表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
第4章『武器入手』
32/47

こいつ・・・光るぞ!!

よろしくお願いします

まだ若干霧が立ち、視界が確認し辛い時間帯に、俺は無駄に広い庭で体を動かしている。

地面に生えている芝生は水滴で少し濡れているものの、軽いトレーニング程度が困難になるほどじゃなかった。


「・・・誰もいないとはいえ、一人で剣振り回してると恥ずかしいよな・・・」


俺は足を地面にしっかりと固定し、手に持った銅の剣を力のままに振り上げた。

振り上げた瞬間に体に宿った《剣術スキル》が発動し、素人の斬激からベテランの騎士の剣技へと変化する。

ブンッと言う空気を断ち切るよい音が聞こえると、俺は振り上げた剣を空中で止め、刃を地面に向けると斜め下に切り下げた。

そしてさらに軌道を変えて剣を横薙ぎに振り払う。

丁度刃の軌道に浮かんでいた木の葉がそのまま銅の刃と干渉する。


それを俺は確認すると、横薙ぎにした剣の向きを変えて、腰に下げた鞘に納刀した。

すると先程剣の軌道にあった葉っぱが遅れて地面に落ちた。

その葉は見事に真っ二つに切り裂かれている。


「ふぅ。」


俺は集中していた全身の神経から、気を抜くように息を吐いた。

最近の朝からし始めたこの訓練は《剣術スキル》を使いこなすための訓練の一環である。

朝練や筋トレなど、運動に関する事なんて俺のやる事ではないし、性に合わないがスキルによる体力のドーピングが可能なため俺は気ままにこの訓練を始めたのだ。


つまり気分である。暇つぶし。

死なない程度の実力が付けば俺はそれでいいのだ。

今のステータスがこちら。




名前

《リョウ・カイハラ》


力・132+50「銅の剣」

耐・156+60「革の鎧」

賢・56

速・62


冒険者レベル1

スキル

「ヤタガラスの加護」

「生活必需シリーズ」

「覚醒スキル・龍皇の血呪(ジークフリート)

「フラグ」



これが今の俺のステータスだ。力が少し上がってる。そして防御力の上がり具合の良さに腹立つ。

訓練の目的はステータスの向上、それとスキルの熟練度が存在するかどうかの検証である。

面倒なのだが、事実俺の《料理スキル》の前例があるから可能性は高い。

実際、成長のスピードは遅くとも確実に剣術の腕は上がっている自覚はある。

剣の持ち方や斬り方が様になってきているのだ。


最初はまだまだ騎士レベルまでは到達するどころか手に届く事すらできなかった。

確認すると、《剣術スキル》の会得する最低ラインは訓練を受けてない農民兵レベルである。

つまり俺の剣術レベルは戦争で徴兵された雑魚の農民兵と同等だったと言うわけだ。

モブですねありがとうございます。

ちなみに相羽君は既に騎士レベルに到達していた、今は既に越えているかもしれない。

元の世界で何してたんだ、一体何者なんだろね彼は。

中二病?マジ?


まぁいいや、相羽君が届けてくれた『獣牙族の飼い方』という図鑑でバカ話をした休日。

その次の日からこの訓練を初めたので今日で5日程度である。

今ではちょっとずつであるが、斬りつける瞬間だけなら騎士さんレベルまではなってきた。それでも本職と戦えば俺は惨敗だろうけどね。

コツというか、斬る瞬間に手に力が溢れ出てくる感じがするんだけど、それを上手いことコントロール出来るようになればまた強くなれるかもしれない。

強くなることが楽しく感じるとは、運動音痴の俺でもやっぱり男の子って事か。

それともあの人に付いていけるようになって嬉しいのか・・・やめようかこの話。


本来の目的はスキルにレベルアップが存在するかどうかである。しかし、今の俺の実力ってスキルの熟練度なのか、それとも単に俺の実力が上がったのか、理解のしようがないのだ。


理由としては、《生活必需シリーズ》のスキルは無意識の内に発動するからONOFFが効かずに判別のしようが無いのである。

まぁ5日程度で腕が上がってるんじゃ、スキルのレベルアップだと思うんだけどさ。

やるなら徹底的に調べたいよね。


「でもどうなんだろうなぁ~」


俺は考える事を放棄して肩に掛けておいたタオルで汗を拭った。

バカなのは自覚してるので難しいことは考えない。

思考から逃げていると何やら暖かい空気が俺の頬を撫でた。


「またか。」


すると最早恒例とも言えるようになってきた事態が目に映る。


突然前方にある自宅が淡い緑色に発光しだしたのだ。

家の中から声が聞こえる。


妖精の再生(フェアリーリカバリー)!」


「うおぉぉぉ・・・」


俺は魔法が使えないから魔力なんてよくわかんないんだけど、こうやって家がもの凄いことになっているのを見てるとどんくらい魔力垂れ流しにしてるのがよくわかる。

なんか怖いからわかりたくないけど。


俺は家の発光が収まるのを待つ。この現象はそう長くは続かない事を知っている。

そして予想通り、何秒か時間が経つごとに優しい緑色の光が消えていく。

完全に光が落ち着くのを確認すると、俺はドアを開いて玄関に入り込んだ。


「魔力すげぇな、フレキちゃんって魔王にでも目指してんのか?」


それはリビングに向かいながら呟く。

この謎の宇宙人的な光の正体はフレキちゃんの回復魔法である。

俺が《剣術スキル》の訓練をするというと、フレキちゃんもすると言い出した。

フレキちゃんは10才の子供だけど根性だったら大人以上だと俺は思ってる。

この数日お菓子作ったり勉強を教えたり(算数だけだけどね。)と色々やったが、フレキちゃんは全部妥協しないでやりとげた。

甘えたい盛りの年齢のハズなのに努力家なのだ。良い子過ぎる。


だからフレキちゃんも剣を習いたいと言ったのにも軽く頷いたのだ。

しかしそこはドジっ子補正。

フレキちゃんは剣はおろかタガーすらまともに振り回せなかった。唯一持てたのはナイフ。

仕方なくナイフで木刀みたいに素振りをしたのだが、なぜナイフを両手で持って素振りせにゃあかんのじゃ・・・


強くなる以前にそのための訓練すら出来ないという感じにフレキちゃんは早々に撃沈していた。

なんとフレキちゃんは毎日筋トレを50回ずつやってるらしいが、腕の力こぶを触ってもプニプニとした柔らかい感触しか無かったのは言うまでもない。


まぁフレキちゃんは狂信者共に強制引き籠もりをさせられてたんだから仕方のない事だよ。

うん。


しかしそこで諦めなかった10才児。

物理が駄目なら魔法を使えばいいじゃないなどという発想になりやがり、俺が剣振ってる間に回復魔法を大量に使用する訓練をしだしたのである。

魔法を使えばスキルと魔力量も上がるんじゃ!?と新手の手段を駆使し始めた時には、なんだか生き急いでる感じがしてフレキちゃんが壊れてしまわないか少し心配だったが・・・


それでも始めたのはフレキちゃんだ。やることには責任を持って貰うよう頼んだので無茶はしないだろう。

そう思ってた時期も、俺にもありました。


最初は窓から光が漏れる程度だったんだ。・・・でも今では何故か家そのものが発光するという謎のイルミネーション現象が誕生してしまったのだ。クリスマスにでもやってるのかと思ってしまった。

無駄に派手なので、ご近所さんが居なくて本当に良かった・・・。


「フレキちゃん、お疲れ。」


俺は引きつる顔をポーカーフェイスで抑え込み、普段と変わらぬ顔でリビングに入ってそう言う。

頬に汗を流して魔法を終了させていたのは紫色の髪のフレキちゃんだ。


「か、カイハラさん!おはようこざいます!」


「あ~、うん。おはようね。」


俺が来たと気づくと、フレキちゃんは尻尾をブンブン振りながらこっちに笑いかける。

癒しなので頭を撫でてしまうのは仕方のないことなのである。

え?気安く女の子の髪に触るなって?バカやろう飼い主の特権だ。


「あぅ・・・にゅふぅぅ」


少し恥ずかしそうにするものの、フレキちゃんは、すぐに顔を緩ませて幸せそうな笑顔を作る。

フレキちゃん朝這い!?まさかの発情同人事件!(by相羽)の日以来からフレキちゃんは少しスキンシップを控えるようになった。俺ちょっと寂しい。


まぁフレキちゃんの場合無意識の内にくっついてくるから大して差はないけどね。

なんでも匂いを嗅いでる内に抱き枕みたいにくっついちゃうらしい。ぐうかわ。


だからこうして意識的に撫でたりすると結局喜んでしまうのだ。甘々である。

ちなみに寝るときの部屋は完全に分けた。理由は発情予防だ。

寝るベッドが違くても万が一の時のため一緒の部屋で寝ることは控えるように言っておいたのだ。幸い部屋は空いてた。

しかし、あの時のフレキちゃんが真っ白に燃え尽きていたが何故だろうか?

一人じゃ夜が怖いのかな?ふむ、人形でも買ってあげたりでもするか。

そんな真面目で根は甘えん坊ちゃんのフレキちゃんだが、彼女は有り得ないほど魔力を保有している。

ギャップが凄すぎるのだ。


先程の魔法はどれくらい魔力を使ったのか、興味が沸いたので尻尾を振っているこの獣少女に尋ねてみようか。


「家が緑色に発光してたよ・・・どんくらい魔力込めたの?」


「全快の半分くらいです!」


フレキちゃん魔王になんないよね?


「へ、へーそうか。どんな魔法なの?」


「精霊っていう魔力が固まって出来た生き物を治す魔法です。普通の生き物の傷を治す魔法が全部やりましたし。」


フレキちゃんは一体どこに向かおうとしているのだろうか、不安である。


「ほぉ~、精霊なんているのか。」


「神話ですけどね。」


駄目じゃん。

てか仮想なのにそんなん必要だろうか?否。


「そういえばカイハラさんって冒険者ですよね?依頼受けないんですか?」


「エー?あー」


フレキちゃんの疑問に言葉が詰まる。

実際。俺は一度もギルドに向かっていない。仕事なんてしてない。

理由はメンドクサいからである。ニートだね。


でも考え無しって訳じゃないんだ。生活費なんてアル村とギルドの慰謝料とかでいっぱいいっぱい。

小金持ちになるほどの大金を稼いだのだし、趣味とか金をかけることがほとんどないので結構貯まっている。

そりゃもう、高く望まなければ別に暫く不便ない生活が出来てしまうほどに。

ので、今は気ままなニート生活を満喫中って訳だ。

よく言えば休暇。夏休み。今この世界秋っぽいけど。

それじゃ秋休みだな。地球で出来なかったことを実現する・・・バカか俺。


「ギルドに、仕事受けにいきませんか?」


くだらないことを考えているとフレキちゃんが少し不安そうに訪ねてきた。

仕事しても楽しくないのに何でだろう?


「何で?」


「このままサボってると、このままでいいのかって・・・落ち着かないというか・・・」


あ~あ~なるほど、多分・・・というかやっぱりフレキちゃんは良い意味で真面目なんだな。

働いてお金を稼いで、それで生活するのが普通だけど、今は働かず家でだらけてるだけだから精神的に混乱してるのかもしれない。

危機感ってもの感じてるのか。サボった分(ちから)が弱くなっちゃうのが嫌なのだろうか・・・。


「フレキちゃんはどうしたい?」


俺は敢えて聞いた。

フレキちゃんは躊躇いながらも答えてくれる。


「・・・簡単な依頼は受けたいです。駄目になっちゃいそうで怖いです。」


ふむ、確かにフレキちゃんの年齢は色んな事を体験して学ぶ時期でもある。スポンジみたいに色んな体験(経験値)をため込んで将来へと役立てる、自立に必要なことだ。

今から楽を覚えてしまうのに抵抗ってのがあるのか。

俺としてもフレキちゃんが自立出来なくなるのは不本意である。これも飼い主の責任か?

う~ん、まぁ軽い依頼でも受けてスキルの調整でもするかな。


「仕方ないか。フレキちゃん、装備付けて着な。ギルドいくよ。」


「っ!は、はい!」 


意見が通って嬉しいのか、フレキちゃんが笑みを浮かべて装備を取りに行った。といっても安物のローブと枝で作った杖だけどね。

・・・む、走りながら尻尾を振っている。高度な技術である。

ちなみに俺は取りにいく必要はない、というより訓練で既に着てたからそのままで行けばいい。

さてと、討伐系の依頼で練習の成果でも見てみますか。


「ん?あれ、これフレキちゃんの?」


テーブルに置いてあった革の鞄を取って準備をしようとすると、俺の革の鞄の隣に何やらメモ書きのようなものが置いてあった。

紙は羊皮紙、木炭をペン代わりに使ってなにやら書いているようだ。

フレキちゃんが装備取ってくるのはまだ時間が掛かりそうなので読んでみるか。





『9の月の16の陽(9月16日の事だ、この世界は一ヶ月30日で12ヶ月で360日ある。)。

今日は回復魔法の最終調整をかくにんします。

数値化したまりょくを全身の血管に浸透させて妖精の再生(フェアリーリカバリー)をためしました。

膨大なまりょくをつかうことで成功できました。

実践でためせばカイハラさんは誉めてくれるかもしれません。

はやく依頼を受けにいきたいな。たたかえなくてもカイハラさんを治す力がほしいです。』




「・・・」


俺は何も言えなかった。おそらくこれは日記の類。今日の魔法の実験結果なども記載されている。

そこに書かれているのはただ純粋な親愛。どこまでも綺麗で、願いが俺のフレキちゃんを誉めてあげる言葉?

怪我を治せるようなに?だから依頼を受けて実践を鍛えようとしたのか・・・。

本当にたったそれだけなのか?

戦えなくても治す力がほしい?違う、力が無いのは俺だ。フレキちゃん一人の戦力や火力を見れば明らかに俺が足手まとい。

なのにどうしてこの子は・・・


フレキちゃんは純粋に俺を慕ってくれてるのに・・・俺はフレキちゃんを利用することしか考えなかった。


チクリと心が痛むのを感じながら、俺はフレキちゃんを待った。




ペンタブでイラスト練習始めましたがあれ鬼畜ですね。

イラストとかスキャンしたほうが早いでござる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ