよ?」


「で、でもっ」


「"ここに居て良いから"。ゆっくりやってけゃ良いよ。俺もゆっくりやるからさ。」


「っ!・・・ぅぅ」


フレキちゃんは一瞬緊張したような顔をするが、すぐに眉を下げて顔を緩ませた。

俺の言葉でフレキちゃんの涙腺が崩壊したようだ。フレキちゃんの瞑られた目から、滝のように涙が流れ落ちる。

何とでもない。フレキちゃんは居場所が欲しかっただけだ。俺に「役立たず」「いらない」「出て行け」なんて言われるのが怖かったのだろう。

フレキちゃんは小さい。でももっと小さい頃から信者という何百という数の人々から信仰という最も重い期待を背負わされて育ってきた。

ほんの小さな期待を敏感に反応してしまうのだろう。ほんの僅かな思いだけでも。


相手の期待に応えられなかった人は、まず自分を責める。子供なら尚更だ。自分が迷惑をかけてないか、邪魔になってないか極端に不安になる。

失望されないか見捨てられたりしないか嫌われたりしないか。

幼い子供は酷く純粋だ。・・・だから傷つきやすい。

同情はしない。期待はしない。ただ、一緒に居てやれる事はできる。居場所を作る事ができる。

俺程度で出来る居場所なら、いくらでも作ってやるよ。デメリットないし。


「ふぇぇ、あぅ、うぅ」


「あー泣かないの。周りの人が見てるでしょ。」


だからとりあえず泣きやんでほしい。

周りの人が「何幼気な幼女泣かしてんだコラ」的な視線がめっちゃしてくるから!目線で殺意バンバン送られてますから!?ほらそこ!拳握らない!こっちを見るな!


「うぅ、あぅ。」


「だぁぁぁぁ!!屋台で何か食おう?な?」


俺はしゃがんでフレキちゃんの背丈な合わせると頭を撫でながらそう言ってやった。

するとフレキちゃんのお腹からタイミングよく「キュルルルル」と鳴る音が聞こえてきた。フレキちゃんは顔からボンっと音がなってもおかしくないくらい顔を赤く染めていた。そんな顔を見て俺はニヤリと笑う。

フレキちゃんは俺の顔を見ると、腕で涙を擦って、まだ若干赤みのある目元のまま、はにかんだ笑顔で頷いてくれた。


「・・・はいっ」


俺はその笑顔に頭を撫でてやりながら微笑んで返す。


「それじゃ何を食べようか」


俺はそう言って立ち上がって、辺り一面に広がる屋台の商店街を見渡すとそう言った。

肉や魚、あと虫なんかの串焼き、果実を使ったお菓子や食べ歩きが出来る程度の大きさのパンまで置いてある。

本当に色んな店があるな、逆に食べ物ばっかで雑貨や玩具屋などといった道具屋的なものは一切見当たらない。おそらくここは食べ物の専門のエリアなのだろう。

俺は実は食べ歩きというものをしたことがない。そもそも人が一杯集まる場所なんて暑苦しくて進んで行こうとも思わなかった。

だが今ならやってみても良いかもしれん。そもそもここはギルドからの帰り道なんだから、ここは必ず通る事になる。

食べ歩きする良い機会かもしれないな。


よく見てみると「たこ焼き」「焼きそば」「かき氷」といった、この世界では食べられなくなってしまった食べ物も販売しているのが見える。

料理スキルを使った人間(ヒューマン)達がこの世界の素材で再現したのだろう。

俺から言えばグッチョブである。

フレキちゃんは俺に色々言われて余裕が出てきたのか、沢山の屋台をキョロキョロと見渡している。


「あ、あれ?わたし、ここまできてたんですか?」


どうやら落ち込みすぎてここまで歩いてきた記憶がないらしい。




★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「な、何なんですかこれ・・・」


フレキちゃんが露骨に嫌そうな目で見つめてる屋台には、大量のタコらしき生物が生け簀の中に捕らわれていた。

8本の吸盤の付いた触手、それをウネウネと動きながら水槽でタコが泳いでいる光景は・・・まぁ女の子はゲテモノ好きか変わり者くらいしか見たくはないだろう。


・・・そう、タコである。体色は水色だけども。タコだ。


生け簀の水槽の横には半球状にへこんだ鉄板が設置されており、そこでジュージューと球体の食べ物が焼かれているのが見える。

少し焦げた(こお)ばしい香りが地球に居たときの感覚を思い出させる。

これは・・・これはっ!!


「たこ焼きだとっ!?」


俺は驚きながら次々に焼き終えられていくたこ焼きを見てそう言った。

バカな、この世界にきてからたこ焼きなんて見たことなかったぞ!?いや、俺が引き籠もっててしらなかったってだけかもしれんが・・・。

すると、今まさにたこ焼きを焼いている店員さんが俺に気づいたようで、こっちに頭を下げてきた。


「いらっしゃい。たこ焼きだってよく知ってるね。味は保証するよ。」


そうニッコリと笑いかけてきたのは20代後半くらいの優男なイメージのある男性だった。背は170センチと少し高めで、耳、顔等に亜人的特徴は見当たらない。胴には「たこ焼き!!」と書かれたエプロンを身につけている。

どこからどう見ても俺と同じ人間(ヒューマン)だった。


「えっと、もしかして日本人ですか?」


「ん?あ、あぁ!?よく見たら君も日本人か!鎧を着ててわからなかったよ。そういえば、ケモ耳とかエルフ耳じゃないしね。」


俺と同郷と知ったせいか、店員さんは嬉しそうに声を出した。

この世界に来て相羽君以外の人間(ヒューマン)を見たのは初めてだ。この国には6000人ほどの転移された人間(ヒューマン)がいるにも関わらずだ。まぁ北海道並の大きさだし、そこら中に散らばっているのだろうけど。

おそらくだがそのせいで同郷人と会う機会など意外に少なく、偶然にも出会えたことに俺も少しだけ嬉しい気持ちになってくる。

思えば、たこ焼きなんて知ってるの人間(おれ)達くらいだろう。


「なるほど、たこ焼きなんて珍しいと思ってたら通りで」


「ははっ、私は日本でも大阪でたこ焼き屋を営んでたからね。」


こりゃビックリ、まさか専門職らしい。


「関西弁は?」


「私はあまり使わなかったなぁ。」


「えぇ!?俺なんかたまに使っちゃうんですけど」


「そうなのか、まぁあんまり甘い気持ちで"なんでやねん"とか言わない方がいいよ。怒られるから。」


「・・・あかん。」


周りの目を気にせずに、俺と店員さんが故郷の日本で会話に花を咲かしていると、フレキちゃんが俺と店員さんをなんどか交互に見てから小首を傾げてこう言ってきた。


「・・・お知り合い・・・なんですか?」


フレキちゃんの疑問に店員がはにかんだ笑みで答える。


「知り合いじゃなくて、同じ出身地ってだけだよ。」


「そうっすね。フレキちゃん、俺達人間(ヒューマン)が異世界から来たって言ったでしょ?この人も人間(ヒューマン)なんだよ。」


「えぇ!?そうだったんですか!!」


まさかの未知の食い物屋を営んでた人が、俺と同郷人であることを知り、フレキちゃんは驚いて目を見開いた。尻尾も硬直している。

そんな少女の様子を見て、俺達はクスッと笑った。


「それにしても、俺と同じ日本人って、久々に出会いましたよ。」


「う~ん、転移された当時はまだそこら中に人間はいたよ?皆最初は皆冒険者だったらしいんだけど、死ぬ恐怖と殺す罪悪感に耐えられなくなる人が続出してるらしいからね。」


「あー大体察せてきましたわ。」


「あぁ、今じゃ大半が生産職に就いたり家に引きこもってるのが大半じゃないかなぁ。私は最初からたこ焼き屋だったけどね。」


なるほど、俺と同じ同郷人はそんな状態なのか。死ぬ恐怖ね・・・無理は無いけどさ、痛いし。



ありがとうございましたー

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