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セラフィア物語  作者: AK47
第1章
3/4

改稿中

登場人物の覚書


シャーフ 29歳の傭兵。ロラーナ人の元剣闘士奴隷。

 シャーフは街道が龍骨山脈を下る小川と一時的に合流する辺りまで馬を飛ばすと、速度を緩めた。街道のある土手を降りると馬を休憩させて水を飲ませる。

 

 シャーフ自身も冷えた小川の水を堪能していると、しばらくして土手の上の街道をこの時間帯にしては珍しく行商人の幌馬車が通りすぎていった。

 北に向かう馬車の周りは、皮製の鎧に剣と盾で身を固めた五人の徒歩の戦士が固めていて、その内一人がちらりとシャーフに視線を向けて去っていく。



 峠を旅する商人たちは、よく彼らのような輸送業者――馬借といった――を護衛に雇った。

 帝国の治安が悪化するとともに盗賊の出没が頻発するようになると、彼らは次第に武装して武芸に励むようになった。馬借たちは街道沿いの拠点ごとに集団で居住していて、組合の元締めが受け付けた輸送依頼をひとまとめにした上で集団で荷物を運ぶ。

 最近ではその護衛能力を生かし、依頼があれば小口で人の輸送も請け負っているわけだ。



 闘技場を引退してすぐのころは、シャーフも街道沿いの護衛を仕事にしていた時期があった。

 剣闘士に比べれば随分と地味な仕事だが、命がけの戦いに見世物としての魅力を求められるより、性にはあっていた。

 当事世話になっていた馬借の元締めはめずらしくシャーフの外見を気にしない男で、彼が輸送を取り仕切っているオルタワの町を通るときは、いまだによく顔を出している。



 木陰を探してひとときの休憩を楽しみながらシャーフが自らの過去に思いをはせていると、不意に木々の軋む音が遠くから響いた。


 1キロほど北の森から数匹の鳥が驚いたように飛び立つと、少し間を空けて笛のような甲高い音が上空に昇っていく。


 シャーフは急いで愛馬に駆け寄ると愛用の武器を身につけた。剣と矢筒を腰につるし、馴れた手つきで弓に弦を張ると背中に背負う。


 巡礼街道の馬借たちは二種類の鏑矢――笛のような音のなる細工物をつけた矢――を救援要請の合図代わりに使っていた。

 一つは「ビィー」という少し濁った音で、事故があった時に使う。

 もう一つの甲高い「ピィー」という音は盗賊に襲われた時の合図だ。

 近くに居合わせた同業者同士で必要があれば助け合う、いわば相互扶助の取り決めの一つであった。


 槍を右手に愛馬に飛び乗ると、鎖帷子と外套のフードを引き上げる。


 「ハッ!」

 という掛け声と同時に馬の腹を蹴ると、愛馬は一声いなないて土手を一気に駆け上がっていった。


貴重なお時間を割いて読んでいただけた奇特な方にはこの場を借りて厚くお礼いたします。

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