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ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
止まらない固有空間《ノンストップ・オフライン》
2/47

スキル

白い壁に覆われた窓やドアもない密室。

汚れの無い綺麗すぎる真っ白な壁は不気味さを醸し出していた。

まるで白い絵の具で創られた様な、無駄に綺麗な空間がここに作り出されている。


今解る事は、知らぬ間に・・・瞬間移動?でこの白い密室に俺達が拉致され、その中に俺を含めた約50人の人間が閉じこめられていたという事だけだ。

余りに状況を把握するのに情報が足らな過ぎる。


拉致された恐らく俺と同じ日本人達は、それぞれ壁を叩いたり罵声を放ったりと思い思いの抵抗をしている

取り乱しても当然だろうと思う。

俺達はなんかよく分からない、それもマンガやアニメに出てきそうな光る魔法陣みたいなものによって

・・・まるで転送されたようにも思える瞬間移動でここに拉致されたのだから。

まだ恐怖心もなく、文句を口に出せる(やから)が居るのだけでも尊敬する。

少なくとも俺も、俺と同じ境遇の人たちが居ることで多少の安心感は得れていた。


いずれにせよ、ここがどこかは誰にもわからないのだろう。

そこの一羽(・・)のカラスを除いて


黒い体を羽ばたかせ、(ちゅう)を舞っていた日本語を操る一羽のカラス。

その姿を見て確認すると、カラスの体は少しばかり、いやかなり異質なものだった。


腹部には、普通は存在しないはずの三本目(・・・)の足が生えていた。

それだけでも不気味なのに、顔から見えている、まるで血を固めて作ったような紅い目は、俺の心に酷い嫌悪感を感じさせた。


気持ち悪い不気味な(からす)。それが第一印象だった。


カラスは一度いつの間にか置かれていた鑑賞用植物(石で作った置物にも見えるが)のような物に、羽を休ませるように降り立つと、その高さから俺達を見下ろした。


そして、驚きと戸惑いの隠せない俺達をに向かってカラスは、スピーカーのような大きな声で俺達に話しかけてきた。


『こんな程度でビビるなんてなぁ、最近の人間はお子ちゃまゆとり世代か?平和ボケの証拠だなぁ。だから簡単に罠に引っかかるんだよ』


男と女の声を混ぜ合わせたような、老若男女とも言えない不思議な声でカラスは挑発の言葉を口にした。

いや、違う。口にはしていない。

頭に直接声という情報が入り込んでくる感覚・・・例えるならテレパシーとでもいうように、頭の中に直接声を送り届けているような刺激が感じられた。


周りの人を見ると同じく気づいていたようだった。慌てたような、動揺して混乱したような表情を浮かべながら俺達は鴉を見た。


(それと、別にゆとり世代は関係無いと思うが・・・)


俺は場違いにそんな事を考えていた。恐らく多分、俺も今は凄く混乱しているのだろう。

頭が現実をみとめないようにフザケた思考回路が用意される。

この状況下で冷静に物事を見極められる人なんて指で数えられる程のハズだろう。

逆に言えば、此処にいる大半の人間は冷静で居られていないのだ。


突然の混乱による苛立ち、短期間のストレスが貯まった人間に対して言いはなった鴉の言葉は、そんな人達には十分な挑発だった。

俺達をあざ笑うかのように見下している鴉は口元の骨格を歪めて不敵な笑みを浮かべている。


案の定、悪意を持った言葉を真に受けた人間達から罵倒の嵐が吹き荒れる。


「なんだよおまえっ!ここからだせよ!!」


「なんだよあれ?ロボットか?」


「カラスも訓練すりゃ喋るらしいぜ?」


「帰してくれ!これから大切な会議があるんだ!」


「シネ!!クソトリ!!」


「ここから出してくれえ!!」


暴言、非難、悲鳴。

まさに醜い言語の嵐だ。すこしおかしな会話も聞こえたが・・・


そんな言葉を吐く人達はきっと誰に向けたら良いのかわからない苛立ちを貯め、その結果自分達を悪く言った鴉をターゲットにしたのだろう。


八つ当たりだが、仮に(コイツ)がこの事件に関係が合っても無くても、今の彼らにとってはどうでもいいのかもしれない。


そんな人々の(ひめい)はこの密封された空間の中で混ざり合って、ドロドロと粘り着くような泥のような空気を生み出している。


原材料である罵倒の言葉は、人々の脳の中で出来上がってからベルトコンベアーに乗せた商品のように次々とその口から量産されていく。

非難の言葉が銃の弾のように鴉に放たれる。

ただ、鼓膜が破れそうなほどの音量に関係のない俺にまで被害が出てきた。

鼓膜が凄く揺れてキーンとしてきた。


(聞いてるこっちが駄目になりそうだよ!)


俺は頭を両手で押さえて、痛む耳を和らげようとした。

彼らの暴言は鴉だけじゃなく、大人しくしている俺達の頭にも入ってくるのだ。

暴言でも吐かないとやってられないのは解るが、正直勘弁して欲しい。


『・・・ハッ!』


はたして突然聞こえたその鼻笑いは、五月蠅くて堪らない声の嵐を一瞬で静めさせた。


(メンタル強ぇなあの鴉。)


まだすこしキーンと痛む耳を押さえながら鴉を見る。

聴いてるだけで調子が悪くなるようなその誹謗中傷の発言のすべてを、あの鴉は鼻で笑い飛ばしたのだ。

無関心なのか、ただ単に大物だからか。

いずれにせよ、どうやら奴は俺達の事情や言い分はどうでも良いらしい。


その証拠に軽口を叩く割には、その目にはなんの感情も籠もっていなかったのがハッキリと感じられた。

まるで生き物を見ていない、()を見てるプレイヤーみたいに思える。

鴉は冷たい目で俺達を見下ろしていた。

そして狼狽(うろた)え始めた俺達を見て、鴉は口元をまたもやニヤけさせる。


『んだお前ら、ギャーギャーうるせぇんだよ。お前らの意見なんかどうでも良いんだよ、モブは黙ってろ』


一度は静められた罵声も、鴉の一言でここにいる被害者達の怒りや混乱は火にガソリンを撒いたようにヒートアップした。


「死ね」「帰せ」「黙れ」


その汚らしい言葉と涙ながらに叫ぶ泣き声をこのまま聴いてると、耳どころか頭までおかしくなってしまいそうだった。

所構わず俺は両手で耳を塞いた。

もうあの痛みはごめん(こうむ)る。

鴉がどういう存在なのか不明だが、その鴉はまるで虫かごに入れた虫を眺め楽しんでいる子供のように、嬉しそうに俺たちを眺めている。


罵倒と汚い言葉を音楽のように聴いているカラスとは正反対に、俺はそろそろ限界を感じ、少し頭がクラクラとしてきた感覚を知る。

汚く混ざり合った言葉が、ミキサーに混ぜされたミックスジュースのように貯まっていく。


流石の俺も気分が悪くなった事を自覚し始めて

きた。


動きたくない・・・怠い感覚が体をどくんどくんと流れ込んでくる感じがする。

そんな中、命知らずとも言える一人冷静な人がカラスに向かって質問を投げかけた。


「あなたは誰ですか?そしてここはどこなのでしょうか?教えていただけませんか?」


その一声が周りに響き渡った瞬間、水滴の波紋のように叫ぶ人に伝染して騒ぐ人の数が少しずつ消えていく。


なぜならその質問こそ、俺達が今知りたい情報だからだ。

よく見ると背が小さいが肝は大きいような彼は、今ストレスだけをカラスに向かって発散してるだけじゃ話が進展しないと考えたのかもしれない。


だが実行しようとしてもそれは難しい、罵声の音量に負けて話を聞かれないかもしれない、プレッシャーに押しつぶされそうにもなるだろう。

それを成し遂げたのだ。

そんな彼に賞賛を送りたいね。


そんな事を言われるのが想定外だったのか、カラスはその冷静な人に目を向ける。

そして口元を歪め、テレパシーを活用してくる


『へー、まだマシな奴がいたか?叫ぶしか能のない連中とは訳が違うな』


カラスがそう言った瞬間、数人から舌打ちやらそんな音が聞こえる。

だが、冷静さを取り戻したのか、それ以上は進展しない。

鴉は頃合いかとでも言いたいのか、大理石でできたような木から地面に降り立った。

地に足を付けた途端、体は小さいのに強い威圧感がそこから発せられた。

殺気とでもいうのか、降りたった鴉を殴ろうと数人が出たが、威圧を喰らった瞬間誰もが逃げ腰になった。

鴉はそんな人達を見て満足げに頷く


『良いだろう教えてやる。俺はヤタガラス。空間や次元を繋ぐモノだ、同時にお前達をここに連れてきた張本人でもあるんだぜ?』

『そしてここは地球じゃない。異世界だ。』


カラスの答えた酷く突飛なご回答に困惑の含まれた声がザワザワと部屋に声が広がる。

もちろん、コイツが俺達を連れてきたことにも驚いたが、その中に現実性の無い言葉が混じっていた。

んだよ?『異世界』って。ライトノベルじゃねぇんだから。

ふざけた回答にもほどがあるだろ。


「異世界だと?ワケわかんないこと抜かすんじゃねぇ!」


「ホラ話もいい加減にしろ!」


「んなゲームみたいな話が信じられるかっ!!良いからちゃんと真面目に答えろ!!」


我慢できなくなったのか、ザワザワ声の中から大きな声がまたもや上がった

だが先程より罵声を出してる人は減っていた。

大方、ここにいる連中は口に出さないだけでそう思っているのだろう


だが俺は、カラスは最後の『ゲーム』と言う言葉にピクッと反応しているのを見た。

そして、同じように顔を歪ませようとして、まだニタァて嫌らしい笑みをカラスの顔で作った。



『そうだよ!これはゲームなんだよ!』



カラスはバッと両手の翼をマントのように広げて高らかに宣言した。

そのカラスの発言に沈黙が訪れる。

ふざけるな、真面目に答えろ、誰もがそう言えるハズなのに、誰も口を開く事なんてできなかった。

そんなのお構いなしにカラスは話を続ける。


『これは創造神様が作り上げたリアルゲームみたいなもんだ。

俺の目的はただ一つ、お前らはこの世界で新たな文明を作り上げて子孫を残してもらうことだ!

冒険や戦いが待ってる異世界転送劇だ。

ゲームオーバーは「死亡」ってことでな!』


カラスからのあまりの理不尽な言葉に、ここに居る全員が言葉を失う。


『ここが異世界っていう証拠はまだ無い。だが、このあと起きる出来事を見て聞いてりゃ、嫌でもそう認識するだろうよ。』


ありえない、異世界なんてマンガか小説か何かだろう、それが自分達に起こったなんて信じられない。

しかし・・・なぜか俺達は、その言葉を嘘とは思えなかった

誰もが口を魚のよくにパクパクと声を発さずに黙っていた。


「仮にそれが本当だとして、なぜ僕たちが呼ばれたのですか?」


カラスの言葉に反応出来なかった俺達の沈黙を破ったのは例の冷静くんだった。


(ガンバレ僕らの冷静くん!)


何故か応援したかった。


カラスはその質問にキョトンと首を傾げた。


『別に理由なんてねぇよ。俺は人間(おまえら)に気づかれないように魔法陣を配置しただげだ。発動時に、「たまたま」お前らがいたんだよ』


鴉は淡々と、そう答えた。

俺は今朝起きた事をゆっくりと思い出した。

おかしな点はあっただろうか?

ただ、俺は先輩とダベってただけなのに・・・


(もしかして・・・もう先輩に会えないのか?)


『魔法陣がまたまた俺の足下に置いてあった』

たったそれだけ?たったそれだけの事で、俺たちはこんなことに巻き込まれたのか・・・?


そう思うとグツグツと怒りが煮えたぎってくる


ここにいる全員がこう思っているハズだ。


ふざけんなよ・・・と


「なんだよ、それ・・・」


震える声を無理矢理押さえて蚊の鳴るような声で俺は呟くように言った。

その呟きは先ほどの暴言の嵐の中と比べると、呟く位の小さい音のはずだ。

しかしカラスは何故か俺のその声に反応して、俺を眺める。

黒が混じった紅色の瞳がギョロッと俺を向いてきた。


『なんだ?お前?』


俺はその舐め腐った声を合図に、何かがプッチンと切れた。


「なんなんだよお前は!勝手にわけわかんねぇ場所に連れてきて勝手なこと言いやがって!!俺達の意見も聞かないで自分の都合で話を進めやがって!!いい加減にしろこの害鳥野郎っ!!!」


感情を爆発させるように俺は思った事を大声で怒鳴った。


(やっちまった・・・)


言いたい事を言ったからか、次第に頭が冷えはじめ後悔の念が俺の頭を支配した。

俺らしくない。

こんなに後先考えずに怒鳴ったなんて産まれて始めてだ。

どうやら俺は自分が思っていた以上に感情が高ぶっていたらしい。


俺が、怒鳴った瞬間、人のザワザワとした声も聞こえなくなり、あるのは俺が怒鳴ったあとの声が少しまだ響いてる程度だった。

鴉はゆっくりと俺と視線を合わせると脳内にメッセージを送ってきた。


『立場弁えろよ?下等種族。』


刹那、俺と10メートル近くも離れていたカラスがまるで瞬間移動したかのように目の前に現れた。

そして勢いを殺さずに、(くちばし)を俺の胴体にぶつける。俺の体はバウンドボールのように吹き飛ばされ、そのまま壁に衝突させられた。


辺りに血とコンクリートの破片が飛ぶと同時に背中から有り得ない音がゴリゴリと聞こえた。


余裕であばらと背骨が骨折したように思えた。


「がっ!?」


俺は即死レベルのダメージを受け、喉を絞りだすように悲鳴を上げる。それと同時に大量の血反吐も吐いた。

そして周りから悲鳴が聞こえた。


痛い、いや、痛いの次元を越えている

気絶したい、でも出来ない、いや。

何で死んでない?


(てゆか、嘴に小突かれただけで致命傷とか、チートだろ・・・!) 


セコっと思った瞬間。


ドゴォッ!!


呑気に頭の中で文字を並べると後頭部から何か強い力で顔を地面に叩きつけられた。

頬の部分の骨がメリメリと鳴く。

万力のような力に押さえつけられて、そのまま地面に固定された。


「ヒュー、ヒュー、」


自分の口から、意志とは無関係に空気の漏れるような音が聞こえる。

声も出ない。段々と痛みの感覚も麻痺してきた。

手足も動かそうとしても動かせない、感覚すらないから神経ごとブチ切られたのかもしれない。


あぁ、俺死ぬのかな?

後頭部には鋭い爪のようなモノを感じる。

それで叩きつけた本人がわかった。


あの鴉だ。

カラスは俺を地面に足でグリグリ押さえ付けながらこう言った。


『こいつぁ見せしめだぁ。神や俺みたいなその眷属に刃向かうと、こうなるんだよぉ!!」


バキバキィッ!!


僕の骨や肉、皮が血飛沫に運ばれて飛び散った。

うぉ~い、死んじまったよ・・・


《次元支配・感情操作、スキル配布を発動。》


最後にそんな言葉が耳に入ったのを聞きながら。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



「お・・・だい・・」


頭がボ~とする。脳内でグチュグチュ音鳴ってるけどなんだ?


「す・・・だ・・・だい・・」


なんか声が聞こえる。

もしかして呼ばれてるんか?


「大丈夫ですか!?起きてくださいっ!!」


声がハッキリ聞こえてきたところで俺の意識は覚醒した。

目を開けると例の冷静君が俺の肩を揺さっていた。

艶のある黒髪と少し大きめで真面目そうな目をしている。

あぁ~イケメンだったかやっぱりぃ~マジ美形爆発しろ


「ん?・・・あれ?」


「は、よかった・・・無事だったんですか」 


彼は俺が意識を取り戻した事に対して明らかにホッとした安堵の表情を浮かべていた。えっとさっき爆発しろなんて思ってごめん。

でも美形は許せん。


そんな事を考えていてふと思い出す、不意に感じた喪失感。

俺は無意識に頭の後頭部を鷲掴みした。いや、できた。

俺の頭は完璧に存在していたのだ。

ちょい待ち、俺確か死んだんじゃ?


「なんで?俺、顔が吹っ飛んだんじゃ・・・?」


俺がそう言うと彼は少し苦そうな顔をした。

言いにくそうに口を閉ざしているのは、まるで禁断の扉に振れてしまったかのような雰囲気を感じさせた。


「・・・あ、頭が再生して・・・」


「はい??」


再生って何?どゆこと?にょきっとキノコが生えるみたいに再生したのか?

そういやさっき頭グチュグチュ鳴ってたな。

ということは、やっぱりもしかして頭が潰れた時相当グロいもの見せちゃったのかな?

ははっ美形まぢドンマイw



「な、なんだよアイツ、生き返った?」


「ば、バケモンだアイツ!!」


「ひぃ!」


外野が何だか騒がしい。

バケモンって俺の事か?バケモノっていうならあの(がいちょう)野郎だろが、さっきまで俺は一緒の国に住んでた日本人だっつの。

あ、でも生き返ったらおかしいよね。

もしそれが原因なら仕方ないか、俺もなんか信じられないし?


一度死んだからか、再構築された脳味噌は頭をクリーンにしていつも通りの思考に戻っていく

そんなとき、あの苛つく声が頭に響いた。


『お前等、コイツがなんで生き返ったか知りたいかぁ?知りたいよなぁ!!』


ジラすなよ

そう思っていると、俺の頭に何か軽いモノが乗った。なんというか無駄にフィットするような。

確認の為、見上げて見ると三本足の、俺を殺したカラスサマが乗っかっていた。


今度も手でも使って振り払おうと思ったのがまた潰されたら元も子もない。

てかもう反抗する気すら起きないな。

他の奴らもそう思ったのか、鴉の戸井には全員怯えたまま無言で頷いた。もちろん俺もだ。脅えてないけど


『コイツだけじゃねぇ、お前等全員に特殊なスキルを会得させといた!』


カラスの口からゲームに出てくるような言葉、「スキル」ってのが出てきた。


「スキル・・・?ゲームとかに出る技能のことですか?」


俺の肩を掴んで支えたまま冷静君が呟く。

いいからはなせば?

すると頭の上で・・・見えないが、カラスが頷くのを感じた。

相羽君の言うとおり、技能の事か。それもよくゲームとかで見るステータスみたいなやつらしい。

そんなもんあるのかよ、現代社会に持ち出したら職人とかの仕事のパワーバランスが崩れそうだ。


『そのとおり。スキルってのは会得するだけで能力(アビリティ)や技能を得る事ができる便利なモノだ。

基本的にお前らには「鍛冶スキル」「狩りスキル」「戦闘スキル」「農業スキル」「家事衣類スキル」「タフネススキル」「料理スキル」の一般的なスキルを付けてある。これらでお前等はこの世界で最低限生きるだけのスキルを付加させた。感謝しろよ。』


どうやらこの鴉、何も学ばなくても俺たちがサバイバル出来るように生活技能が使えるスキルってのを付加させたらしい。


(つかスキルって付けるだけで技能覚えられんのか、何それチート、なんで元の世界に無かったんだよ。欲しかったわ)


俺は過去体験した苦労話を思い出しながらそんな事を考えていた。

しかし、ここからが本題らしかった。


『そんで、お前等が知りたがってたスキル。まぁさっき俺が殺したソイツが生き返った奴だな。これは俺だけの固有スキルをお前等に付加させてやったんだ。俺が付加させたのはその名も「ヤタガラスの加護」だ。効果は一日一回死んでも蘇るアンデット系のスキルだ。』


軽く言ってるけど、鴉の言うその『ヤタガラスの加護』って技能とか技術のレベルじゃないじゃんか、とんでもない事言ってるなアイツ。本当にゲーム感覚じゃないか。


てか、死んでも・・・たとえ一日一回でも生き返るとか、チートじゃね?

って事は、俺が頭を潰されても生きていた理由は、このスキルのお陰なのか?

だから俺は生き返れたのか。


周りの人々の中には"異世界"という言葉に不信感を抱いていた人も見えたが、自分に存在する「スキル」そして、俺が蘇った「事実」によって信じたようだ。

だけど、なんか生理的に受け入れにくいな、死んだ奴が生き返る・・・ましてや自分だ。

俺は確かにさっき死んだ。この世から居なくなったハズなのに安易に蘇っている。


生き返った時感じた体の組織を再生する感覚。思い出しただけでも、寒気でゾクッと鳥肌が立ちそうである。

こんな気持ち悪いスキルを付加させたカラスは俺の表情から読みとったのか、新たな説明を行い始めた

俺達にこのスキルを付けたのは理由があるらしい。


『お前等はハッキリ言ってこの世界では無知で無力だ。せっかく転移させたのに、そんなやつらを世界に放ったって魔物(モンスター)に食い殺されるのがオチだろ。せめてでも生存率を上げてやったのさ。』


と、いうわけらしい。確かに俺達は元の世界で騎士や戦士をやってた訳じゃないから戦闘訓練や経験を持ってんのは自衛隊か危ない人くらいだろうな

ムカつくが、これには感謝せざるおえない。なぜなら俺自体体験したからね。


『ま、こんなスキルを付けてやったところでお前等はこの世界の冒険とかまったくしなそうだからなぁ』


鴉がそんな当たり前の事を言い出した。

なんでモンスターのいる世界で冒険しなきゃあかんのだ。生き返るったって痛いんだぞ?

俺の目標?町に入って引きこもる予定だ。なんとでも言えよ。


『そんでお前らにやる気を出させるために特殊なスキルを付けといてやったよ』


俺みたいな考えが多数存在する中で、鴉はそこ対策は用意してあると言い出した。

ざわめきが聞こえる中、鴉は間を空けて少し勿体(もったい)ぶったってからこう言った。



『それは、「覚醒スキル」だ。』

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