第三話 「主人公になれない」のはいつものこと
書き直し、書き直しで遅くなってしまいました。ちょっと読みにくいかも知れませんが少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
「いや、それにしても予想外だわ。まさかこんな方法で異世界に行けるとは思わなかった。」
今までは、「起きたら目の前は異世界でした」形式だった。だから、今回もそうなるものと思っていたからこの展開は予想していなかった。まさか…
「まさか、どこでも○アで異世界に乗り込むとは思わなかった。」
まさしく、あの青い猫型ロボットが出す秘密道具がいま目の前にある。リアルで目にすることが出来るとは。しかも、今さっき使いました。だが、ある意味夢みたいな経験だけど、何か幻想壊された気分になるのはなぜだろうね。
「どこへでもつなぐことの出来る扉という概念を元に生み出した扉だから、こうなったんだろうね。」
物書きは扉の向こう側、現実世界から俺の疑問に答えた。
あの返答から数時間後、俺はすぐさま幸喜たちが迷い込んだという物語の続編の世界に入り込むこととなった。先に述べたように、物書きが生み出した扉をくぐり抜けた先がもうすでに異世界でした。
…たぶん。確信ないけど。
だって、周り木ばっかりで、森の中だとは思うけど、このくらいなら日本中どこにでもあるし、区別つかないし。
いきなり、ドアが目の前に現れて、開けたらどこぞの森につながっていたのだから。
さっきまで、マンションの自宅にいた俺としては、なんとも言えない……なんだろ?
敗北感?脱力感?
とりあえず、そんな気分です。
「これを渡しておくよ。」
そう言って、俺に登山者が背に背負うようなリュックに携帯を渡してきた。
「リュックは良いけど、携帯なんて要らないだろ?この世界使えんの?」
「使えないよ。」
なぜ、持たせる?
「僕と連絡が取り合えるようにするためだよ。それ以外には使えないけどね。」
携帯で連絡をするだと?
「何で、お前は…」
そう、夢を壊すようなことするかな!もっと違うものがあるだろ、異世界らしいもっとファンタジーな道具とかあるだろうに。俺は鏡とか水晶玉とか期待してました!「重くて、持ち辛いだろ。」そんな正論で返されるなんて、ありがた迷惑です!
そして、
「心の声に反応返すのやめれ、プライバシーの侵害だ。」
遊ぶのもそこそこにしておいて、これからのことを考えようと思う。
「楽しかっただろ?」
うっさい!余計な茶々を入れるな。異世界に来てテンションが高くなってしまった自分をまじまじ見せ付けられるようで、悲しくなるわ!
「それで、君のこれからの方針をどうするかなんだけど。」
急激に話を戻すヤツ。気持ちの切り替えが激しくて、付いていけません。ついでに、日本語的に「それで」で話始めるのは間違いだろ。どこからつながっているのか分らねーよ。
「この世界についてだけど、口頭で説明するのは面倒だから後でメールに資料を添付して送っとくよ。」
いきなり手抜き。どうしようもない…
「まあ、基本的に今まで君が経験した世界と変わらないよ。設定時代も文明も信仰も持っている能力もね。ただ、違うところももちろんある。それはおいおい分ってくるよ。」
「死ぬ危険もあるだろうに、何この投げやりな対応は。」
「生き返らせることなんて出来ないから死なないように。」
「…マジやる気失せるのですけど?」
「君の身体能力を少しだけ強化しておいたから大丈夫だよ。」
「チートキャラ並み?無双とか出来るわけ?」
「君そういうタイプのキャラじゃないだろ。どっちかといえばモブの脇役じゃない。」
「確かにそうだけど、そうだけども!」
やってみたいじゃん!幸喜たちみたいに「俺強え~」を無自覚でやってみたいじゃん!!
「そういったことは、主人公たちに任せて、君はあるべきものをあるべき場所へ、世界を本来あるべき姿へと直していけばいいんだよ。そのための人員としてここにいるのだから。」
「俺を主人公に置くと言ってなかったか?」
「僕の中では、君は主人公というか重要なキャラではあるよ。でも、僕が君を支配下に置くと僕の指示以外では君が動けなくなってしまう。それじゃ意味がないだろ?」
「俺の意思で動けるようにするためには主人公から外すと?」
「そう、だから君の動きを僕は劇中には一切書かない。そうすれば、君は好きなようにできる。表示されないモブキャラを知ることの出来る読者はいないからね。主人公には他の誰かを立てて置くよ。」
「モブに徹しなさいってか?まあ、もともとそんな役回りばっかの人生だったし、別にかまないけど。俺の能力的にもヒーローには逆立ちしてもなれないからな~。」
26にもなって、まだアニメやらゲームやらを卒業できていない俺だが、そもそも、娯楽の一つとして生み出された文化なのだからいくつになっても遊んで良いじゃんと思っている。ありがちな言葉だが、男はいつだって夢を追いかけるもなのさ。
だけれども、現実はやっぱり厳しいものなのだと教えられるよ。
「君は主人公じゃない。この物語は君の物語ではないからね。この世界にとって君は異物、異分子だよ。それも貧相な、ね。」
最後の一言があまりに余計です。
「でも悲観することじゃない。僕にとってこの世界は物語だけど、君にとっては現実だ。現実においては、主人公も脇役も関係ないよ。誰よりも生き汚いやつが生き延びる。だから君にしか出来ないことなんだよ。」
「ほめてねーからな、その言い方じゃ。」
そんなこんなで異世界の空の下。
あれだけ懇願してきたくせに、やたらと簡単に放り出されたこっちの身としては、どうしたものかと頭をひねってしまう。お願いされた方としてはもう少し何か特典になるようなことがあってもよいのではと、期待していた。実際にはほとんど何もなかったが…。
まあ、現実に帰ったら何かあることを期待しようと考えた俺は、物書きから渡されたリュックの中身をひっくり返した。
中身は予想通りというか、市販のサバイバル用品一式に保存食が三日分ほど、特別ここで列挙するほど特異なものは入ってなかった。
「律儀というか、面白みのないというか…」
ここが、ヤツの良いところでもあり、融通の利かないところなんかは悪いところなんだろうな。
久々の異世界は昔ほど俺の心を動かしはしなかった。4回目ということもあり、慣れたのだろうけど、今回はむしろ不安のほうが大きかった。やっぱり幸喜たちがいないからなんだろうなと思う。今までは必ず幸喜と雫が一緒に飛ばされてきていた。
目的のほとんどを雫が決めていたし、俺はそれに乗っかって後を付いていくことばかりだった。自分で決めたことがないわけではないが、数えられる程度だ。
俺たち3人の中では、雫がリーダーで、幸喜が相棒(雫から見て)で、俺は手下A、もしくは召使Aだった。間違いない、他人からはそう見られていた。でなければ、とある国の姫様から「従者さん」なんて呼ばれるはずがない。
とある異世界で、世界を救った勇者(幸喜と雫)のパーティーには、それはそれは大層豪華なメンバーがそろっておりました。どこかの国のお姫様に、有名な騎士団の団長、高名な魔術師、大神官、大海賊の船長、エルフの貴族令嬢、不思議な妖精?といった構成でした。(ちなみに全員美女、美少女です)そんなお約束一行についていく従順な従者(俺)。
彼らは、幾多の困難を乗り越え、世界を脅かしていた魔王の魔の手から世界を救い出しました。彼らの名声は世界中を駆け回り、神話となっていったのです。
勇者を召喚した国では、彼らの功績は永遠のものとされ、ご大層な勲章と膨大な褒賞が与えられました。そして、首都中心の広場には彼らの栄誉をたたえた銅像が立てられたのでした。「世界を救った9名の勇者」という題名で。
ちなみに、この9名の中に俺入ってません。除外されました。
だって、幸喜たちと一緒に召喚されたのに、召喚したお姫様は最後の最後まで俺の名前を一度も呼んでくれなかったもの。覚えていたかも怪しい。
未だに原因なんて解らんのだけど、俺ってそんなに影薄かったのだろうか…。
めっちゃ関係ないことを思い出して鬱になってしまった。いや、ただの現実逃避なんだけどな。
それにしても、物書きから資料が届かないと動きようがない。
なぜならば…
「ここはいったい何処なんだよ?」
現実はいつも厳しい。
ここ異世界だけどな…。
幸先悪し。
―六ヵ月後―
結果的に、物書きから資料が届いたのは、俺がこっちの世界に着いてから一ヶ月ほど経ってからだった。
何してたんだか。
え、いきなり時間が飛んだと?六ヶ月も何してたのかと?
ぶっちゃけ、たいしたこと何もしてないのよね。
とりあえず、初めてこの世界に落とされたところから町や村を探し始めたら、すぐに街道にたどり着き、半日で街が見つかってしまったのですよ。
ご都合主義万歳と思いました。
この辿り着いた街はレグタントといい、人口3,000人程度が生活をしている。
物書きの資料によると、六大陸の一つ、エヌシア大陸の西南に位置するシュルシュット地方。その中でも比較的北方に位置する街であるそうだ。年中カラッとした気候は穏やかで、この地域はあまり雨が降らないが、幾つもの川が流れており豊かな大地に恵まれていた。また地下資源も豊富で、多彩で良質な鉱物がよく採れそこに住まう人々の生活を支えている。
ちなみに、送られてきた資料はRPGの攻略本みたいなヤツだった。遺跡のマップデータとか、どんなアイテムがどこの宝箱に入ってるだとか、モンスターデータとかありました。本にすると広辞苑並みに分厚いのが出来ると思う。
設定細かすぎ。
おかげで、一通り目を通すだけで結構な時間がかかりました。
そして、俺はいまだレグタントにいるわけだが。
さて、早速幸喜たちを探しに行こうというわけには行かなかったのですね。何故なら、何をするしたってまずはお金が必要です。あと情報も必要です。何もせずに冒険に出ても、ポンポン都合よくイベント発生できるのは主人公だけですので。それをモブキャラがすると死亡フラグでしかない。
てなわけで、動くに必要な金と情報をこのレグタントにて集めている。
実を言うと、情報に関しては物書きからの情報でまかなえると思っていたのだが、いくつか問題があった。
まず一つ目に、こっちの世界来てから読めばいいやと思っていた幸喜と雫の物語、俺がこの世界に来るはめとなった物語が全部文字化けしてて読めなくなっているということだ。これじゃああいつらがどうなっていったのか、今現在どうなっているのかが全くわからない。
それだけじゃなく、これから始まる新しい物語も読めなくなっていた。(これも文字化け状態)おかげで、どんな主人公なのかもわからない。
二つ目に、物書きと連絡が取れない。こちらの理由は簡単で、電話番号もメールアドレスもわからないからだ。アドレス帳も履歴もまっ白だった。「入れておけよ!」と一人でつっこんでしまったのは仕方ないことだと思う。
何でこんなことになっているのかはわからないが、どうしようもなく今後の展開に不安を隠せないでいる。絶対碌でもないことが起きる前触れとしか思えない。どうすっかな~?
「シンヤさ~ん!ちょっとお願いがあるんですけど~~!」
階下から俺を呼ぶ声が聞こえてくる。たぶん仕事の相談でしょ。
「今行きま~す!」
とりあえず、悩んでても仕方ないので仕事に行ってこようと思う。今必要なのは金ですよ。金。生きるには金が必要なんだよ。
問題は先送りにしておこう、日本人らしくね(笑)
前回、異世界に入ると言ってしまったので、何とか異世界に送り込んだまではいいのですが、なんとも無理やりな話となりました。
こういったところはサクッと終わらせて、もっとテンポよく進めたいです。
といっても今現在就活と卒論と実務実習で時間が…
次の投稿がいつになるかわからないのがなんとも。
早めに出せるようにがんばりますので、長い目で見てください。
次回はもっと異世界エッセンスを出せるなうようにするつもりです。