第十九話
しばらくしてようやくエナの涙は止まった。なかなか涙が止まらず心配していたメリンダだったがここにきてやっと安心できた。
エナはメリンダの目を見て「でも手伝いだけはさせてね」と伝えた。その後メリンダはにこりと微笑んで「分かりました」とだけ言った。
「さあ、では作りましょうね、エナ」
「うん」
数十分後、 メリンダとエナは手早く作業を進め、あっという間にご飯は完成した。作った料理の数は多くはないが美味しそうな匂いが空気中を漂う。
エナは作り終えた達成感に表情が明るくなった。
「うーん、今何時だ?」起きたのか目を擦りながらルカは言った。
「ルカ、今は6時だよ」
「そんなに寝てたんだ」
ルカは驚きながらも視界を食卓の方に向けた。ルカは匂いにつられて起きてきたのだ。
「美味しそー!!」
「ルカ。実はそのキッシュ、私が作ったんだ」エナは少し恥ずかしくなりながらも伝える。
「凄いな!エナ」
ルカが瞳をキラキラさせて言うからエナはますます照れ恥ずかしくなってしまった。こういう時にルカは素直に褒めてくれる。だからエナはそんなルカが好きだった。
「ありがとう」
その様子を見ていたメリンダは「ご飯にしますか」と訊ねた。
「「うん」」
メリンダから二階にいるチェスターを呼んできてほしいとのことで寝ていたルカが行くことになった。正直ルカはチェスターを呼びに行くのは気が引けた。
チェスターはいつも無表情で何を考えているか分からないし目が合うだけでも緊張して胸がどきどきしてしまう。嫌いと言う訳ではないがあまり話すことはない距離感だった。
ルカは二階に上がるとチェスターの部屋の前に立ち唾を呑み込む。ごくんと静寂した空気にルカの中で音が響いた。
勇気を振り絞って手を上げドアを叩く。
——トントントン
「なんだ」部屋の中からチェスターの声がした。
一瞬、驚いたルカだったが直ぐに「夕ご飯が出来たから……」とおどおどしながら伝えた。チェスターにため口で話すのは何だか気が引けるし違和感がある。
いわゆる慣れないのだ。
——ガチャとドアが開いた。ルカの目の前には巨人のように背が高いチェスターが立っている。
「どうした」
「あ、いや、その」
「下りないのか」
「降ります!」無駄に大きな返事をしてしまったルカは恥ずかしくなった。
だがチェスターはいつも通り無表情で何を考えているか分からない。ルカはそれに対してもっと分からなくなった。
一階のリビングに行けばエナとメリンダは既にダイニングテーブルに座っていた。だがまだ何も食べていない様子だ。ルカとチェスターも椅子に座った。
「それでは食べましょうか」
「うん」
「「いただきます」」
「いただきます」
「頂きます」
ルカとエナの順番にメリンダとチェスターも挨拶をした。
エナは自分が作ったキッシュを初めに手に取った。そしてキッシュを口に運ぶ。
次の瞬間口全体が熱くなった。慌ててエナはコップを取って飲んだ。熱かったから舌がやけどしそうになったけど水を飲んだから何とか大丈夫になった。
次はやけどしそうにならないようにとキッシュを小さく切ってふーと息をかける。
それを見ていたメリンダが心配そうに「大丈夫ですか?」と訊いてきた。
エナは大丈夫と答えて返事をした。
「良かったです。やけどには気を付けてくださいね」
「うん」
エナは改めて小さく切ったキッシュを口に入れた。次はあまり熱くなかった。きっと息を吹きかけたのが効果あったのだろう。
外側の生地がいい感じにサクサクで内側の中に入っているチーズが濃厚で美味しい。
エナは失敗無く美味しく作れたから嬉しくなった。
「エナ、美味しいな!」ルカがキッシュをもぐもぐしながら伝えてきた。
「ありがとう!」
「エナ、成功ですね」
「うん!」
その後、ご飯を食べ終えたらメリンダがエナにこっそり教えてくれた。
「チェスターいつもはあまりキッシュを食べないのに今日はたくさん食べてましたよ。良かったですね、エナ」
エナは嬉しさのあまりににっこり笑った。




