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第6話 恥ずかしがり屋で天使で純粋で天然な完璧な女の子

「……兄さんはなにをやってるの? 名前をさっき覚えた人にあそこまで本気になって……ばかみたい」

「はい、ごめんなさい」


 みかんが帰った後、僕らは同じドアに背を向けていた。

 あってから初めての……説教であった。


「ってかさ、兄さんにはこよみって人がいるんだよ!? なのに、なのになんであんな新参にかまうの?」


 ……こよみも十分新参だと思うけどな。


「ごめんごめん。でも安心して、みかんとはあれ以上の進展はないよ」

「……嘘つかないで、あそこまで行ったら……あれ以上の進展は絶対に起きるって」

「だってそもそもあれは……ただ転んだだけで。それに靴下だと滑りやすくってさ、玄関の廊下は」


 これは本当だ。ただ、妹が怒っているのはおそらくそこではない。


「……わかった。これ以上あの女には近づかないで、家にも入れないで、家にもいかないで……接近禁止命令」

「……はいよ。でも、こよみとならいいんだな」

「こよみならいいの……私の、友達だから」


 友達……ねぇ。妹がこよみの顔を知っているとは到底思わないし、あるとしても偶然にもネッ友だったって感じだろう。だからこよみでの出来事が氷璃にも伝わると考えればおかしくはない。


「……もう一人ヒロインが欲しい」

「……ヒロイン? そんなラノベ主人公じゃないんだし……でも、どんな人が欲しいの? 一応聞いておきたい」


 とはいえ、いざどんなヒロインが欲しいかを聞かれたらかえって答えずらい、というか……妹にそんなこと言えるか? 『恥ずかしがり屋で天使で純粋で天然』なイモウトって!?

 いやいやいや、それはさすがに無理だろ。そんな油を注いではいけない。まぁ……氷璃が妹じゃなかったらこんなヒロインが欲しいって平気で言ったのだろうが。


「ちょっと話変えようか」

「へー、恥ずかしがり屋で、天使で、純粋で、天然、な妹、が欲しいんだ」

「なんで心の声を読むんですかねー」


 少しだけ心が痛くなった。


「……ちょっと試作機が気になって、こよみ? が家に来たときあったじゃん、その時私、それで遊んでた」


 ……いやまぁ、いろいろと言いたいことがある。


「それって……いつぐらいに完成した?」

「あ、大丈夫だよ。昨日の兄さんがマンガおいてくれた時に完成したから」

「そ、それくらいか。ってことは……ばれてた?」

「お兄さんがエロマンガを私にプレゼントするってこと、慌ててるのバレバレ、もうちょっと隠しなよ」

「で、でもな。なんか悪いって思ってさ。いや買ってきたくせに何言ってんだって思うかもしれないよ。けどさすがにね」


 さすがの僕でも道徳心はある。そんな、ヒドートクなわけがない。


「知ってる。でもね兄さん。おかげで面白いことに気づいたの?」

「面白いこと……か。なんだ?」

「それはね、マンガにこの機械を当てると、ヒロインが考えていることを除けるの」


 ごめんイモウト! それだけはやめてくれ! いつまでもピュアな妹であってくれ!


「ごめんごめん兄さん。でももう遅いよ? 私、覗いちゃったから」

「だから……だからエロマンガの続編を頼んだのかよ」

「兄さん。人間ってね、30年、40年、50年生きてたら暇になるんだよ?」

「お前は15才だろうが!」


 だが彼女が言っていることは妙に説得力がある。30年、40年、50年、それよりももっとたくさんの年月を経験した冷静さを彼女は持っている。次起こる出来事のプロットをすでに用意しているかのような。


「ち、ちなみにどんな感情を持ってたんだ?」

「兄さんもやっぱり気になるよね。でも規制されちゃうから、柔らかに答えるね。やっぱり多かったのは、ルード、パーバートとかだね」


 英語でそういう彼女だが……実は発音がよく、まったく下品さを感じない。というか、これは妹なりのやさしさなのか、嫌がらせなのか。


「……なるほど。その機械、しまっておいたほうがいいんじゃないのか? 人が考えていることがわかったら、疲れがどっと押し寄せてくるぞ」

「……わかった」


 にしてもいい情報を聞いた。実は心を読む機械は研究施設ですでに開発されている。

 明日行く研究施設が少し楽しみになってきた。


「じゃあもうご飯作りに行くがどんなものが食べたいんだ?」

「んー、ピザ食べたい」

「了解、一時間ぐらいかかるがそれでいいか?」

「うん。大丈夫。それを承知でいってるから」

「……じゃあ今度はピザを届けるときにな」

「じゃあね」


 彼女の言葉を最後に、僕は階段を下りていく。もちろんピザを今から作るというわけではない。いくらなんでも遅すぎる。なので、今からお店に買いに行くことになる。

 こんな田舎に……デリバリーできるわけないからな。


 ーーー


「兄さんは妹が欲しいんだ」


 私は心の声を聴ける機械を分解しながらつぶやいた。

 私と違う妹が欲しいと知って少しだけ傷ついたのだが、心を読む行為自体、自業自得なもので私はなにも気にしていなかった。


「兄さんにこれ以上妹は作ってあげれない。だけど、代わりとなるものはできる。でも、私に……できるのかな」


 普段軽く、すべてを見ていたように話す私だが、本当はもっとネガティブな人間だ。これは昔から何も変わっていなかった。


「『恥ずかしがり屋で天使で純粋で天然』……ねぇ。少しだけ難しいけど、これぐらいなら簡単にできるかも。少しだけ……○○○○を使えば」


 私は昔から、生まれてからずっと頭がいい。この世に存在してはいけないものをたくさん発明してきた。絶対零度を超える冷たさの実現、反物質の生成、もちろん私は相対性理論・シャルルの法則なんか知らない。だって、私からすればそれはすべて……破壊することができたから。


「兄さん兄さん。これで兄さんは……私を好きにならないよね。これで私を……捨ててくれるよね」


 本当は兄さんには私を捨ててほしくはない。もっともっと……遊びたいことはたくさんあった。でも兄さんのためにも……私は――


 ジューッ。


「え? どうしてここに水が」


 気づかないうちに機械に水をたらしてしまったようで、一つのシステムがいかれてしまっていた。


「この水って……

 ――なんで、なんで……なんで私は、泣いてるの?」


 もう兄さんを思う気持ちなんて消し飛んだ。そう思っていた私がここにいたんだ。


「でもごめんね氷璃。私は、やらなければいけないことがあるんだ」


 それから私は、夜中も黙々とある機械の制作へと取り掛かっていた。


 ーーーーーー


 空にはきれいな星空が見える日。僕は少しだけ散歩していた。

 妹へのご飯を事前に用意し、準備をして出かけたのだ。


「そりゃ7月のお祭り……人がたくさんいるよな」


 そう、現在の日付は7月23日、絶賛お祭りが盛り上がる季節だ。どちらかというと、花火が盛り上がるのかな? 別のカップルも盛り上がると思うのだが。


「とはいえ……一人できたら、さみしいよな」


 こよみとは一緒に来ていなかった。なんていうか……違うのだ。こよみとはそういう関係ではない。これからもずっと一緒にいたいという人としかこれなかったのだ……それこそ、『恥ずかしがり屋で天使で純粋で天然』みたいな妹か、氷璃みたいなや――


「あれ、お兄さん。一人なんですか?」

「え?」


 僕の後ろから突然聞き覚えがない声がした。その声はどうやら僕に寄せられているようだ。


「え、えーっと……迷子かな?」

「迷子じゃありません! でも、お兄さん一人でどうしたんですか? お祭りってカップルが来るものってお父様が言っていました」


 お、お父様って……どこかのお金持ちの令嬢さんかな。


「でも、君もカップルじゃないじゃん。第一、カップルだったら僕に話しかけたらそれは浮気行為じゃないのか?」

「大丈夫ですよお兄さん。私、カップルじゃないので」


 今思ったんだけど僕らはなにを話しているんだ。初対面で彼女、彼氏がいないか聞きあうって……ナンパじゃないか。


「残念だったな。僕には……世界で一番かわいらしい妹がいるんだからな!」

「現実から目を背けないでください」

「――あれ? その髪」


 ここら辺では見ない髪だ。どこかのハーフなのだろうか。そのきれいな銀髪は彼女のロリっ子を象徴しているかのようだった。


「あ、この髪ですか? やっぱり変ですよね。私、あんまり好きじゃないんですよ」

「なんでだ? きれいだと思うけど」

「……秘密ですよ。もうちょっとだけ仲が良くなったら教えてあげます」


 いやでもロリっ子は少し違うか。おそらく、ここでロリっ子というと幼女のことを考えてしまう人がいるから、具体的に説明するとこう……氷璃みたいな感じだ。身長……はな。


「じゃあお兄さん。一緒に屋台をめぐりませんか?」

「……ッ!? パパ活?」

「ちちち、違いますよ。パパ活じゃありません。それにパパ活って、私そこまでお金に困ってないです」


 確かに令嬢っぽいし、パパ活に来たわけではないか。

 でも、でも妹と約束したんだった。私以外の女とくっつくなって、

 よくよく考えたら氷璃も氷璃だな。年頃の男の子にそれはきついぞ。


「すまん。実は縛られてて」

「あー妹さんのことですか? なら許可もらってるので大丈夫ですよ?」

「……え? 何で知ってるの?」

「私、妹さんの双子なんですよ」


 ……は? 双子?

 あれまてまてまてまて……あいつに双子? 今までそれっぽい動きを見なかったぞ?

 でもあいつのことだ。それに数か月顔も見てないんだし、気づかないこともある。


「ごめん。少しだけ氷璃に確認をとってみる」


 そして僕はポケットから携帯を取り出し、氷璃に電話をかける。


『はい、氷璃ですが』

「おい氷璃! お前双子がいるのか!?」

『あー、えー……言ってなかったっけ?』


 ――ブチッ。


 あいつ絶対に許さん。ってか雑すぎだろ。


「君、何て名前なの?」

「私は雪音ゆきねっていいます。以後お見知りおきを……」


 ……まぁでも、縛られてる自分にとってはうれしき事。ありがたくこの子と遊ばせてもらうか。第一、接近禁止命令のせいでお祭りに一人で来ることになったんだし。

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