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第一話  不幸は向こうから勝手にやってくる

「おはよう。お邪魔してるよ。」


「おはようじゃねぇよ。何でいんのよ?」


起きると、目の前に優雅にモーニングコーヒーなんぞを飲みながら声をかけてくる不法侵入者がいた。昨日はちゃんと戸締りはしたはず。だから、俺以外が部屋の中にいるなんてまずありえないのですが…。


「どうやって入った?」


「ピッキング。」


「犯罪だからな、それ。」


そいつは悪びれもなく、肩をすくめただけだった。


「君にお願いがあって来た。」


こいつにお願いされることなんて、ほぼ碌な事じゃないのは今までの経験上確実であった。本当に碌でもないことが起きる前触れである。


「またもう一度だけ、異世界に飛んでもらいたい。」


爆弾を落としやがった。


















「君の幼馴染夫妻、幸喜君と雫さんが行方不明になったのは知ってるよね?」


そいつは唐突に切り出した。確かに、昨日実家から連絡があり、俺の幼馴染達が行方不明だと聞かされた。そのせいで、夜遅くまで警察に厄介になっていたのだ。それに、ちょっと年甲斐もなくセンチメンタルになって、昨日の夜はグダグダ変なことを考えていたよ。


「また、異世界に飛ばされたらしい。」


「……………。」


「…ホントだよ。」


「……………最悪だ。」


本当に夢であってほしい。


「だから君に頼みたい。彼らを連れ帰れることが出来るのは霧島信哉君、君以外にいないだろうから。」


本当にすべてを無かったことにしたい。






俺こと、霧島信哉はそれほど目立つような人物ではなかった。成績、容姿、性格、どれを取っても能力的には平々凡々とした一般人でしかなかった。そんな俺がそこらの一般人と異なるところが二つほどある。まず一つ目、俺の周りにいた人物が平凡ではなかった。


その最たる存在が、俺の幼馴染である如月幸喜だ。

いつから一緒であったのかなんてもう覚えてはいないが、少なくとも小学校の入学式に校門前で二人並んで撮った写真があることから、そのころからだろうとは思う。


奴は小さいころから非凡は才能を見せていた。テストは常に満点、作文や絵を描けばコンクールに入賞、生徒会長にもなっていた。確か、空手の全国大会で優勝もしていたはず。

よく一緒にいるものだから、比較の対象にされていたよ。「信哉くんと比べて、幸喜くんはこんなことも出来る。」なんて女の子オブラートに包みもせず、比べられる。「幸喜はこれだけ出来るのに、お前はこんなことも出来ないのか。」とバカにされたことも多々ある。


そのたびに、いつも悔しい思いをしていた。だからなのか、俺も幸喜と同じように勉強し、習い事をし、委員会に入ったが、結果として何一つ幸喜に勝てることなく、俺への中傷が加速するだけであった。第三者から見ると、俺は「幸喜の真似をする出来の悪いヤツ」程度にしか見られていなかったのだろう。


まあ、それでも幸喜との仲が悪かった訳ではなかった、むしろ良かった。だからかなりの割合で、幸喜と常に一緒にいた俺に嫉妬(女生徒のみ)みたいな感情があったのだろうと思う。確かかどうかは知らないが。


これだけでも、人より人間関係で特異的な人生を送っていると思うが、俺の場合はもう一人大変な傑物が近くにいたのだ。


その人物は、今現在は幸喜の妻であり、俺たちの幼馴染であった如月雫(旧姓:白峰雫)である。


白峰雫を一言で言ってしまえば、「女版如月幸喜」である。性格は違うが、幸喜はお人よしで、NOといえない日本人である。それに比べ、雫の性格はヒーローである。弱きを助け強きを挫くを地で行く。世が世なら二人とも英雄となっただろうと思う。そんな資質に満ち溢れていた。才能は二人とも似たりよったりだったがな!


俺の二人の幼馴染はよき友であり、よきライバル同士であった。ちなみに俺は、そんな二人につき従う従者か召使か、まあそんな感じだった。やってることも、まさに幸喜や雫の起こした騒動の後始末ばかりやっていたからな。おかげで、教師や風紀委員から冷たい目で見られることばかりだったよ。


そして、理由の二つ目、それは、俺と幸喜と雫がもうすでに3回ほど異世界に行ったことがあるということだ。二度あることは三度あるとはよく聞くが、まさか4回目があるとは思っても見なかった。つーか予想なんて出来るわけがない!





「また、お前の物語の中な訳ですか…」


「もちろんだとも。」


何事も無いようにさらっと返すそいつがマジ憎い…


俺たちが経験した異世界での冒険は、よくある死んでからの異世界転生や勇者の召喚といったたぐいではなかった。

俺好きなんだけどね、そういった妄想小説。チートマンとか夢です。

つか、幸喜や雫はリアルにチートです。




話を戻すけど、俺たちが経験した世界は、今俺の目の前にいる男が書いた物語の世界だった。俺たちはこいつのことを『物書き』《ライター》と呼んでいる。


詳しくは未だにわからないが、とりあえず物書き(ライター)が書いた物語のキャラクターとして異世界を冒険させられた。ちなみに、能力の付加とかありません。生身のまま放り込まれました。おかげで何度も死に掛けました。



「とりあえず、死んでくれ。」


「人としてどうかと思うよ。その台詞は。」


殺されかけたこちらとしては至極当然の反応だと思う。反論は認めない!


「…それで、またアンタは幸喜たちを登場人物にしたのか?」


「……」


「何だよ、そんな神妙な顔をして、何かやらかしたのか?」


物書き(ライター)は今までに無いほど真剣な顔をこちらに向けて話始める。


「…今回僕が書いた物語には彼らを一切登場させてない。」


「……は?」


「基本的に僕の物語に君たちを呼び込むには君たちの顔を思い浮かべながら、君たちの情報を書き入れる必要がある。君たちの容姿、性格、家族関係、好きなことや嫌いなことなどその人物に対して詳しく情報を書きいれるほど、確実に呼び込むことが出来る。名前をフルネームでいれればなお確実。」


「今回は書き入れてないと?」


「今回はすべて新しくキャラクターを作って、君たちの情報は何一つ入れてない。」


あまりにおかしな話だと思う。それが本当なら、幸喜たちが物書き(ライター)の物語に巻き込まれるはずがない。






……いや、まて。


もしかして、はじめの条件が違うのではないだろうか?




「なあ、もしかして、お前は関係なくて、はじめから物語には巻き込まれてないんじゃないか。」


はじめから幸喜たちは物書き(ライター)の物語に巻き込まれてないのではなかろうか。この現実の世界で拉致られるなどされて行方不明に…


「それは無い。僕の物語の中にいるのを確かに確認したよ。それに、君の言ったことが事実ならそれはそれでひどい話だよ。」


…確かに。リアルに行方不明ってやばいよな。まだどこにいるのか分かるだけマシか。


「なら、何でそんなことが起きるんだよ。」


もう、三回も飛ばされると、どんなことが起きてもそんなに驚くことなく受け入れることが出来るようになってしまう。人間の適応力って偉大だわ~。


「たぶん、問題は物語世界の設定にあると思うんだ。」


「設定?」


「君たちがかつて経験してきた三つの異世界の要素をすべて含めた世界にしたんだ。だから、魔法も超能力もロボットも呪術も何でもある世界。ありとあらゆる可能性を含めた世界。僕が思い浮かべる現実には無い不思議を詰め込んだ混沌とした世界。」





こいつはマジでカオスを生み落としやがった!



「面白そうだろ。」


…頭が痛い。


「幸喜たちはそんなアホみたいな世界に送られたわけか…。」


こいつのことだから何でもありということは、思い浮かべたことはほとんど出来てしまう、むしろ思い浮かべたトンでも能力が普通に使われていたりするに違いない。


たとえば、ロボットが陰陽師とかで鬼を使役するとか…


それってどうよ?


なに面白い?


ないない、何でも混ぜればいいってもんでもないから。「混ぜるな危険」という言葉もあるくらいですよ?




「大丈夫だよ。いくら勇者といっても生身のまま大気圏突入したら流石に燃え尽きるから。」


「それできたらもう人間じゃないから。ってか、どうして勇者が大気圏突入するんだよ!その前にどうして宇宙に勇者がいるんだよ!!」


組み合わせの意味が分からんから。









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