表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンストップ・オフライン  作者: ケモナー@作者
第二章『それぞれの命』
10/47

斬れないなら刺せばいいじゃない。

と、誰かが言ったような気がしました。

目の前にいる赤い甲殻を身に包んだ巨大百足(デットスネーク)は、一時間長引いた戦闘に対しても全く屈することなく、強者としての余裕を醸し出していた。

その反対に、俺たちのスタミナは(いちじる)しく減る一方だ。

ステータス補佐もあるし、何より相羽君がそれなりの実力者の卵だ。でもやはり経験(・・)の差っていうのがこの狩りに大きく影響している。


荷物はその辺の草むらに置いて隠してある。それによって今の革装備の重量は8キロ。銅の剣は5キロ、合計13キロの装備だ。荷物を背負ってた時は30キロほどだっからかなり軽くなったのだが、これが実際戦っていると重い。

身を守る代償にスタミナをドンドン吸い取るように取っていくのだ。


装備の腰に付いてる革製のカバンから回復ポーション取り出して一気飲みする。

飲み干した回復薬は胃に送り込まれ、分解される間もなく全身に安らぎの効力を送り込まれる。

すると疲労で震えてた足の痙攣が(おさ)まり、息も整う。それを確認した後、俺は空になったガラス瓶を投げ捨てた。


この世界の薬草は疲労回復にも良いようだ。

傷口に流せば痛みが止まり治りが早い(完治までに数日はかかる)のは勿論の事、なんかよく分かんない液体にすりつぶした薬草を混ぜれば傷薬とスタミナ回復の両方の効果が得られる優れモノである。

狩りとか長期戦には持って行くのが常識らしい。

それでもこの命の削り合いでは、痛み止めくらいにしか効果が無いだろうが疲労が直ればそれで十分だ。


デットスネークの目の前に立って敵対心(ヘイト)を集めてるのは相羽君だ。もう剣術だけなら元の世界の軍人より強いんじゃないか?と思えてくる。

一時間近くも敵の攻撃を受け流しながらダメージを与えるとか神業だろう。回復ポーションなんか2、3回しか使ってねぇし。俺は6本も飲んだぞ!?そろそろ小便したいわ。げっぷ


てか相羽君、そろそろ狂戦士(バーサーカー)使えばいいと思う。そう思って彼を見ると冷静に対処しているけど余裕はなさそうだ。覚醒スキル発動には呪文とかいるのか?それ系の理由だったら仕方ないか・・・


「わすれてましたー」なら殴るけどな。


そう考えてる俺にはまだまだ余裕がありそうだな。回復ポーションで超ドーピングしてるけど、今も健全なのは相羽君のお陰かな?


キツいけどこのまま戦況が変わらないなら勝てるかも知れない。武器とポーションがある限りあと一時間は持つ。

この世界にはゲームみたいな体力ゲージが存在しない。心臓や頭を切り裂けば即死するし、体力も永遠と持つ訳ではない

赤ん坊でもナイフを持って大人に刺せば倒せる世界なんだ。

このまま持てばいずれは・・・


俺は目の前まで近づいたデットスネークを睨みつけると銅の剣を思いっきり叩き付ける。手に痺れが走るが気にしない

続けて剣を振り上げるとパキッと嫌な音が聞こえた

何事かと素早く剣を見ると根本からヒビのような亀裂が入っているのが見える。


その瞬間、俺の体の中で何かの文字が光っているようにも感じた


  『フラグ発動』


きましたー!!なんかよく分からない謎だったスキル発動来たー!!マジくぁwせdrftgyふじこlp


よく見たら俺の剣がもの凄くボロボロになっていた。

多分次斬ったらこの剣使いもんにならんぞ?そして俺も使い物にならんぞ? 

初めて確認したけどこれバットスキルだっのか!?

マジナイワ~

どうしよう、俺武器なしじゃ闘えましぇ~んだぞ?

う~ん・・・


ふと目の前に居るデットスネークを見る。

腹は柔軟性のある皮だ。強度は皮鎧程度だろう本気で突き刺せば内蔵いくかもしれない・・・

よし!俺の作戦は『銅の剣を内蔵へ突き刺す!』ガンガンいこーぜ!!


「相羽くーん!!」

俺は全身全霊をかけて大声で相羽君に声を伝える

「ぜえっはぁっなっなんですかうとととと!」

相羽君はデットスネークと一騎打ちでも返答を返してくれた。今かなり危なかったな

その根性に応える為にとりあえず作戦を伝えよう


「あのさー!俺の剣もう壊れるからー」

「っ!?は、はい!」

「刺すわ!」

「はい!?」

さすがに今の説明じゃ理解出来なかったか

まぁいい、結果になったらわかるだろう。


デットスネークを見上げると最早俺は眼中にないのだろう。あまりに相羽君が強すぎて・・・俺が弱すぎるから・・・

だが!その余裕、俺が後悔させてやるぜ!

俺はヒビの入った銅の剣を両手で握り締めてデットスネークのお腹の中心に狙いを定める。


「うぉらぁぁぁぁぁぁぉぁあっ!!」


俺は気合いを入れるために自分で自分に大声で渇をするかのように、獣のような叫び声をあげる。

剣は俺の命令通りデットスネークの腹部に突き刺さる。

パンっ!と何かが破れる音とグチュッ!と何かが潰れる音が耳に届く。

目を見開いてそれを見ると見事に銅の剣はデットスネークの腹に深く深く突き刺さっていた。


「ギュアァァァァァァァ!?」


かつて感じた事のない激痛にデットスネークは断末魔を上げる。

俺はそれだけにはすまさなかった。

刺さった剣を抜き出すように引っ張った後刺したりクルクル回したりして内蔵を粉砕する、それにデットスネークは苦痛の顔を浮かべて鳴き叫ぶ。

相羽君はデットスネークに同情するかのように「うわー」と言っている。

良心?あのカラスの時、ゴミ箱に投げ捨てました。

ひゃっはー!血祭りやで!


  ポキッ・・・


グチュグチュと生々しい音と血飛沫を上げていたハズの銅の剣から途端に力が抜けた。

不意に支えが無くなって俺は前に無様に倒れ込んでしまう。

手で握っている銅の剣を見ると・・・先端が折れていた。

どうやら内蔵の中で折れてしまったらしい。


  『フラグ発動』


いや、分かってたけどさ・・・どうせ折れるって

てか、折れる前提であの作戦決行したからね

俺もそれなりの覚悟でやってましたとも

・・・まぁ多少調子に乗って剣が(もろ)くなってるのは忘れてましたが


「灰原さんっ!!」


刹那、強い衝撃が俺の体を貫くように脇腹から走った。

気が付くと俺の体は吹っ飛ばされていて、木に背中から衝突してしまう


「かはっ!?」


圧迫されたように肺から空気が飛び出し、(にじ)むような吐血が口から吐き出る

肋骨は何本か持って行かれたかもしれない・・・

俺はズルズルと滑るように木から落ち、俯いていた顔を上げる。

いつもなんか気にしないほど軽い頭も今は重く感じた。


目の前ではデットスネークが尻尾を地面に鞭のように叩きつけていた。

どうやらアレで叩きつけられて吹っ飛ばされたらしい。

痛みがマヒして体に届かない。それが今どんなに不味い状況か、判別するのは容易だった。


すると止めというばかりにデットスネークは鋭い角を俺の腹に突き刺した。


そして俺の意識は消え失せた。


  『フラグ発動』


俺の中でその文字が発動した。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



固有空間(オフライン)が創られてから千年。

この世界に初めて転送されたのは獣牙族だった

彼らはモンスターなどをその強大な力で駆逐し、村を作り上げた。

その千年後にエルフ族が世界に呼び出された。

エルフ族は獣牙族に言葉やもっと頑丈な家の作り方を教え、町や国を作った。

更にその千年後、ドワーフ族が召還された。

ドワーフはその生産技術でより強固な城や防壁、さらに剣や防具などを次々に編み出していった。


そしてこの世界が誕生してから約4千年。

4度目の異世界転移されたのは人間、その数は約1万人。

アルフ王国だけではなく、人間(ニューマン)はこの大陸の至る国に転送されたのだ。


獣牙族、エルフ族、ドワーフ族、人間、姿はそれぞれ異なるが、彼らは召還の際にある一つの共通点を受けた。


それは『覚醒スキル』の存在である。


この世界に現れた種族は全て『覚醒スキル』が付加された。

その覚醒には強い思いと経験が必要だった。

努力したものはスキルの恩恵を受け、怠った者は平凡な人生を送った。


相羽大賀はこの世界の人類の中で最も・・・いや、人類初の覚醒スキル開墾に成功した男だ。 

能力は狂戦士(バーサーカー)。自分の理性を半分下げる事によりその他のステータスを10倍底上げする能力だ。おまけとして、敵のヘイトも分かるという(すぐ)れモノである。

しかし、覚醒スキルの発動方法を相羽は把握していなかった。

それは当然だ。人間で初めて覚醒スキルを目覚めさせたのだから同じ人間から発動方法を教えて貰う事ができない。


だから相羽はデットスネークを前にしても、比較的軽く常時(じゅんじ)使用可能な『狩りスキル』と『戦闘スキル』のみで戦っていた。


最初は無理だと思ってた。一時間経っても疲れる様子が全く見えない!!

そんな時、パーティメンバーの相方がオカシな行動をしてきた。


「あのさー!俺の剣もう壊れるからー」

「っ!?は、はい!」


(流石に耐久値を上げてない銅の剣じゃデットスネーク(亜種)には難しいですか・・・!)


「刺すわ!」

「はい!?」


(刺すってどこに!?)


冗談だと思ってたら彼は言葉通り有言実行してきた。

後衛で背中から切りかかってた仲間がいきなりデットスネークの正面に立ちはだかり、持ってた剣でデットスネークの腹部に差し込んだ。

血飛沫が飛び散る。デットスネークら悲鳴を上げながらのたうち回っている。


そこに彼は刺さった銅の剣でデットスネークの内蔵をグチュグチュいじくり回した


(灰原さん・・・容赦ない)


彼なりに必死なのだろうがどっからどう見ても動物虐待にしか見えなかった。

こりゃ詰んだかなデットスネーク

そう考えたところで・・・何かを察してしまった


その瞬間、彼の蹂躙も直ぐに終わった。

突然銅の剣がポッキリ折れてしまって前に倒れ込んでしまった。

それは、デットスネークにとって、最大の反撃チャンス

デットスネークは先端の堅い尻尾を高々く振り上げる。

それは、尻尾で彼を叩きつけようとしているのに見える。


「灰原さん!!」


相羽の助言はもう遅い。

意を決したデットスネークは、その長い尾を使い、彼の脇腹に激突させた。


仲間はダンプカーに吹き飛ばされたように飛んでいって木に激突する。

皮鎧のお陰で命は助かったようだが最早虫の息だった。

デットスネークに勝利の感情が目に浮かんだように見える

デットスネークはそのまま倒れ込んだ彼に向かって蛇行(だこう)で進む

それを止めようと、相羽はデットスネークに乱舞を使って攻撃するが、ダメージは甲殻に遮断され、止めることが出来なかった。


(灰原さんがっ!灰原さんがっ!!)


そんな相羽の強い願いも、天には届かなかった・・・

仲間はデットスネークの容赦ない角の突きによって命が絶たれる

最初の猪のように持ち上げられた彼ピクリとも動かなかった。


その瞬間、相羽の体に何か強い鼓動を感じた。



 『覚醒スキル・狂戦士(バーサーカー)発動』




主人公がオチたぁぁぁぁあ!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ