魔族
久しぶりの更新ふぁぁぁぁ!!
「・・・んぁ?」
目が覚めると俺は仰向けの状態で寝ていた、背中から冷たい感覚が伝わってくる。
木で作られた木の床が徐々に俺の体温を奪っているのだろう
辺りを見渡すとそこには肉をこぼしたような痕が残っていた
どうやら昨日、キッチンの床の上で寝てしまったらしい。
そこで思い出した、あぁ俺あのまま気絶したのか
俺は昨日の夜、モンスターの肉煮込みを食ったのだが、あまりの不味さに吐き出してしまったのだ。どのくらい不味かったかなんて思い出したくもない、まだ口の中がムズムズしてるし
ちなみにそれ以来の記憶がない・・・恐ろしい餌罠が出来てしまった。
「気絶するとかどんだけ不味いんだよ。もう二度と食わねぇ」
あの劇薬並の不味さは異 常だった。
決して俺の料理スキルが原因ではないと思う、もし俺が原因なら俺は今後一切料理に手を加える事は無いだろう、だからきっと原因は素材だ。
「俺は悪くない、悪いのは魔物肉だ。」
独り言を言いながら俺は寝起きで重い体を起こした、酷い目眩がして視界がチカチカと光る
そして呻き声を出しながら背中をイナバウアーでポキポキと鳴らした、それでようやく意識がハッキリしてくる
「あ、そうだ。あの娘起きたかな?」
俺は大分クリアになった頭で拾ってきた女の子の事を思い出した。
とりあえず飯は食わせたし帰るんならとっとと返そう、面倒事は嫌いだしね。
「てか生きてるのかな・・・?」
昨日俺の出した劇薬料理をもの凄い勢いで食いまくっていた。あまりの不味さにショック死とかしてないよね?朝から死体を見るのは御免だよ?
俺はおそらく少女が居るであろうリビングへと足を早めた。
木で出来たドアを開けるとそこには綺麗に平らげられている大きめのお皿とソファーの上でボロ布に巻かれた謎の物体が寝そべっていた
(・・・起きてるな絶対。)
ボロ布の正体はあの少女だろう、彼女なりに必死なのかもしれないがボロ布の尻に位置する部分から犬みたいなモフモフの尻尾がはみ出ているのが見えてまさに『頭隠して尻隠さず』の言葉がピッタリな状態だった。
その様子を見て俺は口を「へ」にして黙る
(これ・・・どうしろっての?)
口に出せずに心の中でそう呟く。愚痴にも近い言い方だろうが正直子供の相手なんて元々苦手だ
本人からしたら完璧なのだろうか?はみ出てる尻尾は微かに左右に揺れている
何がしたいんだ・・・
「お~い、起きてるかぁ?てか起きてるよな?」
俺がそう声を掛けるとビクンと大きく動いてガタガタと震えだした、なんやねん。
「おーい」
「・・・」
「おーいってば」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
埒が開かない
俺はこの謎の沈黙を打ち破るべく、さり気なく少女の尻尾を触った。
「きゃう!?」
可愛らしい悲鳴を上げた少女を無視して俺は躊躇いも無く尻尾のモフモフを堪能する。シルクのようなサラサラの毛並みが羽毛枕のような柔らかさを再現している、うむ実に素晴らしい。
こんなモフモフなんて二次元にしかないと思ってた、しかし俺は見つけた。これは現実だ。
俺は犬派だからな。
「あ、あぅっ、やめっきゅぅ~・・・」
「起きろ、さもなければまだ続けるぞ?」
「お、起きます!起きますひゃら~!!」
ゴロンゴロンと揺れたダルマのように左右に動いて彼女は尻尾を俺の手から振り払った、残念である
少女はそのままソファーの上で行儀良く正座を開始した。
顔は恥ずかしかったのか大福のような白くて柔らかそうな頬を真っ赤っかになってしまっている。しかしフードを外すつもりはないらしい。
年は10才かそこらか、ロリコンが好みそうな顔だ。
そして尻尾をまるで守るようにお尻の下で座布団のように隠している。そこまでいやだったのか?ごめんね。
取りあえず、俺は話を聞くために少女と向き合うように、ソファーの余ったスペースで胡座をかいた
そして思った事を口にする。
「まず、君は多分今の状況を理解してないと思う、だから好きなだけ質問してくれ、遠慮はいらん」
そういって俺は真剣な表情を作る。情報を得るため、少女は躊躇い気味でその口を開いた。
「あの、えっと・・・わたしは保護されたって事でよろしいんでしょうか?あまり覚えてないんですけど昨日お食事を貰ったと思いますし」
一様飯を食べた事は記憶にあるらしい、マズ飯だったが、飢餓者からしたらご馳走だろう、しっかりとした食事を出された結果、保護という結論に出たのかもしれない
「あ~、まぁ保護かな?スラム街で見つけたけどほっといて死なれると目覚めが悪いのでね」
俺は曖昧に答えると大袈裟に肩を竦める
この際最初に見捨てようとしたのは黙っとこう。
ただ面倒な事が起きそうだ。
「あ、はい・・・ありがとうございます、でも、あのわたしお金が・・・」
「あぁいいよ。払わなくて」
「・・・え?」
俺の返しに少女は有り得ないと言いたげな顔をする。
勘違いされては困るが、前にも言ったけど、お礼とかそういうのめんどくさそうだから受け取らないのであって、それ以外に理由はない。
だが少女はそんな俺の思考に気付くことはなかったのだ。
「で、でも・・・それじゃぁ悪いというか、えっと」
「じゃ聞くけど?今の君に支払い機能なんて無いよね?あるんだったらスラム街なんて、いないし、別に俺は君から何か搾取しとうとして助けた訳じゃないよ?もともとあんな姿で居たんだからお礼なんて期待してなかったし、君にはお礼をするための土台すら無いんだから。それとも何?体でも売って稼ぐの?そんなの君にゃ無理だよね?尻尾触られただけでビビるんだから」
俺が遠慮なくズバズバ言うと少女は黙ってしまった、子供相手に言い過ぎだと思うが俺は加減というものを昔から知らない。
これが先輩から「容赦ない」と言われる原因の一つだろう、自覚はしてるけどね。
さてとこのままスラム街に送り返すか?チラッと少女の顔を見るとあら大変、既に泣き顔じゃん
やべ、言い過ぎた!?流石に泣かれると困る!
「ずみ゛ま゛ぜん゛、や゛ぐだだづでぇぇぇ」
「だあああああっ!泣くんじゃねぇ!」
必死に我慢してそうだが、どうやら涙腺が盛大に崩壊してしまったらしい、俺はその姿をみてあわあわと慌てる事しか出来ない。
こういうちょっとアホ?というか天然に近い人に泣かれるのはかなり苦手だったりする、これも先輩からの影響だろう。
とにかく、今はこの状況を打破する事が最優先である。俺は見ず知らずの少女に役立ってもらう『お礼』を考える。
う~んどうしようこのロリっ娘・・・あ、そうだ
俺は名案を思いついたのだった。
「じゃぁさ、尻尾はやったから次は耳をモフモフさせて!」
俺の提案で泣き顔からキョトンとしている表情に豹変した少女にそう伝えた
モフモフの尻尾がある種族なんて獣牙族だけだろう、ということは必然的にケモ耳が存在しているということなのだ。
俺の言葉を理解し終えたのか、少女の顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく
まるでヤカンが沸騰したみたいだ。
「え、ぇえええええ!?あの!いやそれは!」
「・・・え?ダメなの?」
俺は露骨に肩を落として落ち込む様子を見せつける、そんな俺を見て少女は両手をぶんぶんと振り回して焦る
やがて決心したのか、上目遣い気味の目つきでこう言ってきた。
「・・・わかりました、でも・・・気持ち悪がったりしないでください・・・」
何が気持ち悪いのか?それに理解は出来なかったが、少女はボロ布のフードを脱ぐとその紫色の可愛らしい犬耳を露わにさせた、すこし震えているがそんなのお構い無しである。
俺は遠慮なくそのケモ耳を撫で始める
「うぉぉ・・・すげぇ」
「はぅ・・・」
結構動物好きなのだが、母さんが動物アレルギーで飼うことはできなかった。
故に今まで図鑑でしか見ることが出来ず、ケモ耳や尻尾等を触った事など一度もないのだ。
俺は長年の夢が叶ったように幸福へ包まれる
・・・ここの世界で犬でも飼うか?
飼っちゃうか?よし!飼おう!!
「・・・ですか?」
「ん?」
「気持ち悪く、ないんですか?」
少女はそんな事を言ってくるが俺としては何の問題もない!!ケモ耳がキモイという奴がいるならそいつを完膚なきまでに叩き潰すまでだ!
これが10年以上動物と触れ合うことができなかった動物好きの末路よ!皆まねしないでね!
「う~ん、別に?大丈夫じゃない?」
少女の顔に驚愕の表情が浮かんだ。
「なっ!?だってわたし、紫狼ですよ!?」
「えぇ?あ、うんそうね。良いと思うよ?」
「っ!?」
俺の返答に少女が放心状態となってしまったが俺はモフモフをやめるつもりはない。
ていうか、この世界は紫狼はなんか問題でもあるの?元の世界にゃ紫狼なんていないし、それがどうのこうの言われたって反応に困るわ。
(紫だからなんだってんだ・・・ケモ耳はケモ耳だろ!?)
本音はこうである。恥曝しだが後悔はない。
しかしそんな俺の軽い答えで、大変な事が起こってしまったのだ
「ぅ、うぅ・・・」
「え!?泣くの!?何で!?」
なぜだか知らぬが少女が泣き出してしまったのだ。
俺は再びアワアワして少女を宥めるのであった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「よしよし~。」
「~♪」
右手からフワフワした紫色の髪の感触が伝わってくる
一通り頭撫で撫でをすると少女ーーフレキは満足そうに目を閉じて尻尾を振って甘えてくる
他人からして見たら親子の様にも見えるだろう
しかし実際会ったのは昨日で会話を交わしたのも数十分前の出来事だ、お互いがお互いを何も知らない関係でここまで親しくなれるだろうか?
ましてや青年と幼女である。種族も異なる以上、明らかに誘拐にも見える。
お世辞にも「可愛い妹さんね」なんて言われそうな関係ではないのだ。
そして自分も満更でも無いと思ってしまっているのが余計に腹立たしい!
(どうしてこうなったーー!?)
そんな俺の疑問の答えは数分前に遡る。
「とりあえず、ね?落ち着こうか?ホットミルクだよ?」
俺は魔石を使って暖めた湯気の立つミルクをテーブルに置いて、少女の前へと差し出す。
ちなみになんのミルクかは知らない。この世界に来た初日に商店街で買ったのだ、飲めるはず・・・だって食品店だったもん。
まぁゴクゴクと飲み始めたから大丈夫だよね。
悪く言って少女に毒味(試)させてから俺も飲む、砂糖は高かったので入れたのはハチミツだ。ほのかに甘い味わいがしたと思ったら体がポカポカしてくる、ボットミルクって偉大だね。
「ぷはぁ、ありがとうございます・・・」
「どいたま。どう?落ち着いた?」
「はい、すいません」
俺は良いの良いの~と言いながら再びミルクに口を付ける。
さぁてと、いきなり泣き出したし「気持ち悪くないか?」とも聞いてきた。この少女は俺の世界からの美的感覚のしては可愛い、マスコットキャラクターみたいな愛らしさがある、普通の家庭なら幸せに暮らしていただろう彼女に何があったのか・・・?
ここまで来るとこの後起きるであろう面倒事を放置してまで好奇心が勝ってくる
「で?君どこの誰?飢え死にかけてたのを助けた俺にも聞く権利くらいあるよね?」
少女の顔を見ると言いにくそうに口を閉ざしている。時折口をパクパクと動かしてして反応する
まるで尋問みたいで可哀想と思うのだが、これは最低限俺が必要な事なんだ。
スラム街でこの子を拾って助けた。それは良い、結果助かったのだから。そこはまだ良いけど、この子をスラム街に戻すか孤児院に連れて行くかどうするか決めなくてはならない。
拾ったなら最後まで責任を持たなければならないのだ。
あれ?ペット感覚?まぁ良いか。
そんな思考をしていると、少女はようやく、その重そうな口を開けた。
「私の名前はフレキと申します。10才の獣牙族です。私は元々、魔廻教という宗教組織で崇められてました。」
いきなり宗教団体とかヘビィな話来たわ、びっくりした。
つか魔廻教ってなにさ?中ニ臭半端ないんですけど
序盤から後悔してきたんですけど~僕。
「へ、へぇ。そうなんだ。」
ひきつるような苦笑いで俺は頷く。
「はい、でも崇められるといっても錠で拘束されて檻の中に閉じ込められてただけですけどね」
「それって見せ物じゃね?動物園かよ。」
「・・・そう、ですね。親に捨てられた後は拾われて、4才の頃から魔法や言葉、計算式とかの勉強を叩き込まれました。」
なるほど、年の割には言葉遣いが丁寧かと思ってたらそういうことか、宗教ってこぇぇな。
信者が洗脳するかのように教育する姿を想像してイヤ気持ちになる。
「ああ、まぁ大変だったんだね。」
「はい、スラム街に居たのも、信者からなんとか逃げ切って・・・」
なるほど、スラム街であんな状態になってたのは信者達から逃げていたからか。
荷物とか無かったし、後先考えずに逃げ出しちゃったのか。
「逃げるのは良いけどさ、食料かお金くらいは用意しとこうよ?」
「あぅぅ・・・ごめんなさい」
少女はパタパタと動く紫色の狼耳を両手で押さえ込むと「うぅ~・・・」とうめき声を上げながら身悶えた。
「これも全部・・・この色のせいですよ・・・!」
唸ってる間に過去を思い出したのか、少女は吐き捨てるように突然そう言った。
フレキちゃんの目線は両手で包んでいる耳を向いていた。
「ん?どうたの?耳になんかあるの?」
「・・・あなたは「紫耳の呪い」を知らないんですか?」
「うん。」
「え!?」
知らないから縦に首を振ったら素で驚かれた、どうやらこの世界では常識らしい。
俺が4回目の転移種「人間」だと告げると納得したようだ。
人間は現れてからまだ日が浅い、この短時間で世界の事を把握してる人間なんて居るわけ無いだろう。
「紫は魔力が濃いということを証明してる色なんです。魔力は元々血液を通して流れてるんですけど、誰でも魔力数が多いと体だけでは無く髪の毛まで魔力が行き渡るんです。」
「つまり一般人よりも魔力が多いってことだよね?それって」
「はい、髪が紫色なら一流の魔法使い《魔導師》への未来は約束されたも同然でしょう。」
なんだよそれ、良いこと尽くしじゃないか。
ってことは、宗教団体に捕まっては理由もこれなのか?
いや、最初フレキちゃんは親に「捨てられた」と言ってたな、話が繋がらないぞ?一流の魔法使いになるかもしれない逸材を捨てるだろうか?その他に理由があるのか?
その辺を聞くとフレキちゃんは顔を少し影で暗くして答えてくれた。
まとめると、髪が紫色なのは一流の魔法使いだという証、だがなってはいけないところまで紫色なのは許される事ではないそうだ。
それが「耳」。
髪だけではなく、耳も紫色なのは邪悪な一族《魔族》へと変貌させる呪いだというのだ。
魔族は《魔力》の声を聞くことができたそうだ。
魔力の流し方、操り方、利用方など、魔力が求めていることをより鮮明に理解できる、それが耳。
魔族はその魔力をコントロールする優秀さを武器に亜人の国へ侵略行為を開始した。
反撃した亜人と魔族との「対魔大戦」という戦争が開始。
激しい戦闘の末、魔族を殲滅し亜人連合が勝利、魔族は絶滅したそうだ。
だが魔族は絶滅寸前、とある呪いを亜人達へと掛けた。
《突然変異》
その呪いは亜人を魔族へと突然変異させるスキル。
魔族は亜人達を同士討ちさせるという最悪の爪痕を残したのだった。
呪いにかかって産まれた者は耳が紫色。
亜人達はかつての悲劇を起こさぬようなに紫色をした耳を持つ者を例外なく虐殺した。
フレキちゃんのケモ耳ですが、耳に生えてる毛をすべて剃っても紫色の耳が出てきます。




