住人
おかしいだろ!と思ってもそこはスルーでお願いします!
気軽に読んでみて下さい★
あれから、家を出た俺は一階に行くための階段を下りていた。
このマンション、『虹色の春』と言う名前なのだが、部屋番号は零号室から十号室まであり、一階に五部屋、二階も一階と同じく五部屋あるのだ。まぁ、形は横長いマンションなのである。ちなみに俺は二階の六号室だ。
「おはよう!縁くん。」
一階に着いた途端だった。
「あっ、おはようございます。梅さん、今日も早いですね。」
林山梅さん、女の人だ。明るくて、このマンションのアイドルとしてここの住人から愛されている人なのだ。年齢は不明だが二十五、六歳ぐらいと言われている。
「そんなことないわよ。ただ、みんなとあいさつがしたいだけよ。私はね、みんなが毎日笑顔でここを出て行くのを見送りたいの。」
何て、良い人なんだ!
「ほんとに、梅さんは、良い人すぎます。大体、自分の部屋から全然出てこない人だっているんですよ。」
ここは変な人達が多いんだし・・・。
「あら、だから遣り甲斐があるんでしょ?私はいつか出てくれるのを信じてるし、いつだって待つわ。どーんと来いっ、てね。ここの住人はみんな優しい人ばかりよ。確かに、少し変わった人達だけどあれも一つの個性なの!ね、人間って素晴らしいでしょ?」
ほんと凄い人だ。敵わないなぁ。
「それより、まーたお父さんと言い合いしてたでしょ?」
聞こえてたか・・・。
「すいません。うるさくして・・・。でも、今日は良かったんですよ!」
「良かった・・・?さてはお母さん絡みね、そのニコニコ顔を見ると。」
流石だ・・・。
「まぁ、そんなとこです。」
「お父さんも可哀相ね。縁くんがお母さん、お母さんだから。」
・・・何で可哀相なんだ?
「あいつはいいんですよ。可哀相じゃないです。」
「まだ、あいつなんて呼び方してるの?駄目よ!それは!世界中のどこ探しったってお父さんはたった一人しかいないのに・・・。父さんというものはすっごく良いんだよ。縁くんのお父さんだって凄い人なんだから!」
・・・。
「しょうがないです。何か、気付いたら嫌いになってたんですよ。」
「んー・・・。そうだ!縁くん、ちょっとずつでいいからお父さんのこと知っていこ、ね?」
何でこんな必死なんだ?
・・・試してみるか。
「あの何でそんな必死なんですか?もしかしておっさん好き・・・?」
「えっ!違うわよ。私は縁くんのお父さんがあまりにも可哀相だっただけよ。」
そんな赤面しちゃって、もしかして・・・。
「もしかしてあいつのこと好きなんですか?」
「そ、そんなことないわよ。す、好きだなんて。それに、縁くんのお父さんには愛している人がいるんだから。」
・・・愛している人というのは、母さんのことか。
「そうですか。」
梅さんがお父さんに抱いている気持ちを前からうっすら知っていたけど、頑張って下さい!なんて言葉は言えなかった。俺はあいつが誰を好きになろうと、どーでも良かった。でも、あいつが誰かを好きになった時、お母さんは忘れちゃうのだろうか。それは、嫌だな・・・。あいつのことは嫌いだけど、お母さんを愛してることに対しては何か憧れてたような・・・。
「そういえば、伊太田くんは、出てこないわね?」
「あー、何か今日買いたい物があったらしくって、すぐそこんとこで待ち合わせなんですよ!」
「そうなの。残念ね、伊太田くんにおはようが言えないなんて・・・。」
「縁ーー!縁ーーー!はよーーーー!」
ん?この声は・・・。
ぜーはぜーはと言いながら、息切れしている奴がそこにいた。
ありがとうございました。
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