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ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
第4章『武器入手』
34/47

ちーとおぶざでっと

最近リアルが忙しくて更新おくれます。

芝生のように隙間なく植物が生えた平原は、綺麗な緑色に染まっている。

大地が地平線の彼方まで続いているかのような光景が目の前に広がっているのは、ファンタジー映画の舞台を見てるようなワクワクした気持ちが沸き上がってきた。

平原を上から見て斑点状のようにそこらかしこに木が生えている。その一本一本が生命力に溢れているかのように根強く佇んでいるのは、流石異世界とでも言うべきだろうか。見たこともない樹木だ。

思えば、デットスネークの時の密林も珍しいものばっかりだったな。


しかしここは決してジャングルなどではない。

ここはバーナル平原。アルフ王国の壁外から歩いて来ることができるくらいの位置に存在する広大な狩り場として知られているらしい。


俺は始めて来るのでわからないけど、狩りの依頼ではなかったらピクニックをしたくなるような場所だというのがバーナル平原への率直な感想である。

日差しは暖かいし、不快にならない程度に香る草の独特な香り、そして所々に存在する野花の群生地。

ここで美しい音楽でも鳴らせば、日本ならテーマパークか自然公園にでも認定されそうである。

人の手が加えられてないだけで、自然とはここまで美しくなるものなのかと感心したくなる。


うん、こうして落ち着いて見てみると、中々壮大だな。スーオさんの馬車の時に近くの平原は見たけどよく観察する所じゃなかったからね。

流石に胃から食料をリバースしてた状態じゃ全ての背景がゲロを吐き捨てるゴミ棄て場に見えてたのですよ。言い過ぎましたごめんなさい。


「しっかし広ぇぇ・・・」


俺は淡々とそう呟いた。

こんな風にゆっくりと大地や背景を見た事なんてなかったもんな。このまま昼寝でしたくなるがここはあくまで狩り場。

油断すれば魔物に命を刈り取られる事だってありうる危険地帯なのだ。

そう思って少し気を引き締めていると、フレキちゃんが地図を見ながらバーナル平原の事を説明してくれた。


「えっと、バーナル平原はアルフ王国の半分くらいの面積があるそうです。カイハラさんの言う通りかなり広いので計20組にエリア別に分けているみたいです。ゴブリン討伐はエリア2・・・つまりここですね。」


フレキちゃんは依頼書と地図を見合わせてここのエリアの把握をし始めた。相変わらずシッカリした娘である。


地図に載っているのはバーナル平原の全体図。それによるとバーナル平原はアルフ王国の半分ほどの面積をもっているらしい。日本で例えるなら丁度アルフ王国が北海道くらいの大きさだから、バーナル平原全体は日本の九州くらいの広さだろうか。かなり広大だ。

アルフ王国はエルフ、ドワーフ、獣牙族の国が纏まって出来ているからこの異世界(オフライン)では最も大きな国だ。

他にある諸国は東京くらいの県サイズの大きさらしいから大陸全体が無法地帯といってもいい。

国の外の壁外は、バーナル平原などといった手付かずの土地がそこら中に存在しているのだ。

全て合わせて国土が40%、手付かずの自然が60%といった具合だろうか、この世界の一個の大陸の大きさがよくわかる。


だから冒険者ってのは依頼を受けるとき最も面倒なのは移動だ。ゲームみたいに瞬間移動で狩り場に移動ができるわけないし、スーオさんの依頼護衛を受けた時だって馬車で半日はかかった。

でも、あれでもまだ楽な方らしい。普通は何日分の食料や野営セットを準備して何日もかけて移動するのが一般的なのだから。

それか俺達みたいに目的地まで護衛の依頼を受けて馬車に乗せて貰うってのも手の内だ。


冒険者の中には専用の馬車とか持ってるらしいし、後でそういうのも用意した方がいいかもしれん。

クソ高いけどなー。


「移動ってホント面倒だわ~」


「楽してお金を手に入る訳ないじゃないですか。」


俺の愚痴っぽいセリフに、フレキちゃんが少しムッとした顔で言ってきた。

俺は冗談冗談、と言いながらバーナル平原の遠くを見る。

ゴブリンがいるのはこの辺りだ。ここら辺に巣を作って10匹ほどの群れで生活をしているらしい。

ゴブリン討伐理由は、商人達の商隊が移動する際にゴブリンに襲われるかららしい。


アルフ王国はそういった魔物の被害が出ないように国を移動する際には冒険者などの用心棒や護衛といったものを付けないといけない法律がある。危険な壁外で生存率を上げる為だ。実際いい結果が出ているらしいし。


だがしかし、いくら護衛がいると言っても襲われるものは襲われる。

今回の討伐対象のゴブリン達は多少頭が回るようで、数匹が護衛の気を引いて残った少数が荷物を盗んでいくという小賢しい手段を使ってくるようだ。

この依頼も、何度か荷物が盗まれて遂にキレた商人さんが貼ったらしい。

なんというか、この依頼主何度か盗まれるまでキレなかったのか。中々心の広い依頼主である。仏の顔も三度までってか。


「騎士がなんとかすりゃいいのに・・・ってそうもいかないか。」


俺は依頼書を見ながら(依頼主の仕業らしい何度か握られたようなシワの(あと)がある。)ため息を吐く。

実際、アルフ王国の騎士団は年に一度遠征して魔物の駆除を行っているらしいものの、それで被害がなくなるわけではない。あくまで数を減らしただけに過ぎないのだ。魔物はすぐに増える。


こういう討伐系を冒険者に回されるのは、騎士団には魔物を狩ってる時間など無いという事情がある。

元々警察みたいな治安維持を目的としたのが騎士団だ。大量の人材を投入して北海道並の面積を誇るアルフ王国の町を常に巡回して、問題を鎮圧しなければならない。

それが騎士団(かれら)の仕事なのだから。


騎士団はそれなりに腕の立つ者でないとなることができない規則がある。時には荒事にも対処しなければならないからだ。要は雑魚は大人しく守られとけって事である。

しかしそうなると必然的に組織の構成員の数はギリギリになってしまう。つまり人員不足。

今の騎士団では町や壁の門の警備で精一杯なのだ。

するとフレキちゃんが俺のため息に反応する。


「そうですね、そもそも騎士団の人達は対人戦に特化してますから難しいかもしれません。隊長クラスには単独で亜竜(ワイバーン)を撃退する実力がいりますけど。」


どこぞの隊長パネェ。


「なるほどね。騎士は中を、冒険者は外の掃除屋ってことね。」


「そうなりますね。でもその制度のお陰で、この国は仕事が無くなるなんて事はありませんし、安定してお金を稼げますから。」


「そうなんだろうね。」


俺がダラダラ過ごせたのも、自由に過ごせるのもギルドと冒険者という職業があってこそだし。

出来るなら今日もダラケたいけど。


「さぁてわたし達も仕事です。灰原さん、行きましょう!」


フレキちゃんは地図で確認を終えたのか、手作りの杖を持ち直して俺の手を握る。

ふむ、尻尾を振ってるな。テンションが高い証拠である。

こういう時フレキちゃんは結構積極的になるのを最近知った。

まぁ常時装備みたいにくっついてるから積極的も何もないけどさ。


「あ、ああ。」


俺はフレキちゃんの笑顔に答えて、バーナル平原エリア2の探索を始めた。

小さな背中が頼もしく思えた。





★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★





「うらあっ!!」


「ピギャァァァァァッ!?」


銅製の刃を横薙ぎして、俺は目の前の標的の首を刈り取る。

俺の剣の餌食となったゴブリンは、首を切り飛ばされて糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちた。

仲間が殺された事により、残ったゴブリン達も盗んだであろう武器を装備して俺の前に立ちはだかる。


俺はフレキちゃんとバーナル平原エリア2の探索を1時間ほど進めていると、無事に標的であるゴブリン達10匹を発見した。

ゴブリンってのは、ある意味俺の予想通りの姿だった。130センチ程の小柄な緑色をした体。顔は大きく目がクソデカい。小さな角が二本おでこに生えていて髪の毛は存在しないっぽい。

ちなみにぼろ布を腰に巻いてナニを隠しているように見える。どうやらこのゴブリン達は全部が雄らしい。

まぁ雌がいたからどうこうって訳でもないんだけどね。


とりあえず前衛が俺、フレキちゃんが後衛で火炎魔法の援護という作戦で決まった。

俺はデットスネークの時の相羽君の動きを真似るように突撃を開始する。

上半身を前に傾けると重力に引っ張られるお陰もあって意外と速度が出た。さらにステータスの補助もあり、日本ならアスリートにでもなれそうな速度で動くことが出来る。

そしてさらに大きな足音も立たないから奇襲にはもってこいかもしれない。


そのまま接近した俺は、まだ気付いていないゴブリンの後ろ後頭部に抜刀した剣を差し込んだ。

走った勢いとスキルのドーピングもあり、ゴブリンの頭は某アンパンヒーローアニメのようにスポーンと、吹き飛んでしまった。

ゴブリンの仲間は突然首を跳ねられ、血の噴水をまき散らしてる死骸にギョッとして動きを止めた。

こうして、俺達とゴブリンによる戦闘が始まったのだった。



石槍を装備したゴブリンが俺に向かって突撃をしてきた。槍の先はキチンと俺を向いている。

仲間が即死したってのに躊躇いもなく突撃してくるとはな。槍のリーチの長さを利用したゴブリン並の自信だろうか。

武器は近付けても、自分が近づかなければ死なないと思っている程度だろう。やはりゴブリンはバカである。


俺は迫ってきた槍を木製の盾でやり過ごすと、懐に隠していた投擲用の投げナイフを思いっきり投げつけた。

手から放れたナイフは吸い込まれるようにゴブリンの頭を貫通させると、ゴブリンは絶命して崩れ落ちる。

投擲は《狩りスキル》の一種だ。ゴミ箱にゴミを投げたり的当てで遊んでたけどそのお陰で腕が上がったのかもしれん、暇人の末路である。


しっかし、ゴブリンを殺しても罪悪感ってのが感じられないな。

デットスネークの時は必死だったから仕方ないとは言え、今俺は確実に命を奪ってるハズなんだ。

ゴブリンを斬った時の肉と骨の感触、ナイフが刺さったゴブリンの絶望的な表情。それを見ても心が全く痛まない。

自分はここまで腐っていたのか、と自嘲するように笑って、3匹目のゴブリンに狙いを定める。

と、そこで


「《儚き炎よ。我が主の(めい)に従え、身を焦がす業火となり道拒むものを焼き尽くせ。《炎の弾(ファイアーバレット)!》」


続いて近くにいたゴブリンに一太刀喰らわせると、後ろから綺麗なソプラノボイスの詩が聞こえてきた。

フレキちゃんのスキルの《炎帝(イフリート)》による攻撃魔法の準備である。

この魔法は、炎で出来たライターの火程度の火力の弾丸が、自転車くらいの速度で相手を攻撃するといういわゆる初期魔法の一種だ。

前に見せて貰った事があるが、強い貫通性は無く、どちらかというと小さな火種で的を火傷させるのを目的とした魔法のハズだ。少し違和感を感じたけど・・・まぁいいか。


でも確かにゴブリン相手なら殺傷能力は十分だけど、わざわざこれをしたくて狩りに来たのか?

無論、フレキちゃんの《魔法女王(マジッククイン)》が組み合わされば威力は倍増されるだろうけど、小技でも磨きたかったのだろうか・・・と、俺の予想はことごとく打ち砕かれる事になるのだった。


「・・・へ?」


「「「・・・ピギ?」」」


フレキちゃんの呪文が完成すると、その可愛らしい小さな手には2メートル程の火球が浮かんでいた。

フレキちゃんは火球を掴むように手を動かすと、それをボールで投げるように振り回した。

その先にいるのは俺とゴブリン。

そこで思い出した。詩を詠むときの違和感、フレキちゃんは訓練の時は炎ではなく火と言っていた事に━━


「うわぁぁぁぁぁぁあああああ!?」


「「「ぷぎゃぁぁぁあああ!?」」」


俺は思いっ切り地面を蹴って地面を転がりながら、全力で火球を・・・しかしギリギリで回避した。

空気と草と地面、そして僅かに焼けた俺の髪の焦げた臭いが鼻を刺激する。

俺は瞬時に飛び込み回避をしたから良かったが、ゴブリン達は上手く避けきる事が出来ずに、悲鳴を上げることもなく火球に飲み込まれてしまった。


ズドォォォォオオオオオオオオ!!


バーナル平原の大地が揺れるような爆音と共に爆ぜた土が辺りに飛び散る。

ゴォォォと熱風が吹き荒れ、手榴弾でも投げつけたような爆発が視界を覆う。

そして、それが収まった時にはゴブリン達のいた場所は1メートル程のクレーターが出来て、黒く焦げた塊が数体、クレーターの中に倒れていた。


「oh・・・」


なんというかなんというかなんというか。

焦げた塊は恐らくゴブリンだろう。その姿はさながら、お菓子のかりんとうに酷似していた。

どうしてこうなった?


「カカカカカカカ、カイハラさぁぁぁぁぁん!?」


煙が一通り収まると、この大爆撃の元凶である幼女が血相を変えてこっちにトテトテと走ってやってくる。

こうして見たら普通の女の子なのに・・・普通の女の子なのに!!


「お、おおおう?フレキちゃんか、すごかったねあれ。」


「ごめんなひゃぃー!!ぜいぎょできなふてぇぇぇ」


俺が片手を振って無事をアピールするものの、フレキちゃんはぐすんぐすんと号泣しながら俺に回復魔法をかけてくる。

おぃおぃおぃ、俺の体が緑色に発光し始めたよ。これもしかして全力の回復魔法か?

緑色に輝くって精霊みてぇだな。はははっ

笑えねぇ・・・。


そうだよな。フレキちゃん努力して初期の回復魔法を骨折まで治せるようになってるんだもんな。

そりゃここまで成長するわ。ライターの火が殺人クラスのダイナマイトまでなるわ。うん。

俺は考えることを放置する。



ライター→ダイナマイト。

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