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ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
第三章『火種』
16/47

紫狼

実際この主人公最低です。

足下から伝わる「ムニュッ」とした柔らかい感触

例えるならそう・・・人の皮膚のような、柔らかい筋肉を踏んじゃった感じ

しかし残念ながらギャルゲやエロゲのように女性のえっちぃ胸の感触ではない。残念だ、非常に残念だ。

何考えてんだバカだろ俺。


(って事はなんだ?今俺は一体何を踏んだんだ?)


固い地面とは場違いな未知の感触に、今俺の顔は恐怖で顔を引きつらせるだろう。

(幽霊とかだったらどうしよう、夜のスラム街だからめっちゃ雰囲気あるわ!)

俺は足の感覚を再確認するために、再度謎の物体を踏みつける


ムニュッ


あ~気のせいじゃありません、確実に何か居ますわ

俺はその正体を把握するため、ブリキの玩具のように首をギギギと動かして足下を見下ろす。

足下にある暗い影、「狩りスキル」の夜目を最大限に活用して、それを見る。


そこにはあったのは幽霊ではなく、ゴミ袋のように膨れた、ただのボロ布だった。


どうやら俺はモッコリと膨らんでいるボロ布を普通に踏みつぶしていたようだ。

つまり俺は、普通に道ばたに捨ててあるようなゴミの塊を踏んづけて超ビビっていたらしい

羞恥心やらがこみ上げて来るが、それよりもバトルフラグの回避で安堵の気持ちの方が勝っている。

よく考えれば、スキル「フラグ」発動してねぇや。

俺は自信の安全にホッと息を吐く。 

幽霊ネタだったらホントに勘弁。本気と書いて、マジと読むとはまさにこの事。


「なっなんだよ・・・脅かしやがって・・・」


俺は返事も来ないハズの転がっているボロ布に対して強気のような言い文句を放った。

ぶっちゃけボロ布に対してのや八つ当たりしてるようなモノだ。相手がボロ布たからできる行為である、口ないし。


ただ、強気で言ってみても、やっぱ最初内心では何を踏んだかメッチャ怖かったのが本音だ、俺のビビり性質は相当なモノだと思う。

いやな思い出で、前先輩とお化け屋敷行った時俺は見事に泡を食って気絶して・・・

恥じをかいたの覚えている。

ええ、臆病(チキン)ですが何か?もう今更なんだよ


「・・・ハァハァ・・・」


その時、俺の不安から安心へと一変したその隙に入り込むように、呻き声を出しながらそのボロ布は「モゾモゾ」とまるで子供の寝返りのように動き始めた、驚いて直ぐに動けなかった

コイツなんだと、思った瞬間


━━━刹那っ

ピートレックスの時に感じた、モンスター特有の殺気を、俺の「狩りスキル」が察知した。

自防衛で反射的に俺は後ろへ飛び跳ねる。

街の中で感じた事のない魔力、というか攻撃的な雰囲気(プレッシャー)が俺を突き刺すように、そして明確に伝わってくる


(モンスターの気配!?)


ゴミ玉かと思ってたらまさかの謎のモンスターだった説に俺の頬に冷や汗が流れる

そんなボロ布は躊躇いもなく「ピクッ」と動き始める


「ひぃ!?」


突然の動きと殺気に、俺は情け無い悲鳴を上げてしまった。

殺傷能力を持つモンスターかと思って気持ちが怯んでしまう、それにビビる俺は足を操って数歩後ずさりした


俺は自分の気持ちを落ち着かせる為に軽く深呼吸して、腰に掛けてある銅の剣の(つか)に手を当てる

臨戦態勢は出来るだけ早く取った方が良いな、動きやすいし。


ボロ布はそのまま痙攣するようにピクピク動くだけで攻撃をしてこない、瀕死なのかも

いや、なんで国の中にモンスターがいるんだ?

俺は頭の中で、なぜモンスターがスラム街とはいえ国の中にいるのか?という問題を考え始める


モンスターが街の中に紛れ込むなんて通常有り得ない事だ。もしそんな事があったらどれだけ官署の騎士団は仕事してないんだって話になる。


相羽君と一緒にピートレックスの討伐の時に知ったのだが、このアルフ王国中心部は15メートルほどの石壁に囲われている為、大抵国の出入りは官署を抜けないと出来ないハズだ。大抵のモンスターじゃこの壁を越えられないし壊せない。


ならどこから入った・・・?

改めてそう考えた時俺は「入り込んだ」んじゃなくて「持ち込まれた」と可能性を当ててみた。


よく考えればここは、官署の目をかいくぐって盗賊すら入り込むような場所だ、違法者がモンスターを連れてきたという可能性も否定できない。

そんな珍しくシリアスな事を考えた所で、ボロ布は動きを止めた。


「・・・あれ?」

襲ってくると思ってた俺は拍子抜けである。

死んだか?

不信に思った俺はボロ布に近づく。


「・・・ハァハァ」


不意打ちの様に声を上げたボロ布に再度ビビる


「ち、チクショウ!生きてたか!」


俺は改めて銅の剣を構える

しかし、微かにもがくように動くボロ布から出てきたのは、肌色をした腕だった。


「ひ、人!?」


それを確認するために、俺は荷車と構えていた剣を手放してボロ布の近くに寄った。

手の角度から仰向けに寝てると思う

背中と思われる部分に手を当て支えるように起き上げさせる、ボロ布は弱々しい呻き声を出すだけだ。


改めて格好を見ると、形は当然人型。抱き上げられるから身長は120センチかそこらだろう。

そしてボロ布からはみ出てるのは、あの時の子供よりもやせ細った手足。

それはミイラどころか乾燥しきった木の枝にしか見えない。

ボロ布も衣服のようで、フードで顔を隠しているようだ。そこから少しだけ見える髪は紫。

空腹でお腹が痛いのか、荒い呼吸音を出しながら腹部を片手で押さえている。


魔物(モンスター)じゃないのか、良かった」


俺は危機感を振り払って安心する。

もし本当にモンスターだったら対処に困ったハズだ。流石にモンスターといえど無抵抗な動物を殺傷しくなるような人間じゃないですから僕。

え?説得力ない?ごめん。


(でもさっき感じていた殺気は何だったんだろう・・・。) 

気のせいか?なら良いんだけど・・・


「・・ハァッハァッ・・ァァ」


「うわっ、てかこの子瀕死じゃん。どうしよう」


周りに不審な影はないか意識を散らしていてこの子の事すっかり忘れてた

俺は意識の無い死にそうな子を見てアワアワと慌ててしまう。

どうしようどうしよう


この子は先程の子供達とは違って餓死寸前の子供だ、病院行こうにも今の時間では閉まってしまっているだろう。

かと言って放置するわけには・・・ん?いやまてよ?

俺はここである結論を見出してしまった。


(ズズッ・・・)


その時、俺の中で黒い何かが動いた気がした。

でも俺はそんな事に気付かなかった。

(そもそも何で、わざわざ俺が助けないとアカンのか?)

そりゃ最初踏んじゃいましたよ、でも俺が来ても来なくてもどっちみち餓死してるよね?

俺が何とかする必要なくね?

別に無関係だよね?俺異世界人だけど勇者じゃないし


「・・・うん。見なかった事にしよう」


俺はそんな結論を出した

その子をコンクリートっぽい何かで出来た壁に寄り添わせると荷車を引っ張って家へと向かう

俺は何も見なかった。

何にも見なかった。

私無関係。


「・・ハァ・・・ハァ」

「・・・」


・・・あぁ、メンドくせえ。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



その時は突然やってきた

「ヤァ~タァ~ガ~ラ~ス~!!」

「おやおやどうしたのですか創造神様?」


人間の姿をしたヤタガラスが謎の骨董品を布で拭いていると、ショタと言って良い程の背丈の精神年齢を持つ創造神が泣きながら走ってくる。

その姿を見て珍しくヤタガラスはギョッと肩を揺らす

普段なら受け流すかそれなりに対応する彼だが、規格外なモノを見れば驚くのだ。


創造神はなんと女装されていた。


不意打ちを喰らったヤタガラスは思わず手に持っていた骨董品を地面に落とす。


パリーンッ!!


ガラスのような破壊音が鳴るが、ヤタガラスは絶句したままだ。

そんなヤタガラスの反応に創造神は目元に涙を貯める


「うんあぁ~!!助けてヤタガラスゥ~!!」

「ちょっどうしたんですかっ!?」


創造神の悲鳴にヤタガラスはハッと意識を取り戻す、しかし戸惑いは隠せないようだ。


(なぜ創造神様が女装を!?)


兎に角、泣き止まない創造神を落ち着かせなければならない、それがヤタガラスの仕事なのだから


「創造神様っ、落ちついてください?ね?ほら、オフラインで今面白いこと起きてますよ?第二の覚醒スキル開墾者です、龍の呪いという中々面白味あるスキルですよ?」

「ヒッグッ、うぅ・・・」


ヤタガラスは片手にフィギュアのような立体映像を映し出す

それを見て、創造神も嗚咽を少しずつだが収まってきた


「・・・どうしたんですか?」

「ひっく、リリスがぁ・・・リリスがぁ!!」

「あ~・・・」


ヤタガラスは理由を聞き、答えられるとその答えに呆れ、または諦めのような音調で口を「へ」の字に歪める

創造神が悲鳴にも似た口調で言った名前は、ヤタガラスもよく知った人物だった。


『リリス』

創造神が産み出した自分の世話役の三人の内の一人、つまり立場上ヤタガラスと同じ人物だ。

ヤタガラスは異次元を行き来する世界の管理者で創造神の世話役ならば、リリスはヤタガラスの母役である。

創造神を一時(ひととき)も離さず、暖かく見守る存在・・・なのだが、これは創造神の失敗でもある。ちょっと愛情の設定量を間違えたのだ

結果産み出されたのは優しいお母さんではなく、過激なショタコン姉ちゃんだったのだ。


(あまりの溺愛っぷりに、母というかショタコンになるとは・・・)


ヤタガラスは創造神の背中をさすりながら、何やら遠い目をしてそんな事を思っていた、リリスは特にショタに女装させるのが大好きというか、大好物だ、それは例え創造神相手でも抜かりは無いらしい、実はヤタガラスも中性的な顔立ちのせいでリリスの被害者なのだ。


(実際、血の繋がってない本当の母では無いからなぁ・・・)

構わないのだが、狂っているヤタガラスでもあの少年愛者(リリス)が異常だと言うことは、しっかりと認識していた。


という事は、リリスを八つ裂きに始末すれば良いのだが、どうも毎度上手くいかない。


「創造神様、勝てなかったんですか?」


ヤタガラスは遠慮気味にそう訪ねる、創造神が子供の姿だろうと神には変わりない、その気になれば消し去る事もできるだろう。


「ごわ゛ぐで、でぎな゛い゛ぃぃぃ!!」


(今回マジ泣きじゃないか!リリス、アイツ何やらかした!?)


いつもはちょっと嫌がる程度の創造神が本気で泣いているのを見てヤタガラスの頬に汗が浮かぶ

そしてパニックに陥っているヤタガラスに答えるかのように“それ“はゆっくりと訪れた。


そこに現れたのはリリス・・・流れる水のようにさらさらとした黒っぽい紫色髪、男を魅了するかのような優しい瞳、母性が感じられる大きな胸とくっきりとしたラインがあるくびれ、誰もが美女と認める要な、そんな人物なのだが・・・


今現れたリリスはそんな美しい体を大量の血で色づけし、全身複雑骨折した体で未知の生物のような動き方で現れたのだ。

おそらく創造神の攻撃を受けたのだろう。不死者は厄介である。

その手には様々な女性用の服が握られている、ゴスロリ用まであるのはヤタガラスも引いた。

そしてリリスは創造神を見つけると、折れ曲がった手足の四足歩行でこちらに走ってきた、その姿はまるで蜘蛛だ。ホラー映画である。


「ソウゾウシンサァマァァァァニガシマセンワヨォォォォォォ!!!!」


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」



約一万人の人類を巻き込んだ転送騒動の首謀者は、主と共に地獄を見ていたとさ。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆




「たーだいまぁぁぁぁ!!!」

俺はそう叫びながら玄関のドアを荒々しく蹴り飛ばす。

蹴った拍子(ひょうし)にドアが開いたので急いで入り込む

俺は瀕死の子供をお姫様抱っこした状態で家に入り、リビングまで運んだ。


俺はソファーの上に子供を乗せた。いちよう確認したが、やはり開いている病院は無かった。

仕方ないので自宅にお待ち帰りした訳です。


「どうしよぅ、とりあえず飯食わせた方がいいか?」


俺はそう言いながら眠る子供の顔をのぞき込む、フードを外してその素顔が露わになった。

髪の色はやはり紫色に整った顔立ち。

驚いたのはこの子は女の子であり、さらに狼の獣牙族だったのだ。


(紫狼(しろう)か。そんなの居るのか)


この娘の呼吸は大分落ち着いてきている、か細い腕も血色がよくなってきた。

ここに来るまでに回復ポーションを飲ませといて良かったと俺は思う、回復ポーションならちゃんと飲めばエネルギーになるだろうし、体調を安定させる事もできる。


チョコレートとかあれば高エネルギーになりそうなのだが、残念ながらこの世界にチョコなんてモノは存在しない、てかカカオがあるかもわからんのだ。あーチョコ食いてぇ・・・

あ、いかん。話が脱線した。


俺は子供に布団を掛けておくと調理場に移動した。

あの子飢え激しそうだしなぁ、消化に良いものが一番だよな・・・できるかな俺。

兎に角やってみなければ解らない、作ろうよし!

イメージするのはお粥である。

え?悪い?料理っぽくない?ド素人なんだから許してよ。


(オカズも作るか)


土鍋に米と多めの水を入れて沸騰させる。

火は魔石があるから問題ない。魔法様々である。

さてと、目の前にドンッ!と置いたのはピートレックスの肉の塊だ、俺は「料理スキル」を発動させて肉の調理を開始する。


俺はある程度切り分けた肉の塊を棒で叩いて柔らかくする、そしてお粥とは別の鍋の中に放り込む。

水を入れて醤油(っぽい何か)、酒(料理酒か何か)を加えてグツグツと煮込む、作ろうとしてるのは肉煮込みだ。

なぜか頭の中で「蜂蜜」を入れろと言われた気がするのでそれも加える。(あとで調べたら、蜂蜜を入れると柔らかくなるらしい、これ豆知識)


ピートレックスは甲殻が強固な分、柔軟性を得る為に皮と肉は比較的柔らかい分類に入るだろう、味は知らんが。

まぁそんな事もあって、お粥が出来ると同時に肉煮込みも完成した。

肉煮込みの方は箸で千切れるほど柔らかくなっていた、恐るべし蜂蜜・・・


「え~と、盛りつけは・・・適当でいいか。」


俺はそう言って茶碗にお粥を入れ、その上に肉煮込みを乗せる、カロリー高そうだが今では好都合だ。

そんな盛り付けた茶碗を持って、俺は女の子の寝てるリビングへと移動する

ソファーの上では子供が体勢を崩さずに睡眠をしていた。

そんな女の子の鼻の先に、俺は肉煮込みをかざした


「んぅ・・?」


匂いに釣られたのか、ピクピクと動き出した。

そしてゆっくりと目を開いた、起きるの早いな。

ふっチョロいぜ。


「食べて良いんだよ~?」

「っ!?」


俺が甘い誘惑のように言うと女の子は一瞬、いや刹那の速さで、俺の手から飯を奪い取った、野生やな


「・・・うぅ・・・」


女の子はスプーンを器用に使って飯を口に放り込む

無言で食うわ食うわ、必死だったんだな・・・

つか、泣いちゃってるし。ご飯の有り難みってのがよくわかりますね。


「・・・」


勢い良く飯を食いまくる子供を見て俺も胃袋が鳴り始めた。

うん・・・俺も食おっと。

台所へ戻った俺は食器棚から茶碗を取り出してお粥と肉煮込みを入れた。


「いただきますっと」


箸で器用に肉を切り取る。とても柔らかい、まるでプリンだ。

俺はそんな質の良い肉をパクッと口に入れる。

肉が舌の上で溶けて味が染み渡る、最高級食材のような食感だ、元の世界でもこんな肉はなかった。

溶けた脂身は俺の口の中を探検するかのように味とともに染み渡る

醤油などとの味付けで肉本来の味がより一層強くなった気がする

そんなお肉のお味は


「マッッッッッッッッヅ!!??」


俺は不味いジュースを吐き出すかのようにブーッ!!と言いながら肉を吐き飛ばした。



結論、魔物の肉は不味かったです

 ( ´・ω・`)(´・ω・`)キャー!

 /  つ⊂   \

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