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英雄酒場  作者: 秋田強首
4/6

「ロゼット」「鷹武者」

・この小説はファンタジー、SF、現代(モダン)要素を含みます。

・舞台はヒーローがいる日本です。

・ヒーローの解釈等オリジナル要素を含みますので、ご注意ください。

・当店は不定休となっています。

 英雄酒場は、通常夕方から深夜にかけて営業している。

 不定休なうえマスターが気まぐれゆえ、いつでも定刻に開いているわけではないので、殆どの常連は開いていたらラッキー程度に考え店を訪れている。

 だが、折角行くのに店が開いていないという事態が嫌な客も一定数いる。

 そのため、そういった客は先にマスターの携帯に電話を入れる者も多い。

 ヒーロー名「ロゼット」、八重崎もそういった類の客だ。

 紺のジャケットから取り出した、お手製の小型汎用接触式多機能デバイス内の通話アプリを呼び出し、マスターに電話をかけたのがおよそ30分前。

 その時は間の抜けた声で、開いてるよ。と言っていた。

 八重崎は開いていると言われたから店の前に来たが…なぜかシャッターが降りており、下手な字で本日休業と書かれた紙が貼りつけられていた。

 シャッターはとあるヒーローが特注で作ったものであり、ファイター型と呼ばれるヒーローのパンチでも、サイキッカー(超能力保持者の総称)ヒーローの炎や電撃でも壊れない規格外の代物だ。

 それゆえ、まるで小枝のような細い八重崎の腕では店内に乗り込むことはできないのは明確だ。

 普通の客であれば悪態の一つでもついてさっさと帰るところだが、非常に負けず嫌いな彼は既に帰るという選択肢はなく、どこから店内に侵入するかを思案していた。


「…シャッターが破れないなら、開いてもらうことにするか。」

 

 内ポケットにしまってあったデバイスを引っ張り出し、アプリケーションを複数起動させる。

 そしてデバイスから黒いコードを一本引き出し、こめかみのジャックに刺した。

 意識を集中させ、デバイスからの電波と電磁波を頼りにあたりにある電子機器を検索する。

 周りのビルの防犯カメラや信号機、自動ドアからの反応に混じって、シャッターの開閉機の電波を捉えた。

 脳内に保存してあるアプリケーションから開閉に関する電波情報を抽出し、指にある超小型電波照射装置から開閉機に電波を当てた。

 少し待っていると、モーターの動き出す音が微かに聞こえ、ゆっくりとシャッターが上がり始めた。


 


 英雄酒場では、店主であるマスターの意向とヒーローを管理、監督するする国家公安特別委員会内の関連部署との協議の結果、きつめのくもりガラスをフロント面に設置する店づくりになっている。

 政府の方針でヒーローは正体を隠す必要があるため、本来なら厚めのコンクリートで完全に見えなくす必要があるのだが、酒を楽しく飲むのにコンクリで密閉感のある店内は嫌だというマスターの意向を尊重した結果だ。

 もっとも、委員会としてもヒーローのメンタル管理が容易になるというメリットがあるため、少しばかり目をつむった結果である。

 そのため、シャッターが上がっても、八重崎には店内の明かりが灯っていることしかわからない。

 最初に何を飲もうか、久しぶりにラムコークでもあびるかと思いながら、ドアを押すといつものベルが鳴り響いた。

 

「やあ、八重崎君、いらっしゃい…。」


 マスターはいつもの覇気と笑顔がなく、目の下には濃い隈があり心なしかやつれているように見えた。


「うん?どうしたんだ、マ」


 マスターのおかしな様子を見て、声をかけようとしたが、店内の奥の光景が目に入り口が止まった。

 店のテーブルは壁に突き刺さり、椅子は焦げくすぶっている。

 コップは殆どが割れるか二つに切断されており、内調のシャンデリアは傾いて今にも落ちそうだ。

 そして、金髪の男が一人と割とかわいい女性が二人、床に落ちている。

 倒れている、ではなく落ちているが正当な言葉に思えるほど、全員服はほつれ、埃まみれでありだった。

 特に状態がひどい男の身につけているフルプレートの鎧は、所々切り傷がつき凹んでいた。

 

「なあ、マスター、店に怪人でも来たのか?」


 ぐるりと店内を見回してから、八重崎が聞いた。

 ゆっくりと首を横に振り、違うという意思をマスターが示した。


「スーツを着ているのが「ファイアクロウ」、ジーンズにジャケット着てるのが「鷹武者」。その二人が変身までして喧嘩したのさ。」


 目を伏して腕組みをし、ふうと長い溜息を吐いた。

 少なくとも、こんな状態になった店と疲れ切ったマスターを八重崎は知らない。

 

「ヒーローが喧嘩!?それ、公安にばれたらやばい案件じゃん!」

「そう、そこで二人を止めようとした「ナイトウォッチャー」が巻き添えになって伸びて、あとは二人でクロスカウンター極めて今に至るのさ。」

 

 小鷹さんがマルコ君にちょっかい出そうとして、それを夏美さんが阻止して喧嘩になって。その喧嘩を原因の男が止めようとするっていう展開がまた下らないよね。と吐き捨て、ポケットから折れたタバコに火をつけた。

 八重崎も隣にすわり、懐から電子タバコを取り出し蒸気を吸い込んだ。

 蒸気と紫煙が、天上まで上り、四方へと溶けていく。

 喧嘩の後始末、店内の片づけ、調度品の仕入れなど、金と時間が酷く取られることになるだろうマスターを見て、普段は感情などほとんどない八重崎でさえ、この時ばかりはマスターに同情した。

 まあ、同情はするが、それはそれ、これはこれだ。

 

「マスター…。」

「なんだい、八重崎君?」

「ラムコークとナッツ!」


 マスターが非常に冷たい八重崎に向けたが、当の本人はそれはそれは涼しい顔をしていた。

 そう、八重崎はあくまでも酒を楽しみに来たのだ。

 どんな状態であろうと、そこの目的を果たさねば、今日ここに来た意味がない。


「マスター!早めにね!」


 八重崎が白い歯を輝かせ、笑いかける。

 ヒーロー相手の商売、考え直そうかなとマスターは心で呟き、よろよろと厨房へと向かって行った。

 

「ロゼット」

本名:八重崎広重

性別:男

身長/体重:170cm/103kg

タイプ:サイボーグ/マルチローラー

備考等

自身で人体実験を重ねる科学者。

ヒーロー研究に傾倒した結果、自身を改造しサイボーグヒーローとなった。

クラッキングなど情報戦など後方戦闘を得意とする。


「鷹武者」

本名:小鷹文美

性別:女

身長/体重:161cm/49[自己申告]kg

タイプ:ファイター[変身能力]

備考等

武家の血を引く変身ヒーロー。

変身後は武者鎧を身に着け、鷹の名に恥じない素早さで敵を切り刻む。

川野の男にちょっかいを出すのが面白く、それが原因で喧嘩になることが多い。

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