チートはお好きですか?
最近不幸な事故があった為更新を遅らせました。
「なんじゃそりゃ・・・」
フレキちゃんから聞いた話で俺は開いた口が塞がらない。
そりゃ驚くわ、呪いのスキル《突然変異》。こんな話転移された初日なんかに聞かされなかったぞ?
教えられない黒い歴史って事なのだろうか、それとも話す必要がなかったのか、どちらにせよ納得はできない。
「納得はできますよ?魔族に変異して人を襲ったりしたら・・・怖いですもん」
「いやいやいや納得しちゃダメでしょ」
以外にも呆気なく自分の置かれている現状を受け入れてしまうフレキちゃん。すでに人生に諦めているのが感じとれた。
つーか、魔族の呪いに感染したら即死刑ってどんだけ横暴なんだよ、いや危険なのはわかるけどさ。
元の世界のユダヤ人の差別などの悲惨な歴史の知識がある分、俺からしたら少し納得のいかない内容だった。
魔族がどれだけ恐ろしいか知らないが、口振りから魔族になると自我を失っちゃうのかな?なにそのハザード。
「う~ん?でも虐殺とか戦争とか、そんな話聞いた事ないけど?」
俺は少し冷えてしまったミルクを口へと運んで飲む
生温くて不快な味は今の自分の心境を表してるようだった。
「それはそうですよ、呪いのかかった人たちの処分なんて、王宮の上層部って人たちしか知らないらしいですから」
一般的には紫の耳を持ってる人を通報して王宮で保護するという事になってるらしいですよ?とフレキちゃんは俯きながらそう言った。
処分として殺すとは市民には伝えないのか、理由としては情が沸いて匿ってあげちゃう人が出ないようにするためか?
まぁおおっぴらなに「魔族の呪いにかかった紫耳は殺す!」とか発表すりゃ、正義感が強い人なら匿ってあげそうだなぁと俺は思った。
(相羽君だったら守っちゃうのかねぇ)
最近知り合って一時的のパーティを組んだ同胞を思い出す。
まぁ彼なら流石に匿って世話は出来なくても、隠れ家とかの協力はしそうだわな。相羽君強いし襲われても撃退できそうだしね
「あ、そういや《突然変異》ってのはどう言う効果なんだ?」
俺は話を変えたくて、軽く頭に思いついたスキル名を口に出した。これ以上生臭い話はあまりしたくない。決して血みどろの話しにビビったわけじゃないよ?
「《突然変異》ですか?」
フレキちゃんはこちらを見上げると首を傾げてそう言った
これまでに聞いた話で推測するなら、単純に亜人を魔族へと変貌させるスキルだと思う。
珍しいそうだが、俺はこのスキルに見覚えがあった。
デットスネーク改め、ピートレックスの討伐の際に表示されたステータスを思い出してみる
目を閉じると半透明な液晶画面のようなプレートが頭に浮かんだ、本当に楽だなスキルって
ご丁寧に過去見たステータスは思い出せば見れるらしい、新たな発見である。
とりあえず見覚えがある俺はピートレックスのステータス表を眺める。
名前
《デットスネーク》
力・860
耐・1200
賢・100
速・1500
ランク4
スキル
「突然変異(常時発動)」
「酸性毒」
二度見して確信できた、あの魔物もこのスキルを所有していた。
そして段違いの凶暴さ、通常の個体が上位種以上に変異した謎の現象・・・これがあのスキルのせいなら・・・
「あ、あのどうしたんですか?」
瞼の外側からフレキちゃんの声か聞こえてきた。
ああ、そうだった。自分の見てるステータス画面は他の人だとみえないんだっけ。
フレキちゃんからしたらいきなり瞑想を開始して黙り込んじゃったから心配してしまったのだろう
「あ?うん何でもない。」
俺は片手を上げて手をフルフルと振って問題無いことをアピールする。
すこしホッとした顔を見せると何故か申し訳なさそうに眉を下げた。
「すいません、《突然変異》については何も知らなくて・・・」
「あ~・・・」
俺は後頭部をガリガリと引っかいた。少し期待してたが、まぁこんな少女が全ての事を知ってる訳ないか、そう理解してコップを口元に持ち上げる。あ、もう空だ。
仕方ない、《突然変異》については午後ギルドに呼ばれてるからそれで聞いてみよう。
今彼女から聞き出せることっていったら・・・
「ねぇ、魔廻教ってどんな組織なの?」
彼女のトラウマであろうその名を聞くと、フレキちゃんはビクッと肩を揺らすとカタカタと震え始めた。
多少の罪悪感を抱きながらも、俺はフレキちゃんの返答を待つ。
そして決心が付いたのか、深呼吸をして俺の目を見る
「魔廻教は、魔族を神として信仰してる狂人の集団です」
「魔族を信仰?」
俺はちょっと意味が分からなかった。魔族は亜人を滅ぼして土地を自分達の物にしようとしてた連中だろ?どうやったら崇め奉るんだよ。
「はい、魔廻教は、魔族が亜人を滅ぼして世界を創り変えると勘違いしているんです。」
「世界を創り変える?」
随分とスケールのデカい話だな
「魔力が溢れ、動植物を進化させ、血みどろの世界を夢見るのが魔廻教なんです。一度今の世界を壊して新しい新世界を創るって、偉そうな人が言ってました。」
フレキちゃんは震えながら小さな手でボロ布の服を強く握っていた。
狂信者によって檻に放り込まれ、囲まれて崇められる。そんな非常識か光景はこんな子供にとっては怖くて仕方なかったのだろう、いや俺でも怖いが。
聞けばその魔廻教、病んでるとしか言いようがないな。ソイツ等の理想の世界を創るって、この世界を魔界にでもする気か?いや、したいんだろうな。
ようは終わった世界に産まれる、新たな世界の始まりを目撃したいって事か?バカらしい。
中ニ病じゃねぇか、俺からしたらちょっと闇のある主人公に憧れたガキにしか思えん。
まぁ下らないうんぬんは置いといて、魔廻教自体は大きい組織なのかもしれない。こういう奴らってバカらしい思想掲げてる割には無駄に数と情報網が広いっつーファンタジー物語のお約束なんだよなぁ
となればフレキちゃんを利用しようとしてたに違いないな、対魔大戦で殲滅戦争が起きて魔族は絶滅したと聞いた、となればフレキちゃんのように紫の耳を持つ者は魔族を復活させる唯一の手懸かり。なんとしてでも奪還しようとしてくるだろう。さてどうしたものか・・・
「とりあえず聞いてもいいかな?君はどうしたい?」
「・・・え?」
「スラムに戻るのも良し、オススメはしないけど信者達の所に戻るのも良し、俺は王宮に君を連れてくつもりはないから」
フレキちゃんは今俺が何を言ったのか理解できなかったようだ。しかし数秒経つとようやく頭の中で整理がついたのか焦りながら話しかけてくる。
「え?ぇえ!?でも、王宮騎士団にわたしを差し出せば大金が手にはいるんですよ!!いいんですか!?」
マジかよそれを先に言ってくれ。
フレキちゃんからの予想外の質問に若干俺の決心か揺らぐ。まぁ未来の選択肢を与えたこの時点で「やっば王宮にいこう!」って言うのは恥ずかしいな。
でも王宮に出せばフレキちゃんが、殺されちゃうから結局出さないと思うけれど。
俺はため息をついてフレキちゃんの目を見る
「さっきも言ったけど、そういう面倒事は好きじゃないんだ、だから俺に迷惑がかからない程度に早く決めてくれ」
俺はあえて突き放すように言う。この流れで「仲間になりたい!」とか言われてもめんどくさそうだもん。俺は無事に終えたらこの後お菓子を食べるんだ。
《フラグ発動》
ちょっと待て何のフラグだ?最近大人しいと思ったら隙でも探してたのかこのスキル。スキルの癖に生意気な!!
「えーとっえーとぉ・・・うぅん・・・」
フレキちゃんは両手を組み合わせて唸りながら悩んでいた。流石に10才の娘に決めさせるのは意地悪だったかな?
そう思った俺はテーブルから少し離れた棚から羊皮紙と元の世界でいうGペンのようなものとインクを取り出す。それをテーブルに乗せると黙々と書き始める、決められないなら選択肢を作ってあげれば良い。
フレキちゃんは俺が何か書いてるのに興味を示したのか悩みながら時たまチラッとこっちを見てくる
「フレキちゃん、紙にこれ書いたからどれか選んで?」
「ほぇ?あ、はい。」
俺が差し出した羊皮紙をフレキちゃんは直ぐに受け取る、そしてそれを読み始める。
書いてある内容はこうだ。
《一、スラム街でまた隠れて生活する(最初はある程度食料は与えておく)
ニ、あれ?なんとか教の所に戻る。
三、俺の家で居候する。なお仕事はして貰う。》
である。現状、俺が考えてあげられる選択肢なんてこんなものである。
ていうかこの世界普通に日本語だった、なんかファンタジー的に残念な気分になったが、まぁ楽だからいいや。
「ほぇ~」
「まぁなんだ、それ以外の事を思いついてるならその三つからじゃなくても良いよ?」
「・・・」
口元に拳を当てて考える素振りを数秒続ける。その度に耳が忙しなくピコピコと動いている。
やべぇ撫でてぇ・・・
「あのっ質問いいですか?」
「ん?なんや?」
「わたし、仕事をすればここに居ても良いんですか?」
躊躇いが気味にフレキちゃんは聞いてくる、まぁ拾ったの俺だしそれも選択肢の一つとして認めてあげないとなぁ。別にいやらしい事とか考えてませんよ?えぇ実に健全です。ワタシロリコンジャナイ。
「いいよ?まぁ例え《突然変異》で魔族に変身しても襲ってくるとは限んないし、襲われて殺されても生き返るしね」
「い、生き返る??」
そうっ《害鳥の糞(加護)》でちょちょいのちょい。
「お願いします!!わたしを冒険者として雇ってくださいっ!!」
「うぇん!?」
いきなりフレキちゃんが土下座をかまして来やがった!!どげざだよD O G E Z A!!今までする側だったからさせるのは慣れてないんや!!しかも体勢がシッカリしてるから余計にビビるわ!
はぁ、つか冒険者かぁ・・・危険な仕事だし、何でやりたいのかな?家で内職でもすりゃ良いのに
「い、良いけど。どうして冒険者?」
「・・・わたし、あの宗教の所で仕事関連は魔法しか教えて貰えなくて・・・他に取り柄はないんです」
あちゃー、そうきたか。いや、10才児に内職させようか迷ってた俺が言える立場じゃないけど。
「お願いしますっわたし魔法ならあなたのお役に立てると思うんです!」
フレキちゃんは一生懸命頭を下げてくる、う、う~ん。もしかして前お礼の件で言った事気にしちゃってる?
でもなぁ10才の女の子に冒険者やらせるとか・・・しかも俺は死んでも生き返る加護があるから気軽に行けたけど、普通のここの亜人には厳しいんだ。
死んだらそれっぽっちだからな。
だから出来れば連れて行きたく━━━
「いや、待てよ?」
俺は顔に手を当て、何かを思いついた。
そういや上級の魔法使いは魔力が隅々(すみずみ)まで通って髪が紫色になるんだよな?だとしたら魔族並に魔力を持ってるこの娘は凄いんじゃないか?
俺は無意識の内に彼女のステータスを確認する。
名前
《フレキ・フィンリル(獣牙族)》
力・42
耐・31 +5「ボロ布のコート」
賢・30
速・25
魔・3800【new】
スキル
「魔力探知」
「料理」
「魔法女王」
「炎帝」
「回復神官」
「覚醒スキル」
「突然変異」
うぇぇぇぇぇぇぇい何ですかこれ!?
何で俺の周りはチートばっかなんだよ!!
てかこれはマジモンのチートじゃないか?項目に《魔》が追加されてるけど多分魔力のことだ。数値3800ってヤバすぎない?「炎帝」とかなんだよ格好良すぎだろ!!
まぁ身体能力はそこまで高くないみたいで安心したけど・・・相変わらずどの世界の魔法使いは紙装備である
僕は凄い仲間を手に入れるかもしれません。
まだまだ続くお




