獣牙族は○○要員
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「え!?これ灰原さんが作ったんですか!?」
「そだよー、なんか文句あるー?」
相羽君が今まさにモグモグと食べているクッキーはどこに売っているのか?と聞いてきたので、それは売ってないよ、俺が作った。と言ったら凄く驚かれてしまった。
相羽君は困惑しながらも俺に訪ねてくる。
「か、灰原さんって料理出来たんですね?」
「失敬な。大体生活必需シリーズに《料理スキル》があるんだから出来るに決まってんじゃん。」
俺は呆れた感じで相羽君に言い返す。
今この世界に居る人間のステータスに登録されている生活必需シリーズ。その中に誰でも簡単に料理が作れる《料理スキル》というのが存在する。
これはこの世界に転移された時、ヤタガラスが俺達に付属したスキルの1つだ。
転移された全人類が持っていると言っても過言ではない。当然相羽君も持っている。
実際、俺は単に《料理スキル》のレシピに従ってクッキーを作っただけだ。何を驚く必要がある。
なのに相羽君は喚くように納得してくれない。
「この味が問題なんですよ!なんでこんなに美味いんですか!?僕が作ったのより遙かに美味しいんですが!?」
「しらねぇよそんな事。単に相羽君が料理下手だったんじゃね?」
「だから僕もスキル持ってるんでそれは無いです!」
相羽君は両手で×マークを作って否定を見せつけてくる。
何で美味しいかと言われてもそんなの俺がわかるわけがない。強いて言えば材料の素材がよかったとかそんな理由じゃないの?
と、それを伝えようとすると、そこで恥ずかしがってたフレキちゃんがいつの間に復活ひたのか口を開いてこう言った。
「わたしも《料理スキル》持ってるんてすけど、この美味しさは以上だと思います」
「じゃぁフレキちゃんも料理下手なんだな。」
「わたしが下手だったら全世界の皆料理下手になりますよ!」
フレキちゃんがもの凄い形相で言い返してくる。
確かにフレキちゃんの言い分には一理ある。《料理スキル》とは本来料理を美味しく作れるようになった時に獲得する事が出来るのだ。
しかも一定のラインがあって、一人前のコックレベルにならなければこのスキルを獲得する事などできないのだ。
言ってみれば、《料理スキル》を獲得出来なければ料理店など開けないという感じと言うことだ。
ヤタガラスは無理矢理俺達にこれを覚えさせたのだが、効果はキチンと発揮して料理のレベルが上がった人物も少なく無いだろう。
現にこの世界に転移されて屋台を開いてる人間を見ることも少なくない。
だから《料理スキル》を持ってる限り、作った飯が不味いという結果にはならないはずなのだ。
でもフレキちゃんは一応女の子だし、男の俺に負けるのに少し気にしてるのかもしれないな。
「むぅ・・・スキルにレベルとかあるんですかね?」
相羽君が何か言ってる。
「レベルは無いだろ、そもそも俺達自身にレベルが無いんだからスキルにあるわけ無いじゃん」
「いやそうじゃなくて、熟練度の問題とかあるのかなーって、数値に出ない実力というか」
相羽君が予測するようにそう言ってきた。
・・・なるほど、確かに例えばコツを知ってるのと知らないのじゃかなり変わってくることもあるしな。
覚醒スキルも修行や努力で実が成るって話だし、レベルは無くても酷使したりして使いこなしたりすれば話が違ってくるのかな?
うーん、剣術を知っている騎士が戦ったとして片方は新人、もう片方は熟練の騎士。
これでお互いが同じ剣術を使っていてもどちらが勝つかは容易に想像できる。
つまり経験の差って奴だろうか?
むぅ難しい。
「フレキちゃんはどう思う?」
「ふぇ!?わたしですか!?」
突然話を振られたのに驚いたのか、フレキちゃんは耳と尻尾をビクンと逆立てた。
しかし何か思うことがあったのか、フレキちゃんはすぐに調子を取り戻してフレキちゃんは考える仕草をする。
そして何か思いついたようだ。
「むぅ~、わたしの感覚なんですけど、まだ魔廻教にいた頃、治療魔法使ってたら日に日に威力が高まってるのを感じた事があります。」
「それって、昨日フレキちゃんが使った魔法回復の事?」
「はい、最初は切り傷とか擦り傷を治す程度だったんですけど3年くらいたった頃から骨も治せるようになって・・・最近では精神も回復が望めるようになりました。」
骨修復とか何それ怖い。
フレキちゃんの言い方だとその魔法、おそらく魔法回復は初級の魔法と考えていいだろうな。
それが3年くらい経った頃から骨折ほどの大怪我も治療する事が出来た。
これはフレキちゃんの回復スキルの《回復神官》を酷使した結果、フレキちゃんがこれを熟知して把握できるようになったってことか?
つまりこれを熟練度の経験値と表して、それなりに年月を掛ければそれだけの経験値が貯まって効果の上昇も期待出来るというのだろうか?
そう考えればステータスも似たような感じに思える。
力、耐、賢、速。この4つのポイントも、使えば使うほど数値になって上昇しているのは確認済みだ。
スキルだってステータスの一種だ。
そう考えれば何かしら似ている部分もあるかもしれない。
すると相羽君は何か思いついたようで口を開いた。
「その仮説が正しいなら、灰原さんは既に《料理スキル》を使いこなしてるって事ですよね?なら何か心当たりとかあるんですか?」
心当たり・・・心当たりねぇ・・・
「休日に料理とかよくやってたからかなぁ」
俺インドア派だったし、家で出来そうな事は見つけ次第やりまくっていた。
料理もその一つだ。他にもやってきたけどスキルがないって事は大したことないんだろ。
「・・・前の世界の経験と今のスキルを合わせた結果コレですか・・・」
「何だかわたし、泣きたくなってきました。」
解せぬ。
「あー、どうでも良いけどそろそろこれ読んで話し合いたいんだけど・・・」
俺は放心しかけている二人に声をかける。
俺の手には相羽君がギルドから持ってきてくれた本の『獣牙族の飼い方』を握っていた。
それを見せつけると、二人はしぶしぶといった感じで頷く。
しかし相羽君からは呆れた目線を俺に注いでくる。
「僕を引き留めた理由ってそういう事ですか」
「そだよー?」
ご名答、ぶっちゃけその通りである。
まぁ他にも理由はあるんだけど・・・ね?話しづらいじゃん?
「取り敢えず声に出して読んでみるわ。」
そう言って俺はその本のページをゆっくりと開いた。
紙の質はやはり羊皮紙、印刷技術がないから手書きみたいだけど、それなりに綺麗に文字で書かれている。まぁ多分スキルとか使ってるんだろうけど。
そして1ページにはこう書いてあった。
《獣牙族はエロ要員でござる。byフェンス》
「・・・。」
俺の中でフェンスさんの評価がかなり下がった今この時。
「カイハラさん、なんで固まってるんですか?」
「えーと、何が書いてあったんです?」
フレキちゃんと相羽君がいきなり硬直した俺を心配する様子で話しかけてくる。
そんな二人に苦笑いを浮かべて俺は答えた。
「世の中には知らない方が良いこともあるよ二人とも、これ見たら二人の中であの人が幻滅するから」
「「何があったんですか」」
フレキちゃんにとってフェンスさんは尊敬に値する種族の族長、相羽君にとっては優秀なギルドマスター。
思えば俺がこの中で一番の最年長なんだよね。
うん、子供の見る夢を壊すのは良くないと思うんだ。ほら、親が子供にクリスマスの白髭オジサンを信じ込ませるようにね。
俺は笑顔を崩さずに二人をやり過ごしてページを捲る。
そこでようやく図鑑らしい事が書かれていた。
1ページ目はフェンスさんの落書きのようである。あの人よくわからんな。
「え~と、《獣牙族とは獣が魔力を持ち人化した形状がそのまま知性を持ち、進化した生物の総称である。別名は亜人族と呼ばれるが、それはエルフ、ドワーフにも言える事である。猿系から進化した人間もある意味亜人であり、獣牙族の一種である。》ってさ。」
まず1ページ目はこの文章だ。驚きなのが人間もこの世界じゃ亜人扱いだと言うことだ。まぁ猿から進化したんだからある意味獣牙族と同一種みたいなものだという認識なのだろうか?
ん?でも待て、そしたら「人」ってなんだ?この世界では人間の事じゃないのか?わからん。
因みにこの図鑑に人間が載っているのは、亜人がこの世界に転移される前の世界に存在していたかららしい。
他の世界にも人間はいるみたいだ。何故わざわざ俺らの地球人なのだろうか・・・?
まぁそれは後で考えるとして。
獣牙族と人間が同一扱いされないのは、獣牙族は獣が魔力を持って進化したという点があるだろうか?
でもその言い方だと何だか魔物みたいだな。その辺は進化の過程で違くなってくるのかもしれない。
ファンタジー小説とかでは獣牙族みたいなのを魔物扱いして差別の対象になってることが多いけど、この世界事態亜人の世界なのだから心配はいらないのだろう。
特にドワーフは気にしなさそうだ。色んな意味で。
俺は本から目を外して二人を見て見たが、大して反応は無いようだ。
続きを読もうとしたその時
「猿の○星。」
「そゆネタいいから」
言うと思ったよ。真顔で言い放った相羽君は言ってみたかっただけか、そのまま黙った。
クッキー食ってるけど。
フレキちゃんはネタがわからず小首を傾げて「?」マークを浮かばせている。
取り敢えず頭を撫でておくことに越したことはない。
「~♪」
「じゃぁ続きな、《獣牙族は基本身体能力は高いがその代わりに魔力容量が非常に少ない。なので紫色の獣牙族は高い魔力容量と身体能力を兼ね備えた強力な戦士に成長する。》・・・本当か?」
俺は思った疑問を含んだ目でフレキちゃんを見る。
フレキちゃんは言っちゃ悪いが身体能力が高いとはお世辞にも言えない。むしろ音痴と言っても良いだろう。
ステータスで表示されない天然の運動音痴を持つ俺に言われてしまうのだから相当なものである。
相羽君も何か思うところがあったのか、フレキちゃんをジーっと見つめている。
当の本人はあわあわしているだけだが。
「灰原さん、その図鑑本当に正しい情報なんですか?」
相羽君が不安気味にそう言ってくるが、俺が真実を知るわけ無いじゃないか。
「知らんわ、こっちが聞きたいくらいだ。あとお菓子食べながらしゃべるのは止めなさい」
「はーい。」
全くもーぷんぶん。
すいません、魔が差したんです。
「わたしだって頑張りますよぅ!見てくださいこの筋肉!ふんっ」
そう言って腕に力を入れるのはフレキちゃんだ。少しムッとしているのを見ると、どうやら俺達の会話に納得がいかなかったのだろう。
図鑑には獣牙族は肉弾戦を好む戦闘狂が多いと書いてある。
ムキになっているのはプライドを汚されたからだろうか?
もしかしたら・・・百歩譲ってフレキちゃんも若干その闘争本能の欠片くらいはあるのかもしれない。
そんなフレキちゃんの筋肉は・・・
はい、腕は綺麗な肌ですね。
モヤシですねありがとうございます。
「はい、次のページ次のページ。」
「・・・納得いかないです。」
フレキちゃんはズーンと燃え尽きた戦士のように落ち込んでいたが仕方がないことである。
フレキちゃんの肉体的ステータスは50未満の雑魚数値なのだから、いくら闘争本能があっても力がなければ無意味なのである。
ていうか体なんか鍛えないで魔力鍛えてください。
言っとくけど俺フレキちゃんに魔法しか期待してないからね?肉弾戦は俺に任せて後ろから放火してください。
「さてと次のページは・・・うぉい。」
羊皮紙に書かれていた新しいページには、《獣牙族取り扱い説明集》と書かれていた。
はっきり言おうか。なんで1ページ目にこれが書いてないわけ?
獣牙族の誕生とか本能とかのページの前にこれを挟んでくれや。今更取り扱い説明なんてされても困るだけだから。
本に一人でツッコミをした俺に2人が怪訝そうな顔をするが、俺がツッコんだ理由を話すとなんだか納得したみたいだった。
もう慣れだね。ツッコミどころ満載な世界だよ此処は、ははっ
「あ、うん。《獣牙族の取り扱いについて。獣牙族は野生の本能をより濃く残した種族である。従って個人差はあるものの牙、爪、などの原始的な武器は勿論、スタミナが保つ筋肉を体に残している。》
まぁフレキちゃんは例外として。」
「ふえ?」
「《獣牙族は野性的な本能が強いため、別種であるエルフ、ドワーフなどと共に行動すると少なくない問題が出る》」
むぅ、どうやら獣牙族は文字通り獣なのだから差別的な意味は無いにしろ、少し野蛮な所があるみたいだ。
そう思うとフェンスさんが疑わしくなってきた。あの人バトルジャンキーじゃないよね?
もしそうだったら狂戦士化した相羽君に相手を頼もう。
「《そして最も気をつけなければならないのは、獣牙族の性欲、発情期である。》」
「・・・え?」
「は?」
俺がその文を読むとフレキちゃんがなにやら絶望的な顔をして相羽君は訳が分からないと表情で訴えてきた。
何だかフレキちゃんが俺を無言で揺さぶってくるが俺は構わず続きを読む。
「ふむふむ?《獣牙族は常に繁殖が行えるようにある特殊な条件で繁殖するようになっている。その条件とは、簡単に言えば異性と寝る事》で・・・あ・・る。」
「ひゃぁぁぁぁぁあああん!!」
「っ!?ごほっごほっ!え!?何ですか何ですか!?」
フレキちゃんが顔を真っ赤にして悲鳴をあげて、それに驚いた相羽君がクッキーを喉に詰まらせながらそれに驚く。
いや、そうだよね。相羽君は今朝俺達に何が起こったかなんて知らないんだよね・・・
詳しい理由が知りたいので、羞恥心が俺の体を循環するがそれを我慢して文章を口にする。
てか痛いってフレキちゃん叩かないで!
「《獣牙族は異性と近距離で睡眠を行うと、相手のホルモンや匂いを感じ取り興奮し、発情期を迎える。異性の獣牙族と寝ることはある意味危険であるため注意が必要。》だってさ。」
俺はフレキちゃんの顔に向いてそう言う。
見事に発情をしていたフレキちゃんは顔面を茹でタコのように真っ赤にしていて若干涙目になっている。
俺はその様子にため息をついて今朝の行いを思い出した。
おそらくあの晩、フレキちゃんは俺と寝てしまい発情期してしまった、そして夜這いならぬ朝這いをしてしまったと言うことで間違いないだろう。
まさか獣牙族にこのような性質があるとは驚きである。
最初に書かれてたフェンスさんの『獣牙族はエロ要員』という言葉もあながち間違ってはいないのかもしれい。
「?」
因みに最後まで首を傾げていたのはクッキーを頬張った相羽君であった。
三連休で書いたストックが尽きたYo