面接もどき。
デットスネーク【ミニキャラ土鈴】を作成中です。
完成したら写真載せます。
カーンッ!カーンッ!
鉄を叩く音が部屋に鳴り響く。
一定の音量を保ってそんなリズミカルな音を奏でながら、職人達は思い思いに剣を鍛えていた。
真っ赤に染まるまで高温で加熱された剣は、大きいハンマーに叩き潰され、その形を見る見る内に変形させていく。
そしていつの間にか、ただの棒だったハズの剣は巨大な大剣へと姿を変えていった。
「おお・・・」
巨大な炉から吹き荒れる熱風に耐えながら、俺こと灰原涼は感嘆するような声を出す。
小さな雑念すら存在しないこの職場に、職人の集中力の凄さを目の当たりにした気分である。
「相変わらずの場所ですね。ここは」
俺の隣で苦笑いしながら、今まさに完成する武器を眺めているのは相羽大賀君だ。
一時期パーティを組んで一緒に《突然変異》のスキルを持つ強敵、巨大百足を討伐したいわば戦友である。(ほぼ相羽君が倒した。)
因みに狂戦士という異名持ちのなんかよくわかんない人物でもある。主人公気質め!!
その時、俺の背後から癒し系の声が聞こえてきた。
「ほわぁ・・・」
俺の後ろ・・・というか吹き付けてくる熱風から俺を盾にするように隠れているのは、最近仲間になったフレキちゃんだ。
背丈は俺より小さい。ので簡単に頭を撫でる事ができるペットみたいな癒し系の存在である。
幼女と少女の中間地点の年齢である彼女は今まで、宗教団体に拉致されていた。
甘える事をしらないで育ってきたフレキちゃんは、その影響で俺に頭を撫でられるのが好きらしい。
まぁ頭を撫でるのは俺も好きだから全く問題ありませんけど?
次の瞬間、凄い熱風がこっちにやってきた。
「凄いで・・・あっぷ」
女の子だが、迫力のある鉄の打ち合う作業に好奇心を揺さぶられたのか、フレキちゃんは運の悪い事にたまたま熱風がやってきた時に顔を出し、ダイレクトに息を止めてしまうほどの熱風を喰らってしまう。
こんな感じにフレキちゃんは懲りずに時々顔を俺の後ろからちょいっと出すのだが、その度に熱風を顔に吹き付けられている。
そういや、車で犬を連れてドライブしたりすると、犬って大抵窓から顔を出して風で涼むみたいなことしてるよね。でもあれ生物的に特に意味ないらしいよ。単に好奇心だって聞いたことある。
まぁそんなの真実かどうかなんて知らないけど。
もしフレキちゃんだったら・・・そうだな、好奇心で顔を窓から出してみると風に吹かれて息が出来なくなる。そんで耐えられなくなって引っ込めて、でもやっぱり好奇心に勝てずに同じ事を繰り返して、顔を出したり引っ込めたりしてそう。
やばい安易に想像できる。
だって今まさにやってるんだもん。
「?」
そんな事を想像しながらフレキちゃんを見てると俺の視線に気付いたのか、可愛らしくクイッと首を傾げた。とりあえず頭を撫でておく。
「~♪」
フレキちゃんは気持ちよさそうに目を瞑ると、満足に鼻歌を歌い始める。
地味に歌上手いんだよこの狼娘。
「そんで相羽君。一つ聞いておきたい事が」
「なんですか?」
俺とフレキちゃんをニヤニヤ眺めてた相羽君に俺は、不意打ちするように声をかける。
「これ店員さんに話しかけるタイミングが見当たらないんだけど」
「・・・」
黙るなよ。
珍しく俺がジト目で相羽君を睨むと、彼は慌てて弁解を開始した。
「いや、前回来たときはカウンターに一人は残ってたんですけど!ていうか普通カウンターに一人は残ると思うじゃないですか!」
なるほど確かに。いやでもね、その考えは相羽君甘いよ?チョコレートよりも甘いよ?
俺は弁解してる相羽君の両肩を掴むと諭すようにこう言った。
「相羽君!よく聞くんだ」
「へ?あ、はい!」
「ここは異世界で、狼男が居たりエルフが居たりする未知の世界だ!」
「?・・・はい?」
「客相手にタメ口聞いたり喧嘩腰で話しかけてくる店員ばっかりなんだ!」
「・・・はい?」
「つまりそう言うことだ」
「全然わかりにくいんですけど!?」
なんだとわからないのか?脳味噌プリンかよ。
まったくもー。
「ドワーフの人は大抵客接客は適当なんだよ。ソースは俺。」
「まんま体験談じゃないですか!てか知ってたんですか!!」
そりゃそうだ。何事も体験して学ぶ事なんだよ。
ちなみに一日目に行ったあの武具店は二度と行かない。死んでも逝かない。
実際死ねるけどね、一回だけなら。
そう言い争いをしながら約30分後、ようやくドワーフの店員さんがカウンターに戻ってきた頃には俺と相羽君は話し合いで力尽きていた。
後日、ドワーフの店員さんが「狂戦士が寄生虫のようにくっついている獣牙族が居る男とパーティを組んでる」と噂を流しているのを知る。
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カウンターに戻ってきたドワーフ店員さんに相羽君が話を開始すると謎の部屋へと案内された。どうやら相羽君は昨日の夜、武具の予約をしたらしい。流石出来る男は違うね。俺?シラネ。
とりあえず案内されたのは、学校の教室くらいの広さのすこし開けた部屋だった。
最も、壁床天井すべて木で出来てるお陰か、どこかの昭和の田舎学校のような雰囲気である。まぁ結構奥から鉄を叩く音が聞こえてくるのだが。
俺は教室(仮名)の周辺を見渡すが、あったのは中央に数個の机が置いてあるだけだった。
何これ?ここで面接とかすんの?マジ?おぃおぃおぃ。俺面接なんて高校の受験の時にしかした事ねぇよ。バイトとか落ちたし。
「ひ、広いですー」
フレキちゃんは素直に、この部屋の広さに驚いていた。
あ、尻尾振ってる。蠅叩き落とした。
地味に攻撃力あるのね、便利やね。
どうでも良いわ。
「相羽君、何?ここで何すんの?」
「さ、さぁ?わかりません」
相羽君もわかんないのかよ。
俺は深いため息を吐く。あ、そういやため息する度に幸せが逃げていくんだっけ。
幸せって物質なの?それとも気体?
どうでも良いわ。
「あ、でも予想するとしたら・・・面接ですかね?」
「デスヨネー」
やっぱ相羽君もその結論に至ったか。やっぱり現代人から見たら何かしら・・・というか学校の高校受験の面接にしか見えないだろう。
だって教室に机4つだぜ?俺の受験の時はそうだったよ。
先生が三人居て俺は一人。よってたかって質問を投げてきて俺を袋叩きにしたあの面接。
うぅ嫌なこと思い出した。
どうでも・・・もう良いかこれ。
「どうしましょう、スローガンとか考えてないです。」
「いやそれはいらないだろ」
相羽君か真顔でボケてきたのでそれ相応の態度でツッコミを入れる。
そういえば相羽君、中学三年生だから受験生なのか。
だとしたら、なんらかは意識してしまってるのかもしれない。
うん。まだ日本は春だったのに真面目な事ね。俺なんて受験勉強冬に始めたぜ?皆マネしないよーに。
「めんせつってなんですか?」
"面接"をフレキちゃんはまだ知らないらしい。彼女は俺を上目遣いで見上げて訪ねてきた。
ので俺は正直に答えてあげる事にする。
「面接というのはね、腹の探り合いかっこ一方的に此方が耐える事のことだよ?」
「やめてくれませんか!?僕もう高校受ける必要ないんですけど無意識に意識しゃうんですから!?」
俺が神妙な顔つきで真面目に答えると相羽君は悲鳴にも似た声で怒鳴ってきた。
いや、でもあながち間違ってはいないでしょ?
まぁこの世界に来ちゃって帰る方法もないから面接なんて必要ないハズだけどね。
え?ないよね?
《フラグ発動》
出たよ出たよ出たよ!このクソッスキル!!
なんで嫌な事しかフラグを教えてくれないんだよ!!
俺に嫌がらせか!?知能でもあんのかスキルの癖に生意気な!
「あれ?どうしたんですか灰原さん?」
俺の地団駄したりする挙動不審な動きに、相羽君が心配そうな声でこっちに訪ねかけてきた。
俺はため息を漏らしてそれに応える。
「面接とかないよねとか思ってたら《フラグ発動》した。」
「あぁ~・・・」
相羽君がこの世の終わりだとでも言うように遠い目をする。
相羽君には俺のスキル《フラグ》について教えておいたのだ。この世界の人にフラグって教えても人間以外皆「フラグ?」と疑問系で首を傾げるから、必然的に相談相手は相羽君だったのだ。
その時相羽君は「未来予知に近い能力なんですかね?」とか呟いてたが、残念ながらそんなに便利そうな能力ではないと、その三秒後に判明した。
何があったから教えない。シークレットである。
ヒントは死亡フラグだ。ドワーフ商人のスーオの護衛の帰りにあの名台詞言ったらえらい目にあった。
「そうなんですかー!頑張りますね!」
ブレないフレキちゃんはペッタンコの胸の前に両手をグッと固めてやる気を見せる。
そんな姿を見ながら俺は癒しを頂く。
その時だった。
木で作られたドアからキィーと音を立てながら、ドワーフの男数人が部屋に入ってきた。
どのお方もチビマッチョの筋肉親方の軍勢である。思わず自分の矮小で貧弱な腕を見る。
やべぇ泣きそう。
そんな事を思いながら、自分と相手の体を交互に見ていると、一番大きい━━━160センチほどのドワーフが口を開いた。
「おめーらが、珍しい素材を持ってきたっていう連中か?」
明らかに客に対しての態度ではない彼は、なんというか「親方」という雰囲気がする人だった。
珍しい素材というのは、俺達が持ってきた《突然変異》のデットスネークの事だろう。
そう考え、俺は無言で頷く。
そこで、我に帰った相羽君が丁寧にお辞儀をする。フレキちゃんは相変わらず俺の後ろに隠れてる。隠蔽してるからバレるワケないのに・・・あ、でも少しだけお辞儀してる。
うん、偉いぞ~。
「おぉそうか!ん?よく見たらオメェ、前来た狂戦士のアイバか!?」
ドワーフの親方さんは相羽君を見ると、驚愕の表情を浮かべて全身で驚きを表現した。
「な、なんだってー!?」とでも口に出しそうだ。
その格好本当に素か?素だな。
そしてその姿を見て苦笑いで相羽君が笑いかける。
「えぇ、お久しぶりです親方」
ふぁwwwwwwマジで親方だったのかよ。
「あー、最近の噂聞いてるぜ?なんでも蟲王に匹敵するほどの巨大百足を討伐したんだってなぁ・・・いやいや、何をどうしたらそうなるんだ?」
「親方。デットスネークは僕だけで倒したんじゃないんですよ?隣の灰原さんと一緒に討伐したんです」
「へえ、その兄ちゃんがねぇ・・・?」
そう言って、親方はまじまじと俺を見つめる。疑っているような目つきは、少しだけ俺を怯ませる。
「い、いや・・・俺ホント何もしてないですよ?」
「あ?そうなのか?」
「そんな事ないです。灰原さんは《ヤタガラスの加護》の効果を最大限に利用して、デットスネークの注意を反らしてくれたじゃないですか」
そう言うと、相羽君はいかに俺がデットスネークに立ち向かったかをありのままに話していた。
もちろん、《ヤタガラスの加護》の事を説明した後でだ。
相羽君が一通り話し終えると、親方はアイタタとオデコを抑えて唸る。
「あー、なんつーか・・・無謀だな、あんた。」
「いや、もう死ぬときの痛みに慣れましたから」
「ある意味凄まじい生命力ですよね灰原さんは」
二人は俺の感じ方に呆れたような目線を送ってくる。だってしょうがないじゃん。
俺もう既にこの世界に来てから2回も死んでるんだぜ?そりゃ慣れるわ。
もっとも、俺の横ではフレキちゃんが絶句して開いた口が塞がらない状態なんだけど。
「ですがね親方。いくら生き返ると言っても、たがらって仲間の死が見たい訳じゃ、ないんですよ。少なくとも僕は」
相羽君はそう言うと、チラッとこちらを見てくる。
どこか攻められてるような気分になり、俺はプイッと目を背ける。
そんな俺を見て、相羽君はため息を吐いていた。
親方は相羽君の言葉に納得したように頷く。
「ま、確かに良い気分じゃねえよな。」
すると親方の後ろに控えていたドワーフの従業員数人何名かが、見覚えのある巨大な木箱を持ち出して来た。
親方はその木箱に手を突っ込んで中身を丁寧そうに取り出す。
それは、宝石の如く見事に光り輝くデットスネークの甲殻だった。
「あー、おめぇらの関係はよーくわかった。で、アイバ、こんな代物持ってきたってこたぁ、つまりそう言うことだな?」
親方の問いに、相羽君は応えるように頷く
「はい。僕達の装備品を専用注文したいんです。」
おうおう、マジかちょっと憧れてたんだよね武具のオーダーメイドって。
自分用に作って貰うのだからこれほどまで胸が高まることはない。
でも一つ問題が
「あのーすいません。お金足りますかね?」
装備品は結構な値段がすると、俺は初日で学んでいる。アル村の村長さんとギルドの慰謝料を合わせても足りるかどうか不安だったのだ。
ちなみに今用意出来てる金は一人20万Gである。無論フレキちゃんは一文無しだ。
まだこの世界の金銭価値がよくわからないけど、少なくとも3万Gで大金扱いなのだからギルドで貰った15万Gは凄い額なのだろう。
それでも不安は残るのだが、親方の次の台詞でそんな事はすぐ吹き飛んだ。
「装甲に使う素材はおまえ等から提供して貰えるからな。一人辺り防具武器込みで7万Gってところか?」
予想外の値段である。革鎧だって5万Gかかったのだからそりゃ驚く。
「えっと、良いんすかねその値段で・・・?」
「ん?あぁ確かに武具って10万Gはするもんばっかだけどよ、大抵金がかかってんのは魔物の素材なんだよ。だからそっちを用意してもらえればあとは作業費とその他の専用の素材品だけだからその分、安くすむぜ?」
なるほど。確かに一般人では魔物なんて倒せないから魔物の素材なんかが高く取引されるのかもしれない。
そう納得して、俺達は装備品を新調するのだった。
おまけ。「死亡フラグ編」
~アルフ王国帰り道~
灰「この《フラグ》ってのはどうすんだ?」
相「さぁ?《フラグ》って名前ですし・・・死亡フラグとかですかね?」
灰「何それ怖い」
相「試しに何か言ってみましょうよ」
灰「うーん、気は進まないけど・・・ゴホン。俺は国に帰ったらあの子と結婚するんだ!」
相「典型的な死亡フラグっですね」
灰「うるせぇ・・・あれ?外マジでうるさくね?」
ス「おいあんちゃん達!?モンスターの大群がイナゴの群れみてぇにやってきたんだが!?」
灰&相「「え?うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」」
なんとか撃退しました。